SPCとは何か 特別目的会社の設立とメリットや利用法を徹底解説

特別目的会社(SPC)は、特定の目的のために設立される法人です。企業が保有する資産を切り離し、M&Aや不動産などの事業に活用することで、資金調達の効率化やリスクの分散を図れます。また、SPC法と会社法で設立手続が異なる点や、LBOをはじめとしたM&Aスキームへの応用、不動産証券化など多彩な使い方がありますが、設立コストや買収後の負債など注意点も存在します。ここでは、SPV(特別目的事業体)やペーパーカンパニーとの違いを含め、SPCのポイントをわかりやすく解説します。

目次

  1. 特別目的会社(SPC)とは
  2. SPVやペーパーカンパニーとの違い
  3. SPC法と会社法の違い
  4. 特別目的会社(SPC)の活用メリットとデメリット
  5. SPCの主な利用方法(GK-TK、TMK、REIT)
  6. M&AでのSPC活用(LBOスキームなど)
  7. 不動産証券化と資産流動化の概要
  8. 特別目的会社の設立目的・税務面の考え方
  9. 特別目的会社のまとめ

特別目的会社(SPC)の概要と役割

特別目的会社(SPC)は、英語で“Special Purpose Company”といい、特定の目的のために設立される法人のことです。具体的には、M&Aの実行や不動産の証券化など、ある事業に必要な資産のみを切り離して保有し、それを担保に金融機関から融資を受けたり投資家から出資を募ったりすることで資金を集める仕組みとして活用されます。

SPCが果たす役割は大きく分けて2つあります。

1つ目は、保有する資産を「切り離す(オフバランス化する)」ことで、親会社や出資元に万一のことがあったときでもSPCが倒産せずに資金調達や運用を続けられる点です。これを「倒産隔離」ともいいます。

2つ目は、SPCが保有している資産の将来性を評価したうえで資金を集めるので、親会社の信用状態が直接影響を及ぼさないことです。親会社が赤字や負債を抱えていても、SPCが保有する不動産や事業が高い収益力を見込めれば、投資家や金融機関から資金を得る可能性があります。

SPV(特別目的事業体)との関係

SPCという言葉とよく混同されるのがSPV(Special Purpose Vehicle)です。SPVとは、資産の保有や管理を行う目的で作られた事業体をまとめて呼ぶ総称であり、法人格を持つ場合もあれば組合や信託のように法人格を持たない場合もあります。その中で、法人格を有するものを「SPC(特別目的会社)」と呼ぶので、SPCはSPVの一形態という位置づけになります。

ペーパーカンパニーとの違い

ペーパーカンパニーは、登記はされているものの実態として事業を行っていない会社を指し、特段の法的定義はありません。SPCも自身が直接事業を営むわけではないため、外見上はペーパーカンパニーと似ていると誤解される場合があります。しかし、SPCには明確な設立目的(例えばM&Aの実行、不動産の証券化など)が存在し、実際に資産を保有して出資や融資を受け、配当を行うなどの実質的な運用を伴います。そのため、何の目的もなく書類上だけ存在するペーパーカンパニーとは異なります。

SPC法と会社法の違い

SPCを設立する場合、大きく分けて2通りの根拠法があります。

1つ目は「資産の流動化に関する法律」(通称:SPC法)で、ここに基づいて設立されるものを特定目的会社(TMK)と呼ぶことがあります。

2つ目は「会社法」で、ここに基づくSPCは株式会社や合同会社の形態を取りながら特別目的会社として機能します。

SPC法に基づく場合は、資本金が10万円以上必要だったり、内閣総理大臣への届出が必要だったり、資産流動化計画の策定や業務開始届出の提出が求められるなど、設立までの手続が複雑になる傾向があります。また、登録免許税は3万円とされていますが、さまざまな書類作成や専門家への依頼などのコストが別途かかります。

