M&A相談窓口を徹底比較するとどこが最適?特徴を解説
M&A相談のベストパートナーは誰でしょうか?税理士・仲介会社・銀行など相談先を比較し、メリット・デメリットを分かりやすく解説します。
目次
M&Aは会社の未来を左右する重大な決断です。専門家の支援なく進めると、法務・税務リスクや情報不足から不利な条件で契約してしまう恐れがあります。まずは「専門性」「ネットワーク」「費用体系」という三つの視点で相談窓口を比較しましょう。
顧問税理士や公認会計士は日頃の決算・申告を通じて自社の財務状況を熟知しています。財務データを一から説明する手間が省け、会計帳簿や申告書を基に迅速に企業価値の目安を示せるのが強みです。
一方で、全ての税理士がM&Aを得意としているわけではありません。多くの税理士は日常の税務顧問に特化しており、買い手交渉や案件組成の経験が乏しいケースが少なくありません。依頼前に「過去のM&A支援実績」や「譲渡・譲受け両面のサポート経験」を具体的に確認しましょう。
税理士は税務デューデリジェンスを通じて簿外債務や税務リスクを洗い出し、適切なスキーム構築と節税策を提案できます。税制改正にも即応し、譲渡対価を最大限手元に残せる形で設計できる点が大きなメリットです。
M&Aの現場では譲渡側と譲受側の利害調整、買収監査への対応、最終契約書の税務条項作成など専門的判断が求められます。実績豊富な税理士はこれらの工程を円滑に進められますが、経験が浅い税理士では外部仲介会社へ丸投げとなり、追加コストや意思疎通の分断が起こりやすくなります。実績確認は必須です。
都市銀行や地方銀行、信用金庫、証券会社などの金融機関もM&A相談窓口となります。貸出先や取引先の企業情報を豊富に保有しており、資金調達面の提案もワンストップで受けられる点が魅力です。
金融機関は日常的に企業の決算情報を収集し、事業戦略や資金需要をヒアリングしています。そのため「○○業界で拡大意欲のある企業」などピンポイントのニーズに合った買い手候補を提示しやすい環境があります。
仲介会社は売り手と買い手の双方に立って条件調整を行う民間企業、FA会社は一方当事者の利益最大化を目指す助言会社です。いずれもM&Aを専門とし、豊富な案件データベースと交渉ノウハウを持ちます。
仲介・FA会社には財務・法務・税務の有資格者が在籍または外部連携しており、企業価値評価から買い手探索、DD対応、最終契約書作成、クロージングまでをワンストップで支援します。
仲介・FA会社を選ぶ際の比較ポイント
取扱実績
累計成約件数や対象業種・規模を確認
サービス領域
PMI支援や海外案件対応の有無
料金体系
レーマン方式の料率、着手金・月額報酬の有無、最低報酬額
仲介会社のメリットと限界
FA会社のメリットと限界
商工会議所は地元中小企業の経営支援を目的とする準公的団体で、M&Aや事業承継の無料相談を受け付けています。助成金・補助金など公的制度の情報提供も可能です。
全国の中小企業活性化支援機構が運営し、親族内承継から第三者M&Aまで幅広い相談に対応する公的窓口です。専門家紹介機能があり、譲渡企業が費用負担なく初期相談できる点が特徴です。
支援センターは商工会議所や地域金融機関と連携し、登録専門家の中から案件に合った仲介会社や士業を紹介します。紹介料は原則無料のため、相談ハードルが低いのが魅力です。
M&A経験者の経営者仲間に相談すると、数字だけでは分からない現場の苦労や従業員・取引先の変化などリアルなエピソードを聞くことができます。体験談を通じて「やって良かった点」や「想定外だった失敗例」を把握できるのは大きな学びです。
M&A検討を公言すると取引先や従業員の不安を招き、案件が破談になるおそれがあります。相談は信頼できる少数の経営者に限定し、秘密保持契約(NDA)を交わすなど漏洩対策を徹底しましょう。
中小企業診断士は経営改善や企業価値向上の助言を専門とし、財務・組織・マーケティングを横断的に分析できます。ファイナンシャルアドバイザー(IFA)はオーナー個人の資産運用やタックスプランニングに強みがあります。
診断士・IFA単独では買い手探索や契約交渉を完結できないケースが多く、士業や仲介会社との協業体制を確認しておく必要があります。
