確定申告で損をしない!株式譲渡益の正しい書き方と節税テクニック

株式譲渡で利益を得た際の確定申告について、その必要性や方法、節税のポイントまでを詳しく解説します。手書きとインターネットによる申告書の作成手順も含め、初心者にもわかりやすく説明します。

目次:

  1. 株式譲渡益が発生した場合の確定申告の必要性
  2. 株式譲渡益の確定申告方法
  3. 株式譲渡で確定申告が必要な人
  4. 株式譲渡で確定申告が不要な人
  5. 株式譲渡の確定申告における節税のポイント
  6. まとめ

株式譲渡益が発生した場合の確定申告の必要性

株式譲渡により利益を得た場合、確定申告が必要となります。ここでは、株式譲渡益に課される税金や確定申告の提出期限、そして確定申告の流れについて詳しく説明します。

株式譲渡益にかかる税金について

株式譲渡益に対しては、分離課税が適用されます。分離課税とは、他の所得と分けて税金を計算する方式です。株式譲渡益にかかる税金の内訳は以下の通りです。

  • 所得税:15%
  • 復興特別所得税:0.315%
  • 個人住民税:5%

これらを合計すると、税率は20.315%となります。実際の納税額は、株式譲渡所得に対してこの税率を適用して計算されます。

株式譲渡所得の計算方法は次の通りです。

株式譲渡所得 = 収入金額(譲渡価格)- 必要経費(取得費、譲渡費用など)

例えば、5,000万円の譲渡所得があり、必要経費が1,000万円の場合、税金の計算は以下のようになります。

税金 = (5,000万円 - 1,000万円) × 20.315% = 812万6,000円

株式譲渡に関する確定申告書の提出期限

株式譲渡の確定申告は、譲渡した日が属する年の翌年の2月16日から3月15日までの期間に行う必要があります。この期限を守らないと、以下のようなペナルティが発生する可能性があります。

1. 無申告の場合:「無申告加算税」が課されます。これは本来の納税額に加えて、税額に応じた罰金を支払う必要が
        あるということです。

2. 期限後申告の場合:期限の翌日から申告書を提出する日までの日数に応じて、延滞税が発生します。

したがって、確定申告の期限を守ることが非常に重要です。

株式譲渡益の確定申告の流れ

株式譲渡益の確定申告を行う際の基本的な流れは以下の通りです。

1. 年間の利益・損失を計算する

2. 確定申告に必要な書類を用意する

3. 確定申告書を作成し提出する

これらの手順を適切に行うことで、正確な確定申告を行うことができます。次のセクションでは、具体的な確定申告の方法について詳しく解説します。

株式譲渡益の確定申告方法

株式譲渡益の確定申告には、大きく分けて手書きによる方法とインターネットを利用する方法があります。それぞれの方法について詳しく説明していきます。

手書きによる株式譲渡益の確定申告書作成方法

手書きで確定申告書を作成する場合、以下の書類を準備する必要があります。

1. 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書

2. 申告書第一表

3. 申告書第二表

4. 申告書第三表(分離課税用)

これらの書類の記入方法は以下の通りです。

1. 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書 

  • 2面から記入を始め、計算された数値を1面に転記します。
  • 主な記入項目:住所、氏名、譲渡日、譲渡した株式数、株式名、収入金額、取得費、委託手数料、所得金額など

2. 申告書第一表 

  • 申告年度、「確定」の記述、住所、マイナンバー、氏名を記入します。
  • 申告の種類は「分離」を選択します。
  • その他の項目:収入金額等、所得金額等、所得から差し引かれる金額、税金の計算、その他(配偶者所得、青色申告特別控除額など)、延納の届出

3. 申告書第二表 

  • 申告年度、「確定」の記述、住所、氏名を記入します。
  • その他の項目:所得の内訳、社会保険料控除等に関する欄、配偶者や親族に関する事項

4. 申告書第三表(分離課税用) 

  • 収入金額、所得金額、税金の計算を記入します。
  • 「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の情報を転記します。

記入の際は、源泉徴収票などの資料から正確に情報を転記し、記載漏れや誤記入がないよう注意しましょう。

インターネットを使った株式譲渡益の確定申告書作成手順(6ステップ)

インターネットを利用して確定申告を行う場合、国税庁のホームページにある「確定申告書等作成コーナー」を利用します。以下の6つのステップで申告書を作成することができます。

