商法と会社法の違いや改正内容、重要な用語を詳しく解説します。企業経営者やビジネスパーソン必見の内容です。M&Aにおける両法の役割や法的手続についても詳細に説明しています。
目次
▶目次ページ:M&Aの種類・方法(のれん、法務)
商法と会社法は、ビジネスの世界で重要な役割を果たす法律ですが、その内容や適用範囲には違いがあります。ここでは、商法と会社法の違いを明確にし、近年の改正内容も含めて解説します。
商法は、日本国内における商取引全般を規定する基本的な法律です。以下に商法の主な特徴をまとめます。
商法と会社法には、以下のような主要な違いがあります。
2006年5月1日に施行された新会社法により、商法と会社法の内容に大きな変更がありました。以下に主な改正点をまとめます。
平成18年 商法改正 |
旧(施行前) |
新(施行後) |
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設立できる会社 |
株式会社、有限会社、合名会社、合資会社 |
株式会社、合名会社、合資会社 |
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最低資本金規制 |
株式会社 1,000万円以上 |
制限なし(1円以上) |
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発起設立の払込金 |
必要 |
銀行等の残高証明でよい |
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会社の機関設計 |
株式会社 株主総会+取締役会+監査役 |
株式譲渡制限会社では、取締役会の設置が任意になる。株主総会+取締役(最低1人)も可 |
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取締役・監査役の人数・任期 |
取締役 |
株式会社 3人以上 任期2年 |
3人以上、任期2年が原則 |
監査役 |
株式会社 1人以上、任期4年 |
1人以上、任期4年が原則 |
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会計参与 |
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規定なし |
新設。すべての株式会社に設置可能 |
株主総会の招集 |
招集通知の発送 |
会日の2週間前 |
取締役会非設置会社 会日の1週間前(定款で短縮可能) |
召集通知の手段 |
書面又は電磁的方法 |
取締役会非設置会社 書面等以外の方法でも可能 |
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招集通知の形式 |
会議の目的事項を記載 |
取締役会非設置会社 会議の目的事項の記載不要、計算書類等の添付も不要 |
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株主総会で決定できる事項 |
株式会社 法令や定款で定められた事項 |
取締役会非設置会社 すべての事項が決定できるように規制を緩和 |
商法と会社法は、企業活動を円滑に進め、関係者の利益を保護するための重要な法律です。それぞれが異なる側面から企業活動を規制し、支えています。
商法は、商取引全般に関する基本的なルールを定めています。以下に商法が対象とする主な範囲と取引を示します。
会社法は、会社の設立から解散まで、企業の組織運営に関する詳細な規定を設けています。以下に会社法が規定する主な内容を示します。
会社法の規定により、企業の組織運営の透明性が確保され、株主や債権者の利益が保護されています。また、企業の柔軟な組織設計や再編が可能になり、経営の効率化や事業の拡大を支援しています。
商法と会社法には、ビジネスや法律の専門家でなければ馴染みの薄い用語が多く使用されています。これらの用語を理解することは、企業活動を適切に行う上で非常に重要です。
商法には、以下のような基本的な概念が含まれています。
法人
商業登記
商行為
負債
代理商
売買
交換
貸借
請負
預り
委託
これらの概念を理解することで、商法上の取引や契約を適切に把握し、実践することができます。
会社法には、企業経営や法律上の権利・義務に関わる多くの専門用語があります。以下に主要な用語とその意味を解説します。
株式会社
取締役
役員報酬
株主総会
社債
資本提携
財務諸表
有限責任
定款
株主権
これらの用語を理解することで、会社法に基づく企業活動や意思決定プロセスをより深く把握することができます。
M&A(合併・買収)は、企業の成長戦略や事業再編の重要な手段として広く活用されています。商法と会社法は、M&Aを行う際の法的枠組みを提供し、関係者の利益を保護する重要な役割を果たしています。
M&Aにおける商法・会社法の意義
M&Aに関する主な法的手続
・株主総会の承認(原則として)
・合併契約書の作成
・債権者保護手続
・株式譲渡契約の締結
・取締役会の承認(大規模な買収の場合)
M&Aにおける法令遵守の重要性
会社法改正によるM&A手続の変更点
M&Aにおける法務デューデリジェンスの重要性
クロージング後の法的対応
M&Aを成功させるためには、商法・会社法の規定を十分に理解し、適切な法的手続を踏むことが不可欠です。また、法務、財務、税務など多角的な視点からのアプローチが必要となるため、専門家のアドバイスを受けながら進めることが重要です。
商法と会社法は、企業活動の基盤となる重要な法律です。商法は一般的な商取引を規定し、会社法は会社組織に特化した詳細な規定を設けています。両法の違いと改正点を理解することで、適切な企業運営やM&Aの実施が可能となります。また、これらの法律に関連する用語や概念を把握することは、ビジネスにおける意思決定や戦略立案に不可欠です。今後も法改正の動向に注目し、最新の法的枠組みに基づいた企業活動を行うことが重要です。
著者|土屋 賢治 マネージャー
大手住宅メーカーにて用地の取得・開発業務、法人営業に従事。その後、総合商社の鉄鋼部門にて国内外の流通に携わる傍ら、鉄鋼メーカーの事業再生に携わる。外資系大手金融機関を経て、みつきグループに参画