ホールディングス化で進める持株会社事業承継徹底解説ガイド


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持株会社とは?承継で使う判断軸と税務注意点

持株会社の基本、純粋持株会社・事業持株会社・金融持株会社の違い、事業承継で使うメリットと税務リスク、株式移転・会社分割・株式交換の選び方を解説します。後継者への株式承継や会社売却前の整理を検討する経営者が、M&Aを含めた出口戦略を考える際の判断材料になります。

目次

  1. 持株会社を承継で使う前に押さえる基本
  2. ホールディングス化が向く会社と向かない会社
  3. 株式承継で期待できる効果と限界
  4. 設立スキーム別に見る実務上の選び方
  5. 導入後に増える税務・資金・管理の負担
  6. M&Aや第三者承継へつなげる検討順序
  7. まとめ
ホールディングス化で進める持株会社事業承継徹底解説ガイド

持株会社を承継で使う前に押さえる基本

持株会社は、大企業だけの仕組みと思われがちです。しかし、後継者に株式を引き継ぐ場面や、複数の会社をまとめて承継する場面では、中小企業でも検討する価値があります。

持株会社(ホールディングス)とは、他の会社の株式を保有し、その会社を支配または経営管理することを主な目的とする会社です。グループ全体の方針を決める会社を上に置き、その下に事業会社を並べる形をイメージすると分かりやすいです。

日本では、1997年の独占禁止法改正により、純粋持株会社の設立が解禁されました。現在では、上場企業のグループ経営だけでなく、同族会社の事業承継、会社売却前の資本整理、M&A(合併・買収)後のグループ管理にも使われています。

純粋持株会社と事業持株会社の違い

純粋持株会社は、自らは製造、販売、サービス提供などの本業を行わず、子会社の株式保有と経営管理に特化する会社です。主な収入は、子会社から受け取る配当や経営指導料です。

事業持株会社は、子会社の株式を持ちながら、自社でも事業を続ける会社です。もともとの本業を残しつつ、新規事業や不動産管理会社を子会社化する場合などに見られます。中小企業では、いきなり純粋持株会社にするより、事業持株会社として段階的に整理する方が現実的なケースもあります。

金融持株会社は業種規制が強い特殊な形

金融持株会社は、銀行、証券会社、保険会社などの金融機関を傘下に置く会社です。金融グループ全体のリスク管理やサービス連携を担います。一般の中小企業の事業承継で直接使う場面は多くありませんが、持株会社には業種によって追加の規制がある、という点は押さえておきたいところです。

ホールディングス化が向く会社と向かない会社

「節税になるらしい」という理由だけで持株会社を作ると、かえって管理が重くなります。大切なのは、会社の将来像から逆算することです。

向いている会社は株式や事業が複雑な会社

持株会社が向きやすいのは、複数の事業や会社を持っている場合です。たとえば、本業会社のほかに不動産管理会社、販売会社、製造会社があるケースでは、株式を持株会社に集めることで、グループ全体の意思決定を整理しやすくなります。

後継者候補が複数いる会社にも向きます。長男に製造部門、次男に不動産管理部門を任せるなど、子会社単位で役割を分けられるためです。もちろん、株式の議決権をどう持たせるかを誤ると、将来の兄弟間トラブルにつながります。ここは感情論ではなく、定款、株主間の合意、相続対策を合わせて考える必要があります。

向かない会社は目的が節税だけの会社

事業が1つだけで、株主も少なく、後継者も明確な会社では、持株会社化の効果が小さいことがあります。法人が増えれば、決算、申告、社会保険、登記、取締役会や株主総会の運営も増えます。節税効果より管理コストが上回ると本末転倒です。

また、金融機関の借入が多い会社では注意が必要です。組織再編や株式譲渡により、借入契約の変更、担保、個人保証、財務制限条項の確認が必要になることがあります。メインバンクへの説明を後回しにして、承継計画が止まるケースは珍しくありません。

