会社廃業が従業員へ及ぼす影響と対応策を詳しく解説


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会社廃業時の従業員対応と手続・M&Aによる承継の要点

会社廃業で従業員を解雇する際の30日前予告、解雇予告手当、未払賃金、退職金、有給休暇、離職票、源泉徴収票の対応を解説。従業員の生活と経営者の責任を整理し、廃業前に検討したいM&A・会社売却による雇用承継の考え方まで示します。

目次

  1. 廃業で雇用終了が起きる仕組み
  2. 解雇前に経営者が整える手続
  3. 金銭精算は廃業計画の中心に置く
  4. 離職票・税金・社会保険を途切れさせない
  5. 従業員説明の順番でトラブルを減らす
  6. 雇用を残すなら廃業前にM&Aを検討
  7. まとめ

会社廃業が従業員へ及ぼす影響と対応策を詳しく解説

廃業で雇用終了が起きる仕組み

会社を廃業すると、従業員はそのまま働き続ける場所を失います。経営者にとっては「会社を閉じる」という判断でも、従業員にとっては収入、保険、家族の生活が一度に変わる出来事です。

会社を清算して事業を終了する場合、原則として従業員との雇用契約も終わります。通常は会社都合退職、つまり会社側の事情による解雇として扱われます。倒産ではなく、経営者の高齢化や後継者不在による廃業であっても、雇用の終了という点では従業員に大きな影響があります。

従業員には収入と生活面の影響が出る

廃業によって給与収入が止まると、従業員は転職活動、生活費、住宅ローン、教育費などを同時に考えなければなりません。こういうケースでは、経営者が想像する以上に社内が不安定になります。

雇用保険に加入していた従業員は、一定の要件を満たせば基本手当、いわゆる失業給付を受けられます。会社都合退職に該当する場合は、自己都合退職よりも給付面で有利になることがあります。ただし、実際の受給にはハローワークでの手続が必要です。

社会保険と家族の手続も同時に発生する

会社の健康保険や厚生年金に加入していた従業員は、退職後に国民健康保険、国民年金、配偶者の扶養、健康保険の任意継続などを検討します。退職後しばらく再就職しない場合、20歳以上60歳未満の方は国民年金への切替手続が必要になるのが通常です。

家族を扶養していた従業員の場合、本人だけでなく家族の保険証にも影響します。通院中の家族がいる場合は、保険の空白が不安につながります。廃業日を決める際は、従業員が次の手続を取る時間も見込むべきです。

廃業と休業・会社売却は分けて考える

廃業は、事業を終える選択です。休業は会社を残したまま営業を止める選択であり、会社売却や事業譲渡は別の会社へ引き継ぐ選択です。同じ「社長を辞めたい」という悩みでも、選び方によって従業員の処遇は大きく変わります。

従業員の雇用をできるだけ残したい場合は、廃業を決める前にM&A(合併・買収)による第三者承継を検討する余地があります。全員の雇用継続が必ず実現するわけではありませんが、廃業より選択肢が広がることは少なくありません。

解雇前に経営者が整える手続

従業員への説明が遅れると、うわさが先に広がります。反対に、早く言い過ぎると退職や取引先への情報流出が起きることもあります。廃業時の従業員対応は、法的な期限と社内の実務を分けて考えるのが出発点です。

30日前までの解雇予告が基本

従業員を解雇する場合、原則として少なくとも30日前に解雇予告をする必要があります。30日前までに予告できない場合は、不足する日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払います。予告をしない即日解雇であれば、原則として30日分以上の平均賃金が必要です。

たとえば、廃業日の20日前に解雇を伝える場合は、30日に足りない10日分の平均賃金を支払う考え方になります。資金繰りが苦しい会社ほど、この支払いを後回しにしがちです。意外と多い落とし穴です。

通知は書面で残す

解雇予告は口頭でも有効とされますが、実務上は書面で通知するのが望ましいです。解雇日、解雇理由、最終出勤日、給与支払日、退職金の有無、離職票の流れを明記しておくと、後日の認識違いを減らせます。

退職証明書にも備える

従業員から退職証明書や解雇理由証明書を求められる場合があります。次の就職先に提出するため、または退職理由を確認するためです。経営者側は「会社を閉じるから全員同じ」と考えがちですが、従業員ごとに必要書類は異なります。

正社員以外も対象に含めて整理する

パート、アルバイト、契約社員、嘱託社員がいる場合も、雇用契約の終了方法を確認します。勤務日数や雇用保険の加入状況によって必要な手続が変わるため、雇用形態ごとに名簿を作り、最終出勤日と支払予定を確認しておくと安全です。

就業規則と雇用契約書を確認する

退職金、賞与、有給休暇、競業避止義務、秘密保持義務などは、就業規則や雇用契約書に根拠があるかを見ます。廃業だから何でも一律に処理できるわけではありません。従業員ごとの条件を確認しないまま説明すると、後で修正が必要になります。

