M&A買手の業種選択は重要です。同業種、異業種、投資ファンドそれぞれのメリットとデメリットを解説。適切な譲渡先選びのポイントを紹介し、成功するM&Aへの道筋を示します。
目次
▶目次ページ:第三者承継とは(様々なM&A)
M&A(合併・買収)において、買手企業の業種は重要な要素です。売り手企業にとって、どの業種の企業に譲渡するかによって、M&A後の事業展開や企業文化に大きな影響を与える可能性があります。ここでは、M&Aにおける買手企業の業種分類について詳しく見ていきましょう。
M&Aにおける買手企業は、主に以下の3つに分類されます。
それぞれの買手には、固有の特徴やアプローチがあり、売り手企業にとっては譲渡先を選ぶ際の重要な判断材料となります。
実際のM&A案件では、買手企業と売り手企業の業種関連性にどのような傾向があるのでしょうか。調査結果によると、以下のような傾向が見られます。
これらの数字から、買手企業は自社と関連のある業種を希望する傾向が強いのに対し、売り手企業はより幅広い業種の企業を検討している様子がうかがえます。
M&Aを検討する際は、これらの傾向を踏まえつつ、自社の状況や目的に最も適した買手企業を選定することが重要です。
M&A実施意向別、希望する相手先企業の業種
M&Aにおいて、買手企業の業種によってさまざまなメリットとデメリットがあります。ここでは、同業種企業、異業種企業、投資ファンドのそれぞれについて、詳しく見ていきましょう。
同業種企業が買手となる場合、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
デメリット
同業種企業への譲渡は、特に調剤薬局、医療機器卸、食品卸、食品小売、運送業など、スケールメリットが効果的な業種で多く見られます。これらの業種では、大手企業による業界再編が加速しており、M&Aの動機が後継者問題よりも、大手との提携や統合による効率化、スケールメリットの獲得である場合も多いです。
異業種企業が買手となる場合、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
デメリット
異業種企業への譲渡の大きなメリットは、売り手企業の自主性が尊重されやすい点です。買手企業は売り手事業の経営経験がないため、売り手の経営理念や商売スタンスなどが継続されるケースが多いです。
ただし、非同業のM&Aでは、後任経営者(業界経験、経営経験のある人材)を派遣してもらえない可能性もあります。売り手企業の社内に後継経営者として適切な人材がおらず、後継社長を買手企業から派遣してもらいたい場合は、その旨をしっかり伝え、買手企業と認識のズレがないようにする必要があります。
投資ファンドが買手となる場合、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
デメリット
投資ファンドは、投資先などによって複数の種類に分かれます。主な種類には以下があります。
投資ファンドへの譲渡は、資金調達や経営の継続性という点でメリットがありますが、従業員の理解を得ることが難しいケースもあります。
M&Aにおける買手企業の業種選択は、売り手企業の将来的な発展に大きく影響します。同業種、異業種、投資ファンドのそれぞれに特徴があり、メリット・デメリットを十分に理解した上で選択することが重要です。また、買手企業のビジョンやM&Aの目的について十分な説明を受け、慎重に検討することが必要です。M&A仲介会社や買手企業とよく相談し、幅広い選択肢の中から最適な譲渡先を見つけることが、成功するM&Aへの近道となります。
著者|土屋 賢治 マネージャー
大手住宅メーカーにて用地の取得・開発業務、法人営業に従事。その後、総合商社の鉄鋼部門にて国内外の流通に携わる傍ら、鉄鋼メーカーの事業再生に携わる。外資系大手金融機関を経て、みつきグループに参画