廃業にかかる費用の内訳と抑える方法を解説


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廃業費用はいくら?法人・個人の相場と会社売却の判断軸

廃業費用は法人と個人事業主で大きく異なります。登記・公告・原状回復・従業員対応の相場を整理し、休眠やM&A(合併・買収)を含めた判断軸を解説します。

目次:

  1. 廃業費用は固定費と変動費を分けて見る
  2. 法人・個人事業主で異なる費用の目安
  3. 費用が膨らむ会社に共通する落とし穴
  4. 資産で負債を返せない廃業は慎重に進める
  5. 廃業前にM&Aを検討すべき会社の特徴
  6. 費用を抑えるために早めに整理すること
  7. まとめ

廃業費用は固定費と変動費を分けて見る

廃業費用を考えるとき、「登記代だけで済むのでは」と見積もる経営者は少なくありません。ところが実務では、会社を閉じる費用は手続そのものより、事業を片付ける費用で大きく変わります。

法人の廃業費用は、債務超過がなく通常清算で進められる場合でも、数十万〜数百万円になることがあります。個人事業主は登記が不要なため、設備や店舗がなければ0円に近い形で廃業できる場合もあります。

必ずかかる固定費は法人で約8万円

株式会社などの法人は、解散して清算を終えるまでに登記と公告が必要です。代表的な実費は、解散登記の登録免許税30,000円、清算人選任登記9,000円、清算結了登記2,000円です。ここに官報公告の掲載費が加わります。

官報公告は、債権者に対して会社が清算に入ることを知らせるための公告です。公告文の行数によりますが、会社の解散公告では3万〜4万円台になることが多く、登記費用と合わせると最低でも7万〜8万円程度を見込む必要があります。

公告期間があるためすぐには終わらない

会社は解散後、債権者に対して2か月以上の期間を定めて債権の申出を求める必要があります。つまり、費用を支払えば即日で会社が消えるわけではありません。ここを誤解すると、賃料や人件費などの固定費が想定より長く残ることがあります。

変動費は店舗・設備・人員で大きく変わる

廃業費用で最も差が出るのは、原状回復、設備処分、在庫処分、従業員対応です。小さな事務所だけなら数十万円で済むこともありますが、飲食店、工場、倉庫、医療・介護施設などでは、内装撤去や特殊設備の搬出により数百万円単位になることがあります。

原状回復費は、賃貸借契約の内容や業種によって変わります。坪単価で数万円から、特殊な内装や重機撤去がある場合はそれ以上になることもあります。敷金や保証金で足りると思っていたら、追加請求が出る。こういうケースは珍しくありません。

在庫や設備は売れる資産とは限らない

決算書上は資産に見える在庫や設備でも、清算時にその金額で売れるとは限りません。古い機械、専用性の高い什器、期限の近い商品は、買い手がつかず処分費だけが発生することがあります。

一方で、同業者に需要がある設備や、状態の良い車両・工具・什器は売却できる可能性があります。廃棄を決める前に、買取業者と同業者の両方に見積もりを取ることが大切です。

チェック項目                     実施状況                完了予定日

登記費用の資金確保                              2025-07-15

官報公告の原稿作成                              2025-07-20

在庫処分先3社へ見積                           2025-07-30

原状回復工事の相見積                           2025-08-05

清算人候補者の選任              ✅                2025-07-10

解散公告掲載日決定                              2025-08-10

法人・個人事業主で異なる費用の目安

同じ「廃業」でも、法人と個人事業主では手続の重さが違います。費用を比較するときは、事業規模だけでなく、会社形態、契約名義、借入の有無まで分けて見る必要があります。

法人は自力でも実費と税務対応が必要

法人が自力で廃業手続を行う場合、登記と官報公告の実費だけなら7万〜8万円程度が最低ラインです。ただし、実際には解散時の決算、清算中の申告、残余財産の分配、株主への説明などが必要になります。

司法書士に登記を依頼する場合は数万円から十数万円、税理士に解散・清算の申告を依頼する場合は十数万円から数十万円が追加でかかることがあります。法人全体では、専門家に依頼する場合、40万〜90万円程度に変動費を加えた金額を見ておくと現実的です。

有限会社も原則として法人の手続が必要

有限会社は現在、特例有限会社として存続している法人です。そのため、廃業する場合は株式会社と同じように解散・清算の登記や公告が必要になります。小規模な有限会社では処分費が少ないこともありますが、登記や公告が不要になるわけではありません。

個人事業主は届出中心だが資産処分に注意する

個人事業主は、法人のような解散登記や清算結了登記は不要です。税務署への個人事業の廃業届出や、青色申告の取りやめ、消費税関係の届出などを行います。自宅で小さく営んでいた事業で、在庫や設備がほとんどなければ、廃業費用が0円に近いこともあります。

