事業売却の相場と価格算定方法を専門家が詳しく解説

「事業売却相場と価格決定方法はどう算出すればいいの?」そんな疑問にすぐお答えします。本記事では主要な算定手法から交渉戦略、税務まで専門家の視点で詳しく解説。さらに会計処理や従業員の雇用維持、必要書類のポイントも取り上げます。

目次

  1. 事業売却とは何か(定義・特徴と会社売却との違い)
  2. 事業売却の利点と課題
  3. 事業売却の価格決定のメカニズム
  4. 事業売却価格の主要算定手法
  5. 価格を最大化する交渉戦略
  6. 事業売却の実例と相場の把握
  7. 会計処理と税務上の取り扱い
  8. 会社売却後の従業員の取り扱い
  9. まとめ

事業売却とは何か(定義・特徴と会社売却との違い)

事業売却とは、企業が保有する事業の一部または全部を、譲受企業となる他の企業へ譲渡することを指します。事業承継の一形態ともいわれ、事業譲渡とほぼ同じ意味合いで用いられます。経営者が高齢となる中小企業などでは、事業承継の選択肢として注目される取引ですが、実際には会社全体の株式を第三者に譲渡する「会社売却(株式譲渡)」とは手続が大きく異なります。


事業売却の主な特徴としては次のとおりです。


売却対象の範囲が限定される

特定の事業部門や資産だけを譲渡できるため、不要な事業を整理しつつ、主要事業や経営権を維持することが可能です。


税金の取り扱いが異なる

会社売却(株式譲渡)の場合、株主個人に所得税等が課されるのに対して、事業売却では譲渡企業側に法人税、譲受企業側に消費税が発生する可能性があるなど、税務上の扱いに違いが生じます。


経営権は売り手企業側に残る

事業部門のみを譲渡するケースでは、会社全体を手放さないため、経営権は引き続き元の会社に存在します。


商号を継続できる

株式譲渡による会社売却と異なり、元の会社はそのまま存続するため、商号変更が生じません。


一方、会社売却(株式譲渡)は、株主が持つ株式をまるごと第三者に譲渡する方法です。譲渡企業側(ここでは株主)にとっては、大きな資金を得つつ経営から離れることが多く、同時に経営権が買い手(譲受企業)へ移る点が特徴です。また、株式の譲渡益に対しては、個人保有株なら一律20.315%の譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税合計)が課税されるというシンプルな仕組みも注目されます。

このように、事業売却と会社売却では税務面や経営権の移転範囲、売却対象の範囲などに違いがあり、経営者がどの程度会社を手放したいのか、どのような財務状況や将来ビジョンを持っているかによって適切な選択肢が変わってきます。

会社売却(株式譲渡)と事業譲渡の相違点を整理

会社売却は、株式をまるごと第三者に譲るため、会社そのものは存続しつつオーナーが交代する形になります。これにより、従業員との雇用契約や取引先との契約関係は会社にそのまま引き継がれ、大きな手続変更は不要です。一方で、経営権も含め会社の全てを手放すことになるため、経営トップとして残り続けたい場合には適しません。

一方、事業売却では、売却対象を資産や部門などに限定できるものの、従業員を引き継ぐには個別の同意が必要など、手続が複雑になりやすい面があります。また、譲受企業からすると、売却対象事業に蓄積されたノウハウや人材を獲得できる利点がある一方、買収対象以外の部門や負債などは引き継がないので、欲しい部分だけを切り出して取得できるというメリットがあります。

なお、「会社が丸ごと消滅する」合併や吸収分割などとは異なり、事業売却でも会社売却でも、事業を存続させるという点での意義は同じです。引退を考える経営者が事業を後世に残す手段としても用いられています。

事業売却の利点と課題

まず、事業売却を行うことで得られる利点(メリット)を整理してみます。


譲渡益の獲得

事業が不採算だったり、将来的な成長が見込めなかったりする場合に、その事業を譲渡することでまとまった資金を得られます。この資金を使って他の伸びる分野に集中投資したり、後継者不在による廃業を回避したりできるのが大きなメリットです。


