LBOとはなにか?買収対象の資産を活かした戦略を解説

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LBOとは?中小企業M&Aの仕組みと返済リスクを解説

LBOとは、対象会社の資産や将来キャッシュフローを前提に借入を活用する買収手法です。少ない自己資金でM&A(合併・買収)を実行できる一方、買収後の返済負担は対象会社の経営を左右します。仕組み、メリット、MBOとの違い、リスクを解説します。

目次

  1. LBOは少ない自己資金で買収する方法
  2. LBOで資金と返済義務が動く流れ
  3. LBOを使う買い手側の利点
  4. LBOで対象会社に生じる負担
  5. MBOとの違いと事業承継での使い方
  6. LBOを検討するときの実務確認
  7. まとめ

LBOとはなにか?買収対象の資産を活かした戦略を解説

LBOは少ない自己資金で買収する方法

LBOとは、レバレッジド・バイアウトの略称です。買い手企業や投資ファンドが、対象会社の資産や将来のキャッシュフローを前提に借入を行い、その資金で会社を買収するM&A(合併・買収)の資金調達手法を指します。

ここでいうレバレッジとは、てこの力のことです。自己資金だけでは届かない規模の買収でも、借入金を組み合わせることで実行できる点に特徴があります。例えば、大型案件では自己資金を20〜30%程度、金融機関からの借入や社債を70〜80%程度として組み立てる例もあります。ただし、この割合は案件の収益力、担保価値、金利環境、金融機関の審査によって変わります。

買収対象会社の力を返済原資にする

通常の借入では、買い手企業自身の信用力や保有資産が重視されます。LBOでは、それに加えて対象会社が将来生み出す利益や現金収支が重要になります。買収後に対象会社が稼ぎ、その資金で借入金を返していく設計だからです。

この仕組みは、買い手にとっては資金効率を高める方法になります。一方で、売却される会社にとっては、自社を買うために使われた借入金を、買収後の自社の稼ぎで返済していく構造になりやすい点が重要です。ここを見落とすと、譲渡オーナーが期待した成長投資や従業員への処遇改善が後回しになることもあります。

LBOは買収の目的ではなく資金調達の仕組み

LBOは、誰が会社を買うかを示す言葉ではありません。会社を買うための資金をどのように集めるかを示す言葉です。外部の投資ファンドが使うこともあれば、経営陣によるMBOや、事業会社によるカーブアウト案件で使われることもあります。

カーブアウトや事業再生でも使われる

大企業がノンコア事業を切り離すカーブアウトや、収益力はあるものの資本構成を見直したい事業再生の場面でも、LBOが検討されることがあります。現金収支が安定している事業ほど、借入金の返済計画を立てやすいためです。反対に、売上変動が大きく、設備投資が続く会社では、LBOによる負債が重くなりやすい傾向があります。

LBOで資金と返済義務が動く流れ

LBOは、借入をする、株式を買う、返済するという単純な流れに見えて、実務では複数の会社と契約が関係します。特に、特別目的会社を使うかどうかで、債務の位置づけや税務・法務の確認点が変わります。

特別目的会社を設立する

LBOでは、買い手が特別目的会社(SPC)を設立することがあります。SPCは、特定の取引を行うために作られる会社です。買収資金の受け皿になり、対象会社の株式を取得する主体になります。

SPCを使う理由は、買収に関係する資金やリスクを整理しやすいからです。金融機関も、どの会社が借入人となり、どの資産やキャッシュフローを返済原資とするのかを確認しやすくなります。

資金は自己資金とLBOローンで構成する

買い手や投資ファンドは、SPCに自己資金を入れます。さらに、金融機関からLBOローンを調達します。LBOローンは、対象会社の資産、将来キャッシュフロー、買収後の経営改善計画を前提に審査される借入です。

金融機関は、対象会社の決算書、月次の資金繰り、主要取引先、借入状況、設備投資の必要性などを細かく確認します。買収価格が高すぎれば、借入金の返済が難しくなります。事業は黒字でも、返済日のお金が足りなければ資金繰りは詰まります。

SPCが対象会社の株式を取得する

資金調達が終わると、SPCが対象会社の株式を取得します。買収後に経営改革を進めるため、株式の100%取得を目指すケースもあります。少数株主が残ると、合併、重要資産の売却、役員変更などで調整が必要になるためです。

中小企業のM&Aでは、株主が親族内に分散していることがあります。名義株や相続未了株式があると、LBOに限らず買収手続の前提が崩れます。早い段階で株主名簿と実質株主を確認することが大切です。