ただし、店舗を借りている、従業員を雇っている、車両や設備を事業用に使っている場合は別です。個人事業でも原状回復費、リース解約金、在庫処分費、従業員への支払いは発生します。

消費税の課税事業者は廃業時の資産にも注意

個人事業主が消費税の課税事業者である場合、事業廃止時に事業用資産を自家用に転用すると、消費税の計算上、譲渡したものとみなされることがあります。専門用語では「みなし譲渡」と呼ばれます。車両や高額な設備を持っている場合は、廃業前に税務上の扱いを確認しておくと安心です。

費用が膨らむ会社に共通する落とし穴

廃業費用が大きくなる会社には、いくつか共通点があります。数字だけでなく、契約書や従業員対応を後回しにしている点です。

賃貸契約の原状回復条項を見ていない

廃業を検討したら、最初に確認したいのが賃貸借契約書です。事務所、店舗、工場、倉庫の契約には、退去時の原状回復義務が定められていることが多くあります。

特に飲食店や製造業では、床、壁、給排水、電気配線、排気設備、重量機械の撤去が問題になります。見積りを取る前に「保証金で足りるだろう」と考えるのは危険です。M&A実務では、ここで判断が止まることがあります。

居抜きや事業譲渡で回避できる場合がある

設備を撤去せず、買い手や次の借主に引き継げる場合、原状回復費を抑えられることがあります。飲食店やクリニック、介護施設、工場などでは、設備そのものが買い手にとって価値を持つことがあります。

廃業を決める前に、居抜き譲渡や事業譲渡の可能性を調べる価値があります。

従業員対応を最後に回してしまう

従業員を雇っている会社では、廃業費用に退職金や解雇予告手当が含まれることがあります。退職金規程がある会社では、規程に基づく支払いが必要です。また、解雇する場合には、原則として30日前の予告や、予告に足りない日数分の解雇予告手当が問題になります。

従業員にとって廃業は生活に直結します。説明が遅れるほど不安が大きくなり、退職時期や引継ぎでトラブルになりやすくなります。

雇用を残す選択肢としてM&Aがある

廃業では雇用を終了させる方向になりますが、M&Aでは買い手企業が従業員を引き継ぐ形を検討できます。すべての従業員の雇用が必ず守られるわけではありませんが、少なくとも廃業より選択肢は広がります。

清算時の税務を軽く見てしまう

法人は解散して終わりではありません。解散時点の申告、清算中の申告、残余財産が確定したときの申告などが必要になります。残った財産を株主に分配する場合、受け取る側でみなし配当や譲渡所得の問題が出ることもあります。

「会社のお金を最後に自分へ戻すだけ」と単純に考えると、税負担を見誤ります。廃業後に現金がいくら残るかは、処分費と税金を引いた後で判断する必要があります。

個人事業主は廃業後の費用も確認する

個人事業主は、廃業後に発生した費用でも、一定の要件を満たせば廃業した年または前年の必要経費にできる場合があります。たとえば、廃業後に支払った原状回復費や事業関連の未払費用などです。

ただし、何でも経費にできるわけではありません。領収書、契約書、請求書、支払日が分かる資料を残し、事業との関係を説明できるようにしておくことが重要です。

資産で負債を返せない廃業は慎重に進める

会社の財産で借入金や未払金をすべて返せる場合は、通常清算を検討できます。反対に、資産を処分しても負債を返せない状態であれば、通常清算だけで進めにくいことがあります。

返済できない会社は法的手続の検討が必要

債務超過とは、会社の資産より負債が多い状態です。ただし、債務超過だから必ずすぐ破産という意味ではありません。実際には、資産の換金可能性、金融機関との交渉余地、スポンサー候補の有無、債権者数などを見て判断します。

清算が難しい場合や債務超過の疑いがある場合は、特別清算や破産など、裁判所が関与する手続を検討します。この場合、弁護士費用や裁判所への予納金などが発生します。資金が尽きてから相談すると、選べる方法が限られます。

個人保証がある借入は経営者個人にも影響する

中小企業では、社長が金融機関借入の個人保証をしていることが少なくありません。会社が返済できない場合、経営者個人に請求が及ぶ可能性があります。

廃業費用だけでなく、借入残高、担保、保証人、リース債務、未払税金を一覧にすることが必要です。ここを見ずに廃業を進めると、会社を閉じた後に個人の生活資金まで圧迫されます。

休眠は一時停止であり廃業ではない

廃業費用をすぐに負担できない場合、休眠会社にする選択肢もあります。休眠とは、事業活動を止めつつ法人格を残す状態です。解散登記や官報公告が不要なため、初期費用は抑えやすくなります。

