確定申告で迷わない株式譲渡益の書き方と書類別の記入順
株式譲渡益の確定申告で使う計算明細書、申告書第三表、第一表・第二表について、準備資料から転記順まで分かりやすく解説します。一般口座・特定口座の違い、損益通算と3年間の繰越控除、e-Tax入力、会社売却時の注意点も確認できます。どの数字をどこへ書くか迷う方が、申告漏れや区分誤りを防ぐための記事です。
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▶目次ページ:第三者承継とは(M&Aのメリット・デメリット)
株式譲渡益の確定申告では、最初に口座の種類と、売却した株式が「上場株式等」か「一般株式等」かを確認します。この区分を誤ると、損益通算や繰越控除の計算までずれるためです。
個人が株式を売却して得た利益は、給与所得や事業所得とは分けて税額を計算する申告分離課税の対象です。税率は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%の合計20.315%が基本となります。
一般口座で利益が出た場合や、源泉徴収なしの特定口座で利益が出た場合は、原則として確定申告が必要です。
特定口座では、証券会社が1年間の損益を計算し、「特定口座年間取引報告書」を交付します。一方、一般口座では、自分で売却代金、取得費、売買手数料を集計しなければなりません。
一定の給与所得者は、給与所得と退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告を要しない場合があります。ただし、医療費控除などを受けるために確定申告する場合は、その20万円以下の所得も含めて申告します。住民税の申告が別に必要となることもあるため、注意が必要です。
源泉徴収ありの特定口座は、証券会社が税金を差し引くため、その口座内の譲渡益は原則として申告不要です。
ただし、別の証券会社で生じた損失と相殺したい場合や、譲渡損失を翌年以後へ繰り越したい場合は、確定申告を選ぶことがあります。申告することで、源泉徴収された税金が還付されるケースもあります。
NISA口座の譲渡益は非課税です。反対に、NISA口座で生じた損失は、課税口座の利益との損益通算や繰越控除には使えません。
証券取引所に上場している株式などは「上場株式等」、非上場会社の株式などは「一般株式等」に区分されます。中小企業の経営者がM&A(合併・買収)で自社株式を譲渡した場合は、通常、一般株式等として申告します。
上場株式等の損失と一般株式等の利益は、原則として相殺できません。会社売却と上場株式投資を同じ年に行ったときは、申告書上でも分けて扱う必要があります。
取得費や手数料の資料が見つからないと、申告作業は止まります。書き始める前に必要な資料をそろえましょう。
譲渡所得の基本的な計算は、次のとおりです。
譲渡所得 = 譲渡による収入金額 - 取得費 - 譲渡のために直接かかった費用
計算式は単純です。しかし、取得費や譲渡費用に何を含めるかで税額が変わります。意外と多い落とし穴です。
源泉徴収あり・なしを問わず、特定口座を利用した場合は、特定口座年間取引報告書を準備します。
一般口座の場合は、次の資料を集めます。
・売却時の取引報告書
・購入時の取引報告書
・取引残高報告書
・購入時と売却時の手数料が分かる資料
複数の証券会社を利用した年は、口座ごとの利益と損失を分けて確認します。先に一覧へ整理すると、入力漏れを防ぎやすくなります。
会社売却では、主に次の資料を確認します。
・株式譲渡契約書
・譲渡代金の入金記録
・会社設立時の出資資料
・増資時の払込資料
・過去に株式を購入した際の契約書
・譲渡に直接関係する専門家報酬の請求書や領収書
支払調書がある場合でも、取得費や譲渡費用は別の資料で確認します。支払調書だけでは、譲渡所得の計算を完成できません。
株式譲渡益の申告では、主に次の書類を使います。
・確定申告書第一表
・確定申告書第二表
・確定申告書第三表(分離課税用)
・株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
上場株式等の譲渡損失を翌年以後へ繰り越す場合などは、さらに「確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」が必要になります。
様式や欄番号は年度によって変わることがあります。必ず申告する年分の書類を使ってください。
手書きで申告する場合は、「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」から作成します。
原則として、2面に個別の取引内容を書き、その金額を1面へ集計します。譲渡所得の金額を先に固めることで、その後の転記ミスを減らせます。
一般口座や非上場株式の譲渡では、主に次の項目を記入します。
・銘柄
・譲渡年月日
・数量
・譲渡先
・収入金額
・取得費
・譲渡にかかった手数料など
会社売却であれば、銘柄欄には会社名、収入金額には株式譲渡契約書に記載された譲渡対価を記入するのが基本です。
特定口座の場合は、特定口座年間取引報告書の数値を口座単位で入力します。年間取引報告書に記載された譲渡の対価、取得費、譲渡費用、差引金額などを確認し、対応する欄へ転記します。
手数料を差し引いた金額が銀行口座へ入金されていると、その入金額を収入金額に書きたくなるかもしれません。
しかし、申告上の収入金額は、原則として手数料を差し引く前の譲渡価額です。手数料は、譲渡費用として別の欄へ記入します。
譲渡価額と実際の入金額が違うケースは珍しくありません。契約書と入金明細を照らし合わせましょう。
取得費には、株式の購入代金や、取得時に支払った委託手数料などが含まれます。
創業者が自社株式を売却する場合は、設立時の出資額や増資時の払込額が重要です。途中で他の株主から株式を買い取っている場合は、その購入代金も確認します。
取得時期が古いほど、資料が倉庫や過去のファイルに散らばりやすくなります。申告直前に探し始めると、取得費の確認が間に合わないことも。
