関連会社・兄弟会社とは?企業間関係の種類と特徴を徹底解説

関連会社、子会社、関係会社、グループ会社の違いと特徴を詳しく解説します。企業間関係の定義や法的位置づけ、設立のメリットやデメリットなど、実務に役立つ情報をわかりやすく紹介します。

目次

  1. 関連会社の定義と特徴
  2. 関連会社、子会社、関係会社の違いを詳しく解説
  3. グループ会社の概念と範囲
  4. 関連会社設立のメリット
  5. 関連会社設立時の留意点とデメリット
  6. まとめ

関連会社の定義と特徴

関連会社とは、親会社が完全な支配権を持たないものの、経営方針の決定に重要な影響力を行使できる会社のことを指します。具体的には、出資、人事、技術提供、取引関係などを通じて、親会社が他社の財務・営業・事業などの経営方針決定に対して重要な影響を与えることができる会社を関連会社と呼びます。

一般的に、親会社が対象会社の株式を20%以上保有し、連結決算の対象となっているケースが関連会社に該当します。ただし、以下のような条件を満たす場合も関連会社として判断される可能性があります。

1. 議決権の15%以上20%未満を保有し、一定の要件を満たしている場合

2. 議決権が15%未満でも、特定の者との議決権を合わせて20%以上となり、かつ一定の要件を満たしている場合

関連会社の判定に関する「一定の要件」には、以下のようなものが含まれます。

親会社の従業員または役員が、対象会社の重要な地位(役員等)に就任している

親会社から重要な融資を受けている

親会社から重要な技術提供や取引関係がある

財務や事業方針の決定において重要な影響があると推測される事実が存在する

これらの要件のうち、1つでも該当すれば関連会社と判定される可能性があります。

会社計算規則に基づく定義

会社計算規則では、関連会社について以下のように定義しています。

「子会社を除く他の会社等で、その会社が財務及び事業の方針決定に対して重要な影響を与えることができる場合」(会社計算規則第2条3-18)

この定義によると、関連会社は子会社ではないものの、親会社が重要な影響力を持つ会社として位置づけられています。

財務諸表規則における関連会社の定義

財務諸表規則では、関連会社の定義をより詳細に規定しています。

「会社等が、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて子会社以外の他の会社等の財務・営業又は事業の経営方針決定に対して重要な影響を与えることができる場合」(財務諸表規則第8条第5項)

この定義では、関連会社の判断基準として、出資関係だけでなく、人事、資金、技術、取引などの多様な側面から影響力を評価することが示されています。

会計基準によって関連会社の判定基準が若干異なる場合がありますが、基本的には親会社が子会社以外の会社等に対し、経営に関する重要な影響力を持つ場合に関連会社とみなされるという点で共通しています。

関連会社、子会社、関係会社の違いを詳しく解説

企業間の関係を表す用語として、関連会社、子会社、関係会社という言葉がよく使われます。これらの用語は似ているようで、実際には異なる意味を持っています。ここでは、それぞれの違いについて詳しく解説します。

関連会社と子会社の主な相違点

関連会社と子会社の最も大きな違いは、親会社が保有する議決権の割合です。

1. 関連会社: 

親会社が対象会社の議決権の20%以上を保有

経営方針の決定に重要な影響を与えることができる

2. 子会社: 

親会社が対象会社の議決権の過半数(50%超)を保有

経営を実質的に支配できる

ただし、子会社の判断基準は議決権の割合だけではありません。以下のような条件を満たす場合も子会社として扱われます。

親会社が議決権の3分の1超を保有し、他の株主との関係から見て会社を実質的に支配していると認められる場合

親会社の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者が取締役会の構成員の過半数を占める場合

重要な財務および営業または事業の方針の決定を支配する契約が存在する場合

資金調達額の総額の過半について融資(債務保証を含む)を行っている場合

このように、子会社の方が親会社からの影響力がより強く、経営の支配度が高いと言えます。

関連会社と関係会社の区別

関係会社は、財務諸表等の規則によると、親会社、子会社、関連会社を含めた会社の総称として定義されています。つまり、関連会社は関係会社の一部であると言えます。

関係会社:親会社、子会社、関連会社を含む広い概念

関連会社:関係会社の中で、子会社ではないが重要な影響力を持つ会社

このように、関連会社と関係会社は包含関係にあり、関連会社は関係会社の一種として位置づけられます。

企業間の関係を正確に理解し、適切な用語を使用することは、ビジネスにおいて重要です。特に、法律や会計の分野では、これらの用語の違いが重要な意味を持つ場合があるため、注意が必要です。

