株式譲渡 書類作成ガイド:必要書類と注意点を解説

株式譲渡に必要な書類と作成時の注意点を詳しく解説します。契約書、承認請求書、株主名簿など主要書類の役割や内容、税金や収入印紙の取り扱いなど、円滑な手続のために押さえるべきポイントをご紹介します。

目次

  1. 株式譲渡の基本的な概要
  2. 株式譲渡に必要な主要書類
  3. 株式譲渡における書類作成の注意事項
  4. まとめ

株式譲渡の基本的な概要

株式譲渡とは、企業の株式を現在の所有者(売り手)から新たな所有者(買い手)へ移転させる取引のことを指します。この手法は、他のM&A(合併・買収)の手法と比較して、手続が比較的シンプルであることが特徴です。

株式譲渡の手順

株式譲渡の一般的な手順は以下の通りです。

1. 株式譲渡制限の確認

2. 株式譲渡承認請求の実施

3. 取締役会または株主総会の開催

4. 株式譲渡契約の締結

5. 株主名簿書換の依頼

6. 決済手続の実行

これらの各ステップにおいて、適切な書類の準備と手続の実施が重要となります。特に、株主の権利を保護し、将来的なトラブルを防ぐためには、正確な書類作成と手続の遵守が不可欠です。

▶目次ページ:株式譲渡(株式譲渡の流れ)

株式譲渡に必要な主要書類

株式譲渡を円滑に進めるためには、以下の主要書類を適切に準備し、管理する必要があります。各書類の役割と重要性について説明します。

株式譲渡契約書の重要性と内容

株式譲渡契約書は、売り手と買い手の間で交わされる重要な法的文書です。この契約書には以下の内容を詳細に記載する必要があります。

1. 合意内容:譲渡対象となる株式の種類、株数、対価などを明記します。

2. 株式譲渡の対価と支払方法:1株あたりの価格、総額、支払期日、振込先口座情報などを記載します。

3. 株主名簿の書換請求:名義書換に関する手続について明記します。

4. 株式譲渡の表明保証:売り手が提供した情報の正確性を保証する内容を含めます。

5. 契約解除条項:どのような場合に契約を解除できるかを明確にします。

無償取引の場合でも、後々のトラブルを防ぐために、株式譲渡契約書を作成することが重要です。

株式譲渡承認請求書の役割

株式譲渡承認請求書は、譲渡制限のある株式を譲渡する際に、売り手が会社に提出する書類です。この書類には以下の内容を記載します。

1. 株式譲渡の承認を求める旨

2. 承認されない場合の譲渡先指定の依頼

株主名簿の管理と更新

株主名簿は、株主の氏名、住所、保有株式の種類、株数などを記載した重要な書類です。株式譲渡が行われた場合、この株主名簿を適切に更新する必要があります。適切な管理を怠ると、罰金が科される可能性もあるため、注意が必要です。

株主名簿記載事項書換請求書の提出

株主名簿記載事項書換請求書は、売り手と買い手が共同で会社に提出し、株主名簿の更新を依頼する書類です。一般的に以下の情報を記載します。

株主の住所と氏名

譲渡株式の種類と株数

株主総会招集通知の発送

株主総会招集通知は、株主総会を開催する際に株主に送付する書類です。取締役会を設置していない会社で株式譲渡承認請求書が提出された場合、株主総会の開催が必要となります。

株主総会議事録の作成と保管

株主総会議事録は、株主総会の内容を記録する法定書類です。以下の情報を記載します。

開催日時

参加者

議題

決議事項

会社法により、株主総会議事録の作成は義務付けられています。

株主名簿記載事項証明書の発行

株主名簿記載事項証明書は、株主であることを証明する書類です。新たに株主となった場合、会社は以下の情報を記載した証明書を発行します。

株主の氏名と住所

保有株式数と種類

株式譲渡における書類作成の注意事項

株式譲渡に関する書類を作成する際は、以下の点に注意が必要です。

株券発行会社の確認方法

株式譲渡の手続を進める前に、自社が株券発行会社であるかどうかを確認することが重要です。株券発行会社の場合、株式譲渡時に株券の交付が必須となります。一方、株券不発行会社であれば、株券の交付なしで株式譲渡が成立します。

株券発行会社であるかどうかは、登記簿謄本で確認することができます。

株式譲渡に伴う税金の取り扱い

株式譲渡で生じる利益は課税対象となります。課税の種類は売り手の属性によって異なります。

個人の場合:所得税と住民税が課税されます。

法人の場合:法人税が課税されます。

税金の計算と納付について、事前に十分な確認を行うことが重要です。

収入印紙の必要性と貼付方法

株式譲渡契約書に関する収入印紙の取り扱いについて、以下の点に注意が必要です。

1. 原則として、株式譲渡契約書には収入印紙の貼付は不要です。

2. ただし、すでに対価を受け取り、その旨を契約書に記載している場合は、課税文書となるため収入印紙が必要で
        す。

3. 課税文書となる場合、譲渡金額に応じた金額の収入印紙を貼付する必要があります。

まとめ

株式譲渡を円滑に進めるためには、適切な書類の準備と手続の遵守が不可欠です。主要な書類として、株式譲渡契約書、株式譲渡承認請求書、株主名簿などがあり、これらを正確に作成・管理することが重要です。また、株券発行会社の確認、税金の取り扱い、収入印紙の必要性など、書類作成時の注意点にも留意が必要です。適切な準備と手続により、スムーズな株式譲渡が実現できます。

著者|竹川 満 マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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