株式譲渡時の登記申請と定款変更の必要性について詳しく解説します。手続の流れや注意点、必要書類なども網羅的に紹介。スムーズな株式譲渡のための重要ポイントをわかりやすく解説しています。
目次
▶目次ページ:株式譲渡(株式譲渡の流れ)
株式譲渡とは、企業の経営権を移転させる手法の一つで、中小企業のM&A(合併・買収)において頻繁に採用される方法です。この手続では、株式を譲渡する側(売り手)と株式を受け取る側(買い手)の間で、株式の所有権が移転されます。
1. 譲渡する株式の種類や数量
2. 譲渡価格
3. 譲渡の条件
これらの合意事項は、通常、株式譲渡契約書に詳細に記載されます。契約が締結され、譲渡が完了すると、株式の所有権が変更され、新しい株主がその株式に関連する権利を行使できるようになります。
株式譲渡は、会社法第127条に基づく「株式譲渡自由の原則」により、原則として自由に行うことが可能です。ただし、定款で譲渡制限を設けている場合は、その制限に従う必要があります。
株式譲渡は、企業の所有構造を変更する重要な手続であり、適切に実施することで、スムーズな経営権の移転や事業承継を実現することができます。
登記と定款は、企業活動において非常に重要な役割を果たす法的要素です。これらは企業の存在や運営の基盤となるものであり、株式譲渡を検討する際にも理解しておくべき基本的な概念です。
登記とは、権利や義務を社会に向けて公示する法制度です。企業や法人の設立時には、商業登記・法人登記が必要となります。登記には以下のような情報が記載されます。
1. 商号(会社名)
2. 事業目的
3. 本店所在地
4. 代表者の氏名と住所
5. 資本金の額
6. 発行可能株式総数
登記は、企業の基本的な情報を公的に証明する役割を果たし、取引の安全性を確保する上で重要な機能を持っています。また、登記事項に変更があった場合は、速やかに変更登記を行う必要があります。
定款は、会社の憲法に相当する重要な文書です。会社を設立する際に作成が必要であり、会社の基本的なルールや運営の枠組みを定めています。定款には以下のような事項が規定されています。
1. 会社の商号
2. 事業目的
3. 本店所在地
4. 機関設計(取締役会の有無など)
5. 株式に関する事項(譲渡制限の有無など)
6. 株主総会や取締役会の運営方法
定款は会社法に基づいて作成され、会社の組織や活動に関する基本的な事項を規定しています。定款の内容を変更する場合は、株主総会の特別決議が必要となります。
登記と定款は、企業の法的な基盤を形成する重要な要素であり、株式譲渡を含む様々な企業活動において、常に念頭に置くべき基本的な概念です。
株式譲渡を行う際、多くの経営者が登記申請や定款変更の必要性について疑問を持ちます。ここでは、これらの手続の要否について詳しく説明します。
株式譲渡が行われた場合でも、法人登記に関する申請は必要ありません。これは、株式の譲渡が会社の登記されている事項に変更をもたらすものではないためです。
登記事項には以下のようなものがありますが、これらは株式譲渡によって直接的に変更されるものではありません。
1. 商号(会社名)
2. 本店所在地
3. 目的
4. 公告方法
5. 発行可能株式総数
6. 発行済株式の総数
7. 資本金の額
したがって、株式譲渡のみでは登記申請は不要となります。ただし、株式譲渡に伴って代表取締役の変更などが行われる場合は、その変更に関する登記申請が必要となりますので注意が必要です。
株式譲渡に伴って株主が変更された場合も、定款の変更手続は必要ありません。株式譲渡は、定款変更の事由には該当しないためです。
定款は会社の基本的なルールや構造を定めるものであり、以下のような内容が含まれます。
1. 会社の目的
2. 商号
3. 本店所在地
4. 機関設計
5. 株式に関する事項
これらの事項は、株主の変更によって直接的に影響を受けるものではありません。そのため、株式譲渡が行われたとしても、定款の変更は必要ありません。
