事業承継と株式譲渡を徹底解説!贈与・相続の基礎知識と注意点

事業承継と株式譲渡について、株式を後継者に譲り渡す方法や税金、流れ、注意点を小学生でも分かるように解説します。本記事では、親族内承継・社内承継・第三者承継などの特徴を交え、実際に活用される手続やメリット・デメリットも詳しく紹介します。

目次

  1. 事業承継と株式譲渡の基本
  2. 事業承継の主な種類
  3. なぜ自社株が重要なのか
  4. 自社株を承継する方法(生前贈与・相続・株式譲渡)
  5. 株式譲渡と税金のポイント
  6. 株式譲渡の流れと手続
  7. 普通決議・特別決議の考え方
  8. 株式譲渡における注意点
  9. まとめ

事業承継と株式譲渡の基本

事業承継とは、現経営者が培ってきた会社の経営権を次世代へ移すことです。特に中小企業では、現経営者が所有する株式(自社株)をどのように後継者へ引き継ぐかが大きな課題となります。会社の重要な意思決定を左右する「株主総会での議決権」は、株式の保有割合により変動するため、株式の承継が経営権の移転に直結するといっても過言ではありません。

一方で「株式譲渡」とは、株式を後継者に譲り渡す行為を指し、有償(売買)・無償(贈与など)を問いません。したがって、一般に「贈与」「相続」「売買」は、いずれも広義の株式譲渡に含まれます。事業承継における株式譲渡は会社全体を後継者へ引き継ぐ手法として広く利用されており、後継者の地位や経営権を安定させる重要なステップでもあります。

事業承継の主な種類

事業承継には、大きく分けて以下の4パターンが知られています。どの形を選ぶかによって、必要となる手続や注意点、税金などが異なってきます。

親族内承継

親族内承継とは、現経営者の子どもや配偶者など血縁関係のある人へ事業を引き継ぐ方法です。親族に対して早期に教育や経験を積ませることができるため、後継者としてのスキルを十分に育てやすい点がメリットです。

ただし、子どもが複数いる場合などは、株式の分配や経営の主導権をめぐってトラブルが生じる恐れがあります。また、必ずしも子どもが経営に向いているとは限らないため、後継者の資質を慎重に見極める必要があります。

社内承継

社内承継とは、社内の役員や従業員といった内部人材に経営を引き継ぐ形です。現場をよく知る人材が後継者となるため、事業内容を理解したうえでスムーズに実務を進められるという利点があります。

一方、従業員が自社株を取得する場合には、それなりの資金力が必要となります。また、個人保証を引き継ぐかどうかといった問題も生じるため、実際に株式をどのように譲渡するかは慎重に検討しなければなりません。

第三者承継(M&A)

第三者承継は、社外の個人や企業に事業を引き継ぐ方法です。いわゆるM&Aの一種とされることもあります。外部の企業や投資家とマッチングすることで、事業資金の確保や事業規模の拡大につながるケースもあります。

現経営者は譲渡した株式の対価を得られるため、老後資金や新たな事業活動の原資を確保しやすいメリットがあります。また、雇用を維持しながら会社を存続させられる点も、大きな利点です。ただし、経営方針が大きく変わる可能性があるため、会社の将来像をどう描いていくか後継者・譲受企業との意思疎通が重要になります。

株式公開(IPO)

上場によって株式を公開し、広く投資家に保有してもらう方法です。株式市場に上場すると知名度や信用度が高まるほか、優秀な人材を採用しやすいなどの恩恵が期待できます。ただし、一般的には上場後もオーナー家が大半の株式を保有する例が多いため、根本的な事業承継の問題(次世代への経営権移転)の解決に直結しない場合があります。

なぜ自社株が重要なのか

会社の最高意思決定機関である株主総会の決議権は、株式の保有割合に大きく左右されます。特に中小企業ではオーナー経営者が発行済株式の大半を保有し、重要事項を決める際の主導権を握っているケースが大半です。

後継者が安定して経営を行うためには、単独で普通決議や特別決議を通せるだけの株式シェアを取得することが理想的と考えられます。普通決議は出席株主の過半数の同意、特別決議は出席株主の3分の2以上の同意が必要となるため、後継者が十分な株式を持たないと意思決定が円滑に進まない可能性があります。


普通決議

議決権の過半数で決定(発行済株式総数の50%超を保有していれば単独可)。取締役の選任・解任や余剰金の配当などに関わる。


特別決議

出席株主の3分の2以上の賛成を必要とする(発行済株式総数の3分の2超を保有していれば単独可)。定款変更、合併、会社分割など重要事項を決定する。


こうした決議権の観点からも、後継者へ過半数~3分の2超の株式を譲渡するかどうかは、承継後の会社運営に大きく影響します。

自社株を承継する方法(生前贈与・相続・株式譲渡)

