M&Aで株主が分散している場合の対策|名義株・少数株主の整理方法

M&Aで株主が親族や元役員などに分散していると、株式の取得や売却条件に影響することがあります。名義株の確認・整理方法、反対する少数株主への対応、株式を集約する方法ごとの要件・費用・税金、売却前に確認すべき書類を解説します。株主の権利を踏まえ、会社売却を円滑に進めるための判断ポイントが分かります。

目次

  1. 株主の分散がM&Aによる会社売却に与える影響
  2. 名義株の見つけ方と整理する手順
  3. M&A前に株式を集約する4つの方法
  4. 反対する少数株主がいる場合の対応
  5. 所在不明株主や相続未了の株式はどう整理するか
  6. 株式集約にかかる費用と税金の注意点
  7. 会社売却前に確認しておきたい書類
  8. 株主が分散している会社のM&Aを円滑に進めるポイント
  9. まとめ

M&Aにおける株主の権利と影響力:成功のカギとなる株主対策

▶目次ページ:M&Aの種類・方法(のれん、法務)

M&A(合併・買収)で会社を売却するとき、株式が親族や元役員などに分散していると、経営者が売却に同意していても取引が進まないことがあります。特に、買い手が全株式の取得を希望する場合、少数株主の不同意や名義株の存在が問題になります。

株主が複数いても、必ずしも会社を売却できないわけではありません。重要なのは、誰が株式を所有しているのかを確認し、買い手が求める取得割合に応じて、必要な同意や手続を整理することです。

この記事では、株主の分散がM&Aに与える影響、名義株の調べ方、株式を集約する方法、反対株主への対応、費用と税金の注意点を解説します。

株主の分散がM&Aによる会社売却に与える影響

株主の分散とは、会社の株式を複数の個人や法人が保有している状態です。中小企業では、経営者だけでなく、親族、創業時の出資者、元役員、従業員、取引先などが株式を持っていることがあります。

株主が分散している会社でもM&Aは可能です。ただし、株式の所有状況によって、売却できる株式の割合や必要な手続が変わります。

株主が複数いると全株式を売却できない場合がある

株式譲渡によるM&Aでは、原則として各株主が自分の株式を売却するかどうかを判断します。

例えば、経営者が80%、親族が15%、元役員が5%の株式を持っている会社を考えてみましょう。

買い手が経営者の80%だけを取得するのであれば、残りの株主が売却に同意しなくても取引できる場合があります。

一方、買い手が100%の株式取得を条件としている場合は、親族や元役員の株式についても対応が必要です。

経営者が会社の代表者であっても、他の株主の株式を自由に売却できるわけではありません。

また、株式を売却する本人の同意とは別に、譲渡制限株式については会社の承認が必要になります。

買い手は株主名簿と実際の所有者を確認する

株式が分散している会社を買収する際、買い手は主に次の点を確認します。


・売却に応じる株主は誰か

・取得できる株式の割合はどの程度か

・株主名簿と実際の所有者が一致しているか

・過去の株式譲渡や相続に問題がないか

・譲渡制限株式の承認手続を実施できるか

・売却後も少数株主が残る場合、経営にどのような影響があるか


株主名簿に記載された人がすでに亡くなっていたり、過去の株式譲渡が名簿に反映されていなかったりすると、権利関係の確認に時間がかかります。

こうした問題が基本合意後に判明すると、最終契約や代金決済の延期、取引条件の変更につながる可能性があります。

そのため、買い手を探す前に株主構成を確認することが重要です。

持株比率によって株主の権利と影響力が変わる

株主の影響力を判断する際は、株式数だけでなく、株主総会で行使できる議決権の割合を確認します。

会社法では、株主総会の決議について、普通決議と特別決議などの区分が設けられています。

普通決議は、原則として議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席株主の議決権の過半数で成立します。

特別決議は、原則として議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。

定款で異なる要件を定められる部分もあるため、実際の判断では定款を確認します。

議決権の3分の1超を保有する株主が出席して反対すると、通常の特別決議を阻止できる場合があります。

ただし、議決権の3分の2以上を保有しているからといって、他の株主が所有する株式を当然に取得できるわけではありません。

株主総会の決議による承認と、個々の株主から株式を取得することは区別する必要があります。


出典:会社法第309条(株主総会の決議)