売却範囲の自由度

全社売却ではなく、特定の事業部門や資産のみを売却できるため、必要な事業は存続させつつ、不要な事業だけを切り離すことが可能です。これは事業整理やリスク分散の観点でも有効です。


経営権を保持できる

会社全体の株式を譲渡しない限り、経営権を残しつつ事業売却できるため、創業社長としてのポジションは維持しつつ、特定分野だけ譲渡して身軽にするなどの戦略が立てられます。


ブランドや商号の継続

会社そのものは存続する場合には、企業の商号やブランドをそのまま残せます。長年培ってきた社名やイメージを手放す必要がありません。


一方で、課題(デメリット)もいくつか存在します。


手続と交渉にかかる時間とリソース

M&A専門家との相談や譲受企業との交渉、法務・財務デューデリジェンスへの対応など、多くの工程と手間が必要です。そのため、社内外のリソースを割く負担が大きくなりがちです。


コストの発生

弁護士や公認会計士、税理士など専門家への依頼費用がかかります。また、必要書類の作成にも時間・手間を要し、場合によっては調整費用が発生することもあります。


税金の課税

事業売却で利益が発生した場合、法人税や消費税などが課される可能性があります。詳細は後述する「会計処理と税務上の取り扱い」で取り上げますが、会社売却(株式譲渡)に比べてやや複雑になりやすいのが注意点です。


資料作成の負担

譲渡する事業内容を正確に示すため、財務諸表や部門別の収益資料、取引先リストなど、かなりの量の書類を用意する必要があります。準備の不備があれば価格交渉に不利になったり、信頼を失って契約破談につながるおそれもあります。

事業売却時の注意事項

競業避止義務

事業売却では、原則として20年間、同一の市区町村および隣接する市区町村で同様の事業を行えないとする競業避止義務が課されることがあります。実務上は数年~10年ほどに設定されることが一般的ですが、個別の契約交渉で範囲や期間を決めるため、譲渡企業と譲受企業双方の理解が必要です。


従業員や取引先への影響

譲受企業との新たな契約締結が必要になる従業員や取引先の負担にも配慮が必要です。特に、従業員のモチベーション低下や取引先離脱はスムーズな事業移管を妨げる要因になり得ます。


情報管理

事業売却の交渉段階では社内外への情報漏洩を防ぐ必要があります。タイミングを誤って情報が漏れると、従業員や取引先の不安を煽るばかりか、最悪の場合には取引が破談になる可能性もあるため注意が必要です。


こうした留意事項を踏まえ、事業売却を円滑に進めるには、入念な準備や専門家のサポートが欠かせません。

事業売却の価格決定のメカニズム

事業売却の価格は、単なる計算式だけで決定されるものではなく、譲渡企業と譲受企業の交渉の中で最終的に落としどころが決まります。ただ、**「相場観を把握する」**ことは非常に重要で、特に事業承継や中小企業のM&Aでは、年買法(年倍法)などの簡易的な算定手法を用いて大まかな相場をイメージするケースが多く見られます。

年買法による相場の把握

年買法(年倍法)は、


事業価値 = 移動する純資産 +(利益 × 年数分)

という式で簡易的に算出するものです。利益の何年分を乗じるかはケースバイケースですが、3~5年分を加算するやり方が一般的です。例えば、時価純資産が2億円で、毎年1億円の利益を生み出している場合、

2億円 +(1億円×3~5年)= 5億円~7億円

といった金額が大まかな相場として提示されます。


もっとも、年買法は将来性や無形資産の評価を単純化しているため、あくまで目安です。実際には譲受企業と交渉を重ねながら、事業のブランド力や技術力、安定した取引先の存在などを加味して価格が上下します。

実際の価格決定プロセス

売り手側の事業価値算出

まずは譲渡企業自身が、自社の事業価値を試算します。この段階で税理士や公認会計士、M&A仲介業者など専門家に相談するケースが多く、企業の財務諸表や事業計画をもとに概算を把握します。


