廃業とは?倒産・破産・休業・解散との違いを解説
廃業とは、経営者の意思で事業を終えることです。倒産・破産・休業・解散・清算・閉店・民事再生との違いを比較し、自社がどの状態に当たるかを判断する流れ、借入や従業員への影響、廃業前にM&Aを検討するポイントまで分かりやすく解説します。
目次

▶目次ページ:事業承継とは(会社の廃業と解散・清算)
廃業を考え始めたとき、「倒産や破産とは何が違うのか」「会社を休業する方法はないのか」「解散すれば会社はなくなるのか」と迷う経営者は少なくありません。
廃業とは、経営者が自らの意思で事業を終えることです。一方、倒産は一般に資金繰りなどが行き詰まり、債務の支払いが困難になった状態を表す言葉で、破産は裁判所を通じて財産を換価し、債権者へ配当する法的な手続です。休業、解散、清算、閉店、民事再生も、それぞれ意味が異なります。
会社をたたむことを考えている場合は、言葉の違いだけでなく、「会社の資産で負債を返せるか」「事業を引き継ぐ人がいるか」「一時的に止めたいのか、完全に終えたいのか」を確認することが重要です。
この記事では、それぞれの違いを整理したうえで、自社がどの状態に当たるのか、廃業を決める前に何を確認すべきかを解説します。
最初に、それぞれの言葉の意味を整理しましょう。
| 用語 | 主な意味 | 誰が決める・進めるか | 裁判所の関与 | 借入などの債務事業・法人格 | 事業・法人格 |
| 廃業 | 事業を自主的に終えること | 経営者・会社 | 通常は不要。ただし破産などに移る場合は関与する | 原則として整理・返済が必要 | 事業は終了。法人は別途、解散・清算が必要 |
| 倒産 | 一般に債務の支払いが困難になるなど経営が行き詰まった状態 | 特定の一つの手続を指す言葉ではない | 選ぶ手続による | 返済条件の変更や法的整理などが必要になることがある | 再建する場合と清算する場合がある |
| 破産 | 財産を換価し、債権者へ配当する法的手続 | 債務者・債権者による申立てなどを経て裁判所が手続を進める | あり | 破産手続の中で処理 | 法人は最終的に消滅する方向 |
| 民事再生 | 債務を調整しながら事業などの再建を図る法的手続 | 債務者などが申し立て、裁判所が関与 | あり | 再生計画に基づき返済などを行う | 原則として事業継続を目指す |
| 休業・休眠 | 会社を残したまま事業活動を一時的に止めること | 経営者・会社 | 通常はなし | 借入や契約上の義務は残る | 法人格は残る |
| 解散 | 会社が営業活動を終えて清算に入る法的な入口 | 株主総会の決議など | 通常清算では原則として裁判所の関与なし | 清算手続で整理する | 清算目的の法人として残る |
| 清算 | 解散後に資産・負債などを整理すること | 清算人 | 通常清算では原則として裁判所の関与なし | 債権回収や債務弁済を行う | 清算結了後に法人格が消滅 |
| 閉店 | 店舗や営業所などを閉じること | 経営者・会社 | 通常はなし | 会社自体の債務は残る | 他店舗や会社自体は存続できる |
費用と期間については、一律に比較できません。資産・負債の内容、従業員数、契約関係、店舗や工場の原状回復、法的整理の必要性などによって大きく変わるからです。
特に株式会社の通常清算では、債権者に対して債権を申し出るよう官報で公告し、把握している債権者には個別に催告します。会社法第499条では、この申出期間を2カ月未満にはできないとされています。そのため、株式会社は「今日営業をやめて、すぐ会社を消す」という形にはできません。
出典:会社法第499条「債権者に対する公告等」(2026年10月1日確認)
廃業の方法
廃業とは、会社や個人事業主が自らの意思で事業活動を終えることです。
業績が悪い会社だけが廃業するわけではありません。利益が出ていても、後継者がいない、経営者が高齢になった、人手不足で事業を維持できない、設備投資を続けることが難しいといった理由から廃業することがあります。
法人の場合、営業を停止しただけでは会社そのものはなくなりません。株式会社であれば、一般に株主総会などで解散を決め、清算人が債権回収、資産の換価、債務の弁済などを行い、残余財産を分配して清算結了へ進みます。
個人事業主の場合も、営業を止めるだけではなく、税務上の届出や従業員、在庫、設備、賃貸借契約などを整理する必要があります。国税庁も、事業を廃止する場合に必要となる主な届出書・申請書を案内しています。