金銭精算は廃業計画の中心に置く

廃業費用というと、登記、公告、原状回復、専門家報酬に目が向きます。しかし従業員がいる会社では、人件費の精算こそ大きな論点です。ここを甘く見ると、廃業手続そのものが止まります。

未払給与と賞与を確認する

廃業日までに働いた分の給与は、通常どおり支払う必要があります。退職時に従業員から請求があった場合、使用者は原則として7日以内に賃金を支払い、従業員の権利に属する金品を返還しなければなりません。争いがある場合でも、異議のない部分は期間内に支払う必要があります。

賞与は、就業規則、賃金規程、雇用契約書、過去の支給実態によって扱いが変わります。「毎年出していたから今回も当然」とも、「廃業だからゼロでよい」とも一概には言えません。支給日在籍要件や会社業績条項を確認します。

退職金は規程の有無で判断する

退職金は、法律上すべての会社に支払い義務があるものではありません。ただし、就業規則や退職金規程に支給条件が定められている場合は、廃業時もその内容に沿った対応が必要です。

資金が不足している場合でも、経営者が一方的に不払いを決めるのは危険です。分割払い、支払時期、優先順位を検討する場合は、労務や法務の専門家に確認し、従業員へ丁寧に説明する必要があります。

有給休暇は消化を基本に調整する

年次有給休暇は、本来は休暇として取得させる制度です。金銭を支払っても、有給休暇を与えたことにはなりません。退職までに消化できるよう、最終出勤日と廃業日を逆算して勤務計画を作ることが基本です。

退職時に残った有給休暇をどう扱うかは、実務上トラブルになりやすい部分です。会社が当然に買い取る義務があるとは限りませんが、労使の合意により精算するケースもあります。従業員ごとの残日数を早めに確定しましょう。

資金不足なら未払賃金立替払制度も確認する

倒産に近い状態で廃業する場合、給与や退職金の未払いが生じることがあります。この場合、一定の要件を満たせば未払賃金立替払制度を使える可能性があります。対象は定期賃金と退職金で、賞与は含まれず、立替払額は未払賃金総額の80%が基本です。

注意点もあります。制度の対象は一定範囲の未払賃金であり、すべての損失を補うものではありません。解雇予告手当についても、給与や退職金と同じ扱いで当然に立替払されると考えない方が安全です。

離職票・税金・社会保険を途切れさせない

従業員にとって、退職後の書類は生活資金に直結します。社長が「後で送る」と言ったまま遅れると、失業給付、転職先での年末調整、健康保険の切替に影響します。

離職票の手配を遅らせない

従業員が雇用保険の基本手当を受けるには、離職票が必要です。事業主は、従業員が離職により雇用保険の被保険者でなくなったとき、資格喪失届を離職日の翌々日から10日以内に公共職業安定所へ提出する必要があります。離職証明書には、賃金支払状況や離職理由を正しく記載します。

会社都合退職か自己都合退職かは、従業員の給付に影響します。廃業による解雇であるにもかかわらず、安易に自己都合のような説明をすると、強い不信感を招きます。ここは正確に処理すべきです。

源泉徴収票は退職後の税金精算に必要

廃業しても、会社は給与所得の源泉徴収票を従業員へ交付する必要があります。年の中途で退職した方については、退職の日以後1か月以内に受給者へ交付しなければならないとされています。

源泉徴収票は、転職先での年末調整や本人の確定申告に使います。廃業が11月や12月に近い時期の場合、年末調整を会社で行うのか、従業員が転職先や確定申告で精算するのかを早めに案内しておくと混乱を減らせます。

退職金を支払う場合は退職所得の書類も確認する

退職金を支払う場合は、退職所得の源泉徴収票も関係します。退職手当等の支払者は、原則として退職後1か月以内に退職所得の源泉徴収票等を交付する必要があります。

退職金は、通常の給与とは税金の計算方法が異なります。従業員が「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているかどうかでも源泉徴収の扱いが変わるため、支払前に確認します。

健康保険と年金の選択肢を案内する

退職後の健康保険には、国民健康保険、家族の扶養、任意継続などの選択肢があります。任意継続は、退職後も選択により最長2年間、退職前の健康保険の被保険者になることができる制度です。

会社が従業員の代わりにすべてを決めることはできません。ただし、資格喪失証明書など、従業員が市区町村や保険者で手続するための書類を速やかに準備することはできます。従業員の不安を減らすためにも、窓口や必要書類を一覧化して渡すとよいでしょう。

従業員説明の順番でトラブルを減らす

廃業の説明は、法律上の通知だけで終わりません。従業員が知りたいのは「自分はいつまで働くのか」「お金は払われるのか」「次の生活はどうなるのか」です。ここを避けると、感情的な対立が起きやすくなります。

