株式譲渡の税金は何%?個人・法人の違いと会社売却の注意点
株式譲渡の税金は、個人株主なら譲渡益に原則20.315%が課税されます。ただし、法人株主、上場株式と非上場株式、取得費、損益通算、確定申告、親族間の低額譲渡では扱いが変わります。中小企業の会社売却で手取りを把握するための計算と注意点を解説します。
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▶目次ページ:株式譲渡(株式譲渡の税金)
「会社を高く売ると、売却代金の全額に税金がかかるのでは」と心配する経営者もいます。実際には、個人が株式を譲渡した場合、原則として売却代金そのものではなく、取得費や譲渡費用を差し引いた利益に課税されます。
中小企業のM&A(合併・買収)でも、最初に押さえておきたい考え方です。
個人の株式譲渡で使う基本式は、次のとおりです。
譲渡所得等 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)
この計算で利益が出れば、その譲渡益に対して税金を計算します。反対に、計算結果が損失であれば、その取引について譲渡益に対する税金は生じません。
ただし、損失を別の株式の利益と相殺できるかどうかは、上場株式と非上場株式でルールが異なります。
取得費とは、株式を取得したときに負担した金額です。株式の購入代金や払込金額のほか、購入手数料などが含まれます。
創業オーナーであれば、会社設立時や増資時に実際に払い込んだ金額の記録が重要です。相続や贈与によって取得した株式では、原則として以前の所有者の取得費を引き継ぎます。
取得費が分からない場合には、売却代金の5%相当額を取得費とする取扱いもあります。
ただし、本来の取得費が売却代金の5%を上回るなら、実際の取得費を確認した方が課税対象となる利益を小さくできます。古い会社ほど、設立時の払込資料、過去の申告書、増資資料などを早めに探しておくことが大切です。
株式を譲渡するために直接必要となった手数料などは、内容に応じて譲渡所得の計算上、差し引けることがあります。
何でも経費になるわけではありません。支出の名称だけではなく、株式譲渡のために必要だったことを契約書や請求書などで説明できる状態にしておくことが重要です。
同じ会社の株式を同じ金額で売っても、株主が個人か法人かで税金の計算方法は変わります。
会社売却では「会社にいくらの価値があるか」だけでなく、「誰が株式を持っているのか」まで確認しなければ、正確な手取りは分かりません。
個人が株式を譲渡した場合、上場株式等と一般株式等のいずれも、原則として他の所得と分けて税額を計算する申告分離課税となります。
2026年分までは、基本となる所得税15%に復興特別所得税を加え、さらに住民税5%を合わせることで、実質的な税率は原則20.315%です。
2027年分以後は、防衛特別所得税が導入される一方、復興特別所得税の税率が引き下げられる予定です。通常の株式譲渡では両者を合わせた負担水準が調整されるため、個人の株式譲渡に対する合計税率は、原則として20.315%が維持されます。
税額の基本的な考え方は、次のとおりです。
税額 = 譲渡所得等 × 20.315%
給与や役員報酬が多い経営者でも、その累進税率をそのまま株式譲渡益に掛けるわけではありません。給与所得の税金とは分けて考える点がポイントです。
「別の株で損をしたから、会社売却の利益と相殺できる」とは限りません。
個人の税務では、上場株式等と一般株式等を分けて譲渡損益を計算します。中小企業の非上場株式を売却する場合は、この違いを知っておく必要があります。
上場株式を特定口座の「源泉徴収あり」で売却した場合は、証券会社が税金を計算して源泉徴収するため、その口座の譲渡所得を確定申告しないこともできます。
一方、特定口座の「源泉徴収なし」や一般口座では、自分で損益を計算して確定申告の要否を判断します。
源泉徴収ありの特定口座であっても、別の口座の上場株式の損失と相殺したい場合や、損失を翌年以降へ繰り越したい場合には、確定申告が必要になります。
上場株式等の譲渡損失は、同じ上場株式等の譲渡益と相殺できます。
さらに一定の要件を満たして確定申告をすると、申告分離課税を選んだ上場株式等の配当所得等と損益通算できる場合があります。
それでも控除しきれない上場株式等の譲渡損失は、一定の要件を満たせば翌年以後3年間繰り越すことが可能です。
繰越控除を利用し続けるには、必要な確定申告を継続して行うことが前提となります。
中小企業の自社株など、一般株式等に区分される非上場株式は、上場株式等とは別に損益を計算します。
そのため、上場株式で出た損失を非上場会社の株式譲渡益から差し引いたり、反対に非上場株式の損失を上場株式の利益から差し引いたりすることは原則できません。
一方、同じ一般株式等の区分に含まれる株式であれば、その年の利益と損失を通算します。
一般株式等の譲渡損失には、上場株式等のような一般的な3年間の繰越控除はありません。ただし、一定の中小会社株式には特例があるため、該当する場合には個別の確認が必要です。
非上場株式のM&Aでは、証券会社の特定口座を使って税金が自動的に精算される仕組みではありません。
譲渡益が生じ、所得税の申告が必要となる条件に該当すれば、原則として翌年に確定申告を行います。
給与所得者には、給与以外の所得が20万円以下など一定の場合に、所得税の確定申告が不要となる制度があります。そのため「非上場株式を売れば必ず所得税の確定申告が必要」と一律には言えません。
ただし、中小企業の会社売却では譲渡益が大きくなるケースが多く、実務上は確定申告が必要となることが通常です。所得税の確定申告が不要でも、住民税について別途申告が必要になる場合があります。
確定申告では取得費と譲渡費用の資料を整理する