出典:国税庁「廃業する場合」(2026年10月1日確認)
廃業と倒産、破産は混同されやすい言葉ですが、意味が異なります。
倒産は、一般に会社の資金繰りなどが行き詰まり、債務の支払いが困難になった状態を表す言葉です。
「倒産」という名前の単一の法的手続があるわけではありません。経営状態や再建可能性などによって、破産、民事再生、特別清算など異なる手続が選択肢になります。
これに対して廃業は、「事業をやめる」という経営上の判断を表す言葉です。
たとえば、会社に十分な現預金や売却できる資産があり、借入金や買掛金などを返済できる会社でも、後継者がいないため廃業することがあります。
つまり、「廃業=倒産」ではありません。
破産は、裁判所が破産手続の開始を決定し、破産管財人が債務者の財産を金銭に換え、債権者へ分配する手続です。裁判所も、破産をこのような手続として案内しています。
出典:裁判所「破産・再生」(2026年10月1日確認)
会社を自主的に廃業したいと考えていても、会社の資産だけでは債務を返済できない場合、通常清算だけでは処理できないことがあります。
借入金だけでなく、買掛金、未払賃金、税金、リース債務、経営者の個人保証、担保なども確認し、返済できない可能性がある場合は早い段階で弁護士などへ相談することが重要です。
株式会社が解散した後、清算の遂行に著しい支障がある場合や債務超過の疑いがある場合には、特別清算が問題になることがあります。
特別清算は裁判所の監督のもとで行われる手続です。裁判所は、解散後清算中の株式会社について、清算が非常に難しい状況にある場合や債務超過の疑いがある場合に行われる手続と説明しています。
出典:裁判所「裁判所を利用する/会社更生・特別清算」(2026年10月1日確認)
したがって、廃業を考えたときは、まず「会社の資産を換金すればすべての負債を返済できるか」を確認する必要があります。
廃業が事業を終える選択であるのに対し、休業・休眠は会社を残したまま事業活動を一時的に止める考え方です。
将来もう一度事業を始めたい、会社名を残したい、事業再開の可能性があるといった場合は、廃業ではなく休業を検討する余地があります。
ただし、事業を休めば会社に関する義務がすべてなくなるわけではありません。法人格が残る以上、税務申告や登記などについて確認が必要です。借入金、賃貸借契約、リース契約なども、休業しただけで当然に消えるわけではありません。
税理士法人の実務で特に注意したいのは、「売上がないから申告もしなくてよい」と自己判断しないことです。休業は法人の消滅ではありません。廃業と休業を取り違えると、必要な税務・登記上の対応を見落とす原因になります。
将来再開する可能性があるのか、それとも完全に事業を終えるのかを先に決めることが大切です。
「廃業」「解散」「清算」も同じ意味ではありません。
廃業は事業を終えるという全体的な判断です。これに対して、解散と清算は法人を最終的に消滅させるための法的な手続に関係する言葉です。
株式会社の場合、株主総会の決議などによって解散すると、通常の営業を行う会社から、清算を目的とする会社へ移ります。
つまり、解散した瞬間に法人格が消えるわけではありません。
解散後には清算人が清算事務を行います。長く続いている会社では、解散を決議する前に株主名簿や定款を確認することも重要です。親族などに株式が分散していると、解散の意思決定や残余財産の分配を進める際に確認事項が増えることがあります。
清算では、売掛金などの債権を回収し、在庫や設備などの資産を処分し、借入金や買掛金などの債務を弁済します。
国税庁も、一般的な残余財産について、法人が解散する際に現務を終え、債権を取り立て、債務を弁済した後に残った積極財産という考え方を示しています。
出典:国税庁「第2編 第2章 第1節 成立要件」(2026年10月1日確認)
株式会社の通常清算では、債権者に対する公告・催告も必要です。債務を弁済した後に財産が残れば、株主への残余財産の分配を行い、最終的に清算結了へ進みます。
「廃業は会社をやめる判断」「解散は清算へ入る法的な入口」「清算は会社の資産・負債を整理する後片付け」と考えると違いが分かりやすいでしょう。
長く続いている会社では、定款が古かったり、現在の株主をすぐ確認できなかったりすることがあります。
特に親族間で株式を承継してきた会社では、経営者が認識している株主と株主名簿上の状況が一致しているかを確認することが重要です。
会社を畳む方針を決めてから株主関係を調べ始めるのではなく、廃業を検討する段階で定款、株主名簿、過去の株式承継に関する資料を確認しておくと、その後の手続を進めやすくなります。
