M&Aにおける買収プレミアムとは?

M&Aにおける買収プレミアムの意味や発生理由、算出方法、注意点を詳しく解説します。実際の事例や専門家への相談方法も紹介し、M&A戦略の成功に役立つ情報を提供します。

目次

  1. 買収プレミアムとは
  2. M&A取引における買収プレミアム率の割合
  3. 買収プレミアムを付ける背景
  4. 買収プレミアムの計算方法
  5. 買収プレミアム設定時の留意事項
  6. 買収プレミアムを伴った実際のM&A事例
  7. 買収プレミアムに関する専門家への相談
  8. まとめ

買収プレミアムとは

買収プレミアムとは、M&A(合併・買収)取引において、買収側企業が支払う金額と対象企業の市場価値(時価総額)との差額を指します。具体的には、株式市場で過半数の株式を取得しようとする場合、通常の市場価格では既存株主が売却に応じないことが多いため、市場価格に上乗せした価格を提示する必要があります。この上乗せ分が買収プレミアムとなります。

簡単に言えば、買収金額から時価総額を差し引いた金額が買収プレミアムとなります。この概念は、M&A取引の重要な要素であり、取引の成否や条件に大きな影響を与える要因となります。

M&A取引における買収プレミアム率の割合

M&A取引における買収プレミアムの平均的な割合は、およそ30%から40%の範囲内とされています。例えば、対象企業の時価総額が100億円の場合、平均的な取引価格は130億円から140億円程度になると想定されます。

ただし、この数値はあくまで平均的な目安であり、実際の取引では様々な要因によって大きく変動する可能性があります。特に、譲渡側企業が特殊な技術や高いブランド力を持っている場合には、40%を超える買収プレミアムが提示されることもあります。

したがって、M&A取引を検討する際には、この平均値を参考にしつつも、個々の案件の特性や市場環境、両社の状況などを総合的に考慮して適切な買収プレミアムを設定することが重要です。

買収プレミアムを付ける背景

買収プレミアムが発生する背景には、いくつかの要因があります。以下、主な理由について詳しく見ていきましょう。

期待されるシナジー効果

買収プレミアムが支払われる最も一般的な理由の一つは、買収後に期待されるシナジー効果です。シナジー効果とは、2つの企業が統合することで生まれる相乗効果のことを指します。

具体的には以下のようなシナジー効果が期待されます:

1. 原材料の共同購買による費用削減

2. 配送会社の集約による物流コストの削減

3. 物流拠点の統合によるインフラ費用の削減

4. ブランド力の相互活用による売上拡大

5. 技術やノウハウの共有による製品開発力の向上

6. 市場シェアの拡大による競争力の強化

これらのシナジー効果によって、将来的な収益増加や費用削減が見込まれる場合、買収側企業はその期待値を買収プレミアムとして支払う意思を持つことがあります。

無形資産の評価

企業価値を構成する要素の中には、財務諸表に直接反映されない無形資産が存在します。これらの無形資産が高く評価される場合、買収プレミアムが発生することがあります。

無形資産には以下のようなものが含まれます:

1. 知的財産権(特許、商標、著作権など)

2. 経営者や従業員の能力やスキル

3. 顧客との関係性や顧客データ

4. 企業のブランド価値

5. 企業文化や組織力

6. 研究開発の成果や潜在的な技術

これらの無形資産は、直接的に株価に反映されにくいものの、企業の長期的な価値創造能力に重要な影響を与えます。買収側企業がこれらの無形資産に高い価値を見出した場合、その評価額が買収プレミアムとして上乗せされることがあります。

支配権獲得に対する対価

買収プレミアムが発生する別の重要な理由として、支配権獲得に対する対価、いわゆるコントロールプレミアムがあります。

株式市場で形成される株価は、通常、市場で1株を売買する際の価格を反映しています。しかし、M&A取引では、過半数の株式取得を目指すことが多く、これは企業の支配権を獲得する行為に相当します。

支配権を獲得することで、買収側企業は以下のような権限を得ることができます:

