非上場株式の評価方法と時価算定のポイントを詳しく解説


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非上場株式の評価方法を事業承継・会社売却の目線で解説

非上場株式の評価方法は、誰が取得するか、会社規模、資産構成で変わります。相続・贈与、親族内承継、従業員承継、会社売却を検討する経営者向けに、原則的評価方式、配当還元方式、税務上の時価と譲渡時の注意点を解説します。

目次

  1. 非上場株式評価は取得者から考える
  2. 原則的評価方式で見る自社株の価値
  3. 配当還元方式が使われる少数株主の評価
  4. 特定の評価会社は通常と違う計算になる
  5. 事業承継や会社売却で評価をどう使うか
  6. 譲渡前に確認したい税金と社内手続
  7. まとめ
非上場株式の評価方法と時価算定のポイントを詳しく解説

非上場株式評価は取得者から考える

非上場株式の評価で最初に迷いやすいのは、「会社の価値そのもの」を見るのか、「税務上の自社株評価」を見るのかという点です。似ていますが、目的が違います。

非上場株式とは、証券取引所に上場していない会社の株式です。日々の株価が市場で示されないため、相続、贈与、親族内承継、従業員承継、M&A(合併・買収)による会社売却などの場面では、一定の評価方法により金額を考える必要があります。

中小企業の自社株は、単なる財産ではありません。経営権そのものです。そのため、国税庁の財産評価基本通達では、取引相場のない株式を誰が取得するか、取得者に経営支配力があるかによって、評価方式を大きく分けます。

経営支配力がある株主は原則的評価方式

同族株主など、会社の経営に強い影響を持つ人が株式を取得する場合は、原則として原則的評価方式を使います。同族株主とは、簡単にいえば親族などを含めて会社を支配できる株主グループのことです。

原則的評価方式では、会社の資産、利益、配当などをもとに株価を計算します。経営権を引き継ぐ人にとっては、配当だけでなく、会社全体を動かす力を持つためです。親族内承継で後継者へ自社株を移す場合は、この考え方が重要になります。

経営支配力がない株主は特例的評価方式

一方、従業員や少数株主など、会社の経営を支配できない人が株式を取得する場合は、特例的評価方式である配当還元方式を使うことがあります。配当還元方式は、受け取る配当を基準に評価する方法です。

同じ会社の株式でも、社長の後継者が取得する場合と、経営に関与しない少数株主が取得する場合では、税務上の評価額が変わることがあります。ここは意外と多い落とし穴です。単に「自社株は1株いくら」と考えるのではなく、誰が、どの立場で取得するかを先に確認します。

非上場株式と非公開会社の株式は混同しやすい

非上場株式と非公開会社の株式は、日常会話ではまとめて使われることがあります。ただし、法律上は同じ意味ではありません。

非上場株式は、上場していない会社の株式を指します。非公開会社は、通常、発行する株式の全部に譲渡制限がある会社を指します。中小企業では、上場しておらず、かつ譲渡制限株式であるケースが多いため、両者が混同されやすいのです。

原則的評価方式で見る自社株の価値

原則的評価方式は、同族株主などが自社株を取得する場面で使う評価です。会社の規模に応じて、使う方法が変わります。

会社規模は、従業員数、総資産価額、取引金額、つまり売上高などから判定します。大会社、中会社、小会社に分けたうえで、類似業種比準方式、純資産価額方式、または両方を組み合わせた方法を使います。

大会社は類似業種比準方式が中心

大会社では、原則として類似業種比準方式を使います。これは、自社と似た業種の上場会社の株価を参考にして、非上場会社の株価を計算する方法です。

比べる要素は、主に1株あたりの配当金額、利益金額、純資産価額です。利益が安定していて、配当や純資産も一定水準にある会社では、会社の収益力が評価に反映されやすくなります。

ただし、非上場会社と完全に同じ上場会社はありません。業種が似ていても、取引先の集中度、社長への依存度、地域性、借入金の水準などは異なります。税務評価としての計算結果と、実際の売却交渉で買い手が見る価値は、分けて考える必要があります。

類似業種比準方式で確認する3要素

類似業種比準方式では、配当、利益、純資産の3要素が重要です。配当は株主への還元、利益は会社の稼ぐ力、純資産は会社に蓄積された財産を表します。

利益が大きい会社は評価が高くなりやすい一方、役員報酬や一時的な損益の影響で利益がぶれている場合は、評価結果の読み方に注意が必要です。M&A実務でも、ここで判断が止まることがあります。

