親族内承継のメリットとデメリット事業承継手順を徹底解説


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親族内承継のメリットとデメリット 事業承継手順を徹底解説

親族内承継の意味、メリット・デメリット、自社株の移し方、税金・相続・個人保証の注意点を中小企業オーナー向けに解説します。後継者がいる場合もいない場合も、M&A(合併・買収)を含めて会社を残す実務ポイントを整理します。

目次

  1. 家族へ会社を託す親族内承継の基本
  2. 引き継ぐ対象は株式だけではない
  3. 親族内承継で先に確かめる判断軸
  4. 自社株を移す3つの選択肢
  5. 親族内承継を進める実務手順
  6. 税金・相続・保証でつまずく場面
  7. 親族内に固執しない代替策
  8. まとめ

親族内承継のメリットとデメリット事業承継手順を徹底解説

家族へ会社を託す親族内承継の基本

親族内承継とは、経営者の子ども、配偶者、孫、兄弟姉妹、娘婿などの親族に会社の経営を引き継ぐ事業承継の方法です。中小企業では昔から身近な選択肢でした。

ただし、今は「子どもが継ぐのが当然」とは言い切れません。少子化、都市部への就職、価値観の変化、個人保証への不安などにより、親族内承継は以前より難しくなっています。2024年の調査でも、同族承継の割合は約3割となり、内部昇格やM&Aなど親族外の承継が増えています。

親族内承継で引き継ぐ相手

親族内承継の後継者は、長男や長女に限られません。次男、娘、配偶者、孫、兄弟姉妹、甥や姪、養子が候補になることもあります。大切なのは血縁の近さではなく、会社を引き受ける意思と、経営者として育つ見込みがあるかです。

「親族だから分かってくれるだろう」と考えると、後で行き違いが起きます。会社を継ぐことは、役職を受け取るだけではありません。従業員の生活、借入金、取引先との関係、株式の税金まで背負うことになります。

親族内承継が合う会社

親族内承継が合いやすいのは、後継者候補が事業に関心を持ち、社内外から一定の理解を得られる会社です。地域密着の会社、創業家への信頼が強い会社、長期の取引先が多い会社では、親族への承継が自然に受け入れられやすいことがあります。

一方で、事業の先行きが厳しい、借入金が重い、親族間の関係が悪い、後継者が遠方で別の仕事をしている場合は、早めに別の承継方法も比べるべきです。ここで判断が遅れると、承継準備そのものが止まります。

引き継ぐ対象は株式だけではない

親族内承継で失敗しやすいのは、「株式を渡せば完了」と考えてしまうことです。実務では、経営権、財産、知的資産、保証、家族関係を同時に整理する必要があります。

経営権を渡す

経営権とは、会社の重要な意思決定を行う力です。代表取締役の交代だけでなく、議決権のある自社株を誰が持つかも関係します。中小企業では、代表者と株主が一致していることが多いため、役職だけ交代しても株式が分散していれば、後継者が思うように経営できないことがあります。

自社株と事業用資産を渡す

自社株、不動産、機械設備、車両、許認可に関わる資産なども確認します。特に非上場会社の自社株は、現金のように分けにくく、評価額も分かりにくい資産です。業績が良い会社ほど株価が高くなり、贈与税や相続税の負担が問題になります。

信用やノウハウを渡す

経営理念、取引先との信頼、職人の技術、営業の勘どころ、金融機関との関係も重要です。これらは契約書だけでは引き継げません。後継者が現経営者に同行し、取引先との会話や従業員への接し方を見て学ぶ期間が必要です。

個人保証と金融機関対応も含める

中小企業では、現経営者が会社の借入金の個人保証人になっていることが少なくありません。後継者に株式を渡しても、金融機関が保証の交代や解除に応じなければ、現経営者の責任が残る場合があります。親族内承継では、この保証問題が家族の不安になりやすいです。

親族内承継で先に確かめる判断軸

親族内承継は、情だけで進めると危険です。家族の気持ちを尊重しながらも、会社を続けるための判断軸を先に置く必要があります。

後継者に継ぐ意思があるか

最初に確認すべきことは、後継者候補の意思です。経営者が「いずれ継いでくれるはず」と思っていても、本人は別の人生を考えていることがあります。こういうケースは珍しくありません。

意思確認では、会社の良い面だけでなく、借入金、休日の少なさ、従業員との関係、親族間の調整、将来の業界環境まで伝えます。配偶者がいる場合は、生活への影響も含めて理解を得ることが大切です。

経営者として育つ時間があるか

親族内承継では、後継者育成に5年から10年かかることがあります。営業、製造、経理、人事、資金繰り、金融機関対応などを段階的に経験しなければ、社長就任後に判断が止まりやすくなります。

社内だけで育てない

自社だけで育てると、現経営者の考え方をなぞるだけになることがあります。他社勤務、外部研修、業界団体での活動、金融機関との面談同席などを通じて、後継者が外の視点を持つことも重要です。