e-Gov法令検索

https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

確認基準日:2026年10月8日

名義株の見つけ方と整理する手順

名義株とは、株主名簿上の名義人と、実際に株式を所有している人が異なる株式です。

例えば、会社設立時に経営者が出資金を負担したものの、親族や知人の名前で株式を引き受けた場合などに問題となります。

名義株があると、M&Aで誰が株式を売却できるのかが不明確になるため、早期の確認が必要です。

出資金の負担者と株式の管理状況を調べる

名義株かどうかを確認する際は、株主名簿だけで判断せず、株式取得時の事情を調べます。

主な確認資料は次のとおりです。


・会社設立時の定款や出資に関する資料

・設立時や増資時の払込記録

・過去の株式譲渡契約書

・株主総会議事録

・配当金の受取記録

・株券がある場合の保管状況

・当事者間で交わした書面


誰が取得資金を負担したのか、誰が株式を管理していたのか、配当を誰が受け取っていたのかなどを確認します。

ただし、出資金を負担した人が必ず実際の株主になるとは限りません。

株式取得時の合意内容や、その後の管理状況なども含めて判断する必要があります。

実際の所有者を確認して合意書を作成する

名義株であることを確認できた場合は、名義人と実際の所有者の認識を一致させることが重要です。

例えば、経営者が実際の所有者であり、親族が名義人になっている場合、双方で所有関係を確認し、その内容を書面に残す方法が考えられます。

合意書には、対象株式の数、名義人、実際の所有者、名義が異なっていた経緯などを記載します。

そのうえで、会社の株主名簿を適切に整備します。

ただし、合意書を作成すれば必ず所有権の問題が解決するわけではありません。

名義人が所有権を主張している場合や、過去の取得経緯が不明な場合は、当事者間の合意だけで整理できない可能性があります。

名義人が亡くなっている場合は、相続人との権利関係も確認しなければなりません。

名義変更では贈与税の問題にも注意する

名義株の整理では、税務上の取扱いにも注意が必要です。

実際の所有者に名義を戻すだけなのか、株式を新たに贈与するのかによって、税務上の判断が変わるためです。

国税庁は、株式などの財産について、対価を支払わずに名義を変更した場合、原則として贈与があったものとして取り扱うことを示しています。

一方、実際には贈与が行われていないことを確認できる場合は、その事実関係に応じた判断が必要です。

単に「以前から経営者の株式だった」と説明するだけでは、十分な証拠にならないことがあります。

出資金の負担状況、取得時の合意、配当金の管理などを確認し、名義変更前に税理士へ相談することが大切です。


出典:国税庁「令和6年分 贈与税の申告のしかた」

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/zoyo/tebiki2024/pdf/all.pdf

公表対象:令和6年分

M&A前に株式を集約する4つの方法

株式の集約とは、複数の株主が保有する株式を、経営者や会社などにまとめることです。

M&A前に株式を集約しておくと、買い手との交渉や株式譲渡の手続を進めやすくなる場合があります。

ただし、どの方法でも自由に少数株主の株式を取得できるわけではありません。

株主の同意、会社の資金、定款、持株比率などに応じて方法を選ぶ必要があります。


方法 主な要件 主な費用 税金の注意点 期間の考え方
経営者などによる株式買取 売主との合意、必要に応じた譲渡承認 株式買取代金、契約関連費用 売主の譲渡益課税、低額譲渡などの確認 合意形成と承認手続に左右される
会社による自己株式の取得 会社法上の決議、財源規制など 買取代金、手続費用 みなし配当や譲渡所得等の確認 決議、通知、取得手続に必要な期間
相続人等に対する売渡請求 定款の定め、相続等による取得、法定期限など 買取代金、価格協議や専門家費用 取得対価の税務上の区分を確認 法定期限があるため早期対応が必要
スクイーズアウト 選択する手法ごとの議決権割合や決議など 取得対価、評価、通知、登記等の費用 株主の課税関係や会社側の税務を確認 法定手続と株主の権利行使期間を考慮