自社株を後継者へ引き継ぐ場合、大きく分けて「生前贈与」「相続」「株式売買」の三つの手法が存在します。いずれも最終的には株式が後継者へ移転しますが、それぞれ税金や手続の流れが異なるため、まずは特徴を押さえておきましょう。

生前贈与(親族内承継によく用いられる方法)

経営者が健在のうちに、後継者へ無償で株式を譲り渡す方法です。暦年贈与や相続時精算課税制度を使うことで、計画的に贈与税を抑えることも可能です。

一方で、株式の評価額が高額になると贈与税負担が大きくなるリスクもあり、また遺留分を主張される可能性がある点にも注意が必要です。

相続(親族内承継)

現経営者が亡くなった際に、遺言や遺産分割協議を通じて株式が承継される形です。相続税には大きな基礎控除があるため、贈与よりも税負担が軽くなるケースがあります。

ただし、相続タイミングが読めない点や、事前準備が不十分だと相続争いが発生しやすいリスクも懸念されます。さらに、他の相続人の遺留分への配慮が必要となる場合もあります。

株式売買(親族内・社内・第三者承継)

有償で株式を譲り渡す売買方式は、譲渡した側(現経営者)が適正価格で利益を得られるため、老後資金を確保しやすい点が魅力です。また、贈与や相続のように遺留分争いのリスクが起こりにくいのもメリットです。

一方で、後継者側に資金力が求められるほか、譲渡所得税(概ね20.315%)の負担が発生します。特に自社株の評価が高い場合、後継者が株式を買い取りきれず承継が進まないケースもあるため、早めに専門家に相談しながらスキームを検討する必要があります。

株式譲渡と税金のポイント

事業承継において株式を後継者に譲り渡す場合、最も気になるのは税金です。株式譲渡が有償か無償か、株式を譲り渡す当事者(個人か法人か)、そして譲り受ける側にとって贈与や相続が発生するかどうかで、課税の内容や税率が異なります。ここでは、譲渡側(現経営者)・後継者側それぞれに関わる税金の概要を整理してみましょう。

現オーナー(譲渡側)の税金

譲渡所得税

株式を有償で売却し、利益を得た場合、譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)が課されます。売却による譲渡所得が発生すると、その譲渡所得に対しておよそ20.315%の税率(所得税15.315%+住民税5%)がかかります。非上場株式の場合も同様に、譲渡益に対して課税される点は同じです。

譲渡益(譲渡所得)は、売却額から取得費用や譲渡に関わる手数料などを差し引いた残額になります。大きな利益が見込まれる場合は、適切な取得費用や諸経費を計上すること、さらに節税の制度などを検討することが重要です。


法人が株式を所有していた場合

譲渡する株式が法人名義であれば、その譲渡益に対して法人税が課税されます。なお、売却価額よりも株式の簿価のほうが高い場合は損失扱いとなり、法人税の算定においては別の処理が必要です。個人名義なのか法人名義なのかによって課税関係が異なるため、株式の名義や会計上の扱いを確認しながら進める必要があります。

後継者(譲り受け側)の税金

贈与税・相続税

株式を無償で譲り受けると贈与税が、経営者の死亡時に株式を承継すると相続税が課されます。相続税は基礎控除が大きい一方で、相続のタイミングが読みにくいため、突然多額の相続税が発生するケースがある点に注意が必要です。贈与の場合も、株価が高いと贈与税が多額になる場合がありますが、計画的に贈与することで課税額を抑える手段が検討可能です。


事業承継税制

生前贈与や相続で株式を承継する際、一定の要件を満たせば贈与税・相続税の納税猶予や免除が認められる事業承継税制があります。特に中小企業において、評価額の高い自社株を一度に引き継ぐと多額の税金が発生しやすいため、こうした優遇措置を上手に活用することで後継者の納税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

ただし、要件には企業規模、後継者の地位や資格、株式保有期間などが含まれます。猶予される税額を最終的に免除にするには、その後も継続して一定条件を満たし続けなければならず、手続も複雑です。具体的な活用を検討する際には、専門家に相談しながら計画を立てることが求められます。

株式譲渡の流れと手続

非上場会社の株式には「譲渡制限」が付与されているケースが多く、承継に際しては通常の売買・贈与・相続とは別に社内手続が必要になります。手続を怠ると、承継後の株主名簿書換などが遅れ、さまざまなリスクが生じるため注意が必要です。

1. 会社の定款や譲渡制限の確認

まず、自社の定款を確認します。多くの中小企業では、外部の第三者など「不特定の相手」に株式が渡ることを防ぐために、株式の譲渡に取締役会または株主総会による承認を必要とする「譲渡制限」を設けています。後継者が親族や従業員であっても、定款が譲渡制限を定めていれば、手続として承認を得る必要があります。

2. 譲渡承認請求(承認機関の決議)