親族間で公平感を保てるか

後継者に自社株を集中させると、他の相続人から不公平に見えることがあります。会社を継がない子どもにとって、自社株は売りにくく、価値も分かりにくい資産です。遺産の多くが自社株である場合は、遺留分への配慮が欠かせません。遺留分とは、一定の相続人に法律上認められる最低限の取り分です。

従業員・取引先・金融機関に説明できるか

親族が後継者になると、従業員や取引先から心情的な理解を得やすい面があります。会社の文化や創業家への信頼が残りやすいからです。

ただし、能力や実績が見えないまま社長になると、古参社員の反発や取引先の不安につながります。後継者を早めに社内外へ紹介し、小さな責任から任せることが必要です。

自社株を移す3つの選択肢

親族内承継では、自社株をどのように後継者へ移すかが大きな論点です。主な方法は、生前贈与、相続、株式譲渡の3つです。どれが良いかは、株価、後継者の資金力、他の相続人との関係、税負担で変わります。

生前贈与で早めに経営権を移す

生前贈与は、経営者が生きている間に後継者へ自社株を無償で渡す方法です。早い段階で議決権を移せるため、後継者育成と経営権の移行を並行できます。

一方で、自社株の評価額が高いと贈与税が重くなります。暦年贈与や相続時精算課税を使う選択肢もありますが、相続時精算課税は一度選ぶと原則として暦年課税へ戻れないため、慎重な検討が必要です。2024年以降は相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除がありますが、自社株の評価や相続全体への影響を見ずに選ぶのは危険です。

相続で株式を引き継ぐ

相続は、経営者の死亡により自社株が相続人へ移る方法です。後継者が株式を買い取る資金を準備しなくてもよい点はメリットです。

しかし、遺言がないと遺産分割協議が必要になり、自社株が複数の相続人に分散するおそれがあります。株式が分散すると、後継者が経営判断をしにくくなります。自社株を後継者に集中させたい場合は、公正証書遺言などを使い、他の相続人への代償金や別資産の配分も検討します。

株式譲渡で権利関係を明確にする

株式譲渡は、後継者が現経営者から自社株を買い取る方法です。売買なので、後継者が対価を支払う分、他の相続人から見て公平感を説明しやすい面があります。

ただし、後継者にはまとまった資金が必要です。価格が低すぎると、実質的な贈与と見られる可能性があります。現経営者には譲渡益に対する税金が発生するため、売却代金の使い道、納税資金、老後資金まで含めて考えます。

事業承継信託や種類株式を使う場合

家族関係や株式の分散状況によっては、事業承継信託や種類株式を検討することがあります。事業承継信託とは、株式などを信託の仕組みで管理し、将来の承継先や権利の扱いを設計する方法です。種類株式とは、議決権や配当などの内容が普通株式と異なる株式です。

便利に見える反面、設計を誤ると税務や会社法の問題が起きます。制度ありきで選ばず、家族構成と経営権の安定を見ながら判断します。

親族内承継を進める実務手順

親族内承継は、思い立った時点で一気に進めるものではありません。会社、株式、家族、金融機関の順に論点を見える化し、計画に落とし込むことが大切です。

会社と株式の現状を見える化する

最初に、決算書、借入金、役員借入金、遊休資産、株主名簿、株式の評価額を確認します。自社株の評価額は、税金だけでなく、誰にどれだけ株式を持たせるかの判断にも影響します。

将来の株価も見る

今の株価だけで判断すると、数年後に税負担が大きく変わることがあります。業績が伸びている会社では、後継者へ株式を移す時期が遅れるほど評価額が上がる可能性があります。逆に、業績改善前に承継すると、後継者の負担を抑えられることもあります。

後継者候補と家族会議を行う

会社を継ぐ本人だけでなく、配偶者、兄弟姉妹、他の相続人にも早めに方向性を共有します。全員に同じ説明をする必要はありませんが、「知らないうちに決まっていた」と感じさせない工夫が必要です。

伝えるべき内容

伝える内容は、誰を後継者候補にするか、株式をどう移すか、他の相続人にはどの財産を残すか、現経営者の引退後の役割をどうするかです。感情的な対立を避けるため、金額や割合の話は専門家を交えて整理すると進めやすくなります。

事業承継計画を作る

事業承継計画には、後継者育成の期間、代表交代の時期、自社株の移転方法、税金対策、個人保証の扱い、現経営者の退任後の立場を盛り込みます。紙にするだけでも、家族と従業員への説明がしやすくなります。

社内外へ段階的に引き継ぐ

後継者が正式に社長になる前から、重要な取引先への同行、金融機関との面談、幹部会議の主導などを任せます。いきなり全権を渡すのではなく、周囲が「次はこの人だ」と納得する時間を作ります。

公的機関と専門家を使う

事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的窓口は、初期相談の入口になります。そのうえで、自社株評価、贈与税・相続税、遺言、株式譲渡、個人保証、M&Aの比較は、税理士、公認会計士、弁護士、金融機関などと連携して進めます。

