譲渡制限株式とは?非公開会社の経営権安定の実務を解説

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譲渡制限株式とは?会社売却で確認する承認手続と注意点

譲渡制限株式とは、売買や贈与で株式を移す際に会社の承認を必要とする株式です。中小企業で多く採用される理由、非公開会社の機関設計、承認・不承認時の手続、買取価格、定款変更、M&A(合併・買収)による会社売却前の確認事項を解説し、譲渡制限付株式報酬との違いも整理します。

目次

  1. 中小企業で譲渡制限株式が多い理由
  2. 譲渡制限によって変わる会社運営
  3. 株式を譲渡するときの承認手続
  4. 不承認時の買取りと価格の決め方
  5. M&A・事業承継前に確認したい実務
  6. まとめ

譲渡制限株式とは?非公開会社の経営権安定の実務を解説

▶目次ページ:株式譲渡(株式譲渡の流れ)

中小企業で譲渡制限株式が多い理由

譲渡制限株式とは、売買や贈与などで株式を他人に移すとき、発行会社の承認を必要とする株式です。

株式は原則として株主が自由に譲渡できます。ただし、会社は定款に定めることで、譲受人が誰になるのかを確認し、譲渡を承認するかどうかを判断できる仕組みを設けられます。

中小企業や同族会社では、株主が経営にも直接関わることが珍しくありません。経営方針の異なる第三者が株主になると、株主総会での意思決定や役員の選任、配当方針などに影響が及ぶ可能性があります。

そこで、望まない第三者への株式流出を防ぎ、経営権を安定させるために譲渡制限が利用されています。

株式譲渡自由の原則に設けられた例外

会社法では、株主は保有する株式を譲渡できるのが原則です。株主にとって株式譲渡は、投資した資金を回収する重要な手段だからです。

一方、会社は、全部の株式または一定の種類の株式について、譲渡による取得に会社の承認が必要である旨を定款に定められます。これが株式譲渡自由の原則に対する例外です。

発行する全株式に譲渡制限が付いている会社は、会社法上の公開会社には該当しません。一般には、非公開会社や株式譲渡制限会社と呼ばれています。

上場しているかどうかだけで決まるものではありません。上場していない会社でも、譲渡制限のない株式を一部でも発行していれば、会社法上は公開会社になります。

全株式にも一部の種類だけにも設定できる

会社は、発行する全株式に共通して譲渡制限を設けることができます。また、種類株式発行会社では、特定の種類だけに譲渡制限を付け、別の種類には付けない設計も可能です。

たとえば、創業家が保有する株式には譲渡制限を付け、外部投資家向けの別種類株式には異なる条件を設ける方法があります。

一部の株式だけに制限を付ける場合は、種類ごとの議決権や配当条件、承認機関などを定款で整理しなければなりません。設計が複雑になると、将来の資金調達や会社売却で買い手が内容を理解するまでに時間がかかることもあります。

目的を明確にすることが大切です。

譲渡制限付株式報酬とは目的が異なる

名称が似ている制度に、譲渡制限付株式報酬があります。一般にRSと呼ばれ、役員や従業員に株式を報酬として交付し、一定期間の勤務などを条件に譲渡を制限する制度です。

譲渡制限付株式報酬の主な目的は、役員や従業員に中長期的な企業価値の向上を意識してもらうことです。

これに対し、会社法上の譲渡制限株式は、会社が株式の譲受人を確認し、望まない第三者への移転を防ぐことを主な目的としています。名称は似ていますが、制度の目的と使われ方が異なります。

譲渡制限によって変わる会社運営

譲渡制限は、単に株式を売りにくくする制度ではありません。

株主構成を管理しやすくなる一方、会社が譲渡を承認しない場合には、株式の買取りや資金負担が生じる可能性があります。メリットだけで判断しないことが重要です。

経営権と同族経営を守りやすい

譲渡制限を設ける大きなメリットは、会社が譲受人を確認できることです。

経営方針の合わない第三者、競合会社、関係が悪化した元役員などへの譲渡を承認しないことで、経営への予期しない介入を抑えられます。親族や信頼できる役員の間で株式を保有し、同族経営を維持したい会社にも向いています。