1. 経営方針の決定

2. 役員の選任・解任

3. 重要な事業戦略の策定

4. 配当政策の決定

5. 合併や分割などの組織再編の実施

これらの権限は、単なる株式投資以上の価値を持つため、買収側企業はその対価として市場株価を上回る価格を提示することがあります。

一方、既存株主の視点からも、支配権の移転に伴うリスクへの補償として買収プレミアムが機能します。例えば、TOB(株式公開買付)に応じない場合、企業が非公開化されることで株式の流動性が失われるリスクがあります。買収プレミアムは、こうしたネガティブな要因に対する見返りとしての側面も持っています。

買収企業側のメリット

買収プレミアムを支払うことで、買収企業側にもいくつかの実務的なメリットがあります。

1. M&A取引の迅速化: 適切な買収プレミアムを設定することで、譲渡側企業の協力を得やすくなり、交渉から取引完
   了までの期間を短縮できる可能性があります。

2. 交渉上の優位性: 競合他社が存在する場合、魅力的な買収プレミアムを提示することで、自社が優先的に選ばれる
   可能性が高まります。また、交渉全体を通じて有利な立場を維持しやすくなります。

3. 譲渡側の積極的な協力: 高い買収プレミアムは、譲渡側企業に自社が高く評価されているという印象を与えます。
   これにより、譲渡側の経営陣や従業員がM&A後の統合プロセスにも積極的に協力する姿勢を引き出せる可能性があ
   ります。

4. 市場での評価向上: 適切な買収プレミアムを伴うM&A取引は、買収企業の戦略的判断力や成長への積極性を市場に
   示すことができ、株価にポジティブな影響を与える可能性があります。

これらのメリットは、直接的な金銭的利益だけでなく、M&A取引の円滑な進行や長期的な企業価値向上にも寄与する可能性があります。ただし、過度に高い買収プレミアムは財務的負担を増大させるリスクもあるため、バランスの取れた判断が求められます。

買収プレミアムの計算方法

買収プレミアムを適切に算出することは、M&A取引の成功に大きく影響します。ここでは、主な計算方法について詳しく解説します。

スタンドアローンバリューを基にした算出

スタンドアローンバリュー(単独価値)とは、M&A取引によるシナジー効果を考慮せずに、対象企業単独での株主価値を評価する概念です。この方法では、対象企業の現在の財務状況と将来の成長性を独立して分析します。

スタンドアローンバリューの算出手順:

1. 財務諸表の詳細な分析

2. 将来のキャッシュフロー予測

3. 適切な割引率の設定

4. 割引キャッシュフロー法(DCF法)などによる企業価値の算出

5. 算出された企業価値と現在の時価総額との差額を買収プレミアムとする

ただし、上場企業の支配権取得を目的としたM&Aの場合、この方法が用いられることは比較的稀です。市場株価が既に企業の価値をある程度反映していると考えられるためです。

企業価値からの算出

企業価値を基に買収プレミアムを算出する方法には、主に以下の3つのアプローチがあります。

1. コストアプローチ コストアプローチは、企業の保有資産と負債を基に企業価値を算出する方法です。

主に以下の3つの手法があります

簿価純資産法

企業の財務諸表にある帳簿上の価値をもとに評価する

時価純資産法

資産と負債を市場価値で評価する

時価純資産+営業権

無形資産も考慮に入れ、包括的に評価する

コストアプローチの方法

この方法は、客観性が高く、特に中小企業のM&Aで採用されやすい特徴があります。


2. マーケットアプローチ マーケットアプローチは、類似企業の情報や過去の取引事例を参考に企業価値を算出する方法です。主な手法には以下があります: 

類似企業比較法

類似企業の平均的な企業価値を参考にして算出する

類似取引比較法

類似企業で過去に実施されたM&Aの取引内容を参考にして算出する

マーケットアプローチの方法

この方法は、市場の実態を反映しやすいという利点がありますが、適切な比較対象を見つけることが課題となります。


3. インカムアプローチ インカムアプローチは、対象企業の将来の収益予測に基づいて企業価値を評価する手法です。主な方法には以下があります

DCFDiscounted Cash Flow)法

予想される将来の利益を用いて算出する

配当還元法

過去2年間の平均配当金額を、利率10%と仮定して算出する

残余利益モデル(オルソンモデル)

株主に属する企業価値を、会計利益によって算定する

インカムアプローチの方法

この方法は、将来の成長性を考慮できる反面、予測の不確実性が高いという特徴があります。


これらの方法で算出された企業価値と、現在の市場価値(時価総額)との差額が買収プレミアムとなります。実際のM&A取引では、これらの方法を複合的に用いて、より精緻な買収プレミアムの算出を行うことが一般的です。