閉店は、店舗や営業所などの営業拠点を閉じることを意味します。
たとえば、3店舗を経営している会社が不採算の1店舗だけを閉め、残りの2店舗で営業を続ける場合は閉店です。会社自体がなくなるわけではありません。
一方、すべての事業を終了し、法人も解散・清算するのであれば廃業に当たります。
店舗を一つしか持たない会社では、閉店と廃業が同時に起こることがあるため混同されやすいのですが、意味は分けて考える必要があります。
店舗を閉めても、会社の借入金、賃貸借契約、従業員への対応、税務申告などが自動的になくなるわけではありません。
民事再生は、事業を終わらせるためではなく、原則として事業の再建を目指す法的手続です。
裁判所によると、通常再生は、経済的に苦しい状況にある法人や個人が再生計画案を作り、債権者の多数の同意と裁判所の認可を得て、計画に沿って返済を行いながら再建を図る手続です。原則として事業を継続しながら進めます。
出典:裁判所「通常再生」(2026年10月1日確認)
そのため、資金繰りが苦しいからといって、必ず廃業や破産になるわけではありません。事業自体に収益力や再建可能性が残っている場合は、再生型の手続を検討する場面もあります。
ただし、民事再生は裁判所が関与する専門的な手続です。資金繰りが悪化している場合は、自己判断で支払いを止めたり資産を処分したりする前に、弁護士などへ相談することが重要です。
会社をたたむことを考え始めたら、用語から選ぶのではなく、会社の状態から順番に確認しましょう。
まず確認するのは、経営者が事業を完全に終えたいのか、それとも一時的に止めたいのかです。
一時的な人手不足や経営者の事情などが理由で、将来再開する意思があるなら、休業・休眠を検討する余地があります。
一方、経営者が引退し、事業も再開しないのであれば、廃業や事業承継を検討する段階です。
次に、会社の財産を現金化した場合に、借入金や買掛金、未払金、税金などを返済できるかを確認します。
ここでは、決算書上の資産額だけで判断しないことが重要です。
たとえば、決算書に1,000万円の機械が計上されていても、実際に売却したときに1,000万円で売れるとは限りません。在庫も同じです。廃業時には通常の販売価格より低い価格で処分せざるを得ない場合があります。
反対に、簿価が低い不動産などに売却価値が残っている場合もあります。
そのため、廃業時の返済能力を見るときは、資産を「実際にいくらで現金化できるか」という視点で確認します。
資産を処分しても債務を返済できない可能性がある場合は、通常清算だけでなく、破産や特別清算などを検討する必要が生じます。
負債を返済できる会社であっても、すぐ廃業すると決める必要はありません。
従業員、顧客、取引先、技術、設備、許認可、ブランド、営業地域などに価値が残っていれば、親族や従業員への承継、M&A(合併・買収)による第三者承継、事業譲渡などが選択肢になる可能性があります。
後継者がいないことと、事業を引き継ぐ相手がいないことは同じではありません。
事業を再開する予定がなく、承継する相手もおらず、会社の資産で債務を整理できるのであれば、計画的な廃業・通常清算を具体化していきます。
この段階では、資産と負債だけでなく、従業員、取引先、賃貸借契約、リース、許認可、税金、株主なども整理します。
廃業は赤字会社だけの問題ではありません。
利益が出ていても、後継者がいなければ経営者の引退とともに廃業することがあります。
また、人手不足、設備の老朽化、原材料費や人件費の上昇などによって、現在は利益が出ていても「あと何年続けられるか分からない」と考える経営者もいます。
特に経営者自身の営業力や技術力に依存している会社では、経営者が高齢になってから急いで後継者を探しても、引継ぎに十分な時間を確保できないことがあります。
自分の代で事業を終える考え方そのものに問題があるわけではありません。しかし、従業員や取引先がいる場合、突然廃業すると周囲への影響が大きくなります。
数年前から出口を考えておけば、廃業、親族内承継、従業員承継、M&Aなどを比較しやすくなります。
廃業を判断するときは、会社だけでなく関係者への影響も確認する必要があります。
会社そのものを廃業する場合、従業員の雇用をそのまま維持することはできません。
労働基準法第20条では、使用者が労働者を解雇する場合、原則として少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払うこととされています。予告日数と解雇予告手当を組み合わせることもできます。
