関連会社や子会社、関係会社、グループ会社などの企業間関係について詳しく解説します。本記事では、出資や議決権、経営上の影響力などの基礎を押さえながら、それぞれの定義やメリット・デメリット、設立時の留意点を紹介し、リスク管理や事業承継への活用方法もわかりやすくまとめます。企業間の関係性を見直したい経営者の方はぜひ参考にしてください。
目次
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関連会社とは、親会社が株式の議決権を一定以上保有し、経営方針の決定に重要な影響を与えられる企業のことです。通常、親会社が議決権の20%以上を保有していれば関連会社とみなされます。ただし、15%以上20%未満であっても、親会社の役員が対象会社の重要な役職に就任していることや、親会社からの重要な融資や技術提供がある場合などの一定の要件に該当すると、関連会社に分類されることがあります。
このような判定基準は、会社計算規則や財務諸表規則で定められており、単なる出資比率だけではなく、人事・資金・取引関係など多角的な観点から親会社の影響力を判断する点が特徴です。例えば、15%未満の出資であっても、親会社の従業員や役員が対象会社の役員に就任し、実質的な影響力を持つ場合などは関連会社として扱われることがあります。
議決権を50%超保有していれば子会社とみなされ、親会社は実質的な支配力を持つとされます。一方、関連会社は過半数までは至らないものの、重要な影響を与える程度の資本関係や人的関係を通じて結びついています。支配とまではいかないが大きな影響力はある、という立ち位置が関連会社の大きな特徴です。
企業間の関係を正しく理解するためには、関連会社のほかにも「子会社」「関係会社」「グループ会社」といった用語を区別する必要があります。出資比率や法的な定義、会計処理などそれぞれ異なるポイントがあるため、以下に概要を整理します。
子会社は、親会社が過半数(50%超)の株式を所有し、実質的に経営を支配している会社です。原則として議決権の50%以上を保有している場合に子会社と判断されますが、40%超の保有であっても、他の株主との兼ね合いによって親会社が実質的に支配しているとみなされれば子会社扱いとなるケースもあります。
一方、関連会社は主に「20%以上50%以下」の議決権比率が目安となり、「支配」ではなく「重要な影響力」に基づいて分類される点が大きな違いです。決算処理も異なり、子会社は親会社と合算して連結決算を行いますが、関連会社の場合は「持分法」という形で、親会社の影響が及ぶ分だけを親会社の財務諸表に反映します。
「関係会社」は、親会社や子会社、関連会社の総称を意味し、法令上も定義されています。出資比率や支配力の大小を問わず、資本や経営上のつながりがある会社をひとまとめにした呼び方です。
「グループ会社」は法律で明確に定められた用語ではありませんが、実務上は親会社・子会社・関連会社などを含む企業グループ全体を表す言葉として使われることが多いです。必ずしも出資比率だけでなく、業務提携やブランド共有など、広い意味での共同体がグループ会社と呼ばれる場合もあります。
関連会社を設立することには、多くのメリットがあります。親会社が出資を分散しながら、事業全体の効率化や将来的な経営基盤を強化できる点が大きな魅力です。具体的な利点を以下に整理します。
1.意思決定の迅速化
企業が大きくなるほど、意思決定に多くのステークホルダーが関与し、時間がかかる傾向があります。関連会社として独立した事業体を設けることで、組織がコンパクトになり、経営判断がスムーズに進む可能性があります。
2.権限委譲の最適化
親会社と関連会社の役割を明確化し、権限をバランスよく委譲することで、グループ全体の経営効率が上がります。過度な統制を避けつつ、必要な統括は親会社が担うことで、組織全体の機動力を高めることができます。
3.事業分野の特化
関連会社が特定の事業分野に集中することで、専門性を深めやすくなり、市場の変化に柔軟に対応しやすくなります。また、複数の関連会社がそれぞれの専門領域で協力し合うことで、グループとしての総合力が高まります。
1.後継者候補の実践的な経験の場
後継者を関連会社の経営に携わらせることで、実践的な経営ノウハウや意思決定スキルを養成できます。親会社の全体をいきなり任せるよりも、まずは関連会社で小規模な経営を経験させることで、後継者の資質を見極めることができます。
2.複数後継者への分担