1. 「作成する申告書等の選択」画面へ進む 

  • 国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」から「作成開始」を選択します。

2. 「収入金額・所得金額の入力」画面へ進む 

  • 生年月日、申告書の提出方法、質問への回答を入力します。

3. 「金融・証券税制(入力項目の選択)」の入力をする 

  • 配当所得の課税方法(申告分離課税)を選択します。
  • 「特定口座年間取引報告書の内容を入力する」をクリックします。

4. 「特定口座年間取引報告書」の内容を入力する 

  • 収入金額などの必要事項を入力します。

5. 「収入金額・所得金額の入力」画面で源泉徴収票の内容を入力する 

  • 給与所得、公的年金等、所得控除などの項目を入力します。

6. 入力完了 

  • 計算結果を確認し、納税額を確認します。
  • e-Taxを利用する場合はデータを送信し、書面で提出する場合は印刷して郵送します。

インターネットを利用した方法は、自宅で手軽に申告書を作成できる便利な方法です。ただし、正確な情報入力が求められるため、事前に必要な資料を準備しておくことが重要です。

以上が株式譲渡益の確定申告方法についての説明です。次のセクションでは、確定申告が必要な人と不要な人について解説します。

株式譲渡で確定申告が必要な人

株式譲渡を行った場合、すべての人が確定申告を行う必要があるわけではありません。以下のケースに該当する人は、確定申告が必要となります。

1. 上場株式の場合

  • 一般口座で株式の譲渡を行った人
  • 「源泉徴収なし」の特定口座で株式の譲渡を行った人
  • 「源泉徴収あり」の特定口座で株式の譲渡を行い、他の口座での譲渡損益と相殺したい人
  • 「源泉徴収あり」の特定口座で株式の譲渡を行い、譲渡損失を繰越控除したい人

2. 未上場株式の場合

  • 株式譲渡所得が20万円以上の場合

これらのケースに該当する場合、確定申告を行うことで適切な税務処理を行うことができます。特に、複数の口座を利用している場合や損失の繰越控除を行いたい場合は、確定申告が重要となります。

株式譲渡で確定申告が不要な人

一方で、以下のケースに該当する人は、原則として確定申告が不要です。

1. 株式譲渡で損失が出た人 

  • ただし、損失を翌年以降に繰り越したい場合は確定申告が必要です。

2. 給与所得、退職所得以外で株式の譲渡による所得しかなく、株式などの譲渡所得が20万円以下の人 

  • この場合、確定申告をしなくても税務上の問題は生じません。

3. 証券会社を通じ、特定口座(源泉徴収あり)で株取引し、利益を得た人 

  • この場合、証券会社が自動的に源泉徴収を行うため、原則として確定申告は不要です。

ただし、確定申告が不要な場合でも、確定申告を行うことで税金が還付される可能性がある場合もあります。例えば、株式譲渡損失と配当所得との損益通算を行いたい場合などは、確定申告を行うことをおすすめします。

株式譲渡の確定申告における節税のポイント

株式譲渡の確定申告を適切に行うことで、節税につながる可能性があります。以下に主な節税のポイントを説明します。

譲渡損と譲渡益の相殺による節税方法

1. 損益通算の活用 

  • 株式譲渡で損失が発生した場合、他の譲渡所得と合わせて確定申告を行い、損益通算することで節税につながる可能性があります。
  • 例えば、A株で100万円の利益、B株で50万円の損失が出た場合、確定申告により50万円分の課税所得を減らすことができます。

2. 特定口座(源泉徴収あり)での利益と損失の相殺 

  • 源泉徴収ありの特定口座で利益が出て課税された場合でも、確定申告を行うことで他の損失と相殺でき、還付を受けられる可能性があります。

譲渡損の繰越控除を活用した節税策

1. 上場株式の譲渡損失の繰越控除 

  • 上場株式の譲渡で損失が発生した場合、確定申告を行うことで、その損失を翌年から3年間繰り越すことができます。
  • 例えば、100万円の譲渡損失が生じた場合、3年間にわたってこの損失を繰り越し、将来の譲渡益と相殺することが
    できます。

2. 繰越控除の活用例 

  • 1年目:100万円の譲渡損失が発生し、確定申告を行う
  • 2年目:50万円の譲渡益が発生。繰越損失と相殺し、課税所得をゼロにできる
  • 3年目:80万円の譲渡益が発生。残りの繰越損失50万円と相殺し、30万円分のみ課税対象となる

これらの節税ポイントを活用することで、長期的な視点での税務戦略を立てることができます。ただし、税法は複雑で頻繁に改正されるため、最新の情報を確認し、必要に応じて税理士等の専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

株式譲渡益に関する確定申告は、投資家にとって重要な手続です。適切に行うことで、法令順守はもちろん、節税の機会も得られる可能性があります。確定申告が必要かどうかは、取引の状況や使用した口座の種類によって異なります。手書きやインターネットを利用した申告方法があり、自身の状況に合わせて選択できます。損益通算や繰越控除などの制度を理解し活用することで、より効果的な税務管理が可能となります。不明点がある場合は、税務の専門家に相談することをおすすめします。

著者|竹川 満 マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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