グループ会社の概念と範囲

グループ会社という言葉は、ビジネスの世界でよく耳にする用語ですが、その定義や範囲について正確に理解している人は少ないかもしれません。ここでは、グループ会社の概念と範囲について詳しく解説します。

親会社・子会社・関連会社を含む企業グループの総称

グループ会社とは、親会社、子会社、関連会社など、資本関係や経営上のつながりを持つ企業グループの総称です。これらの会社は、以下のような特徴を持っています。

1. 共通の経営方針や理念に基づいて行動する

2. お互いの強みと弱みを補完し合う関係にある

3. グループ内での意思決定やコミュニケーションが迅速かつ円滑に行われる

グループ会社の構成要素には、以下のようなものが含まれます。

親会社:グループ全体を統括し、主導的な役割を果たす会社

子会社:親会社によって支配されている会社

関連会社:親会社が重要な影響力を持つが、支配までには至らない会社

持分法適用会社:連結財務諸表において持分法が適用される会社

これらの企業は、資本関係、提携関係、取引関係などによって区別されますが、一般的にはグループ会社の一部として扱われます。

関係会社とグループ会社の関係性と区分

関係会社とグループ会社は、どちらも企業グループを形成する用語ですが、その定義と範囲には違いがあります。

1. 関係会社: 

法律上の定義があり、財務諸表等規則で規定されている

親会社、子会社、関連会社を含む

明確な資本関係や支配関係に基づいて定義される

2. グループ会社: 

法律上の明確な定義はない

関係会社を含むより広い概念

資本関係だけでなく、業務提携や取引関係なども含む場合がある

関連会社設立のメリット

関連会社を設立することには、様々なメリットがあります。ここでは、主要な利点について詳しく解説します。

経営の効率化

関連会社の設立は、経営の効率化につながる可能性があります。

1. 意思決定の迅速化: 

企業規模が大きくなると、関係者が増加し、意思決定のスピードが低下することがあります。

関連会社を設立することで、組織や事業分野をコンパクト化し、関係者を限定できます。

これにより、経営に関する意思決定のスピードを上げることが期待できます。

2. 権限委譲の最適化: 

親会社から関連会社へ適切な権限を移譲することが重要です。

過度な権限移譲は統制が効かなくなるリスクがある一方、不十分な権限移譲では効率化のメリットを享受できません。

バランスの取れた権限移譲を行うことで、グループ全体の経営効率を高めることができます。

3. 事業分野の特化: 

関連会社を特定の事業分野に特化させることで、専門性を高めることができます。

これにより、市場の変化に迅速に対応し、競争力を強化することが可能になります。

次世代リーダーの育成機会

関連会社の設立は、次世代のリーダー育成にも有効です。

1. 後継者の経験蓄積: 

後継者候補がいる場合、関連会社で経営を任せることで、経営者としての実践的な経験を積むことができます。

将来的にグループ全体の事業承継者として必要な能力を磨く機会となります。

2. 複数の後継者候補の育成: 

後継者候補が複数いる場合、それぞれに関連会社の主要ポストを任せることで、公平に経営経験を積ませることができます。

各候補の能力や適性を見極める機会にもなります。

3. 幹部候補の育成: 

次世代の幹部候補者を関連会社の重要ポストに就かせることで、マネジメント能力を養成できます。

実践的な環境で責任ある立場を経験させることは、有効な経営戦略の一つと言えます。

税務メリットとリスク分散効果

関連会社の設立には、税務面でのメリットとリスク分散効果があります。

1. 税務メリット

法人税の軽減税率の活用: 

  • 親会社の利益が関連会社に分散されることで、法人税の軽減税率を利用できる可能性があります。
  • 資本金1億円以下の中小企業向けの軽減税率を適用できる場合があります。

各種税制優遇措置の適用: 