M&Aアドバイザーの報酬は「成功報酬」を中心に、着手金・月額報酬・中間金など複数の名目が存在します。事前に契約書で定義を確認し、想定外の追加費用を防ぎましょう。
費用項目 発生タイミング 一般的な相場
着手金 契約締結時 50万~500万円
月額報酬 契約期間中 数万円~数十万円
中間金 基本合意時 成功報酬の一部
成功報酬 成約時 譲渡対価×レーマン料率
どの窓口でも共通して確認すべきポイントは「専門性」「ネットワーク」「料金体系」「信頼性」です。ここでは担当者レベルでの見極め方を解説します。
同じ会社でも担当者によって案件品質は大きく変わります。自社と同業種・同規模の成約実績があるか、役割は仲介かFAか、何件のクロージング経験があるかなど具体数で確認しましょう。
初回面談後の質問メールに対する回答スピードや内容の深さは、実務段階での対応力を映すバロメータです。複数窓口で比較し、迅速かつ論点を押さえた回答をくれる担当者を選びましょう。
財務・法務・税務の分業体制があるか、外部専門家と連携できるかを聞き、案件途中で知識不足によるブレーキが掛からないかを見極めます。
相談先を決めた後も油断は禁物です。契約前後で想定外のトラブルが起きないよう、次の三つに必ず目を配りましょう。
過度な成功事例の強調や契約の即決を迫る姿勢が見られたら、複数社を比較し納得できる説明をくれる相談先に切り替えましょう。
料金体系・サービス範囲・免責事項などは書面で確認し、疑問点は必ず質問します。成功報酬の算定基準や最低報酬額は後のトラブルにつながりやすい項目です。
デューデリジェンスやPMI支援など、どこまで専門家が伴走するかを明確にし、追加費用の要否をチェックしましょう。
全体像を理解すると専門家との打合せがスムーズになります。ここでは五段階を概観します。
譲渡を決意した理由を整理し、目標と期限を設定します。
売却益・雇用維持・取引継続など複数条件を列挙し、譲れない要素と妥協可能な要素を区別します。
虚偽回答や資料不足は信用を損ない破談要因になります。迅速かつ正確な対応が重要です。
解除条件や表明保証、税務条項などを検証し、将来の紛争リスクを最小化します。
業務フローと企業文化の擦り合わせを早期に進め、従業員の不安と離職リスクを抑えます。
複数窓口から提案書を受け取ったら、次の四分類で比較すると判断が容易になります。
費用は「着手金・月額報酬・中間金・成功報酬」の四つに大別されます。
50万円〜500万円の提示が一般的ですが、無料の会社も増えています。成果物の質とスピードを基準に検討しましょう。
月額報酬が設定される場合、買い手探索数や面談数など成果指標と連動させると費用対効果が明確になります。
基本合意時に支払う場合は破談時の返金有無を必ず契約書に明記します。
累進料率や最低報酬額の有無を複数社で比較し、自社に合った設定を選びましょう。
情報漏洩は信用失墜や価格下落につながります。
案件情報を扱う社内メンバーを最小限に限定します。
財務諸表や顧客名簿はパスワード付きPDFやオンラインストレージで共有し、アクセスログを取得します。
面談メモやメール履歴を整理し、各相談先の対応スピードと具体性を評価指標にすると比較が容易です。
双方向の情報交換が意思決定を早め、好条件を引き出します。
譲渡時期・代金の使途・雇用条件などを整理し共有しましょう。
月1回のオンライン打合せで買い手リストや交渉状況を確認します。
一次回答の期限を決めることで準備不足や情報伝達漏れを抑制できます。
原文・参考は無料相談の積極活用を推奨しています。三段階の手順を整理します。
専門性・実績・料金体系など10項目前後に絞り込み、一問一答形式で聞き漏れを防ぎます。
印象が鮮明なうちに担当者対応や資料の質を共有し、スコアリング表へ反映させます。
交渉余地やフォロー体制を比較し、検討コストを抑えながら最適解に近づけます。
M&A相談先を選ぶ際は「専門性」「ネットワーク」「料金体系」「信頼性」の四要素を比較し、担当者レベルで実績と対応力を確認することが成功の近道です。複数窓口を活用し、正式契約の前に契約条件とサービス範囲を納得いくまで精査しましょう。譲渡目的を共有し、専門家と二人三脚で進める姿勢が好条件の実現を後押しします。
著者|竹川 満 マネージャー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事