株式承継で期待できる効果と限界

事業承継で持株会社を使う一番の狙いは、株式の承継を整理することです。ただし、税金が必ず下がる仕組みではありません。

株式をまとめると承継の対象が分かりやすくなる

複数の事業会社の株式を経営者個人が直接持っていると、相続や贈与のたびに、それぞれの会社の株式を移す必要があります。持株会社が各社の株式を保有していれば、後継者に引き継ぐ中心は持株会社の株式になります。承継の対象が一つにまとまり、議決権の管理もしやすくなります。

これは、従業員や取引先への説明にも役立ちます。「どの会社を誰が継ぐのか」があいまいなままでは、現場が不安になります。持株会社を軸にグループの指揮命令系統を見せられれば、承継後の経営体制を伝えやすくなります。

後継者の育成に使える

子会社が複数ある場合、後継者候補を子会社の代表者に就け、経営判断を経験させることができます。売上、採用、投資、資金繰りを任せると、机上の勉強では見えない課題が出てきます。

短い期間では分かりません。3年から5年ほど任せると、数字への向き合い方、幹部との関係、取引先への対応が見えてきます。後継者を決める前の見極めとしても、持株会社体制は使いやすい仕組みです。

株価評価を下げられるとは限らない

非上場株式は、相続税や贈与税の場面では、会社規模、総資産、従業員数、取引金額、配当、利益、純資産などをもとに評価します。持株会社化により、類似業種比準方式を使いやすくなる場合や、純資産価額の影響を調整できる場合はあります。

ただし、持株会社は子会社株式を多く持つため、税務上の「株式等保有特定会社」に該当しやすい構造です。これに該当すると、原則として純資産価額方式による評価が中心になり、想定より株価が高くなることがあります。意外と多い落とし穴です。

相続対策は納税資金まで見る

先代経営者が事業会社株式を持株会社へ売却すれば、株式は現金に変わります。これにより、相続税の納税資金を確保しやすくなる場合があります。一方で、その現金を使わずに残したまま相続が発生すれば、今度は現金が相続財産になります。株式を移せば終わりではありません。

設立スキーム別に見る実務上の選び方

持株会社化の方法は一つではありません。株式移転、会社分割、株式交換、株式譲渡のどれを選ぶかで、税務、法務、資金負担が大きく変わります。

株式移転は新しい親会社を作る方法

株式移転は、既存会社の上に新しい持株会社を作り、既存会社をその100%子会社にする方法です。既存会社の事業や許認可をそのまま残しやすいため、事業運営への影響を抑えたい場合に検討されます。複数の会社を同時に新設持株会社の下へ置くこともできます。

一方で、株式移転には会社法上の手続が必要です。株主総会決議、反対株主への対応、登記、税務上の適格要件の確認などを進めます。税制適格になるかどうかで、課税のタイミングが変わるため、実行前の試算が欠かせません。

会社分割は事業を子会社へ移す方法

会社分割は、会社の事業、資産、負債、契約などを別会社へ承継させる方法です。既存会社を持株会社として残し、本業を新設子会社へ移す形は「抜け殻方式」と呼ばれることがあります。

この方法は、本業と不動産、管理部門、投資資産を分けたい場合に使いやすいです。ただし、許認可、雇用契約、取引先との契約、債権者保護手続の確認が必要になります。契約書に「会社分割時は相手方の承諾が必要」といった条項があることもあります。

株式交換は既存会社同士で親子関係を作る方法

株式交換は、すでに存在する会社の一方が、もう一方の会社の発行済株式を取得し、完全親子会社関係を作る方法です。新しい会社を作る株式移転とは違い、既存会社を親会社にできます。

グループ内にすでに資産管理会社や親族会社がある場合、その会社を親会社にして事業会社をぶら下げる設計が考えられます。ただし、少数株主がいる場合、評価額や手続への不満が出やすいため、株価算定と説明資料が重要です。

株式譲渡は分かりやすいが資金と税金が重い

後継者が持株会社を設立し、その持株会社が金融機関から融資を受けて、先代経営者の株式を買い取る方法もあります。仕組みは分かりやすいです。先代経営者は株式を売って現金を受け取り、後継者は持株会社を通じて事業会社を支配します。

注意点は、先代経営者に譲渡益が出ると、原則として所得税と住民税がかかることです。復興特別所得税を含めると、株式等の譲渡益に対する税負担は一般に約20.315%となります。さらに、持株会社側には借入返済が残ります。