  • 法人税、地方法人税、消費税などの軽減措置や免税措置が適用される可能性があります。
  • 特定の業種や地域に関連する税制優遇を受けやすくなる場合もあります。

2. リスク分散効果 

財務リスクの軽減: 

  • 事業分野を多く持つ企業では、投資を分散させることで財務リスクを軽減できます。
  • 各関連会社の業績変動が相互に補完し合うことで、グループ全体の安定性が高まります。

不測の事態への対応: 

  • 不祥事や緊急事態など、予期せぬ事態が発生した場合の影響範囲を限定できます。
  •    一つの関連会社で問題が発生しても、他の関連会社や親会社への影響を最小限に抑えられる可能性があります。

3. 事業ポートフォリオの最適化 

各関連会社の業績や成長性を個別に評価しやすくなります。

不採算事業の切り離しや、成長事業への資源集中など、戦略的な意思決定を行いやすくなります。

これらのメリットを活かすことで、企業グループ全体の価値向上と持続的な成長につながる可能性があります。ただし、関連会社の設立や運営には適切な計画と管理が不可欠です。

関連会社設立時の留意点とデメリット

関連会社の設立には多くのメリットがありますが、同時にいくつかの留意点やデメリットも存在します。ここでは、関連会社を設立する際に注意すべき点と、考えられるデメリットについて解説します。

設立・運営にかかる負担

関連会社の設立と運営には、様々な負担が伴います。

1. 設立に関する手間と費用: 

関連会社の設立手続は、一般の会社設立と同様の手間と費用がかかります。

定款作成、出資金の払い込み、登記手続など、多くの事務作業が必要です。

弁護士や税理士などの専門家への相談費用も考慮する必要があります。

2. 運営上の手続の増加: 

親会社と関連会社間で利益相反となる取引を行う可能性がある場合、取締役会(または取締役会がない場合は株主総会)での承認が必要になります。

このような承認手続は、取引の都度必要となり、事務負担が増加する可能性があります。

3. 管理コストの増加: 

関連会社の管理には、人材や時間、資金などのリソースが必要です。

経理、人事、法務など、様々な面でのサポートが求められ、親会社の管理部門の負担が増える可能性があります。

4. コンプライアンス対応の複雑化: 

関連会社ごとに法令遵守体制を整備する必要があります。

グループ全体でのコンプライアンス管理が複雑になる可能性があります。

グループ全体に及ぼす影響とリスク

関連会社の設立は、グループ全体に影響を及ぼすリスクも伴います。

1. 不祥事の波及リスク: 

関連会社で不祥事が発生した場合、その影響はグループ全体に波及する可能性が高くなります。

親会社が直接関与していなくても、取引先や社会からの評判や信用が低下するリスクがあります。

2. ブランドイメージへの影響: 

関連会社の行動や業績が、グループ全体のブランドイメージに影響を与える可能性があります。

特に、親会社と同じブランド名を使用している場合、その影響は大きくなります。

3. グループガバナンスの複雑化: 

関連会社が増えるほど、グループ全体のガバナンス体制が複雑になります。

各社の経営状況を適切に把握し、必要な指導や支援を行うことが難しくなる可能性があります。

4. 経営資源の分散: 

関連会社の設立により、人材や資金などの経営資源が分散される可能性があります。

これにより、重要な事業領域への資源集中が難しくなる場合があります。

5. グループ内取引の複雑化: 

関連会社間の取引が増加すると、移転価格税制などの税務上の問題が生じる可能性があります。

適正な取引価格の設定や、取引の合理性の説明が求められます。

これらの留意点やデメリットを十分に理解し、対策を講じた上で関連会社の設立を検討することが重要です。適切な管理体制を構築し、リスクを最小限に抑えながら、関連会社設立のメリットを最大限に活かすことが求められます。

まとめ

関連会社、子会社、関係会社、グループ会社の概念と特徴について解説しました。これらの企業間関係は、経営戦略や法務、会計など多岐にわたる影響を持ちます。関連会社の設立には経営効率化や人材育成、税務メリットなどの利点がある一方、運営負担やリスク波及などの課題もあります。企業グループの構築に際しては、これらの特徴を十分に理解し、適切な戦略立案と管理体制の構築が不可欠です。

著者|竹川 満 マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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