譲受候補企業の選定

本格的に買い手探しを進める過程では、取引先や業界内企業、M&A仲介会社などを活用します。ここで信頼できる買い手を見つけられるかがカギとなります。


基本合意書での大枠合意

候補企業が見つかったら基本合意書を取り交わし、デューデリジェンス(企業調査)を行う前段階で大まかな譲渡価格の目安を設定します。この段階で高すぎる希望を提示しても、後の調査で価格が下がる場合があります。


デューデリジェンスと最終交渉

譲受企業が財務、法務、税務、人事など多方面から対象事業を調べ上げ、リスクや問題点が見つかれば価格交渉で下げ要因になることもあります。逆に問題が少なければ、当初の合意価格で決定しやすいです。


最終契約とクロージング

お互いに合意できれば最終契約書を締結し、譲渡価格の受け渡しや資産の移転等を実行します。


このように、価格は売り手と買い手の情報開示や交渉姿勢、市場環境などによって変動します。相場として計算される金額はあくまでスタートラインであり、その後の交渉こそが最終価格に大きく影響します。

事業売却価格の主要算定手法

事業売却では、より正確な価格設定のために複数の手法を組み合わせることが一般的です。ここでは、代表的な算定手法を取り上げ、簡単に整理します。

年買法(年倍法)の概要

年買法(年倍法)は、事業売却の際に多くの経営者がまず参考にする計算式です。


計算式

事業価値 = 移動する純資産 +(利益 × 数年分)


メリット

  • 算定が容易で、誰でも大まかな数値を把握しやすい
  • 将来的な利益をある程度考慮できる


デメリット

  • 「何年分の利益をかけるか」に客観的根拠が乏しい
  • 企業の成長性やリスクを細かく反映しにくい


営業利益や純資産をベースにして「おおまかに会社や事業はこれくらいで売れそうだ」という相場観をつかむには便利な方法です。ただし、利益加算の年数設定や、役員報酬が不相当に高いケースでどれだけ営業利益に加算するかなど、実務上の調整項目も多いため、あくまで概算値だと割り切る必要があります。

DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)の役割

DCF法は、将来予測されるキャッシュフローを割引率によって現在価値へ換算し、その総和を事業価値とする手法です。


特徴

  • 将来の事業計画(キャッシュフロー予測)を重視するため、成長性や投資回収をしっかり反映できる
  • 割引率(リスクや資本コストを考慮)が適切であれば、理論的に納得度の高い価値が得られる


注意点

  • 将来予測が大きく外れると、評価額も実態とかけ離れてしまう
  • 計算自体がやや複雑で、専門的な知識が求められる


事業承継や中小企業のM&Aでも、近年はDCF法を組み合わせて検討するケースが増えています。特に、将来的に収益拡大が見込める事業はDCF法で高い評価を得られる可能性がありますが、逆に不採算の事業では厳しい結果が出ることもあり得ます。

時価純資産法と類似会社比較法(マルチプル法)

時価純資産法は、帳簿に載っている資産・負債をすべて時価に修正して純資産を算出し、それを事業価値とみなす考え方です。工場設備や不動産など、含み益のある資産を正確に把握したい場合に有用ですが、将来の収益力やブランド力などは評価しにくいという欠点があります。


一方、類似会社比較法(マルチプル法)は、上場企業など類似ビジネスを営む会社の株価指標を参照しながら、同様の「業績指標×倍率(マルチプル)」によって対象事業の価格を推定する方法です。


代表的な指標

EV/EBITDA倍率(EBITDA=営業利益+減価償却費)


メリット

市場評価を反映しやすく、計算も比較的容易


デメリット

完全に同規模・同条件の類似企業を探すのは難しい


以上のように、事業売却の際は複数の手法を並行して検討し、売り手・買い手それぞれが納得できる着地点を模索します。

価格を最大化する交渉戦略

事業売却価格は、計算式だけで決まるわけではありません。交渉次第で大きく変わるため、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