株式の譲渡所得を申告するためには、株式譲渡契約書、取得費を確認できる資料、譲渡費用の請求書や領収書などを整理します。
所得税の確定申告期間は、原則として譲渡した年の翌年2月16日から3月15日までです。期限日が休日に当たる場合などは翌営業日となるため、実際の申告時にはその年の期限を確認します。
上場株式の売買と違い、非上場会社の株式には市場価格がありません。
買い手との交渉価格、税務上の時価、役員退職金、相続との関係などが重なると、「20.315%を掛ければ終わり」とはいかないケースがあります。
個人から個人へ株式を著しく低い価額で譲渡すると、買った人が時価と支払った金額との差額を贈与で受けたものとみなされ、贈与税が課されることがあります。
ここで注意したいのは、「時価の半額未満なら必ず贈与税」という一律のルールではないことです。
個人間の低額譲渡は、取引の事情や価格などを踏まえて判断されます。特に親族間で非上場株式を売買するときは、なぜその価格にしたのかを説明できる資料を残しておくことが重要です。
会社売却と同じ時期に、退任する経営者へ役員退職金を支給する方法があります。
一般的な退職所得には、勤続年数に応じた退職所得控除があります。さらに、一定の場合は控除後の金額の2分の1を課税対象とする仕組みがあるため、株式譲渡代金だけで受け取る場合とは税負担が変わることがあります。
ただし、誰でも必ず有利になるわけではありません。役員等としての勤続年数が5年以下の場合などは、2分の1課税が適用されないケースがあります。
また、不相当に高額な役員退職金は、会社側で税務上の問題になることもあります。
株式の譲渡価格、会社に残る現預金、買い手が負担する金額まで含め、全体で検討することが必要です。
相続や遺贈で取得し、相続税を納めた株式を一定期間内に譲渡した場合には、納付した相続税のうち一定額を株式の取得費に加算できる特例があります。
取得費が増えれば、その分だけ株式譲渡の課税対象となる利益を小さくできます。
相続後に第三者への会社売却を検討するケースでは、買い手探しの期間と特例を使える期限が重なることもあります。売却方針が完全に固まっていなくても、相続税申告の段階から期限を意識しておくことが大切です。
非上場株式について法人版事業承継税制の特例措置を利用する場合、特例承継計画の提出期限は2027年9月30日です。また、特例措置の対象となる贈与・相続等には期限があります。
すでに納税猶予の適用を受けている株式を第三者へ譲渡すると、原則として猶予されていた税額の納付が必要になるなど、通常の株式譲渡とは異なる確認が必要です。
親族内承継を予定していたものの、その後に第三者承継へ方針を変えるケースもあります。こうした場合は、売却価格だけでなく、猶予されている税額まで含めて手取りを試算することが重要です。
株式は有価証券に当たるため、株式そのものの譲渡は原則として消費税の非課税取引です。
会社の株式を1億円で売ったからといって、譲渡価格に単純に10%の消費税を上乗せするわけではありません。
一方、会社ではなく個別の事業や資産を売却する事業譲渡では、課税資産の譲渡に消費税がかかる場合があります。同じ「会社を売る」という目的でも、選ぶ方法によって税金の仕組みは変わります。
会社の希望売却価格が決まってから税金を計算するのでは、選べる対応が少なくなることがあります。
買い手との条件交渉が固まる前に、株式譲渡価格、取得費、譲渡費用、役員退職金、相続関係、株主構成を整理し、税引後にいくら残るのかを試算しておくことが重要です。
2025年分から、極めて高い水準の所得がある個人には、通常の所得税に加えて追加的な負担を求める制度が始まっています。株式等の譲渡所得も、この制度の判定に影響する場合があります。
さらに2027年分以後は制度が強化され、追加負担の計算に使う特別控除額が3億3,000万円から1億6,500万円へ引き下げられ、計算に使う税率も22.5%から30%へ引き上げられる予定です。
そのため、非常に高額な株式譲渡益が生じる会社売却では、単純に譲渡益へ20.315%を掛けるだけでは最終的な税額を把握できないことがあります。
税額計算で意外と手が止まりやすいのが、税率ではなく取得費の確認です。
会社設立時の払込資料、増資の記録、株主名簿、相続や贈与時の資料、過去の株式売買契約書などを確認します。譲渡費用となる可能性がある支出についても、契約内容と請求書を保存しておきます。
資料がないまま売却直前を迎えると、税引後手取りを正確に見積もれません。こういうケースは珍しくありません。
また、非上場株式には、税務上の時価とM&Aで買い手と合意する価格という異なる視点があります。特に親族や関係会社が関わる取引では、価格の根拠を説明できるようにしておくことが大切です。
税金が少なく見える方法でも、買い手が受け入れにくい、会社の資金繰りが悪化する、他の株主と調整できないといった問題が起こることがあります。
株式譲渡では、税金だけでなく、契約条件、資金の流れ、役員退職金、経営者の退任時期まで一緒に考える必要があります。
会社売却を検討するときは、少なくとも「譲渡価格」「税金」「諸費用」「最終的な手取り」の4つを並べて確認すると、買い手との条件交渉や売却判断がしやすくなります。
株式譲渡の税金は、個人株主なら譲渡益に原則20.315%ですが、取得費、上場・非上場の区分、損益通算、相続、役員退職金、高額所得者への追加課税などで実際の手取りは変わります。会社売却では契約後に税額を確認するのではなく、条件を固める前に取得費の資料と株主構成を整理し、税引後の手取りまで試算したうえで判断することが重要です。
著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事
編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人