ただし、譲渡制限を設けただけで経営権が完全に守られるわけではありません。既存株主同士が対立した場合や、相続によって株式が分散した場合には、別の問題が生じます。

株主名簿を正しく管理し、誰がどれだけ議決権を持っているのかを把握しておくことも欠かせません。

役員任期を伸ばせる

発行する全株式に譲渡制限がある非公開会社では、定款により、取締役の任期を通常の2年から最長10年まで伸ばせます。監査役についても、通常は4年の任期を最長10年まで伸ばすことが可能です。

役員改選や変更登記の回数を減らせるため、株主と役員が固定されている中小企業では事務負担を抑えやすくなります。

一方、任期を長くすると、経営方針が変わった場合でも役員を交代させにくくなることがあります。任期を長くするかどうかは、会社の経営体制に合わせて判断する必要があります。

機関設計を簡素化しやすい

公開会社には、原則として取締役会の設置が求められます。一方、非公開会社では、取締役会を置かず、取締役1名から運営する機関設計も選べます。

取締役会や監査役を設置しない形にできれば、役員報酬や会議運営にかかる負担を抑えられます。

ただし、監査役が必要かどうかは、取締役会や会計参与などの設置状況によって変わります。「非公開会社であれば、必ず監査役が不要になる」というわけではありません。

譲渡を拒否すると買取資金が必要になる

会社が望まない譲受人への譲渡を拒否できることは、譲渡制限の重要な機能です。

しかし、株主が不承認時の買取りも請求している場合、会社は自ら買い取るか、別の指定買取人を定める必要があります。会社が買い取れば自己株式の取得となるため、会社法上の財源規制にも注意が必要です。

株主の資金回収の道を一方的に塞ぐことはできません。会社に買取資金がないまま不承認とすると、資金繰りや株主との関係が悪化するおそれがあります。

意外と多い落とし穴です。

株式を譲渡するときの承認手続

会社売却の準備が進んでから定款の譲渡制限に気付き、予定していた決済日を変更するケースがあります。

株式譲渡によるM&Aでは、株式譲渡契約を締結するだけでは足りません。会社法上必要となる承認を、決済日までに得られるかどうかを早めに確認します。

1.譲渡承認請求を会社へ提出する

譲渡を希望する株主は、会社に対して譲渡承認を請求します。

請求では、譲渡する株式の種類と数、譲受人の氏名または名称を明らかにします。不承認の場合に会社または指定買取人による買取りを求めるのであれば、その旨も請求内容に含めます。

実務では、株式譲渡承認請求書を作成し、提出日が分かる形で保管するのが一般的です。

複数の株主が買い手へ株式を譲渡する会社売却では、株主ごとに承認請求が必要かを確認します。1人でも手続が漏れると、買い手が予定していた株式数を取得できなくなることがあります。

2.取締役会または株主総会で判断する

譲渡を承認する機関は、取締役会設置会社では取締役会、それ以外の会社では株主総会が原則です。ただし、定款に別の定めがある場合は、その定めに従います。

取締役会では、原則として議決に参加できる取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数で決議します。

株主総会で承認する場合は、通常の普通決議によるのが一般的です。ただし、定款に異なる要件が設けられていることもあるため、事前に確認します。

決定内容は原則2週間以内に通知する

会社は、譲渡を承認するかどうかを決定し、原則として請求日から2週間以内に請求者へ通知します。

期間内に通知しなかった場合は、請求者との間で別の合意がある場合などを除き、譲渡を承認したものとみなされる可能性があります。

期限管理は重要です。いつ請求を受け、いつ決議し、いつ通知したのかを議事録や通知書で残しておきます。

3.承認後に契約と株主名簿の書換えを行う

譲渡が承認されたら、譲渡人と譲受人が株式譲渡契約を締結し、譲渡代金の支払などを行います。

株券発行会社では、原則として株券の交付も必要です。その後、株主名簿の名義書換えを請求し、会社が新しい株主を確認できる状態にします。

株主名簿の書換えが済んでいないと、譲受人は会社に対して株主としての権利を主張できないことがあります。契約や代金決済だけで手続を終わらせないことが大切です。

株式譲渡だけで、通常は商業登記簿に株主名を登記する手続は生じません。ただし、譲渡に伴って代表取締役などが交代する場合は、役員変更登記が必要になることがあります。

不承認時の買取りと価格の決め方

譲渡を不承認にすれば手続が終わる、という理解は危険です。

株主が会社または指定買取人による買取りを求めている場合、会社側は短い期限の中で、誰が買い取るのか、資金をどう準備するのか、価格をどう決めるのかを整理しなければなりません。