買収プレミアム確定時のポイント

買収プレミアムを確定する際には、以下の重要なポイントに注意する必要があります:

1. デューデリジェンスの徹底: 対象企業の詳細な調査(デューデリジェンス)を綿密に行うことが不可欠です。財
   務、法務、税務、人事などの多角的な観点から対象企業の現状と潜在的なリスクを把握します。

2. 問題点や懸念事項の反映: デューデリジェンスの結果、対象企業に問題点や懸念事項が発見された場合、それらを
   買収プレミアムの算定に反映させる必要があります。場合によっては、買収プレミアムの下方修正や、極端な場合
   はM&A自体の中止を検討することも重要です。

3. シナジー効果の現実的な評価: 期待されるシナジー効果を過大評価しないよう注意が必要です。シナジーの実現可
   能性や時期を慎重に検討し、現実的な数値を買収プレミアムに反映させましょう。

4. 市場動向の考慮: 対象企業の株価や業界全体の動向を考慮に入れることが重要です。急激な市場変動がある場合、
   買収プレミアムの再検討が必要になる可能性があります。

5. 競合他社の動向把握: 競合他社も同じ対象企業の買収を狙っている可能性があります。競合状況を適切に把握し、
   必要に応じて買収プレミアムを調整することで、M&A成功の確率を高めることができます。

6. 法規制の遵守: 買収プレミアムの設定に関連する法規制(例:TOB規制)を遵守することが不可欠です。法的リス
   クを最小限に抑えるため、必要に応じて専門家に相談しましょう。

適切な買収プレミアムの確定は、M&A取引の成功に直結する重要な要素です。これらのポイントを慎重に検討し、バランスの取れた判断を行うことが求められます。

買収プレミアム設定時の留意事項

買収プレミアムを設定する際には、いくつかの重要な留意事項があります。これらのリスクや課題を事前に認識し、適切に対処することが、M&A取引の成功につながります。

のれん減損リスクへの対応

買収プレミアムは、会計上「のれん」として計上されます。のれんとは、買収価格が取得した資産と負債の時価を超過する部分を指します。こののれんに関しては、以下のリスクに注意が必要です:

1. 減損リスク: 買収後、予想していた収益性が得られない場合、のれんの減損が発生する可能性があります。減損が
   生じると、一時的に大きな損失を計上することになり、企業の財務状況に重大な影響を与える可能性があります。

2. 定期的な償却: 日本の会計基準では、のれんは定額法に従って規則的に償却する必要があります。この償却費は毎
   期の利益を減少させる要因となります。

対応策:

1. 慎重な企業価値評価:買収プレミアムの設定時に、対象企業の将来性を慎重に評価し、過大評価を避けます。

2. 定期的なモニタリング:買収後も定期的に対象企業の業績をモニタリングし、早期に減損の兆候を把握します。

3. 統合計画の綿密な策定:買収後の統合計画を綿密に策定し、シナジー効果の早期実現を目指します。

投資回収期間の長期化

高額な買収プレミアムを支払った場合、投資金額の回収に長期間を要する可能性があります。以下のようなケースでは特に注意が必要です:

1. 対象企業の過大評価: デューデリジェンスの不備や楽観的な将来予測により、対象企業を過大評価してしまった場
   合。

2. 予想外の業績低迷: 買収後に対象企業の業績が予想を下回り、期待したシナジー効果が得られない場合。

3. 市場環境の変化: 業界全体の急激な変化や予期せぬ競合の出現により、買収時の前提条件が崩れた場合。

対応策:

1. 複数のシナリオ分析:楽観的・中立的・悲観的な複数のシナリオを想定し、各ケースでの投資回収期間を試算しま
   す。

2. フレキシブルな統合計画:市場環境の変化に応じて柔軟に統合計画を修正できるよう、予め複数の選択肢を用意し
   ておきます。

3. シナジー効果の段階的実現:短期・中期・長期でのシナジー効果実現計画を立て、段階的に投資回収を進める戦略
   を検討します。

買収後の株価への影響

買収プレミアムを含むM&A取引が、買収側企業の株価にどのような影響を与えるかは、ケースバイケースで異なります。以下のような要因が株価に影響を与える可能性があります:

1. 市場の評価: M&A取引の戦略的意義や買収プレミアムの妥当性に対する市場の評価。

2. シナジー効果の実現性: 公表されたシナジー効果の実現可能性に対する投資家の見方。

3. 財務への影響: 買収に伴う負債の増加や財務指標の変化に対する懸念。

4. 統合リスク: 買収後の統合プロセスの困難さに対する市場の認識。

対応策:

1. 明確な戦略説明:M&A取引の戦略的意義と期待されるシナジー効果を市場に明確に説明します。

2. 適切な情報開示:買収プレミアムの算定根拠や統合計画を適切に開示し、市場の理解を促進します。

3. 財務健全性の維持:過度な負債増加を避け、財務の健全性を維持する方針を示します。

4. 統合進捗の定期報告:買収後の統合進捗状況を定期的に市場に報告し、透明性を確保します。

買収プレミアムの設定は、これらのリスクと潜在的なリターンのバランスを取る必要がある複雑な意思決定プロセスです。長期的な企業価値向上の視点から、慎重かつ戦略的に判断することが重要です。

買収プレミアムを伴った実際のM&A事例

買収プレミアムは、実際のM&A取引でどのように適用されているのでしょうか。ここでは、具体的な事例を紹介し、その特徴や背景について解説します。

1. HCホールディングスによる日立化成の買収(2020年) 

 o 買収プレミアム:13.48%

 o 背景:昭和電工の連結子会社化を目指す戦略的買収

 o 目的:技術や事業の統合による世界的な機能性化学メーカーへの成長

2. ヤフーによるZOZOの買収(2019年) 

 o 買収プレミアム:20.96%

 o 背景:ECサイト事業の強化

 o 目的:ZOZOの物流システム「ZOZOBASE」のノウハウ獲得

3. ニトリによる島忠の買収(2020年) 

 o 買収プレミアム:91.10%

 o 特徴:競合他社の提示価格を大幅に上回る高額な買収プレミアム

 o 背景:激しい買収競争の結果

4. 三井不動産による東京ドームの買収(2021年) 

 o 買収プレミアム:44.93%

 o 目的:東京ドームの施設運営ノウハウを活用した収益向上

 o 背景:不動産デベロッパーによるエンターテインメント事業への進出

5. 電通によるセプテーニ・ホールディングスの買収(2018年) 

 o 買収プレミアム:53.9%

 o 目的:インターネット広告分野の強化とデジタルマーケティング事業の拡大

 o 背景:広告業界のデジタルシフトへの対応

6. 武田薬品によるシャイアー社の買収(2019年) 

 o 買収プレミアム:64.4%

 o 取引規模:約6兆8,000億円

 o 目的:グローバル製薬企業としての競争力強化と新薬開発の加速

 o 特徴:日本企業による過去最大規模の海外M&A

7. MicrosoftによるLinkedInの買収(2016年) 

 o 買収プレミアム:49.5%

 o 取引規模:約2兆9,800億円

 o 目的:ビジネスSNSの獲得とクラウドサービスとの統合

 o 背景:プロフェッショナルネットワークの拡大戦略

8. 帝人によるジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)の買収(2021年) 

 o 買収プレミアム:27.33%

 o 取引規模:約192億円

 o 目的:再生医療分野への本格参入

 o 背景:医療機関向け事業の強化

9. ヤマダホールディングスによるヒノキヤグループの買収(2020年) 

 o 買収プレミアム:14.35%

 o 目的:家電・家具・住宅リフォーム商品の連携強化

 o 背景:住宅事業への本格参入

10. アサヒグループホールディングスによるカルピス社の買収(2012年) 

 o 買収プレミアム:約30%

 o 取引規模:約1,200億円

 o 目的:国内清涼飲料業界でのシェア拡大

 o 結果:買収後、国内飲料事業で業界3位に躍進

これらの事例から、以下のような傾向や特徴が見て取れます:

1. 買収プレミアムの割合は案件によって大きく異なり、業界動向や競合状況に影響される

2. 高額な買収プレミアムは、戦略的重要性の高い案件や競合が激しい案件で見られる

3. 買収の目的は、既存事業の強化だけでなく、新規事業領域への進出も多い

4. グローバル展開や技術獲得を目的とした大型クロスボーダーM&Aでは、高額な買収プレミアムが付くことがある

これらの事例は、買収プレミアムの設定が個々の案件の特性や戦略的意義、市場環境などに大きく左右されることを示しています。適切な買収プレミアムの設定は、M&A戦略の成功に直結する重要な要素であると言えるでしょう。

買収プレミアムに関する専門家への相談

買収プレミアムの設定は、M&A取引の成否を左右する重要な要素です。適切な買収プレミアムを決定するには、専門的な知識と豊富な経験が必要となります。そのため、M&Aを検討する企業は、以下のような専門家に相談することをお勧めします。

1. M&A仲介会社: 

 o 役割:買い手と売り手のマッチング、取引全体のコーディネート

 o メリット:豊富な案件経験を基に、市場動向や適切な買収プレミアムの水準をアドバイスできる

2. M&Aアドバイザリー会社: 

 o 役割:M&A戦略の策定から実行までの総合的なサポート

 o メリット:財務、法務、税務など多角的な視点から、最適な買収プレミアムを提案できる

3. 投資銀行: 

 o 役割:大規模なM&A案件における資金調達や財務アドバイス

 o メリット:グローバルな視点と豊富な実績を基に、高度な買収プレミアム戦略を提案できる

4. 公認会計士・税理士: 

 o 役割:財務デューデリジェンス、企業価値評価、税務アドバイス

 o メリット:財務・税務の専門知識を活かし、買収プレミアムの財務的影響を詳細に分析できる

5. 弁護士: 

 o 役割:法務デューデリジェンス、契約書作成、法的リスク分析

 o メリット:買収プレミアムに関連する法的リスクや規制上の留意点をアドバイスできる

6. 経営コンサルタント: 

 o 役割:M&A後の統合戦略策定、シナジー効果の分析

 o メリット:買収プレミアムの妥当性を、長期的な経営戦略の観点から評価できる

これらの専門家に相談することで、以下のようなメリットが得られます:

客観的な視点:社内だけでは気づきにくい視点や、業界標準の情報を得られる

リスク軽減:潜在的なリスクを事前に特定し、適切な対策を講じることができる

交渉力の向上:専門家の知見を活用することで、相手方との交渉を有利に進められる

時間と労力の節約:複雑なM&Aプロセスを効率的に進めることができる

法的コンプライアンスの確保:関連法規制を遵守し、法的リスクを最小限に抑えられる

専門家への相談時には、以下の点に注意しましょう:

・ 複数の専門家の意見を聞く:一社だけでなく、複数の専門家の意見を比較検討することで、より多角的な視点を得ら
  れます。

・ 自社の状況を正確に伝える:適切なアドバイスを得るためには、自社の財務状況や戦略的意図を正確に伝えることが
  重要です。

・ 費用対効果を考慮する:専門家への相談には費用がかかりますが、適切なアドバイスによるリスク軽減効果と比較し
  て判断しましょう。

・ 秘密保持契約を結ぶ:M&A情報は機密性が高いため、相談前に必ず秘密保持契約を締結しましょう。

・ 定期的なコミュニケーションを心がける:M&Aプロセス全体を通じて、専門家と密接なコミュニケーションを取るこ
  とが重要です。

買収プレミアムの設定は、M&A取引の成功に直結する重要な要素です。専門家の知見を活用することで、より戦略的かつ適切な買収プレミアムを設定し、M&A取引を成功に導くことができるでしょう。

まとめ

買収プレミアムは、M&A取引において重要な役割を果たします。適切な買収プレミアムの設定は、取引の成功確率を高め、長期的な企業価値の向上につながります。一方で、過度に高額な買収プレミアムは財務的負担やのれん減損リスクを増大させる可能性があります。そのため、シナジー効果の慎重な評価、適切な企業価値算定、市場動向の把握が不可欠です。専門家の助言を積極的に活用し、戦略的かつバランスの取れた買収プレミアムを設定することが、M&A成功の鍵となります。

著者|土屋 賢治 マネージャー

大手住宅メーカーにて用地の取得・開発業務、法人営業に従事。その後、総合商社の鉄鋼部門にて国内外の流通に携わる傍ら、鉄鋼メーカーの事業再生に携わる。外資系大手金融機関を経て、みつきグループに参画

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