株式保有特定会社に該当する利点・欠点、「株特外し」とは?

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株式保有特定会社とは?判定基準と株特外しの実務注意点

株式保有特定会社の判定基準、株式等に含まれる資産、純資産価額方式やS1+S2方式、株特外しの方法と否認リスクを解説。非上場株式の相続税評価で株価が高くなりやすい理由を、事業承継・会社売却前の判断点として整理します。

目次

  1. 株式保有特定会社の判定は資産割合から確認する
  2. 純資産価額方式になると株価が上がりやすい
  3. 株特外しは50%未満を目指す資産設計
  4. 否認リスクを避けるための判断ポイント
  5. 事業承継・会社売却の前に確認する実務手順
  6. まとめ

株式保有特定会社に該当する利点・欠点、「株特外し」とは? 

株式保有特定会社の判定は資産割合から確認する

株式保有特定会社とは、非上場株式の相続税評価で使われる会社分類の1つです。税務上は「株式等保有特定会社」と呼ばれます。

名前だけを見ると、株式を多く持つ会社にメリットがある制度のように感じるかもしれません。しかし実務では、むしろ株価が高く出やすく、相続税や贈与税の負担が重くなる可能性がある点に注意が必要です。

特に、グループ会社の株式を保有する持株会社、資産管理会社、創業者一族が株式を集約している会社では、知らないうちに該当していることがあります。事業承継の直前に気づくケースも珍しくありません。

通達上は株式等保有特定会社と呼ばれる

株式保有特定会社は、会社が持つ資産のうち株式等の割合が大きい会社です。国税庁の財産評価基本通達では、課税時期において、評価会社の資産の価額合計のうち株式、出資、新株予約権付社債の価額合計が50%以上である会社を、株式等保有特定会社としています。

判定の考え方は、次のように整理できます。

株式等の価額の合計額 ÷ 総資産価額 ≧ 50%

ここで使う価額は、原則として相続税評価額です。貸借対照表の帳簿価額だけで判断すると、実際の判定を誤ることがあります。含み益のある非上場株式や不動産を持っている会社では、帳簿上の数字と相続税評価額が大きくずれるためです。

50%判定で見る資産の範囲

判定で重要なのは、「株式等」に何が入るかです。ここを間違えると、対策の方向もずれてしまいます。

株式等に含まれるものには、上場株式、非上場株式、外国株式、出資、新株予約権付社債、株式制のゴルフ会員権などがあります。新株予約権付社債とは、一定の条件で株式を取得できる権利が付いた社債です。

一方で、証券投資信託の受益証券や匿名組合の出資は、判定上の株式等には含まれません。「株式を少し売って、投資信託に替えればよい」と単純に考えたくなる場面もあります。ただし、資産の組替えには税金、損益、資金繰り、投資リスクが伴います。判定だけを見て動くと、別の問題が起きることも。

該当しやすい会社のタイプ

株式保有特定会社に該当しやすいのは、次のような会社です。

・子会社株式を多く持つ持株会社

・オーナー一族の資産管理会社

・事業会社の株式を集約した承継用会社

・上場株式や非上場株式で資産運用している会社

・M&A(合併・買収)後に他社株式の保有額が大きくなった会社


持株会社そのものが悪いわけではありません。グループ経営を見える化したり、議決権を集約したり、後継者へ経営権を渡しやすくしたりする効果があります。

ただし、相続税評価では別です。株式の割合が50%以上になると、一般の事業会社とは違う評価ルールに入り、株価対策の余地が狭くなります。

純資産価額方式になると株価が上がりやすい

株式保有特定会社で最も大きな論点は、株価の評価方法です。

通常の非上場会社では、会社の規模や株主の立場に応じて、類似業種比準方式や純資産価額方式を組み合わせます。類似業種比準方式とは、上場している同業種の会社と配当、利益、純資産などを比べて株価を計算する方法です。