会社が買い取るか指定買取人を定める

会社が買い取る場合は、原則として株主総会で、会社が株式を買い取ることと対象株式数を決議します。そのうえで、不承認を通知した日から原則40日以内に、請求者へ必要な通知を行います。

別の株主や第三者を指定買取人とする場合は、原則として不承認を通知した日から10日以内に必要な通知を行います。

期限内に手続を行わないと、譲渡を承認したものとみなされる場合があります。会社または指定買取人には供託などの手続も生じるため、専門家へ確認しながら進める方が安全です。

価格は協議を基本に決める

売買価格は、株主と会社または指定買取人の協議で決めるのが基本です。

非上場株式には市場で確認できる価格がありません。会社の純資産、収益力、将来のキャッシュフロー、配当実績などを考慮して価格を検討します。

協議で合意できない場合は、所定の期間内に裁判所へ価格決定を申し立てることができます。申立てがなく協議も成立しなければ、法令に基づく供託額が売買価格となる場合があります。

M&Aで第三者が提示する譲渡価格と、会社法上の買取価格が同じになるとは限りません。M&A価格には、買い手との相乗効果や経営権を取得する価値が反映されることもあるためです。

買取資金と税負担を同時に確認する

会社が株式を買い取る場合は、買取代金を準備できるかだけでなく、自己株式取得に関する財源規制も確認します。

価格が著しく高い、または低い場合には、会社と株主の税務上の取扱いや、株主間の利益移転が問題になることもあります。株主が個人か法人か、会社との関係がどうなっているかによっても課税関係は変わります。

価格算定、資金調達、税引後の手取りを別々に考えないことが重要です。

M&A・事業承継前に確認したい実務

譲渡制限株式であっても、必要な承認を適切に得れば、株式譲渡による第三者承継は可能です。

むしろ、定款や株主名簿、過去の承認手続が整理されている会社は、買い手に管理体制の良さを示しやすくなります。

定款・登記事項・株主名簿を照合する

M&Aの初期段階では、定款、履歴事項全部証明書、株主名簿、過去の株主総会議事録や取締役会議事録を照合します。

定款上の承認機関と現在の機関設計が一致しているか、過去の株式移転について必要な承認や株主名簿の書換えが行われているかを確認します。

株主名簿上の株主と、経営者が認識している株主が一致しないケースは珍しくありません。名義株や相続未整理の株式があると、会社売却に必要な株式を集められず、買い手との交渉が止まることがあります。

譲渡制限を新設・変更するときの手続を確認する

譲渡制限を新たに設けるには、定款変更が必要です。発行する全株式に新たな譲渡制限を付ける場合は、通常の特別決議より厳しい要件の株主総会決議が必要になることがあります。

譲渡制限に関する事項は登記事項でもあるため、株主総会で決議するだけでなく、変更登記まで行わなければなりません。

一部の種類だけに制限を設ける場合は、種類株式の内容、既存株主への影響、種類株主総会の要否なども確認します。

定款には、一定の譲渡について承認を不要とする条件や、不承認の場合の指定買取人に関する定めを置くことも可能です。ただし、複雑にし過ぎると、将来の資金調達や会社売却で支障が生じることがあります。

相続と第三者承継を同じ資本政策で考える

相続による株式の取得は、売買や贈与による譲渡とは異なり、通常の譲渡承認手続の対象にはなりません。

相続による株式分散を防ぐため、定款に相続人などに対する売渡請求の規定を設ける方法があります。会社が相続人から株式を買い取れる仕組みですが、会社には買取資金が必要です。

また、株主構成によっては、後継者が相続した株式に売渡請求が行われ、経営権を失う原因になることもあります。導入すれば常に安全になる制度ではありません。

親族内承継だけを前提に定款を設計し、その後に第三者承継へ方針転換すると、条項の見直しに時間がかかります。後継者候補、株主の意向、会社の資金力、M&Aの可能性をまとめて確認し、将来の出口戦略に合う内容へ整えることが重要です。

まとめ

譲渡制限株式は、株式の移転に会社の承認を求め、望まない第三者の参入を防ぐ仕組みです。経営権の安定、役員任期の伸長、機関設計の簡素化に役立つ一方、不承認時には買取資金や価格決定が問題になります。会社売却や事業承継を考える際は、定款、株主名簿、過去の承認手続を照合し、必要な決議と税務・資金面を早めに整理することが大切です。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人