非上場会社では譲渡承認も確認する

中小企業の多くは、定款で株式の譲渡制限を設けています。この場合、株式を持株会社へ移すには、会社の承認が必要です。取締役会設置会社であれば取締役会、そうでなければ株主総会で承認するのが基本です。承認手続を軽く見ると、後日、株式移転の有効性をめぐる争いになることがあります。

導入後に増える税務・資金・管理の負担

持株会社は作った後の運営が本番です。設立だけを目的にすると、数年後に「何のために作ったのか分からない会社」になりかねません。

子会社配当だけで借入を返せるか

株式買取方式では、持株会社が借入をして株式を買うことがあります。その返済原資は、主に子会社からの配当です。子会社の業績が下がれば、配当を出せず、持株会社の返済が苦しくなります。

配当には会社法上の分配可能額の制限があります。利益が出ていても、必ず自由に配当できるわけではありません。借入返済計画は、楽観的な利益計画ではなく、売上が落ちた場合のシナリオも置いて作る必要があります。

管理コストは会社数に比例して増える

法人が増えると、決算書、法人税申告、消費税申告、地方税、年末調整、社会保険、登記、役員変更などの作業も増えます。経理担当者が1人しかいない会社では、ここで負担が一気に重くなります。

ホールディングス化で経営が整理される一方、子会社ごとの損益管理や資金移動のルールを作らなければ、かえって見えにくくなります。グループ内取引の価格設定も重要です。実態に合わない経営指導料や賃料を設定すると、税務上の説明が難しくなることがあります。

グループ内連携が弱くなることもある

事業ごとに会社を分けると、責任範囲は明確になります。しかし、子会社が独立しすぎると、情報共有が減り、全体最適より自社最適を優先しやすくなります。営業情報、採用、資金繰り、設備投資の判断が縦割りになると、グループ全体の力は落ちます。

持株会社は、子会社を支配するだけの箱ではありません。経営会議、月次報告、予算管理、人事方針、資金管理のルールを整え、グループ全体の方向性を示す必要があります。

M&Aや第三者承継へつなげる検討順序

後継者がいる会社でも、第三者承継を選ぶ可能性はあります。逆に、会社売却を考えている会社でも、売却前に持株会社化しておく方がよい場面があります。

売却対象を整理すると買い手が判断しやすい

買い手企業が見ているのは、将来も利益を生む事業です。本業に関係のない不動産、有価証券、休眠会社、親族向けの貸付金などが混ざっていると、譲渡価格の交渉が複雑になります。

持株会社や資産管理会社を使って、本業と非事業資産を分けておくと、買い手は事業価値を判断しやすくなります。経営者にとっても、何を売り、何を残すのかを整理できます。M&A実務では、ここで判断が止まることがあります。

承継と売却のどちらにも進める形を作る

持株会社化の目的を、親族内承継だけに絞りすぎる必要はありません。後継者が育てば持株会社株式を承継し、後継者が難しければ子会社株式や事業の一部を第三者へ譲渡する、という設計も考えられます。

重要なのは、最初から出口を複数持つことです。親族内承継、従業員承継、第三者承継、部分売却、資産保有会社の維持。これらを並べ、税負担、手取り額、従業員、金融機関、個人保証への影響を比較します。

実行前に確認したい5つの視点

持株会社化を検討するときは、少なくとも5つを確認します。1つ目は、何のために持株会社を作るのかです。2つ目は、株価評価と税負担がどう変わるかです。3つ目は、金融機関の理解を得られるかです。4つ目は、後継者が実際に経営できるかです。5つ目は、将来のM&Aで不利にならないかです。

この5つを試算せずに進めると、承継対策のつもりが、かえって売却しにくい資本構成になることがあります。会社の出口戦略として考えることが大切です。

まとめ

持株会社は、株式承継、後継者育成、グループ管理、M&A前の整理に役立つ一方、税務判定、借入返済、管理コストの負担も伴います。目的を節税だけに置かず、承継後の経営体制、株主構成、金融機関対応、将来の売却可能性まで見て設計することが大切です。早めに論点を洗い出すほど、親族内承継と第三者承継の選択肢を残しやすくなります。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人


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