後継者候補が複数いる場合、それぞれが別の関連会社の経営を担う形を取れば、公平に経営経験を積ませることが可能です。能力や適性を把握しやすく、最終的にグループ全体を引き継ぐ際にも役立ちます。
3.承継プロセスの円滑化
事業の一部を関連会社として切り出しておけば、後継者が親会社を承継する際にも業務内容を整理しやすくなります。自社の一部機能を既に関連会社に移管しておくことで、承継後の混乱を減らせる可能性があります。
1.法人税の軽減税率の活用
親会社の利益を関連会社にも分散させることで、両社がそれぞれ中小企業向けの軽減税率や各種税制優遇措置を受けやすくなる場合があります。資本金1億円以下なら適用可能な税制優遇もあるため、グループ全体で検討する価値があります。
2.財務リスクの分散
不測の事態が発生した際、関連会社として独立した組織体であれば、リスクがグループ全体に波及しにくくなります。万が一一部の事業に不祥事や経営危機が起こっても、他の関連会社に影響が限定される可能性があります。
3.事業ポートフォリオの最適化
関連会社を複数設けておくことで、それぞれの業績や成長性を把握しやすくなり、不採算事業の整理・撤退や、成長事業への集中投資など、戦略的な選択を行いやすくなります。
多くの利点がある一方で、関連会社を設立・運営するにはコストやリスクが伴います。ここでは、主なデメリットや注意点を押さえておきましょう。
1.手続や管理コストの増大
一般の会社設立と同様、関連会社を設立するには定款作成や登記手続など、相応の時間と費用が必要です。設立後も、経理や人事、法務などの管理業務が増えるため、親会社の管理部門の負担が大きくなる可能性があります。
2.利益相反取引の承認手続
親会社と関連会社で利益が衝突する取引を行う場合は、取締役会や株主総会の承認が必要になるケースがあります。そのたびに書類作成や調整が必要となり、事務的な手間が増大します。
1.ブランドイメージへの影響
関連会社で不祥事や問題が起きると、グループ全体への信用が損なわれる可能性があります。親会社が直接関与していなくても、取引先や社会からは同じグループとして捉えられるため、風評被害のリスクを常に考慮しなければなりません。
2.グループガバナンスの複雑化
関連会社の数が増えるほど、ガバナンス体制は複雑になります。各社の経営状況を十分把握し、必要に応じて支援や調整を行う仕組みを整えることが求められます。コンプライアンス違反や経理上の不正などが起きないよう、グループ全体での統制が欠かせません。
1.資金や人材の分散
複数の関連会社を持つと、それぞれに投資資金や優秀な人材を振り分ける必要があります。戦略的に配置を誤ると、どの事業にも十分なリソースを割けず、中途半端な結果に終わる恐れがあります。
2.経営意思決定の調整コスト
親会社と関連会社間での方針が合わない場合や、複数の関連会社同士で利害が対立するケースもあります。その調整には時間と労力がかかり、意思決定が遅れるリスクも高まります。
関連会社と間違えやすい言葉として「兄弟会社」や「持株会社」などがあります。これらの呼称や概念の違いを把握しておくと、企業グループ全体の構造を正しく理解しやすくなります。
・兄弟会社
同じ親会社を持つ子会社同士が、一般的に「兄弟会社」と呼ばれます。法令上の定義はありませんが、実務ではよく使われる言い回しです。親会社から見ると複数の子会社を保有する形になり、これら子会社同士は議決権の面で直接支配し合っているわけではありません。
・持株会社
親会社が子会社や関連会社の株式を保有し、事業運営自体は各子会社や関連会社に任せる形の企業形態を指します。純粋持株会社の場合、自社はほとんど事業を行わず、株式の保有によるグループ支配を主目的とする点が特徴です。一方、事業持株会社は株式保有による統制と同時に、自社でも何らかの事業を営みます。
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関連会社、子会社、関係会社、グループ会社のそれぞれの定義や判定基準、設立メリットとデメリットを整理しました。経営効率化や後継者育成、税務面でのメリットを享受する一方、管理負担やリスクの波及にも注意が必要です。企業グループの持続成長を実現するためには、各会社の特徴を正確に理解し、戦略的な運営と適切なリスク管理が求められます。
著者|竹川 満 マネージャー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事