業績の良い中小企業では、類似業種比準方式を使えるかどうかで株価が大きく変わります。ところが、株式保有特定会社に該当すると、原則として純資産価額方式で評価します。

同族株主は原則として純資産価額方式で評価する

同族株主、つまり経営者一族など会社を支配する側が取得する株式は、原則として純資産価額方式で評価されます。純資産価額方式とは、会社が持つ資産と負債を相続税評価額に置き直し、会社をいま清算したと仮定するような考え方で株価を計算する方法です。

この方法では、保有株式や不動産の含み益が反映されやすくなります。たとえば、昔に安く取得した子会社株式の価値が大きく上がっている場合、その含み益が株価を押し上げる方向に働きます。

短く言えば、資産が強い会社ほど株価が高く出やすい、ということです。

S1+S2方式を選べる場合がある

株式保有特定会社の株式は、納税者の選択によりS1+S2方式で評価できる場合があります。これは、株式等以外の部分と株式等の部分を分けて計算し、合算する方法です。

ただし、S1+S2方式なら必ず有利とは限りません。会社規模、受取配当の割合、保有株式の含み益、株式以外の資産構成によって結果は変わります。

実務では、純資産価額方式とS1+S2方式を並べて試算します。1回の試算で終わらせず、資産を動かした場合、贈与した場合、売却した場合の数字も比較することが大切です。

少数株主は配当還元方式になることがある

同じ会社の株式でも、誰が取得するかによって評価方法が変わります。同族株主以外の少数株主が取得する株式では、配当還元方式が使われることがあります。配当還元方式とは、過去の配当金をもとに株価を計算する方法です。

配当が少ない会社では、配当還元方式による評価額は低くなりやすい傾向があります。逆に、経営者一族が保有する支配株式は、純資産価額方式で評価されやすく、評価額が大きく変わります。

ここは、親族内承継や従業員持株会、少数株主の整理で重要です。少数株主から株式を買い取る場面でも、誰の立場で、何の目的で評価するのかを分けて考える必要があります。

M&A価格とは別のものとして考える

相続税評価の株価と、会社売却時のM&A価格は同じではありません。

M&Aでは、買い手企業が将来の利益、事業の強み、顧客基盤、人材、相乗効果などを見て価格を検討します。マーケットアプローチ、コストアプローチ、インカムアプローチなどの考え方が使われることもあります。

一方、相続税評価では、通達に沿って非上場株式を評価します。株式保有特定会社の場合は、純資産の重みが強くなります。

そのため、会社売却を検討する経営者は、M&A価格だけでなく、相続税評価、譲渡後の手取り、贈与や相続との関係を別々に確認する必要があります。ここを混同すると、「売却価格は納得できるのに、承継税務の見通しが合わない」という状態になりやすいです。

株特外しは50%未満を目指す資産設計

株特外しとは、株式保有特定会社に該当しないよう、株式等の割合を50%未満に下げる対策です。単純化して言えば、分子である株式等を減らすか、分母である総資産を増やすかのどちらかです。

ただし、節税目的だけで短期間に資産を動かすのは危険です。株特外しは、裏技ではありません。事業承継、資産運用、グループ経営、資金繰りなど、会社として合理的な理由があるかどうかが問われます。

保有株式を売却または組み替える

最も分かりやすい方法は、保有株式の一部を売却することです。株式等の金額を減らせば、判定の分子が小さくなります。

ただし、売却益が出れば法人税等の負担が生じます。売った後の資金をどう使うかも重要です。現預金として残すのか、事業投資に回すのか、借入返済に充てるのかによって、その後の判定や資金繰りは変わります。

投資信託など、判定上の株式等に含まれない資産へ組み替える方法が検討されることもあります。法人契約の生命保険も候補に挙がることがありますが、保険は保障目的、解約返戻金、保険料負担、税務処理を含めて確認すべき商品です。株特外しだけを目的に選ぶと、経済合理性を説明しにくくなります。