一方、会社法に基づき株式会社や合同会社を設立する場合は、最低資本金1円からでも設立できます。ただし、株式会社の場合は登録免許税が最低15万円、合同会社なら最低6万円かかります。また、会社法に基づいた設立の場合は資産流動化計画や内閣総理大臣への届出は不要です。そのため、できるだけ手続を簡易にしたい企業は会社法を利用し、合同会社(GK)や株式会社としてSPCを作るケースが多く見られます。

  

SPC法に基づく設立 

会社法に基づく設立 

資本金 

10万円以上 

1円以上 

内閣総理大臣への届出 

必要 

不要 

登録免許税 

3万円 

最低15万円、合同会社は最低6万円 

定款印紙 

必要 

必要(電子定款あるいは合同会社であれば不要) 

必要な役員 

取締役1 

監査役1 

取締役1人(合同会社なら社員1人) 

資産流動化計画の作成 

必要 

不要 

業務開始届出の提出 

必要 

不要 

特別目的会社の利用メリット

SPCを活用すると、主に下記のようなメリットがあります。

資金調達の効率化

SPCは特定の事業や資産だけを切り離して保有する仕組みをとるため、親会社の信用力に左右されにくいという特徴があります。投資家や金融機関は、SPCが保有する不動産や債権などの資産を担保に融資や出資を行うため、親会社の業績に不安があってもSPCへの投資は魅力的だと判断できる場合があるのです。結果として、SPCを通じた資金調達がスムーズになります。

倒産隔離とオフバランス化

親会社が万一倒産したとしても、SPCが保有する資産や債務は親会社とは別に管理されます。つまり、SPCは親会社の倒産リスクから切り離されやすい構造になっており、出資者にとってはリスクの軽減につながります。また、親会社にとってもSPCに移管した資産を財務諸表上切り離せる(オフバランス化できる)場合があるため、バランスシートを圧縮することが可能です。

少額資本によるM&Aの実現

SPCを使ったM&A手法として、レバレッジド・バイアウト(LBO)があります。LBOは譲受企業(買い手)が十分な資金をもっていなくても、買収される企業(譲渡企業)の資産やキャッシュフローを担保に金融機関から借入れをし、それで買収代金をまかなう方法です。具体的には、譲受企業がSPCを設立し、SPCが買収対象となる企業を吸収合併することで最終的に買収を完了させます。これにより譲受企業は大きな資金負担を回避しつつM&Aを行える可能性が高まります。

海外設立による税負担の軽減

SPCは日本国内だけでなく、いわゆるタックスヘイブンと呼ばれる税率の低い海外地域で設立することも可能です。ケイマン諸島などを例にすると、法人税が非常に低かったり免税措置が受けられたりするため、税コストを抑えられます。ただし、近年は税制改正や国際的な情報共有体制が整いつつあり、タックスヘイブンでの設立には新たな規制もあるため、専門家に相談が欠かせません。

不動産証券化による大規模資金調達

不動産をSPCに保有させ、それを担保に証券化を行うと多くの投資家から小口で資金を集められます。不動産の将来収益を期待して投資家がお金を出すため、大規模な開発プロジェクトでも親会社の自己資金を大きく減らせます。これが不動産証券化の主な魅力で、企業は資産を効率よく運用しつつリスクを分散できます。

特別目的会社のデメリット

メリットが多いSPCですが、導入や運用にあたって注意すべきデメリットも存在します。

設立や運営コストが高い

SPCを設立するには、法人格を持つための登記手続や各種届出、資産流動化計画の作成などが必要になり、専門家(弁護士、公認会計士、税理士、信託銀行など)と連携しなければなりません。通常の会社設立より複雑な分、コストが高くなる傾向があります。とくにSPC法に基づくTMKを設立する際には、内閣総理大臣への届出が必要となるなど手間やコストが増大します。

買収後の債務負担リスク

LBOスキームなどでSPCを活用した場合、最終的にSPCが買収対象企業と合併すると、買収の際に調達した資金の返済義務が企業側に引き継がれます。想定以上にキャッシュフローが伸びなかったり、経営環境が悪化したりすれば、返済の重荷で事業が苦しくなる可能性があります。事前に対象企業の財務や経営を綿密にチェックし、返済計画が無理のないものかどうか慎重に判断することが求められます。