出典:厚生労働省「労働基準法」第20条(2026年10月1日確認)
実際の廃業では、解雇予告だけでなく、未払賃金、退職金制度、社会保険、雇用保険、離職票などの対応も確認します。
従業員にとって廃業は生活に直結する問題です。法律上必要な対応だけでなく、いつまで働くのか、給与はいつ支払われるのか、取引先や同業者への転職を支援できるのかなどを早めに整理することが重要です。
廃業すると、仕入先、販売先、賃貸人、リース会社、システム会社などとの契約も整理する必要があります。
「廃業するから契約も自動的に終わる」とは限りません。
解約予告期間、違約金、原状回復、在庫の返品、預り金、前受金など、契約ごとに条件が異なります。
特に工場や店舗では、建物の原状回復や設備撤去に大きな費用がかかる場合があります。廃業を決める前に賃貸借契約書などを確認しておきましょう。
会社が事業をやめても、銀行などからの借入金が自動的になくなるわけではありません。
通常清算を行うのであれば、原則として会社の資産を換価し、借入金などの債務を弁済します。
特に注意したいのが、経営者による個人保証です。
会社財産だけでは借入金を返済できず、経営者が保証人になっている場合は、経営者個人への影響も検討する必要があります。
廃業を具体化する前に、借入先、残高、返済条件、担保、保証人を一覧にしておきましょう。
廃業では、売上がなくなれば支出もなくなるわけではありません。
法人を清算する場合には登記や公告などが必要になり、司法書士、税理士、弁護士などへ業務を依頼すれば専門家報酬も発生します。
さらに会社によっては、在庫処分、設備撤去、廃棄物処理、店舗・工場の原状回復、リース解約、未払賃金、退職金などが必要になります。
費用総額は会社ごとの差が大きいため、「廃業には一律でいくらかかる」とは判断できません。
廃業費用を把握するときは、少なくとも次のように分けて確認すると分かりやすくなります。
・会社の法的な手続に関する費用
・税務申告などに関する費用
・従業員の退職に関する支出
・在庫や設備を処分する費用
・店舗や工場を返却する費用
・リースやその他の契約を終了する費用
設備についても「売却すればお金になる」とは限りません。古い大型機械などは、買い手が付かず、搬出や廃棄に費用がかかる場合があります。
廃業後に手元へいくら残るかを考えるときは、決算書上の純資産だけでなく、実際の資産売却額と廃業費用を見積もることが重要です。
法人を解散・清算する場合も、税務上の対応は続きます。
国税庁は2026年4月以後に提供する法人税の申告書様式でも、内国法人の各事業年度の所得に係る申告書を案内しています。清算中の法人についても税務申告がなくなるわけではありません。
出典:国税庁「令和8年4月以降に提供した法人税等各種別表関係」(令和8年4月1日以後終了事業年度等分、2026年10月1日確認)
また、消費税の課税事業者である清算中の法人について残余財産が確定した場合には、通常の事業年度とは異なる申告期限のルールがあります。
出典:国税庁「No.6610 法人に係る消費税の確定申告書の提出期限について」(令和8年4月1日現在法令等)
会社の債務をすべて弁済した後に財産が残れば、株主へ残余財産を分配します。
このとき、株主が受け取る金銭などのすべてを単純に「元のお金が返ってきた」と考えることはできません。税務上、一定部分がみなし配当として扱われる場合があります。
国税庁も、法人の解散による残余財産の分配として株主が金銭などの交付を受ける場合について、みなし配当や株式等の譲渡所得等に関する取扱いを示しています。
出典:国税庁「No.1536 株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされる場合」(2026年10月1日確認)
そのため、廃業した場合の経営者の手取り額は、
「会社の現預金+資産の売却額-会社の債務-廃業費用」
だけでは判断できません。
株主側の税金まで確認して、最終的に手元へ残る金額を試算することが重要です。
後継者がいない会社でも、廃業だけが選択肢とは限りません。
従業員、顧客、取引先、技術、設備、許認可、ブランドなどに価値が残っている場合は、M&Aによって第三者へ会社や事業を承継できる可能性があります。
廃業すると、会社が長年築いてきたものの中には失われるものがあります。
たとえば、熟練従業員の技術、顧客との関係、仕入先との取引、地域での知名度、営業ノウハウなどです。