買収後に合併し対象会社が返済していく

典型的なLBOでは、買収後にSPCと対象会社が合併し、SPCの借入金が対象会社側に移ります。その後、対象会社の営業キャッシュフローから元本と利息を返済します。つまり、買収された会社の収益力そのものが、LBOの成否を左右します。

ただし、必ず合併するとは限りません。許認可、契約、税務、金融機関との条件によっては、SPCを残したまま配当や経営指導料などで資金を還流させる設計もあります。事業承継型のLBOでは、相続税評価や同族会社の論点も出やすいため、税務面の確認が欠かせません。

SPCに関連する税務上の用語も混同しない

SPCを使うと、株式保有特定会社や特定目的会社(TMK)といった似た言葉も出てきます。株式保有特定会社は相続税評価で問題になりやすい会社の区分であり、TMKは不動産証券化などで使われる会社形態です。LBOのSPCと同じ意味ではありません。

LBOを使う買い手側の利点

LBOが使われる理由は、少ない自己資金で買収できるからだけではありません。投資効率、経営改革、税務上の利息処理など、複数の利点が組み合わさっています。ただし、どれも返済可能な範囲で借入をすることが前提です。

少ない自己資金で大きな買収を実行できる

買い手企業が全額を自己資金で用意する場合、手元資金や借入余力に限界があります。LBOでは、対象会社の資産や将来キャッシュフローを活用するため、自己資金だけでは難しい規模の買収にも手が届きます。

この点は、投資ファンドだけでなく、後継者候補が株式を買い取るMBOでも意味があります。経営陣や従業員が自社株を取得したい場合、個人の資金だけでは足りないことが多いためです。

ROEを高めやすい

LBOでは、自己資金の割合が小さいほど、成功した場合の投資リターンが大きくなります。ROEは自己資本に対する利益率を示す指標です。少ない自己資金で買収し、対象会社の企業価値が上がれば、自己資金に対する利益率は高くなります。

ただし、これは利益が出た場合の話です。業績が下がると、レバレッジは逆方向にも働きます。借入金が大きいほど、金利や返済の負担が投資リターンを削ります。強い仕組みです。だからこそ危うさもあります。

利息の損金算入で税負担が下がることがある

借入金の利息は、税務上、一般に損金として扱われます。損金とは、法人税を計算するときに利益から差し引ける費用のことです。そのため、LBOローンの利息によって課税所得が圧縮され、法人税負担が下がることがあります。

もっとも、節税効果はLBOの主目的ではありません。利息は実際に外部へ支払うコストです。税金が減っても、資金繰りが悪化すれば意味がありません。M&A実務では、税効果よりも、返済後に事業運営資金が残るかどうかを優先して確認します。

LBOで対象会社に生じる負担

LBOは買い手にとって魅力的でも、対象会社にとっては買収後の負債負担が重くなる手法です。譲渡オーナーが「高く売れるならよい」とだけ考えると、従業員、取引先、事業の将来に影響が出ることがあります。

返済負担により経営の自由度が下がる

LBO後の対象会社は、営業で稼いだ資金の多くを借入返済に充てることになります。その結果、設備投資、人材採用、研究開発、広告投資などに使える資金が減りやすくなります。

特に中小企業では、少しの売上減少や主要取引先の条件変更で資金繰りが大きく変わります。買収前は無借金で余裕があった会社でも、LBO後は返済優先の経営に変わることがあります。意外と多い落とし穴です。

金融機関のコベナンツで制限を受ける

LBOローンでは、金融機関が財務制限条項を設けることがあります。これをコベナンツといいます。一定の利益水準、負債倍率、債務償還能力を守ることや、追加借入、配当、重要資産の売却に制限を置くことがあります。

コベナンツに抵触すると、金融機関との協議が必要になります。条件変更、返済前倒し、資金使途の制限につながることもあります。対象会社の経営陣は、月次で資金繰りと財務指標を管理しなければなりません。

金利上昇で返済計画が崩れることがある

LBOローンは、通常の事業融資よりリスクが高いと見られやすく、金利も高めになりやすい傾向があります。変動金利で借りている場合、市場金利が上がると利息負担が増えます。

買収時点では返済可能に見えても、金利上昇、原材料高、人件費増加、売上減少が重なると、返済余力は急に薄くなります。LBOモデルと呼ばれる返済シミュレーションでは、楽観ケースだけでなく、売上減少や金利上昇を織り込んだ保守的な試算が必要です。