複雑な契約と管理体制

SPCの運営では、融資や出資など多方面の契約が必要になり、それらを管理・調整するための体制が必要です。また、不動産や債権などの資産の取得・保有・運用は、専門のアセットマネージャーや信託銀行に委託するのが一般的です。結果として、運営体制が複雑化し、報酬コストやコミュニケーションの手間も増えます。

海外設立のハードル

タックスヘイブンなどにSPCを設立する場合、海外法人設立にまつわる法規制や書類手続が国内より難しくなる可能性があります。現地の法律に詳しい専門家を探したり、各種許認可を取得したりする手間を考慮する必要があります。さらに、後日税制や国際的な規制が変わり、当初想定したメリットが得られなくなるリスクもゼロではありません。

特別目的会社(SPC)の主な利用方法

SPCの具体的な活用手法としては、主に「GK-TKスキーム」「TMKスキーム」「REITスキーム」の3種類が挙げられます。

GK-TKスキーム(合同会社と匿名組合の組合せ)

GK-TKスキームは、合同会社(Godo Kaisha、通称GK)が資産を保有し、投資家は匿名組合(TK)契約を結んで出資を行う仕組みです。合同会社は会社法に基づいて設立するため、設立手続が比較的簡単で管理コストも抑えられます。また、匿名組合は法人格を持たないので二重課税を避けやすいというメリットがあります。出資者の匿名性を確保できる点や、投資の利益が直接配分されやすい点も魅力です。

TMKスキーム(特定目的会社を利用)

TMKとは、SPC法(資産流動化法)に基づいて設立される特定目的会社のことです。TMKは、資産流動化計画を金融庁(内閣総理大臣)に届け出る必要があり、運営面での管理や報告義務などがGK-TKに比べて厳格になります。ただし、TMKスキームを利用することで税法上の特別措置が受けられる場合もあり、条件が合えば節税メリットが大きい点が特徴です。

REITスキーム(投資法人による証券化)

REIT(Real Estate Investment Trust)は、不動産投資法人が多数の投資家から資金を集め、不動産を取得し、その収益を投資家に分配する仕組みです。投資信託と似た構造ですが、上場することで一般の投資家も少額から参加できるという利点があります。一方で、投資法人を運用するには厳格なルールと管理体制が求められ、コストや手続のハードルがあるため、より大規模な不動産事業に活用されることが多いです。

特別目的会社の税務メリットと留意点

SPCには、設立場所や設立形態次第で税務上のメリットが期待できます。とくに次のような点が代表例です。

国内SPCの税制優遇

SPCは配当可能な利益をほぼ全額出資者に還元することで、法人税の負担を極端に低く抑えるしくみを利用できるケースがあります。日本の場合、海外への資本流出を防ぎつつ国内で資金調達や事業拡大を図ってほしいという国の政策意図もあり、SPCが一定の要件を満たすと実質的に課税が軽減されます。ただし、どの程度の配当を行い、どのように利益を処理するかは法律や会計上の規定を満たす必要があります。

海外SPCの節税スキーム

タックスヘイブンのように法人税率が低い国や地域でSPCを設立すれば、日本国内の法人税率(約40%)と比べて大幅に税コストを抑えられる場合があります。ただし、租税回避を目的とした不当な行為とみなされないよう、各国の規定に従った形で運用することが求められます。

消費税・法人税・相続税の扱い

不動産を保有するSPCの場合、消費税や固定資産税、相続税など、さまざまな税目の扱いが絡んでくることがあります。不動産証券化の際に小口化した受益権や出資持分を相続するケースでは、どのように評価するのか、専門家の確認が必要です。M&AでSPCを設立して企業を買収し、事業承継における資金調達に活用する際にも、引き継ぎ時の税制対応が複雑になることがあります。