税金・相続・保証でつまずく場面

親族内承継の実務では、後継者が決まった後に問題が表面化することがあります。特に多いのは、税金、遺留分、個人保証です。

自社株評価が高く税金が払えない

業績が良い会社ほど、自社株の評価額が高くなりやすいです。後継者が現金を持っていない場合、贈与税や相続税の納税資金をどう準備するかが課題になります。納税資金を確保できなければ、会社に必要な資金を外へ出すことになりかねません。

事業承継税制を使う場合

事業承継税制は、一定の要件を満たす非上場株式について、贈与税や相続税の納税を猶予し、一定の場合に免除する制度です。一般措置では贈与税の100%、相続税の80%が猶予対象となり、特例措置では贈与税・相続税ともに100%が猶予対象となります。

ただし、特例措置を受けるには、特例承継計画の提出や都道府県知事の認定などが必要です。2026年6月時点では、特例承継計画の提出期限は2027年9月30日、特例措置の対象期間は2027年12月31日までとされています。期限や要件は必ず最新情報で確認してください。

猶予は免除と同じではない

納税猶予は、税金が最初から消える制度ではありません。後継者が代表を退く、株式を手放す、会社を解散するなど、取消事由に該当すると猶予税額と利子税の納付が必要になる場合があります。制度を使うなら、承継後の経営計画まで含めて判断します。

遺留分をめぐって家族が対立する

自社株を後継者に集中させると、他の相続人の取り分が少なく見えることがあります。特に、自宅や預金より自社株の割合が大きい場合は注意が必要です。

対策としては、公正証書遺言、生命保険の活用、代償金の準備、種類株式、民法上の遺留分に関する特例の検討などがあります。ただし、制度を並べるだけでは解決しません。家族が納得できる説明が必要です。

個人保証の交代が進まない

後継者が会社を継ぐ意思を持っていても、個人保証を引き受けることに不安を感じることがあります。配偶者が反対する理由も、多くはここにあります。

金融機関には、後継者の経営能力、財務改善計画、会社の返済力を示す必要があります。保証解除や保証の見直しを希望する場合は、承継直前ではなく、数年前から金融機関と話し合うべきです。

前経営者が退けず後継者が育たない

親族内承継では、現経営者が会長や相談役として残ることがあります。これは悪いことではありません。ただ、いつまでも実権を持ち続けると、後継者が従業員や取引先から社長として見られません。

役割を先に決める

現経営者は、大口取引先の紹介、金融機関との橋渡し、創業理念の共有などに役割を絞ります。日々の採用、価格交渉、投資判断などは、一定時期から後継者に任せる線引きが必要です。

親族内に固執しない代替策

親族内承継は有力な選択肢ですが、唯一の正解ではありません。後継者の意思が弱い、株式や保証の負担が大きい、家族内の対立が深い場合は、他の選択肢を同時に考えます。

従業員承継を比べる

社内に信頼できる役員や幹部社員がいる場合、従業員承継も選択肢になります。事業内容をよく理解しているため、従業員や取引先の安心感を得やすい点があります。

一方で、株式を買い取る資金や個人保証の問題は残ります。親族内承継と同じく、自社株の評価、金融機関対応、現経営者の退任後の関与を整理する必要があります。

M&Aによる第三者承継を比べる

親族にも社内にも後継者がいない場合、M&A(合併・買収)による第三者承継を検討します。会社を廃業せず、従業員の雇用や取引先との関係を残せる可能性があります。

M&Aでは、経営者が保有する株式を買い手企業へ譲渡する株式譲渡がよく使われます。譲渡価格、従業員の処遇、取引先への説明、個人保証の解除、税引後の手取り額を確認しながら進めます。

親族内承継とM&Aを同時に検討する意味

後継者候補がいる場合でも、M&Aの可能性を知っておくことは無駄ではありません。親族内承継の税負担や保証問題が大きい場合、第三者への承継の方が会社にとって安定することもあります。逆に、M&Aの条件を知ることで、親族内承継を選ぶ覚悟が固まることもあります。

廃業を最後の選択肢にしない

後継者が決まらないまま時間が過ぎると、廃業が現実味を帯びます。黒字でも、代表者の病気や高齢化をきっかけに事業継続が難しくなることがあります。もったいない話です。

親族内承継、従業員承継、M&A、廃業を同じ土俵で比べると、今やるべきことが見えます。大切なのは、親族に継がせるかどうかではなく、会社の価値を誰にどの形で残すかです。

まとめ

親族内承継は、家族に会社を残せる有力な方法ですが、後継者の覚悟、自社株の評価、税金、遺留分、個人保証を同時に整理しなければ進みません。準備には5年から10年かかることもあります。親族内で無理がある場合は、従業員承継やM&Aも比較し、会社と関係者にとって現実的な出口を早めに選ぶことが大切です。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人

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