決算書には大きな金額で載っていなくても、買い手企業がこうした要素に価値を見いだす場合があります。
株式譲渡で会社そのものを承継する方法のほか、事業譲渡によって特定の事業を引き継ぐ方法もあります。
廃業なら処分費用が必要になる設備が、同じ業界の買い手には必要な設備として評価される可能性もあります。
M&Aを検討する場合、会社の状態が悪化するまで待つことには注意が必要です。
主要な従業員が退職したり、顧客が離れたり、資金繰りが急激に悪化したりすると、引き継げる事業価値そのものが小さくなる可能性があります。
「あと1年経営してから考えよう」と先送りした結果、選択肢が減ることもあります。
まだ事業を継続できる時期に、廃業した場合とM&Aをした場合の両方を比べることが重要です。
廃業とM&Aは最終的な手取りで比べる
廃業とM&Aを比較するときは、単純な売却価格だけで判断しないようにしましょう。
廃業では、会社の資産を換金し、負債を返済し、廃業費用を支払い、残余財産を株主へ分配します。
一方、M&Aでは事業の収益力や顧客基盤、技術、人材などを含めて譲渡価格が決まる可能性があります。
ただし、M&Aでも譲渡方法によって税金や借入金、個人保証、退職金などの扱いが異なります。
そのため、
・廃業した場合に株主へいくら残るか
・M&Aをした場合に最終的にいくら残るか
・従業員や取引先をどこまで承継できるか
・経営者の個人保証をどう処理するか
まで並べて比較することが大切です。
M&Aではなく廃業が現実的な場合もある
すべての会社に買い手が見つかるわけではありません。
事業に収益性がほとんど残っていない、重要な契約や許認可を引き継げない、経営者個人への依存度が極めて高いなどの事情によって、M&Aが難しいこともあります。
その場合には、会社の資産で債務を返済できるうちに計画的に廃業することも選択肢になります。
大切なのは、「後継者がいないから廃業」と最初から結論を決めるのではなく、承継可能性と清算した場合の結果を一度比較することです。
廃業、休業、M&Aのどれを選ぶ場合でも、会社の現状が分からなければ判断できません。
まずは次のような資料を整理します。
・直近の決算書
・最新の試算表
・預金残高が分かる資料
・借入金一覧
・担保・個人保証の状況
・売掛金などの債権一覧
・買掛金や未払金などの債務一覧
・在庫一覧
・土地、建物、機械、車両などの資産一覧
・賃貸借契約書
・リース契約書
・従業員一覧
・主要取引先一覧
・株主名簿
・定款
・許認可関係の資料
決算書だけでなく、「資産を今売ったらいくらになるのか」「解約するといくら必要なのか」という実際の金額を確認することがポイントです。
そのうえで、資産売却後に債務を完済できるのか、廃業費用を払った後にいくら残るのか、引き継げる事業価値がないかを検討します。
廃業には、税務、法律、登記、労務など複数の分野が関係します。
税理士には、会社の資産・負債、清算時の税務申告、残余財産、みなし配当などの税務を相談できます。
会社の資産では債務を返済できない可能性がある場合や、破産・特別清算などの法的整理、契約上の紛争が問題になる場合は、弁護士への相談が重要です。裁判所も、破産や通常再生などの倒産手続を検討する法人代表者に対し、弁護士への相談を案内しています。
出典:裁判所「破産・再生」(2026年10月1日確認)
解散・清算結了などの登記は司法書士、従業員の社会保険や労務手続などは社会保険労務士など、それぞれ専門分野があります。
M&Aを比較する場合には、会社売却や事業承継型M&Aについても確認できる専門家を交え、「廃業した場合」と「承継した場合」の両方を比較すると判断しやすくなります。
廃業とは、経営者が自らの意思で事業を終えることです。資金繰りなどが行き詰まった状態を表す倒産、裁判所を通じて財産を換価・配当する破産、会社を残す休業、清算へ入る法的な入口である解散、店舗単位の閉店とは意味が異なります。会社をたたむことを考え始めたら、まず資産を換金して負債を返済できるか、一時的な休業でよいのか、事業を承継できる相手がいないかを確認しましょう。従業員、顧客、技術などに価値が残っている場合は、廃業だけでなくM&Aも比較し、税金や廃業費用まで含めて最終的な出口を判断することが大切です。
著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事
編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人