2面の記入後は、1面で収入金額、取得費、譲渡費用を集計します。
「一般株式等」と「上場株式等」の欄を分け、収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて、所得金額を計算します。
複数回の売却や複数口座がある場合も、株式区分ごとに合計します。計算結果が赤字であれば、損益通算や繰越控除を利用できるか確認します。
計算明細書で譲渡所得を確定した後は、申告書第三表へ転記します。その後、給与などの他の所得や所得控除と合わせ、第一表・第二表を完成させます。
手書きでは書類間の転記が多いため、同じ金額が正しくつながっているかを確認することが大切です。
第三表は、申告分離課税となる所得を記入する書類です。
計算明細書1面で確定した金額を見ながら、一般株式等または上場株式等の「収入金額」と「所得金額」に転記します。その後、第三表の税金の計算欄で、株式譲渡益に対応する税額を計算します。
以前の申告書にある欄番号や記号だけを頼りにすると、年度変更によって書き間違えるおそれがあります。最新様式の項目名を見ながら記入してください。
第一表には、給与所得、事業所得、公的年金等の所得や、所得控除を記入します。第三表で計算した税額も第一表へ反映し、源泉徴収税額などを差し引いて、最終的な納付額または還付額を計算します。
給与所得者であれば源泉徴収票、個人事業主であれば青色申告決算書や収支内訳書など、株式以外の所得に関する資料も必要です。
第二表には、所得の内訳、社会保険料控除、生命保険料控除、扶養親族、寄附金控除などの詳しい情報を記載します。
株式譲渡益だけを計算しても、確定申告全体は完成しません。第一表、第二表、第三表、計算明細書の数字が一致しているか、提出前に見直します。
株式譲渡の入力が終わったら、給与、事業、公的年金等の所得や、医療費控除、寄附金控除などを入力します。
画面上で税額が自動計算されるため、第三表から第一表へ手作業で転記する必要はありません。
ただし、入力する数字が誤っていれば、計算結果も誤ります。送信前に作成された申告書のPDFを開き、収入金額と所得金額、一般株式等と上場株式等の区分を見直してください。
マイナンバーカードと対応するスマートフォンなどがあれば、e-Taxで電子送信できます。
電子送信を使わない場合は、作成した申告書を印刷し、所轄税務署へ郵送または持参します。
確定申告の期限は、原則として株式を譲渡した年の翌年2月16日から3月15日までです。期限日が土曜日、日曜日、祝日などに当たる場合は、通常、その翌開庁日が期限となります。
譲渡額が大きい場合は、申告書の準備だけでなく、納税資金も別に確保しておきましょう。
株式の譲渡損失がある場合は、どの利益と相殺できるか、翌年以後へ繰り越せるかを分けて考えます。
特に、上場株式等と一般株式等では取扱いが異なります。同じ「株式の損失」でも、すべて同じように使えるわけではありません。
複数の証券口座に上場株式等の利益と損失がある場合は、確定申告によって損益通算できます。
源泉徴収ありの特定口座で税金を納めていても、別口座の損失と相殺することで、税金が還付される場合があります。
また、上場株式等の譲渡損失は、申告分離課税を選んだ一定の上場株式等の配当所得等と通算できることがあります。給与所得や事業所得との相殺はできません。
その年に通算しきれなかった上場株式等の譲渡損失は、一定の要件を満たせば、翌年以後3年間にわたって上場株式等の譲渡益や一定の配当所得等から控除できます。
利用するには、損失が出た年に必要書類を付けて確定申告し、その後も連続して確定申告する必要があります。利益が出ていない年でも申告が必要となる点に注意してください。
源泉徴収ありの特定口座をあえて申告すると、合計所得金額などに影響し、扶養判定や国民健康保険料などへ波及することがあります。
還付される所得税だけで判断すると、世帯全体では負担が増えることも。申告する場合としない場合を比べてから判断することが大切です。
会社売却では金額が大きく、取得費や譲渡費用の根拠も複雑になりやすいものです。
確定申告の直前になって資料を集めるのではなく、株式譲渡契約を締結する段階から、申告に必要な資料を分けて保管しておきましょう。
株式譲渡契約書に記載された譲渡対価から、専門家報酬や振込手数料などを差し引いた金額が入金されることがあります。
この場合も、契約上の譲渡対価を収入金額とし、税務上認められる費用を別に計上するのが基本です。入金額だけを収入金額として記入すると、計算を誤るおそれがあります。
株式譲渡そのものは、原則として消費税がかからない非課税取引です。専門家報酬に含まれる消費税とは分けて確認します。
取得費は、その株式を取得するために支出した金額です。譲渡費用は、今回の株式譲渡を実現するために直接かかった費用を指します。
仲介手数料や弁護士、税理士などへの報酬であっても、すべてが自動的に譲渡費用になるわけではありません。契約内容や業務の実態を確認し、譲渡に直接関係する部分を判断します。
日常的な顧問料や、譲渡と直接関係しない経営相談料などは、通常、株式の譲渡費用には含めません。請求書だけでなく、業務内容が分かる契約書や明細も残します。
会社売却と同じ年に役員退職金を受け取っても、退職金を株式譲渡の収入金額に合算するわけではありません。
退職金は、原則として退職所得として別に扱われます。退職所得の源泉徴収票や、「退職所得の受給に関する申告書」の提出状況を確認しましょう。
株式譲渡益の確定申告は、口座の種類と株式区分を確認し、計算明細書で所得金額を固めた後、第三表から第一表・第二表へ数字をつなげます。e-Taxなら転記と税額計算を自動化できますが、取得費や譲渡費用の根拠資料は自分で準備しなければなりません。会社売却や複数口座の損益通算、損失の繰越控除がある場合は、申告前に資料と適用要件を整理することが重要です。
著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事
編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人