株式を譲り渡す場合、まずは会社に対して「株式を誰に何株譲渡するか」を記載した譲渡承認請求を行います。会社に取締役会がある場合は取締役会決議、取締役会を設置していない会社の場合は株主総会での承認が必要となります。承認が下りれば、譲渡請求者へ承認結果が通知されます。

3. 譲渡契約書・贈与契約書の作成

譲渡の承認が得られたら、売買の場合は「株式譲渡契約書」を、無償であれば「贈与契約書」を作成します。ここで譲渡する株式数や譲渡価額、支払期日、支払方法などを明記し、譲渡側と譲受側の間で合意した事実を文書化します。

相続の場合は、通常の相続手続に沿って株式が移転しますが、遺言書の有無や遺産分割協議の内容などが影響するため、書類準備には十分注意が必要です。

4. 株主名簿の名義書換

会社の株主名簿上で株式を譲渡された人を正しく登録しないと、株主としての権利行使が認められない場合があります。二重譲渡などのトラブルを避けるためにも、譲渡の日付が決まったら速やかに株主名簿の書換を行います。

これらの手続が完了すると、後継者が正式な株主として経営権を有することになります。定款や会社法で定められた承認手続、名簿書換を怠ると承継後に権利が行使できず紛争を招く恐れがあるため、抜け漏れのないよう進めることが大切です。

普通決議・特別決議の考え方

事業承継において、自社株の大半を後継者に移転する理由としてよく挙げられるのが、会社の重要事項を後継者が単独で決められるようにすることです。株主総会決議には「普通決議」と「特別決議」があり、以下のように要件が異なります。


普通決議

議決権総数の過半数が出席し、出席株主の過半数の賛成で可決する決議。発行済株式の50%超を保有していれば、株主総会に自分(または支持者)が集まることで事実上の単独決議が可能になります。取締役の選任や解任、配当の決定など、会社運営において非常に重要な事柄を決められることから、親族内承継や社内承継でも少なくとも50%超の株式移転を目指すケースが多いです。

特別決議

議決権総数の過半数が出席し、出席株主の3分の2以上の賛成が必要となる決議。定款変更や会社の合併、分割、解散など、より根本的な事項を決定する際に行われます。発行済株式数の3分の2超を取得できれば、後継者単独で経営方針に大きな変更を加えることも可能になります。

ただし、3分の2超の株式を一挙に後継者へ移転するためには、多額の贈与税や譲渡所得税が課される可能性もあり、現経営者・後継者双方の負担が大きくなる点には十分配慮が必要です。特に複数の相続人がいる場合は調整が欠かせません。

株式譲渡における注意点

株式譲渡を行う際には、単純に「株式を移せばいい」というわけではありません。特に以下のような点に留意しないと、後継者の経営を円滑に進められず、かえってトラブルを引き起こす可能性があります。

株式価値評価の妥当性

有償譲渡(売買)の場合、株式の評価額が適正かどうかでトラブルが生じることがあります。時価より低い価格で譲渡すると、譲り受けた側に贈与税が課される可能性があり、逆に高すぎる価格で買い取ってしまえば後継者が大きな負担を背負うことになるため注意が必要です。

専門家による評価を依頼し、公正な株価算定を行うことが望ましいです。事前にデューデリジェンス(企業の詳細調査)を実施し、企業価値を総合的に確認するケースもあります。

資金調達の課題(後継者側)

株式を買い取るだけの資金を持たない従業員や親族が後継者となる場合、銀行やファンドから融資を受ける、あるいは役員報酬を増やすなどの方法で資金を用意しなければなりません。また、返済リスクを負うため、譲受後に経営成績が悪化すると個人的な負担に直結する可能性も否めません。

親族外承継で株式を譲渡しない場合

まれに、親族外の人物に社長を任せつつ、株式はオーナー一族が保有し続ける方法を取るケースがあります。これは経営権自体は新社長に与えるものの、会社としての意思決定はオーナー一族が握り続けたい場合などに用いられます。しかし、この方式だと実質的に最終決定権が旧オーナー側に残るため、新社長が思うように経営判断を下せず、トラブルに発展するリスクがあります。個人保証の問題も整理が難しいため、継続的に安定した経営を目指すのなら、株式の大半をしっかり譲渡するほうが望ましいでしょう。

専門家への早期相談

事業承継は法務や税務の専門知識が必要となります。どの方法で株式を譲渡するにしても、事前準備の期間を十分に取り、専門家へ早めに相談することが重要です。承継先が決まっていない場合は、後継者選定やM&Aの仲介などを専門とする機関・士業への依頼も視野に入れると良いでしょう。

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まとめ

事業承継で株式を後継者に譲り渡す際は、譲渡方法や税金、会社の譲渡制限などを踏まえ、慎重に進める必要があります。売買なら譲渡所得税、贈与・相続ならそれぞれの税金が発生し、株価評価や後継者の資金力がカギになります。専門家と連携しながら早めに着手すれば、円滑な承継を目指せるでしょう。

著者|竹川 満 マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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