不動産取得で株式以外の資産を増やす

不動産を取得して、株式以外の資産を増やす方法もあります。賃貸不動産であれば、会社の収益源を増やしつつ、総資産に占める株式等の割合を下げる方向に働きます。

さらに、不動産は相続税評価額が時価より低くなることがあります。この点だけを見ると、相続税対策として魅力的に見えるかもしれません。

しかし、不動産には空室、修繕、金利上昇、売りにくさといったリスクがあります。銀行借入を使う場合は、返済原資も必要です。評価対策として買った不動産が、後継者の経営負担になるケースもあります。

不動産は「節税商品」ではなく、長く持つ事業用資産として見られるか。ここが判断の分かれ目です。 

本業の事業用資産を増やす

株特外しとして最も説明しやすいのは、本業に必要な事業用資産を増やす方法です。設備投資、店舗投資、物流設備、ITシステム、在庫の整備などが該当します。

この方法は、株式等以外の資産を増やすだけでなく、会社の成長戦略ともつながります。税務調査で説明する場合にも、事業上の必要性を示しやすくなります。

もちろん、不要な設備投資をしてよいわけではありません。利益を生まない資産を増やせば、資金繰りが悪化します。株価対策のために会社の体力を落としてしまっては、本末転倒です。

資産を増やす方向と減らす方向を混同しない

実務で意外と多いのが、分母と分子の取り違えです。

たとえば、現預金で借入金を返済すると、総資産は小さくなります。株式等の金額が変わらなければ、株式等の割合は上がる方向に動くことがあります。良かれと思った返済が、株特判定では逆効果になることも。

株特外しでは、必ず試算が必要です。現在の資産構成、対策後の資産構成、税金、借入、キャッシュフローを同じ表に並べて確認します。感覚で動かないことが重要です。

否認リスクを避けるための判断ポイント

株特外しで一番怖いのは、対策そのものが税務上認められないことです。

財産評価基本通達には、課税時期前に合理的な理由なく資産構成に変動があり、その変動が株式等保有特定会社などに該当することを免れるためのものと認められるときは、その変動がなかったものとして判定する旨が定められています。

つまり、形だけ50%未満にしても、理由が弱ければ否認される可能性があります。

直前の資産移動は説明が難しくなりやすい

相続や贈与の直前に、急いで株式を売る。急いで不動産を買う。急いで投資信託に替える。

こうした動きは、税務上の説明が難しくなります。もちろん、直前であっても事業上の合理的な理由がある場合はあります。たとえば、老朽化した設備を更新する、取引先から要請された設備投資を行う、事業拡大に必要な拠点を取得する、といった事情です。

問題は、税金を下げる目的しか見えない場合です。社内稟議、取締役会議事録、事業計画、投資回収計画、金融機関との資料などで、会社としての目的を説明できるようにしておく必要があります。

一時的な資産移動より長期計画が安全

株特外しは、できれば年単位で考えます。後継者への株式移転、配当政策、役員退職金、設備投資、借入返済、会社売却の時期を合わせて設計するためです。

短期対策だけで進めると、次のような問題が出ます。


・株式等の割合は下がったが、法人税負担が増えた

・不動産を買ったが、借入返済が重くなった

・保険に加入したが、解約時期と承継時期が合わない

・資産を動かした理由を説明できない

・M&Aの買い手から、余計な投資資産として評価を下げられた


税金だけでなく、会社の価値も見てください。事業承継対策は、会社を次に渡すための準備です。会社を弱くする対策は、良い対策とは言えません。

非上場株式評価の見直し議論にも目配りする

非上場株式の評価方法は、今後も見直しの議論が続く可能性があります。国税庁では、取引相場のない株式の評価に関する有識者会議において、評価方法の在り方や租税回避への対応が議論されています。

