親の会社を継ぐ意味とは?良い点・悪い点、後継者に求められる能力

親の会社を継ぐ際のメリットとデメリット、必要な能力、具体的な準備について解説します。事業承継を検討している方に役立つ情報を提供しています。

目次

  1. 親の会社を継ぐメリットはある?
  2. 事業承継に必要な3つの能力
  3. 親の会社を継ぐための具体的な準備
  4. まとめ

親の会社を継ぐメリットはある?

日本の事業承継において、子供が親の会社を継ぐケースは多く見られます。親の会社を継ぐことには、メリットとデメリットの両面があります。これらを十分に理解した上で、自分自身の意思で決定することが重要です。

親の会社を継ぐ良い点

親の会社を継ぐことには、以下のようなメリットがあります:

1. 働き方の自由度が高くなる 

  • 仕事のスケジュールやタスクの優先順位を自分で決定できます。
  • 経営方針や組織体制に自分のアイデアやビジョンを取り入れることができます。

2. 定年退職やリストラの不安がなくなる 

  • 経営者となるため、雇用の安定化が図られます。
  • 退職時期を自分で決めることができます。

3. 高い給与水準の維持や創業者利潤の獲得の可能性 

  • 会社の業績を維持・拡大できれば、高い給与水準を維持できる可能性があります。
  • 引退時には一般的なサラリーマンよりも高額の退職金を受け取れる可能性があります。
  • 事業や会社売却による創業者利潤の獲得が期待できます。

親の会社を継ぐ悪い点

一方で、親の会社を継ぐことには以下のようなデメリットもあります:

1. 一度会社を継いだら簡単にはやめられない 

  • 経営者は従業員の雇用や会社の存続に責任を負う立場にあります。
  • 経営者としての責任やプレッシャーの大きさに立ち向かう覚悟が必要です。

2. 借金の引継ぎや個人保証の変更が必要 

  • 引き継ぐ会社に借入金がある場合、これらの債務を後継者が引き継ぐことになります。
  • 借入金等に紐づく個人保証を先代経営者(親)がしている場合、後継者が保証人に変更される必要があります。

3. 多額の資金が必要になる可能性 

  • 引き継ぐ会社の株価が高い場合、後継者が株式を取得する際に多額の資金が必要になる可能性があります。
  • 株式取得に必要な金額によっては、金融機関等から借入を行う必要があるケースもあります。

これらのメリットとデメリットを十分に検討し、自分の将来のキャリアや人生設計に照らし合わせて、親の会社を継ぐかどうかを慎重に判断することが大切です。

事業承継に必要な3つの能力

親の会社を継ぐ際に、後継者に求められる能力は主に経営力、実務能力、リーダーシップ力の3つです。これらの能力を身につけ、磨き上げることが、円滑な事業承継と会社の発展には不可欠です。

経営力の習得

経営者として求められる経営力には、以下のような要素があります:

1. ビジョンと目標設定 

  • 会社の将来像を描き、具体的な目標を設定する能力

2. 戦略立案と実行 

  • 目標達成のための戦略を考え、実行に移す能力

3. 市場分析 

  • ビジネスのトレンドや市場動向を把握し、適切な意思決定を行う能力

4. 財務・経理・法務の知識 

  • 会社の財務状況を正確に把握し、適切な資金調達や投資判断を行うための知識

これらの能力を磨くためには、実際の経営経験を積むことが最も効果的です。しかし、会社を引き継ぐ前から、他の経営者の成功や失敗体験から学ぶことも有効です。

実務能力の向上

経営者は会社の事業内容を深く理解し、実務能力を持つことが望ましいです。実務能力を磨くことで得られるメリットには以下のようなものがあります:

1. 現場の理解 

  • 従業員の働き方や顧客のニーズを肌で感じ取ることができる

2. 適切な判断 

  • 社内体制の構築や将来の会社の方向性を考える上で貴重な情報となる

3. 幅広いスキルの習得 

  • マーケティング、財務、オペレーション、人事管理、戦略立案など、多岐にわたるスキルを身につけられる

実務能力を磨くには、実際の業務に携わることが最も効果的です。加えて、経営者向けの研修や勉強会への参加も有効な手段となります。

リーダーシップの発揮

経営者には、従業員を先導し、会社のビジョンと戦略を明確に伝え、組織を統括するリーダーシップが求められます。リーダーシップを発揮するためには、以下のような点に注意が必要です:

1. コミュニケーション能力 

  • 従業員や株主などと適切なコミュニケーションを取り、良好な関係を構築する

2. 倫理観とコンプライアンス意識 

  • 企業倫理やコンプライアンスを重視した経営を実施し、リーダーとしての信頼を得る

3. ビジョンの共有 

  • 会社のビジョンを明確に示し、従業員と共有する

4. 決断力 

  • 重要な局面で適切な判断を下し、責任を持って実行する

リーダーシップは、会社を引き継いだ後に会社が一丸となって経営を行うために不可欠な能力です。日々の経営の中で意識的に磨いていく必要があります。

親の会社を継ぐための具体的な準備

親の会社を円滑に継ぐためには、綿密な準備が必要です。具体的には、事業計画の策定、資金対策、株式移転の検討、補助金の活用など、さまざまな側面から準備を進めていくことが重要です。

経営状況の改善と事業計画の策定

親の会社を引き継ぐ際は、まず現在の経営状態を正確に把握することが重要です。以下のステップで準備を進めましょう:

1. 現状分析 

  • 財務諸表や事業報告書などを詳細に分析する
  • 会社の強み、弱み、機会、脅威(SWOT分析)を洗い出す

2. 経営改善 

  • 現状分析の結果、改善の余地がある場合は、会社を引き継ぐ前に手を打つ

3. 事業計画の策定 

  • 市場動向や競合他社の動きを分析する
  • 自社の強みを活かせる戦略を立てる
  • 具体的な数値目標を設定し、目標達成に向けたロードマップを描く

これらの準備により、会社を引き継いだ後に後継者がやるべきことを明確にした上で経営を行うことが可能となります。

相続税・贈与税対策

親の会社を引き継ぐ際に株式の移転が伴う場合、相続税や贈与税の負担が生じる可能性があります。これらの税金対策として、事業承継税制の活用を検討することをお勧めします。

事業承継税制とは:

一定の要件を満たせば、相続税や贈与税の納税が猶予・免除される制度

適用要件をクリアすれば、これらの税負担を大幅に軽減できる可能性がある

例えば、2018年4月1日から2023年3月31日までに特例承継計画を提出した場合、10年以内の株式の贈与・相続の際の税金が、全株式を対象に100%納税猶予されます。この特例を活用することで、事業承継に係る税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

株式をどう移すかの検討

親から子への会社の株式の移転方法には、主に以下の3つの選択肢があります:

1. 相続

2. 生前贈与

3. 株式売買

それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社の状況や株式取得者の経済状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。株式の移転方法によって、税務上の取り扱いや株式の評価方法も異なります。

事業承継・引継ぎ補助金の活用検討

会社を引き継ぐことを契機に新しい取り組みを行う場合、事業承継・引継ぎ補助金の活用が可能です。この補助金の概要は以下の通りです:

対象:事業の再構築、設備投資、販路拡大などに係る費用

補助率:2/3または1/2

上限額:600万円以内または800万円以内

補助金を活用することで、事業承継後の新たなチャレンジに係る資金負担を軽減できます。要件や申請方法を確認し、有効に活用することをお勧めします。

まとめ

親の会社を継ぐか否かの判断は、慎重に検討すべき重要な事項です。メリットとデメリットを理解し、自分の意思と適性に基づいて判断することが大切です。経営者に必要な能力を磨きながら、具体的な準備を進めることで、円滑な事業承継が可能となります。様々な角度から検討し、会社と後継者にとって最善の選択ができるよう準備を進めてください。

著者|竹川 満 マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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