最初の説明では決まったことと未定のことを分ける

経営者は、廃業日、最終営業日、解雇日、給与支払日、退職金、離職票、社会保険の手続を整理してから説明します。未定の事項がある場合は、未定であることと回答予定日を伝えます。

「たぶん大丈夫」「後で考える」といった言い方は避けるべきです。従業員は生活設計を立てるために、具体的な日付と金額を必要としています。

個別面談の場を作る

全体説明だけでは、従業員ごとの事情を拾いきれません。家族を扶養している人、住宅ローンがある人、育児や介護をしている人、再就職が難しい年齢層の人では、必要な情報が異なります。

個別面談では、退職条件、残有給、最終給与、離職票、退職証明書、紹介できる転職先の有無を確認します。経営者が直接すべてを対応できない場合でも、総務担当者や専門家と役割分担して進めることが重要です。

情報管理にも注意する

廃業情報が取引先や金融機関へ先に伝わると、売掛金の回収、仕入先対応、従業員の士気に影響します。反対に、従業員への説明が遅すぎると、社内から不満が広がります。

説明の順番は、会社の状況により異なります。一般には、金融機関、主要取引先、幹部社員、全従業員の順番を検討し、いつ誰に何を伝えるかを事前に決めておきます。M&Aを検討している場合は、秘密保持が特に大切です。

再就職支援は信頼を残す対応になる

法律上、すべての会社に再就職先を用意する義務があるわけではありません。それでも、取引先への紹介、ハローワークの案内、資格や経験の棚卸し、退職証明書の発行などは、従業員にとって大きな助けになります。

廃業後も地域で暮らす経営者にとって、従業員との関係は終わりません。丁寧な対応は、会社を閉じた後の評判にもつながります。

雇用を残すなら廃業前にM&Aを検討

廃業を考える経営者の中には、「後継者がいないから仕方ない」と考えている方が少なくありません。ですが、従業員、取引先、技術、店舗、許認可、顧客基盤に価値がある会社なら、廃業前に第三者承継を検討する余地があります。

株式譲渡なら雇用契約を残しやすい

中小企業の会社売却では、株式譲渡が使われることがあります。株式譲渡は、会社の株主が変わる方法です。会社そのものは存続するため、雇用契約や取引先との契約を比較的そのまま維持しやすい点があります。

もちろん、買い手企業との条件交渉は必要です。従業員の雇用継続、役職、給与水準、勤務地、退職金制度、社長の引継期間などを、譲渡条件の中で確認していきます。雇用を守りたいなら、価格だけで買い手を選ばないことが大切です。

事業譲渡は従業員の同意が重要になる

事業譲渡は、会社の一部または全部の事業を買い手へ移す方法です。事業、設備、顧客、契約などを選んで譲渡できる一方、従業員の雇用を移すには個別の同意や新たな雇用条件の調整が必要になるのが通常です。

事業譲渡では、全従業員が同じ条件で引き継がれるとは限りません。だからこそ、買い手候補との初期交渉の段階から、どの部署の誰を引き継ぐのか、処遇はどうなるのかを確認する必要があります。

廃業費用と譲渡対価を比べる

廃業では、在庫処分、設備撤去、原状回復、解雇関連費用、専門家報酬などが発生します。一方、M&Aが成立すれば、経営者が譲渡対価を受け取り、従業員の雇用や取引先との関係を残せる可能性があります。

ただし、M&Aにも時間がかかります。買い手探し、企業価値の確認、資料準備、条件交渉、デューデリジェンス、最終契約が必要です。資金繰りが尽きてからでは選択肢が狭まります。廃業を考え始めた時点で、並行して検討するのが現実的です。

相談前に整理したい情報

相談前には、直近3期分の決算書、月次試算表、従業員一覧、賃金台帳、退職金規程、主要取引先、借入金、個人保証、賃貸借契約、許認可を整理します。これらは買い手が雇用継続や譲渡価格を判断する材料になります。

従業員の年齢構成や資格、技術者の有無、店長や工場長など現場を支える人材の情報も重要です。人が価値の中心になる会社は多いです。

従業員への公表時期は慎重に決める

M&Aでは、検討初期の段階で従業員に広く伝えると、不安から退職者が出ることがあります。反対に、成約直前まで何も説明しないと、不信感が残ることもあります。

一般には、秘密保持を守りながら、買い手との条件が固まり、雇用方針を説明できる段階で公表することが多いです。幹部社員に先に協力を求めるか、全従業員へ同時に説明するかは、会社の規模や組織風土によって変わります。

まとめ

会社廃業では、従業員への30日前予告、解雇予告手当、給与・退職金・有給休暇、離職票、源泉徴収票、社会保険の対応を早めに整理することが重要です。雇用をできるだけ残したい場合は、廃業だけでなくM&Aによる第三者承継も比較し、資金繰りに余裕がある段階で相談準備を進めましょう。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人


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