そのため、過去に有効だった方法が、今後も同じように使えるとは限りません。承継時期が数年先であれば、現行ルールだけでなく、制度改正の可能性も見ておくべきです。

特に、資産管理会社や持株会社を使った対策は、税務上の見方が厳しくなりやすい領域です。専門家に依頼する場合も、「いくら下がるか」だけでなく、「なぜその対策をするのか」「税務調査でどう説明するのか」まで確認しましょう。

事業承継・会社売却の前に確認する実務手順

株式保有特定会社の論点は、相続税だけで完結しません。親族内承継、従業員承継、M&A、会社売却、グループ再編のすべてに関係します。

後継者が決まっている会社でも、税負担が重すぎると株式を渡せません。後継者がいない会社では、M&Aを選んだ方が会社と雇用を守れることもあります。

相続税評価とM&A時価を分けて試算する

最初に行うべきことは、2種類の株価を分けて把握することです。

1つ目は、相続税や贈与税で使う非上場株式評価です。株式保有特定会社に該当するか、純資産価額方式でいくらになるか、S1+S2方式で有利になるかを確認します。

2つ目は、会社売却で買い手が見る企業価値です。利益、営業権、顧客基盤、役員依存度、借入、個人保証、従業員の定着度などを踏まえて考えます。

この2つは目的が違います。相続税評価が高いからといって、必ず高く売れるわけではありません。反対に、M&A価格が高くても、相続税評価の対策が不要になるわけでもありません。

親族内承継か第三者承継かを早めに分ける

後継者が親族内にいる場合は、株式をいつ、どの方法で移すかが中心になります。贈与、相続、売買、種類株式、持株会社などを組み合わせることもあります。

後継者がいない場合は、第三者承継としてM&Aを検討することになります。この場合は、株特外しが必要かどうかだけでなく、買い手にとって分かりやすい資産構成か、不要な投資資産が会社に残っていないかも確認します。

株式保有特定会社に該当する会社は、事業会社というより投資会社に近く見られることがあります。買い手が欲しいのは事業なのか、資産なのか。ここがずれると交渉が長引きます。

資本政策やスキームと一緒に検討する

株式保有特定会社の対策は、株価評価だけでは決まりません。会社の支配権、資金調達、買収スキーム、グループ再編とも関係します。

たとえば、SPC、LBO、特定目的会社などの仕組みは、M&Aや資金調達で使われることがあります。ただし、これらは目的や法的性質が異なります。株特外しのためだけに複雑なスキームを選ぶのではなく、承継後の経営に耐えられるかを基準にすべきです。

動き出す前に確認したい項目

最後に、実務で確認すべき項目を整理します。


・相続税評価額ベースで株式等の割合が何%か

・株式等に含まれる資産と含まれない資産を分けているか

・保有株式や不動産に含み益があるか

・純資産価額方式とS1+S2方式を比較したか

・少数株主の株式評価を別に確認したか

・株特外しに事業上の合理的な理由があるか

・対策後の法人税、資金繰り、借入返済に無理がないか

・親族内承継、従業員承継、M&Aのどれを優先するか

・会社売却をする場合、不要資産を事前に整理すべきか

・制度改正や通達の見直しに注意しているか


これらを1つずつ確認すると、感覚的な節税対策から、経営判断としての事業承継対策に変わります。

株式保有特定会社の対策は、早く始めるほど選択肢が増えます。反対に、相続や売却の直前になるほど、できることは限られます。今すぐ動かなくても、今の株価と資産構成を把握しておく意味は大きいです。

まとめ

株式保有特定会社は、株式等が総資産の50%以上を占めることで、相続税評価上の株価が高くなりやすい会社です。株特外しは有効な選択肢になり得ますが、直前対策や合理性のない資産移動は危険です。親族内承継、M&A、株式贈与のどれを選ぶ場合も、株価、手取り、資産構成を早めに試算し、事業上の目的と税務上の説明をそろえて進めましょう。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人