自社の資産価値と将来性を明確化

財務諸表の精査

貸借対照表や損益計算書などの整合性を取り、隠れた負債や資産がないかを再チェックします。


無形資産の評価

顧客リストやブランド力、特許など、有形資産以外の価値もしっかりアピールします。


将来キャッシュフローの予測

事業計画を説得力ある形にまとめておき、買い手に「この事業は成長する」と思わせる材料とします。


シナジー効果の提示

買い手企業にとって合併後にどんなメリットがあるか、費用削減や新規市場の開拓など具体的な数字を示すと交渉が有利に進みます。

適切な買い手の選定

業界内外の企業

シナジーが期待できる相手や同業で事業拡大を狙う企業は、より高値での譲受を検討してくれる可能性があります。


財務状況の健全性

買い手候補の財務体質を調べ、不必要に譲渡後の経営不安が生じないよう注意します。


経営理念や企業文化の適合

文化的な相性が良いと、従業員や取引先の混乱を抑えながら高い売却価格を目指しやすいです。

コミュニケーションと信頼関係の構築

オープンな情報開示

相手の質問や懸念に対して真摯に対応し、不透明感を与えないようにします。


Win-Winの姿勢

自社の利益だけでなく、買い手にとってのメリットを考慮した条件設定を意識すると価格交渉がスムーズに進みやすくなります。


専門家のサポート

弁護士や公認会計士、税理士、M&A仲介会社などの協力を得て、法務・財務リスクを回避しつつ交渉に集中できるようにします。


こうした戦略を踏まえて交渉することで、実際の売却額は相場以上の高値で落ち着く可能性が高まります。

事業売却の実例と相場の把握

実際の事例を確認することで、事業の規模や業種ごとにどの程度の価格がつくのか、また売却側の狙いや買い手とのシナジーがどのように評価されるのかといった点を学ぶことができます。

日本リビングによるアロマ事業売却事例

売却価格

8,800万円


譲渡目的

非核心事業の整理と再生資金の確保


譲受企業側のメリット

既存の化粧品事業にアロマ事業を取り込むことでシナジーを期待


ポイント

事業の将来性と、買い手がすでに保有している事業との親和性を評価された結果、妥当な価格と判断

アイフリークモバイルのクラウドファンディング事業売却事例

売却価格

100万円


譲渡目的

不採算事業からの撤退


譲受側のメリット

既存事業に組み込むか、事業アイデアを再構築する狙い


ポイント

不採算事業であっても、買い手にとって戦略的メリットがあれば売却可能。ただし価格は低額になるケースが多い

幸和製作所のレンタル事業一部売却事例

売却価格

1億円


目的

本業である福祉用具製造販売に経営資源を集中


買い手

福祉用具レンタル・販売を専門とする企業


特徴

専門領域の企業が取得することで事業の継続発展が見込まれ、売却側も納得感のある価格を得られた

DeNAのSNS事業売却事例

売却価格

1,100万円


目的

主力事業への集中とポートフォリオ最適化


買い手

オースタンス(婚礼・広告事業などを営む)


ポイント

事業規模や収益性に対して譲受企業がどれだけ評価したかが価格に反映

フォーバルテレコムの広島事業部売却事例

売却価格

3億8,000万円


背景

従業員主導の独立申請、元の会社と買い手側双方がWin-Winと判断


評価ポイント

収益性や顧客基盤が評価され、高額な売却につながった


これらの実例が示すように、事業の収益性や将来性、譲受側とのシナジー効果が売却価格を左右する大きな要因です。また、企業規模が小さいほど年買法による計算が用いられやすく、大きな企業や成長性の高い事業ではDCF法やマルチプル法を重視する傾向があります。

会計処理と税務上の取り扱い

事業売却に伴う会計処理と税金の問題は、売却価格そのものだけでなく、譲渡後の財務状況や利益の手取り額に直結するため、非常に重要です。

売り手側の会計処理(仕訳例)