ただし、株式譲渡に伴って会社の基本的な構造や方針を変更する場合(例:事業目的の変更、譲渡制限の導入など)は、それに応じた定款変更が必要となる場合があります。このような変更を行う場合は、株主総会の特別決議を経て定款を変更する必要があります。
株式譲渡時には登記申請や定款変更が不要であることを理解しておくことで、不必要な手続を避け、効率的に譲渡プロセスを進めることができます。ただし、株式譲渡に付随して他の変更が生じる場合には、それぞれ適切な手続を取る必要があるので注意しましょう。
株式譲渡を円滑に進めるためには、いくつかの重要な点に留意する必要があります。ここでは、株式譲渡前の確認事項、手続の流れ、必要書類、注意点、税務の考慮事項について詳しく説明します。
株式譲渡を行う前に、以下の点を必ず確認しましょう。
1. 株式に譲渡制限があるか
o 上場企業の株式には通常譲渡制限がありませんが、多くの中小企業では譲渡制限を設けています。
o 譲渡制限がある場合は、譲渡にあたって会社の承認を得る必要があります。
2. 株券を発行しているか
o 株式会社が株券を発行するかは任意で決められます。
o 株券発行の有無は登記事項証明書で確認できます。
o 株券発行会社が株式譲渡を行う際には、株券の交付が必要となります。
これらの点を事前に確認することで、スムーズな株式譲渡手続を進めることができます。
ここでは、取締役会を設置しない企業における、承認機関が株主総会の場合の手続の流れを説明します。
1. 売り手が株式譲渡承認を請求する
o 売り手は「株式譲渡承認請求書」を作成し、会社に提出します。
2. 会社が臨時株主総会で譲渡承認について決議する
o 株主総会を開催し、譲渡の承認について決議を行います。
o 承認が決定したら、売り手に2週間以内に通知する必要があります。
3. 売り手と買い手が株式譲渡契約を締結する
o 株式譲渡契約書を作成し、正式に合意します。
4. 売り手と買い手が会社に株主名簿の書換を請求する
o 買い手が譲渡対価を支払った後、両者が会社に株主名簿の書換を請求します。
5. 会社が買い手に株主名簿記載事項証明書を交付する
o 株主名簿の書換が完了すると、会社は買い手に証明書を交付します。
これらのステップを順序良く進めることで、適切な株式譲渡手続を完了させることができます。
株式譲渡において必要な書類は以下の通りです。
1. 株式譲渡契約書
2. 株主名義書換請求書
3. 株主名簿
4. 株主名簿記載事項証明書交付請求書
5. 株主名簿記載事項証明書
取締役会を設置しない企業の場合は、さらに以下の書類が必要となります。
6. 株式譲渡承認請求書
7. 株主総会招集に関する取締役の決定書
8. 株主総会招集通知
9. 株主総会議事録
10. 株式譲渡承認通知
これらの書類を適切に準備し、手続を進めることが重要です。
株式譲渡を行う際には、以下の点に特に注意が必要です。
1. 株主が親族のみでも手続は確実に進める
o 親族間であっても、将来のトラブルを防ぐために、正式な手続を行いましょう。
o 株主総会の議事録や株式譲渡承認請求書などの公式文書を適切に作成し、保管することが重要です。
2. 法務局が関与しない分慎重に進める
o 株式譲渡は法務局への申請が不要であるため、手続の正当性をチェックする機会が少なくなります。
o 不安や疑問がある場合は、法律の専門家や税務の専門家への相談が賢明です。
これらの点に注意を払うことで、将来的な法的問題や紛争を未然に防ぐことができます。
株式譲渡で発生する利益は課税対象となります。株式譲渡に関連する税金の計算は複雑で、個々のケースによって異なる要素も少なくありません。
主な考慮点:
1. 譲渡価額の算定
2. 譲渡損益の計算
3. 適用される税率
4. 特例措置の適用可能性
株式譲渡は、企業の所有権移転において重要な手法です。登記申請や定款変更は通常不要ですが、事前の確認事項や必要書類の準備、手続の流れ、税務への配慮が重要です。専門家への相談を活用し、慎重に進めることで、スムーズな株式譲渡が実現できます。
著者|竹川 満 マネージャー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事