売却する側も買い手の資金計画を確認する

会社を売却する経営者にとって、譲渡価格は重要です。しかし、買い手がLBOで買収する場合は、価格だけでなく、買収後に返済を続けながら会社を成長させられるかを確認すべきです。従業員の雇用、取引先との関係、金融機関対応が不安定になると、譲渡後のトラブルにつながりかねません。

MBOとの違いと事業承継での使い方

LBOと混同されやすい言葉にMBOがあります。どちらもバイアウトという言葉を含みますが、見ている視点が違います。LBOは資金調達の方法、MBOは買収する主体を示す言葉です。

MBOは現経営陣が株式を買い取る方法

MBOは、マネジメント・バイアウトの略称です。現在の経営陣が株式を取得し、会社の経営権を持つ手法を指します。親族内に後継者がいないが、社内に経営を任せられる人材がいる場合、事業承継の選択肢になります。

MBOでは、経営陣が多額の買収資金を自分たちだけで用意することは難しいため、LBOの仕組みを使って資金を調達することがあります。つまり、MBOを実行するための資金調達方法としてLBOが使われる関係です。

EBOでは従業員が承継主体になる

EBOは、エンプロイー・バイアウトの略称です。従業員が株式を取得して経営に関与する手法です。MBOと同じく、買収主体を示す言葉であり、資金調達の方法そのものではありません。

中小企業では、経営陣や従業員に会社を残したいという想いから、MBOやEBOが検討されることがあります。ただし、社内承継は感情面では納得しやすい一方、資金調達と個人保証の整理で判断が止まることがあります。LBOを使う場合も、返済原資は会社の将来利益です。

第三者承継との比較も必要

MBOやEBOが難しい場合、第三者承継として外部企業へのM&Aを検討することになります。第三者承継では、買い手の資金力、事業シナジー、従業員の受け入れ姿勢を比較できます。LBOを使う買い手もいれば、自己資金や通常融資で買収する買い手もいます。譲渡オーナーは、買収スキームの違いが譲渡後の経営にどう影響するかまで見ておくと安心です。

LBOを検討するときの実務確認

LBOは、計算上は成立しても、実行後に資金繰りが苦しくなることがあります。成功させるには、買収前の調査、返済計画、買収後の経営改善を一体で考える必要があります。

対象会社のキャッシュフローを保守的に見る

LBOでは、売上高や利益だけでなく、実際に現金が残るかが重要です。売掛金の回収期間、在庫、設備投資、賞与や納税の時期まで見る必要があります。決算書の利益と手元資金は一致しません。

返済計画では、売上が落ちた場合、粗利率が下がった場合、金利が上がった場合の試算を行います。余裕のない計画は、少しの環境変化で崩れます。M&A実務では、ここで判断が止まることがあります。

買収価格と借入額を切り離して考えない

高い譲渡価格は、売り手にとって魅力的です。しかし、買い手がその価格を借入で賄う場合、買収後の対象会社が負う返済負担も重くなります。譲渡価格、借入額、金利、返済期間、買収後の投資計画は一体で確認すべきです。

買い手側は、LBOモデルで投資回収を試算します。売り手側も、買い手の資金計画に無理がないかを確認すると、譲渡後の事業継続リスクを見極めやすくなります。

買収後のバリューアップ計画を具体化する

LBOでは、買収後に企業価値を高めるバリューアップが重要です。コスト削減だけでは限界があります。新規顧客の開拓、価格改定、仕入条件の改善、管理体制の整備、不要資産の売却など、返済原資を増やす施策を早い段階で決める必要があります。

この計画が曖昧だと、返済だけが先行し、現場が疲弊します。短期的な利益を優先しすぎると、従業員の退職や取引先離れにつながることも。数字だけでなく、人と取引関係への影響も確認することが大切です。

専門家に確認すべき論点

LBOでは、会社法上の手続、金融機関との契約、税務上の利息処理、組織再編、個人保証、許認可の承継などが関係します。中小企業の事業承継では、株主構成や相続税評価の問題も重なります。

専門家に相談する際は、単に「LBOができるか」ではなく、譲渡価格、手取り額、借入返済、従業員、金融機関対応をまとめて確認することが重要です。

まとめ

LBOは、対象会社の資産や将来キャッシュフローを前提に借入を活用し、少ない自己資金で買収を実行する手法です。投資効率を高められる一方、買収後の返済負担、コベナンツ、金利上昇は対象会社の経営を大きく左右します。譲渡価格だけでなく、買収後に事業が安定して続くかまで確認し、資金計画は早めに専門家へ相談することが大切です。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人