事業売却により資産や負債を切り離し、現金(対価)を受け取った際の仕訳の一例です。


(借方)諸資産  1,500万円 /(貸方)諸負債  2,500万円

(借方)現預金  2,000万円 /(貸方)事業売却益 1,000万円


  • 「事業売却益」は、売却対価と引き渡す資産・負債の差額です。
  • 実際には個々の資産や負債を正確に仕訳しますが、ここでは簡略化しています。

買い手側の会計処理(仕訳例)

(借方)諸資産  2,500万円 /(貸方)諸負債  1,500万円

(借方)のれん  1,000万円 /(貸方)現預金  2,000万円


  • のれんは、買収価格と取得資産・負債の差額
  • 一定期間かけて償却する必要がある(会計基準による扱いに注意)

法人税と消費税の課税

法人税

売り手企業の事業売却益に対して法人税が課されます。売却益は事業年度の所得として計上し、他の利益と合算して法人税を納付するイメージです。


消費税

事業単位での譲渡が非課税になるか、個別資産ごとに課税されるかは譲渡内容によります。例えば、設備の譲渡には消費税がかかるケースがありますが、株式譲渡なら非課税です(会社売却の場面との違い)。

個人株主の株式譲渡との違い

事業売却では、売り手が法人の場合は法人税が適用されます。一方、「会社売却」=「株式譲渡」を個人株主が行う場合には、一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)で課税される分離課税となります。


  • 会社全体を株式譲渡すると、オーナー個人に大きな譲渡益が発生しやすい
  • 譲渡益の税率は一律20.315%であり、通常の所得税率より低くなることが多い
  • ただし、個人保有株式の場合は会社の純資産や収益力を合わせて評価することになる


こうした税務面の違いも踏まえて、事業売却と株式譲渡のどちらが得策か検討することが必要です。

会社売却後の従業員の取り扱い

中小企業の経営者にとって、事業売却後の従業員の雇用や待遇は大きな懸念事項です。

雇用契約の継続性

会社売却(株式譲渡)の場合

従業員は会社との雇用契約をそのまま継続できます。会社のオーナーが変わるだけなので、従業員の立場は基本的に変わりません。


事業売却の場合

売却対象となる事業に携わる従業員を引き継ぐには個別同意が必要になります。会社全体が移るわけではないため、従業員の意思確認や労務管理の移行が重要です。

従業員にとってのメリットとリスク

メリット

  • 大企業グループの一員となり、福利厚生や安定感が増す
  • コンプライアンス体制の向上や社内研修制度の充実など、働きやすい環境へ移行する可能性がある
  • 取引規模や組織ネットワークが拡大し、キャリアアップを図るチャンスが広がる


リスク

  • 買い手企業の経営方針変更により、在宅勤務や働き方、評価制度などが大きく変わる可能性
  • 新体制になじめず退職する従業員が出る懸念


経営者は、買い手企業との交渉段階で従業員の雇用維持や就労条件の扱いを明確化し、可能であれば書面に盛り込むことが望ましいです。

会社売却後の流れと注意点

  • 買収後、一定期間経営に関与するよう要請を受けるケース(ロックアップ条項)もある
  • 従業員や取引先への情報開示タイミングに注意
  • 必要に応じて就業規則の見直しや再整備を実施


会社売却(株式譲渡)か事業売却かによって従業員の扱いは変わるものの、基本的に従業員のメリットが大きい形でまとまるよう、売り手企業と買い手企業が協議を進めるのが理想です。

まとめ

事業売却は、事業承継や経営戦略の一環として多くの企業が検討する重要な選択肢です。純資産や営業利益、将来のキャッシュフローなどの数値を踏まえた価格算定はあくまで目安であり、実際には買い手との交渉や企業文化の適合など多角的な要素が決定打となります。さらに、税務や会計処理、従業員の雇用維持などを的確に行うことで、売却後のリスクを抑えつつ企業価値を最大化できるでしょう。事業売却を考える際には、専門家の力を借りながら、長期的な視点で最善の方法を模索することが成功への近道といえます。

著者|竹川 満 マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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