株式譲渡は、会社の株主が保有する株式を買い手へ譲渡し、会社の経営権を引き継ぐ方法です。中小企業のM&Aでは代表的な方法の一つで、会社そのものは存続したまま株主が変わることが大きな特徴です。
ただし、実際に株式譲渡を進める際には、株式の譲渡制限の確認、社内承認、必要書類の作成、株式譲渡契約、譲渡代金の決済、税金や確定申告など、複数の実務を順番に進める必要があります。
第三者への会社承継全体については、第三者承継(M&A)の全体像もあわせてご覧ください。
手続や税金を個別に確認する前に、株式譲渡とはどのような方法なのか、事業譲渡など他のM&A手法と何が違うのかを理解しておくことが重要です。
株式譲渡の基本的な仕組み、メリット・デメリット、進め方については、まず次の記事をご覧ください。
株式譲渡では、いきなり契約書を締結するのではなく、株主や株式の状況を確認したうえで、必要な承認手続や書類の準備を進めます。
特に非上場会社では、定款や株主名簿、譲渡制限の有無などを事前に確認することが重要です。
M&Aでは、株式譲渡そのものに必要な書類だけでなく、買い手が会社の内容を確認するための資料も準備します。
決算書、株主関係資料、契約関係資料などを早めに整理しておくことで、その後の確認や交渉を進めやすくなります。
一般的には、株式の状況を確認し、必要な承認を得たうえで株式譲渡契約を締結し、代金決済や株主名簿の書換えなどを行います。
会社によって必要な手続は異なるため、自社の定款や株主構成を確認しながら進めることが重要です。
株式会社の株式は原則として譲渡できますが、非上場会社では定款によって株式の譲渡に会社の承認を必要としているケースが多くあります。
そのため、オーナー同士で売買について合意しただけでは手続が完了しない場合があります。
株式には譲渡自由の原則がありますが、会社法上認められた方法によって譲渡を制限することもできます。
まず原則と例外を理解すると、自社でどのような手続が必要なのかを整理しやすくなります。
会社の機関設計や定款の内容によっては、取締役会や株主総会などで株式譲渡の承認を行います。
承認手続を行った場合には、その内容を確認できる議事録を適切に残しておくことも重要です。
株主が変わったこと自体は、通常、商業登記簿へ株主名を登記する手続ではありません。
一方、株式譲渡と同時に代表者や役員など登記事項が変更される場合には、別途変更登記が必要となることがあります。
売り手と買い手の条件がまとまったら、株式譲渡契約書を締結します。
契約書には譲渡株式数や譲渡価格だけでなく、代金の支払方法、実行条件、表明保証、契約違反時の取扱いなど、取引に応じた事項を定めます。
株式譲渡では、売り手が個人株主か法人株主かなどによって課税関係が異なります。
オーナー経営者が保有する非上場株式を売却する場合は、譲渡価格だけでなく、株式の取得費や譲渡に要した費用なども税額計算に関係します。
株式譲渡によって利益が生じた場合、その利益に対して税金がかかります。
誰が株式を保有しているのか、どのような株式を売却するのかによって取扱いが異なるため、取引前に課税関係を把握しておくことが重要です。
株式譲渡益を計算する際には、売却価格だけでなく、その株式を取得するために要した金額である取得費が重要になります。
長期間保有している非上場株式では、過去の取得経緯や取得価額を確認するために資料の整理が必要になることもあります。
個人株主が株式を譲渡し、申告が必要となる場合には、譲渡所得等を計算して確定申告を行います。
売却が完了してから慌てないよう、必要資料や申告までの流れをあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
株式譲渡の取引内容によっては、対価の支払いに関係する支払調書について確認が必要となる場合があります。
売り手側の確定申告とは別の制度であるため、誰が何を提出する書類なのかを区別して理解しておきます。
M&Aでは譲渡価格が大きくなるため、消費税がかかるのか疑問を持つ経営者も少なくありません。
株式そのものの譲渡と、事業譲渡で個別資産を売却する場合では消費税の考え方が異なるため、取引手法ごとに整理する必要があります。
オーナー経営者のM&Aでは、株式の売却だけでなく、経営者の退任に伴って役員退職金を支給することが検討される場合があります。
株式譲渡代金と役員退職金は性質や税務上の扱いが異なるため、それぞれを分けて検討する必要があります。
役員退職金を受け取る場合には、株式譲渡とは異なる税務上の取扱いとなります。
株式譲渡代金と退職金を組み合わせる場合には、それぞれの課税関係を理解したうえで条件を検討することが重要です。
株式譲渡では、売り手や買い手が法人である場合などに会計処理が必要となります。
「会社を売却した」という経済的な意味と、帳簿上どのような仕訳を行うかは分けて整理すると理解しやすくなります。
株式譲渡は、オーナー経営者が自社を第三者へ売却する場合だけでなく、企業グループが保有する子会社を売却する場合にも利用されます。
不採算事業の整理、経営資源の集中、事業ポートフォリオの見直しなど、さまざまな目的で子会社株式の譲渡が検討されます。
子会社株式を売却する場合には、売却対象会社の企業価値だけでなく、グループ内取引、保証関係、共通システム、従業員や取引先との関係なども整理する必要があります。
親会社と子会社の関係を切り離した後も事業を継続できるかという観点が重要です。
株式譲渡は、会社自体を存続させたまま経営権を移せるため、中小企業M&Aで利用しやすい方法です。
一方、会社の資産だけでなく負債や契約関係なども会社に残ったまま経営権が移るため、売り手・買い手双方が会社の状況を十分に確認して進める必要があります。
株式譲渡の前提となるのは、「誰が何株を保有しているのか」が明確であることです。
特に設立から長期間経過している会社では、過去の株式移動、相続、名義などを確認し、実際の株主構成を整理しておくことが重要です。
株式譲渡の手続は、会社ごとに同じとは限りません。
定款にどのような譲渡制限が置かれているか、どの機関が譲渡を承認するのかを早い段階で確認すると、その後の手続を円滑に進めやすくなります。
経営者にとって重要なのは、株式の売却価格だけではありません。
取得費、税金、役員退職金なども含めて検討し、最終的にどの程度の資金が手元に残るのかを把握しておくことが重要です。
株式譲渡を実際に進めるには、株式譲渡固有の手続だけでなく、企業価値評価、買い手探し、条件交渉、デューデリジェンス、最終契約、クロージングなど、M&A全体の流れを理解しておく必要があります。
M&Aによる会社承継を全体から確認したい場合は、第三者承継(M&A)の全体像をご覧ください。