SPCと会社設立時の資本金・形態のポイント

SPCを設立する形態としては、合同会社(GK)を選ぶケースが多いですが、株式会社も可能です。設立時には最低資本金さえクリアしていれば大規模な買収にも対応できます。たとえば、100億円クラスの買収を実行したい場合でも、必要な最低資本金を満たせばSPCの形態を整えられるわけです。


一方、SPC法に基づいてTMKを作る場合は資本金10万円以上や届出など多くの要件があり、手続が煩雑になります。しかし、その分だけ資産流動化計画を明確に立てることで金融機関や投資家に対して信頼性を示せる、税務面で優遇を受けられるなどの恩恵を期待できるのです。

M&AにおけるSPC活用(LBOスキーム)

中小企業の事業承継や大規模M&AなどでSPCがしばしば利用される理由として、レバレッジド・バイアウト(LBO)という方法が挙げられます。手元資金が少なくても、譲渡企業(買収対象企業)の資産や将来収益を担保に借入れを起こし、M&Aを実現できるのです。

LBOの流れの例

1.譲受企業や投資家が目的達成のためにSPC(合同会社や株式会社)を設立する。

2.SPCは買収対象企業の株式や資産を担保に金融機関や投資家から資金を借りる。

3.SPCがその資金を使って対象企業を買収する。

4.SPCと対象企業を合併させ、買収資金を返済するのは合併後の企業となる。

このスキームでは、買収資金を返す原資が対象企業のキャッシュフローに依存するため、対象企業の収益力が非常に重要です。過大な債務を負わないように、事前に収益見込みをしっかり試算する必要があります。

不動産証券化と資産流動化

SPCは不動産の証券化においても広く用いられます。企業が不動産を直接所有するのではなく、SPCに移したうえで不動産を裏付資産とする証券を発行し、投資家から資金を集める方法です。投資家は小口の投資で不動産の収益に参加でき、企業は大きな資金を一度に調達できるメリットがあります。

不動産証券化は、投資家側にとっては分散投資によるリスク低減という利点があり、企業側にとってはバランスシートから不動産を切り離して資金調達ができるメリットがあります。加えて、証券が上場などを通じて売買される場合は流動性が高まり、投資家が資金を回収しやすくなる点も特徴です。

SPC設立の際の専門家への相談

SPCを使ったM&Aや不動産証券化など、さまざまなスキームを実行するときは、多岐にわたる法律や税務上の論点を整理しなければなりません。とくに、SPC法や会社法のどちらを使うか、海外に設立するか国内に設立するかなど、検討すべき項目が非常に多いです。

そのため、税理士法人グループなどの専門家に相談しながら計画を立案し、資金調達や組織再編における法的手続を円滑に進めることが望まれます。とくに中小企業(年商3~30億円)で事業承継やM&Aを検討しているケースでは、オーナー経営者の高齢化や資金不足など課題が多く、SPCの導入がスムーズにいくとは限りません。専門家と対策を講じながら検討すれば、無理のない承継や買収を計画できる可能性が高まります。

こうしたプロセスを踏むことで、SPCは単なるペーパーカンパニーではなく、実質的かつ効果的な資金調達・事業運営手段として機能するようになります。

まとめ

特別目的会社(SPC)は、特定の資産を切り離して保有し、資金調達を円滑にしたり、親会社のリスクや信用力とは独立して事業を展開できる仕組みです。M&AではLBOスキームを通じて少ない自己資金でも買収が可能となり、不動産証券化ではより小さな単位で投資家から資金を募れます。一方で、設立コストや買収後の債務負担、専門家への依頼が欠かせないため、初期の段階で十分な準備と計画が必要です。事業承継や資金調達の方法に悩む経営者にとって、SPCの活用は有力な選択肢といえますが、メリットとデメリットをしっかり把握したうえで最適な形態を検討することが大切です。

著者|土屋 賢治 マネージャー

大手住宅メーカーにて用地の取得・開発業務、法人営業に従事。その後、総合商社の鉄鋼部門にて国内外の流通に携わる傍ら、鉄鋼メーカーの事業再生に携わる。外資系大手金融機関を経て、みつきグループに参画

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