ただし、休眠中も会社は存在します。税務申告、地方税の均等割、役員変更登記、固定資産税、リース料などが残る場合があります。長期間登記がない株式会社は、法務局による休眠会社整理の対象になる点にも注意が必要です。

廃業前にM&Aを検討すべき会社の特徴

廃業は、会社をなくす手続です。一方、M&Aは、会社や事業を第三者へ引き継ぐ方法です。後継者がいない会社でも、買い手が見つかれば、従業員、取引先、設備、許認可、ブランドを残せる可能性があります。

黒字または固定客がある会社は売却余地がある

営業利益が出ている会社、固定客がいる会社、許認可や技術を持つ会社は、買い手から評価される可能性があります。たとえ経営者が高齢で後継者がいなくても、事業そのものに価値があれば、第三者承継の対象になります。

廃業では、原状回復や在庫処分にお金を払います。M&Aでは、買い手が事業を引き継ぎ、経営者が譲渡対価を受け取る可能性があります。ここが大きな違いです。

売却できるかは決算書だけで決まらない

買い手は、利益だけでなく、取引先の継続性、従業員の定着、許認可、立地、設備の状態、経営者の引継ぎ協力も見ます。赤字でも、地域に必要な店舗や技術、人材がある会社は、事業譲渡で引き継げる場合があります。

株式譲渡と事業譲渡では費用と税金が違う

会社売却の代表的な方法には、株式譲渡と事業譲渡があります。株式譲渡は、経営者が持つ株式を買い手へ譲渡し、会社ごと引き継ぐ方法です。事業譲渡は、会社の中の事業、資産、契約などを選んで譲渡する方法です。

株式譲渡では、経営者個人に譲渡所得税がかかります。非上場会社の株式でも、原則として申告分離課税により所得税・住民税などを計算します。事業譲渡では、譲渡する資産や負債、消費税、法人税への影響を確認する必要があります。

手取り額で比較する

廃業とM&Aは、費用だけで比べても判断を誤ります。比べるべきは、最終的に経営者の手元にいくら残るかです。

廃業の場合は、資産の処分代金から、原状回復費、退職金、専門家報酬、税金を差し引きます。M&Aの場合は、譲渡対価から、専門家報酬、税金、借入返済などを差し引きます。見た目の費用が高くても、譲渡対価が入ることで手取りが大きく変わることがあります。

費用を抑えるために早めに整理すること

廃業費用を抑える一番の方法は、早く見える化することです。資金が減ってから動くほど、選択肢は狭くなります。

最初に確認する資料

廃業かM&Aかを判断する前に、次の資料を整理します。

・直近3期分の決算書
・借入金の返済予定表
・リース契約書
・賃貸借契約書
・在庫と設備の一覧
・従業員名簿と退職金規程
・株主名簿
・主要取引先との契約書
・許認可や届出の資料

これらをそろえると、廃業費用の見積もりも、M&Aの初期診断も進めやすくなります。

相見積もりを取る順番も大切

原状回復工事、設備処分、在庫処分は、1社だけの見積もりで決めない方が安全です。特に原状回復は、貸主指定業者だけでなく、契約上可能であれば自社手配の業者にも見積もりを依頼します。

在庫や設備は、廃棄業者より買取業者、買取業者より同業者の方が高く評価することがあります。処分費を払う前に、売却可能性を確認しましょう。

相談先は目的に合わせて分ける

廃業手続の登記は司法書士、税務申告は税理士、債務超過や破産は弁護士、従業員対応は社会保険労務士が主な相談先です。M&Aを検討する場合は、会社売却や事業譲渡に詳しい専門家へ相談します。

すべてを1人で判断する必要はありません。ただし、相談の順番は重要です。債務超過の可能性がある会社は、M&Aより先に法的整理の要否を確認すべき場合があります。黒字で後継者不在の会社は、廃業見積もりと並行してM&Aの可能性を確認する方が合理的です。

無料相談前に伝えるとよい情報

相談時には、売上、利益、借入残高、従業員数、店舗や工場の有無、後継者の有無、希望する引退時期を伝えます。数字が正確でなくても、概算があるだけで初期判断はしやすくなります。

「廃業しかない」と決めつける前に、費用、税金、雇用、取引先、個人保証を並べて比較することが大切です。特に会社売却を検討するなら、買い手探しには時間がかかるため、廃業予定日の6か月以上前から動くのが望ましいです。

まとめ

廃業費用は、法人なら登記・公告だけで約8万円、専門家報酬や原状回復、在庫処分、従業員対応を含めると数十万〜数百万円に膨らむことがあります。個人事業主でも店舗や設備があれば負担は残ります。廃業、休眠、M&Aを手取り額と関係者への影響で比べ、早めに専門家へ相談することが重要です。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人


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