小会社は純資産価額方式が中心

小会社では、原則として純資産価額方式を使います。これは、会社を今解散したら株主にどれだけ残るか、という考え方に近い方法です。

具体的には、会社の総資産と負債を相続税評価額に洗い替えます。そのうえで、評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いて、1株あたりの評価額を計算します。評価差額とは、帳簿上の価額と相続税評価額との差額のことです。

不動産、保険積立金、有価証券などを多く持つ会社では、決算書の純資産と税務上の評価額が大きくずれることがあります。特に土地は、簿価が古いまま残っていることが多く、自社株評価に大きく影響します。

法人税額等相当額の割合は評価時点で確認する

純資産価額方式では、評価差額に対する法人税額等相当額を控除します。2026年時点の財産評価基本通達では、この割合は原則38%です。

過去の解説では37%とされている資料もあります。自社株評価は、評価時点の通達や税制に合わせる必要があるため、実際に株式を移す前に最新の取扱いを確認することが大切です。

中会社は2つの方式を組み合わせる

中会社では、類似業種比準方式と純資産価額方式を組み合わせます。会社規模に応じて、類似業種比準価額をどれくらい反映するかが変わります。

実務では、Lの割合と呼ばれる比率を使います。たとえば、会社規模に応じて0.90、0.75、0.60などの割合で類似業種比準価額を織り込み、残りを純資産価額で補うイメージです。

中会社の評価は、利益も資産も両方見られます。そのため、事業の収益力を高める対策と、不要資産や含み損益を整理する対策のどちらも、自社株の評価に影響します。

配当還元方式が使われる少数株主の評価

少数株主の株式は、会社を支配する力が小さいため、配当を受け取る権利に着目して評価されます。これが配当還元方式です。

配当還元方式では、その株式を持つことで受け取る1年間の配当金額を、一定の利率で元本に戻して評価します。国税庁の説明では、配当を10%で還元して株式価額を計算する方法とされています。

評価額が低くなりやすい理由

配当還元方式は、会社の純資産や将来利益を直接見る方法ではありません。配当を基準にするため、原則的評価方式よりも評価額が低くなることが多いです。

ただし、「低く評価できるなら誰にでも使える」というものではありません。経営支配力の有無、同族株主との関係、取得後の議決権割合などを確認したうえで、適用可否を判断します。

従業員承継では株主構成の確認が先になる

従業員承継では、後継者が少数株主のままなのか、最終的に経営権を持つのかで評価の見方が変わります。最初は一部だけ譲り、数年かけて議決権を集める設計もあります。

この場合、評価方法だけを見て安く移せるかを判断すると危険です。議決権の移転、役員就任、金融機関対応、個人保証の扱いまで含めて設計しなければ、後継者が経営できる状態にならないことがあります。

特定の評価会社は通常と違う計算になる

同じ非上場会社でも、資産構成や営業状態が特殊な会社は、通常の大会社、中会社、小会社の考え方だけでは評価できません。このような会社は、特定の評価会社として扱われます。

特定の評価会社に該当すると、原則として純資産価額方式などで評価されます。見た目は普通の中小企業でも、土地や株式を多く持つ会社では該当することがあります。

土地や株式を多く持つ会社

土地保有特定会社は、総資産の中で土地などの割合が高い会社です。株式等保有特定会社は、総資産の中で株式、出資、新株予約権付社債などの割合が高い会社です。

これらの会社は、事業で稼ぐ会社というよりも、資産を保有する会社として見られます。そのため、類似業種比準方式ではなく、純資産価額方式が中心になります。含み益のある不動産を持つ会社では、評価額が想定以上に高くなることがあります。

比準要素が少ない会社

類似業種比準方式では、配当、利益、純資産の3要素を使います。しかし、これらの要素が少ない会社では、上場会社との比較がうまく働きません。

たとえば、配当がなく、利益も出ておらず、純資産も乏しい会社では、比準要素数1の会社や比準要素数0の会社として特別な扱いになることがあります。赤字会社や休眠に近い会社では、この確認が必要です。

開業後3年未満や休業中の会社

開業後3年未満の会社、開業前の会社、休業中の会社、清算中の会社も、通常の評価とは異なる扱いになります。まだ実績が少ない会社や、事業活動が止まっている会社では、過去の利益や配当から価値を測りにくいからです。

