IRR計算方法の徹底解説:Excelで効率的な投資判断を実現

IRR(内部収益率)の基本概念から計算方法、Excelでの算出手順まで解説します。メリットやデメリット、NPVとの違いも紹介し、効果的な投資判断に役立つ知識を提供します。

目次

  1. IRR(内部収益率)の基本概念
  2. IRR(内部収益率)の長所と短所
  3. IRR(内部収益率)とNPV(正味現在価値)の比較
  4. まとめ

▶目次ページ:企業価値評価(DCF法)

IRR(内部収益率)の基本概念

IRR(Internal Rate of Return)は、日本語で内部収益率と呼ばれる投資判断の重要な指標です。この指標は、プロジェクトや投資案件の収益性を評価するために広く使用されています。

IRRは、投資によって得られる将来のキャッシュフローの現在価値と、初期投資額が等しくなる割引率を表します。言い換えれば、プロジェクトの正味現在価値(NPV)がゼロになる割引率のことです。

IRRを使用することで、投資家やプロジェクト管理者は、投資の収益性を単一の数値で把握することができます。これにより、異なる投資案件を比較したり、投資の実行可否を判断したりする際の有用な基準となります。

IRRの計算方法について

IRRの計算には、以下の数式が用いられます。

C₀ + C₁ / (1 + r) + C₂ / (1 + r)² + C₃ / (1 + r)³ + ... + Cn / (1 + r)ⁿ = 0

C₀は初期投資額(通常はマイナスの値)

C₁、C₂、C₃...Cnは各期のキャッシュフロー

rはIRR(内部収益率)

nは投資期間(年数)

この式を解くことでIRRを求めることができますが、手計算では複雑で時間がかかるため、通常はコンピュータソフトウェアを使用して計算します。

Excelを使ったIRRの簡単な算出方法

Microsoft Excelを使用すると、IRRを簡単に計算することができます。Excelには「IRR関数」が組み込まれており、これを利用することで複雑な計算を自動化できます。

ExcelでIRRを計算する手順は以下の通りです。

1. 各期のキャッシュフローをセルに入力します。初期投資額はマイナス符号をつけて入力します。

2. IRR関数を使用するセルで、「=IRR(範囲)」と入力します。

3. 「範囲」には、キャッシュフローを入力したセルの範囲を指定します。

例えば、以下のようなキャッシュフローがある場合:

年 | キャッシュフロー 0 | -800百万円(初期投資) 1 | 250百万円 2 | 500百万円 3 | 200百万円 4 | 250百万円 5 | 300百万円

これらの値をA1:A6のセルに入力し、別のセルで「=IRR(A1:A6)」と入力すると、IRRが自動的に計算されます。

このように、Excelを使用することで、複雑なIRRの計算を簡単に行うことができ、投資判断の効率を大幅に向上させることができます。

IRR(内部収益率)の長所と短所

IRR(内部収益率)は投資判断において非常に有用なツールですが、他の財務指標と同様に、長所と短所を持っています。IRRを効果的に活用するためには、これらを十分に理解しておく必要があります。

IRRを使用するメリット

IRRには以下のようなメリットがあります。

1. 投資期間全体の収益性を単一の数値で表現: 

IRRは、プロジェクト全体の収益性を一つの数値で示すため、直感的に理解しやすいです。

2. 異なる期間の投資案件の比較が可能: 

IRRは投資期間の長さに影響されないため、期間が異なる複数の投資案件を比較することができます。

3. 時間価値of moneyを考慮: 

IRRは将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて計算するため、お金の時間的価値を適切に反映します。

4. 意思決定の基準として利用可能: 

計算されたIRRを、企業の要求収益率や資本コストと比較することで、投資の可否を判断する基準として活用できます。

IRRの限界と注意点

一方で、IRRには以下のような限界や注意点があります。

1. 投資規模の違いを反映しない: 

IRRは収益率を示すものであり、投資額の大きさは考慮しません。そのため、小規模だが高収益率の案件が、大規模で総利益の大きい案件よりも優先されてしまう可能性があります。

2. 複数のIRRが存在する可能性: 

キャッシュフローの符号が複数回変わる場合、複数のIRRが存在する可能性があり、解釈が難しくなります。

3. 再投資率の仮定: 

IRRは、中間のキャッシュフローがIRRと同じ率で再投資されることを暗黙のうちに仮定しています。しかし、実際にはこの仮定が成り立たないことが多いです。

4. 相互排他的なプロジェクトの評価に不適切な場合がある: 

複数の相互排他的なプロジェクトを評価する際、IRRだけでは適切な判断ができない場合があります。

これらの限界を認識し、IRRを他の財務指標と併用することで、より適切な投資判断を行うことができます。

IRR(内部収益率)とNPV(正味現在価値)の比較

IRR(内部収益率)とNPV(正味現在価値)は、どちらも投資プロジェクトの評価に用いられる重要な指標です。これらは密接に関連していますが、異なる側面から投資の価値を評価します。

NPV(正味現在価値)の定義

NPV(Net Present Value)は、投資プロジェクトが生み出す将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いた総和から、初期投資額を差し引いた値です。NPVは、投資によって得られる価値を金額で表現します。

NPVの特徴:

1. 金額表示: 

NPVは具体的な金額で表されるため、プロジェクトが創出する価値を直接的に理解できます。

2. 割引率の明示: 

NPVを計算する際には、明示的に割引率(通常は企業の資本コスト)を設定します。

3. 投資判断基準: 

一般的に、NPVがプラスであれば投資を行い、マイナスであれば投資を避けるという判断基準が用いられます。

NPVの具体的な計算方法

NPVは以下の式で計算されます。

NPV = C₀ + C₁ / (1 + r) + C₂ / (1 + r)² + C₃ / (1 + r)³ + ... + Cn / (1 + r)ⁿ

C₀は初期投資額(通常はマイナスの値)

C₁、C₂、C₃...Cnは各期のキャッシュフロー

rは割引率

nは投資期間(年数)

NPVとIRRの関係:

NPVがゼロになる割引率がIRRです。

IRRは、NPV曲線とx軸(割引率軸)の交点として視覚化できます。

IRRとNPVの使い分け:

1. 相互排他的なプロジェクトの評価: 

NPVは金額で表されるため、相互排他的なプロジェクトの比較に適しています。

2. 投資規模の考慮: 

NPVは投資規模を反映するため、異なる規模のプロジェクトを比較する際に有用です。

3. 複数のIRRが存在する場合: 

キャッシュフローの符号が複数回変わる場合、NPVの使用がより適切です。

4. 再投資率の仮定: 

NPVは明示的な割引率を用いるため、IRRよりも現実的な再投資率の仮定に基づいています。

IRRとNPVは、それぞれ異なる角度から投資の価値を評価する指標です。両者を適切に組み合わせて使用することで、より包括的な投資分析が可能になります。

まとめ

IRR(内部収益率)は投資判断において重要な指標です。Excelを用いて簡単に計算でき、投資の収益性を単一の数値で表現できる利点があります。しかし、投資規模を考慮しないなどの限界もあるため、NPV(正味現在価値)などの他の指標と併用することが推奨されます。適切に活用することで、より精度の高い投資判断が可能となります。

著者|竹川 満 マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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