動画や簡単な解説で大枠を理解していても、実際の評価ではここで判定を誤ることがあります。自社が特定の評価会社に当たるかどうかは、評価額に直結します。

事業承継や会社売却で評価をどう使うか

税務上の自社株評価は、相続税や贈与税を計算するための重要な基準です。ただし、会社売却で買い手と交渉する価格とは、必ずしも一致しません。

M&Aでの会社売却では、買い手は将来の利益、取引先との関係、従業員の定着、設備の状態、シナジーを見ます。シナジーとは、買い手と自社が一緒になることで生まれる相乗効果のことです。税務評価より高い価格で合意することもあれば、逆に低い評価になることもあります。

相続・贈与では税務評価が中心になる

親族内承継で株式を贈与する場合や、相続で後継者が株式を引き継ぐ場合は、財産評価基本通達に基づく評価が中心になります。相続税や贈与税を計算するためです。

評価額が高いと、後継者の納税資金が問題になります。逆に評価額だけを下げようとして、議決権の移転が不十分になると、経営権が安定しません。税額と経営権の両方を見て進める必要があります。

会社売却では税務評価を出発点にしない

第三者への会社売却では、税務上の評価額がそのまま売却価格になるわけではありません。売却価格は、売り手と買い手の交渉で決まります。

買い手が重視するのは、買収後にどれだけ利益を得られるかです。たとえば、安定した取引先、代替しにくい技術、後継者不在でも従業員が自走できる組織があれば、評価は高まりやすくなります。反対に、売上の大半が社長個人の人脈に依存している場合は、価格交渉で慎重に見られます。

M&Aでよく使う3つの考え方

会社売却の価値算定では、インカム、マーケット、コストの3つの考え方があります。

インカムの考え方は、将来生み出す利益やキャッシュフローを価値に反映する方法です。DCF法が代表例です。将来の見込みが評価額に大きく影響します。

マーケットの考え方は、似た会社の株価や取引倍率を参考にする方法です。類似会社比較法などが使われます。業種や規模の近い会社を選べるかが重要です。

コストの考え方は、会社が持つ資産と負債から価値を積み上げる方法です。時価純資産法が代表例です。資産が多い会社では分かりやすい一方、将来の成長力は反映しにくい面があります。

譲渡前に確認したい税金と社内手続

自社株の評価方法が分かっても、実際に譲渡できるとは限りません。価格、税金、会社法上の手続を同時に確認する必要があります。

中小企業の株式は、定款で譲渡制限が付いていることが多いです。譲渡制限株式を譲渡する場合、会社の承認が必要になります。取締役会設置会社では取締役会、そうでない会社では株主総会が承認機関になることが一般的です。

譲渡価格が低すぎると税務リスクが出る

親族間や同族会社との取引では、譲渡価格を自由に決めたつもりでも、税務上は時価との差を見られます。時価より著しく低い価格で譲渡した場合、贈与やみなし譲渡として課税されることがあります。

特に、個人から法人へ低額で譲渡する場合は注意が必要です。一定の場合には、実際の譲渡価格ではなく、時価で譲渡したものとして所得税が課されます。身内の会社だから大丈夫、という判断は危険です。

個人株主の譲渡益には申告が必要になる

個人が非上場株式を譲渡して利益が出た場合、一般株式等の譲渡所得として申告分離課税の対象になります。税率は所得税15%、住民税5%に、復興特別所得税を加えた合計20.315%が目安です。

譲渡益は、譲渡価額から取得費や譲渡費用を差し引いて計算します。取得費が分からない古い株式では、資料の確認に時間がかかることがあります。会社売却の直前に慌てると、手取り額の見込みがずれます。

譲渡の流れは名簿書換まで確認する

非上場株式の譲渡では、通常、価格や株式数などの条件を整理し、必要に応じて基本合意を結びます。その後、譲渡承認手続、株式譲渡契約の締結、代金決済、株主名簿の書換へ進みます。

株主名簿の書換は軽く見られがちですが、株主としての権利を会社に主張するうえで重要です。名義株や過去の相続未了株式が残っていると、承継や売却の手続が止まることがあります。

評価前に整理したい資料

評価を始める前に、直近3期分の決算書、法人税申告書、勘定科目内訳明細書、株主名簿、定款、不動産の固定資産税評価資料、保険や有価証券の資料をそろえます。

これらの資料が整っている会社は、評価の精度が上がり、後継者や買い手への説明もしやすくなります。逆に資料が不足していると、株価そのものよりも、会社管理への不安が先に出てしまいます。

まとめ

非上場株式の評価方法は、取得者の支配力、会社規模、資産構成、承継や売却の目的によって変わります。税務評価は相続・贈与の基準になりますが、会社売却価格とは別物です。まず自社株の位置づけ、株主構成、譲渡先を整理し、税務と経営権の両面から進め方を確認することが大切です。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人

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