各方法の費用や期間は、株式価値、株主数、合意状況、採用する制度によって異なります。すべての会社に共通する定額の費用や所要期間があるわけではありません。

経営者などが他の株主から株式を買い取る

最も分かりやすい方法は、経営者や後継者などが、他の株主から株式を買い取ることです。

例えば、経営者が90%、親族が10%を保有している場合、親族との合意によって残りの10%を取得できれば、経営者が全株式を保有する状態になります。

この方法では、株主との合意が基本となります。

買取価格については、会社の純資産、収益力、将来の見通しなどを踏まえて検討します。

ただし、M&Aで買い手が提示する株式価格と、親族間などで株式を売買する際の税務上の評価額が必ず一致するわけではありません。

著しく低い価格で株式を移転すると、取引当事者の関係や取引内容によって贈与税などの問題が生じる可能性があります。

会社が自己株式として買い取る

会社自身が株主から株式を買い取る方法もあります。これを自己株式の取得といいます。

経営者個人が買取資金を用意する必要がない一方、会社が資金を支出するため、財務状況への影響を考える必要があります。

会社法では、株主との合意による自己株式の取得について、原則として株主総会の決議などの手続が定められています。

特定の株主から取得する場合は、他の株主に売主として加わる機会を与える制度などにも注意が必要です。

また、会社が自己株式を取得する際には、分配可能額という財源上の制限があります。

分配可能額とは、会社が株主への配当や一定の自己株式取得などに使える金額を、会社法に従って計算したものです。

会社に現預金が十分あっても、必ず自己株式を取得できるとは限りません。

税務上は、受け取った対価の一部がみなし配当として扱われる場合があるため、通常の株式譲渡とは税負担が異なる可能性があります。


出典:会社法第156条~第160条、第461条

e-Gov法令検索

https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

確認基準日:2026年10月8日

相続人等に対する売渡請求を利用する

株主が亡くなり、その株式を相続人が取得した場合には、会社法上の売渡請求制度を利用できることがあります。

これは、相続などによって譲渡制限株式を取得した人に対し、会社が株式の売渡しを請求する制度です。

利用するには、定款に必要な定めがあることなど、法律上の条件を満たす必要があります。

会社法第176条では、会社が相続などによる取得を知った日から1年を経過すると、この制度による売渡請求ができなくなることが定められています。

売買価格は当事者間で協議しますが、合意できない場合には、法律で定められた期間内に裁判所へ価格決定を申し立てる制度があります。

また、会社による買取りには財源規制も関係します。

この制度は、相続が発生した株式について一定の条件で利用できるものであり、通常の株式譲渡で反対する株主に対して自由に使える制度ではありません。


出典:会社法第174条~第177条、第461条

e-Gov法令検索

https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

確認基準日:2026年10月8日

スクイーズアウトで少数株主の株式を取得する

スクイーズアウトとは、一定の法律上の手続を通じて、少数株主の株式を金銭化し、株式を集約する方法です。

代表的な方法には、特別支配株主の株式等売渡請求や、株式併合を利用する方法があります。

特別支配株主の株式等売渡請求は、原則として対象会社の総株主の議決権の90%以上を保有する特別支配株主が利用できる制度です。

ただし、対象会社の承認や少数株主への通知など、法律上の手続を行う必要があります。

株式併合を利用する方法では、株式をまとめる比率を設定し、少数株主が保有する株式を1株未満の端数にすることがあります。

この場合も、必要な株主総会決議や情報開示などの手続があり、少数株主には一定の条件で価格を争う機会が認められています。

スクイーズアウトは、株主の同意が得られない場合の選択肢になり得ますが、すべての会社で簡単に利用できる方法ではありません。


出典:会社法第179条以下、第180条以下

e-Gov法令検索

https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

確認基準日:2026年10月8日

反対する少数株主がいる場合の対応

少数株主とは、一般に会社の株式や議決権を比較的少ない割合で保有する株主を指します。

少数株主であっても、所有する株式を売却するかどうかを判断する権利があります。

会社売却に反対する株主がいる場合は、まず反対理由を確認し、交渉で解決できる問題と、法律上の手続が必要な問題を分けて考えます。

反対理由を価格・情報・感情に分けて確認する

株主が売却に反対する理由はさまざまです。

例えば、次のような理由が考えられます。


・提示された株式価格が低いと感じている

・買い手企業について十分な説明を受けていない

・売却後の従業員や取引先への影響を心配している

・創業家として株式を保有し続けたい

・経営者との過去の関係に不満がある


価格に不満がある場合は、株式価値の算定根拠を説明することが重要です。

買い手に不安がある場合は、M&Aの目的や売却後の経営方針について、開示できる範囲で情報を共有します。

ただし、会社の秘密情報を無制限に開示することは避け、必要に応じて秘密保持契約などを検討します。

また、株主の受取額を説明する際は、会社全体の事業価値と株式価値を区別する必要があります。

会社の事業価値が高くても、借入金や余剰現預金などの状況によって株式価値は変わります。

さらに、株式の売却価格と、税金を差し引いた手取り額も同じではありません。

株主ごとに取得価額や課税関係が異なることがあるため、説明内容を整理しておくことが大切です。

株式譲渡と組織再編では株主の権利が異なる

反対株主への対応を考える際は、M&Aの手法を確認する必要があります。

通常の株式譲渡では、各株主が自分の株式を売却するかどうかを判断します。

そのため、経営者が売却に賛成していても、他の株主に株式の売却を強制できるわけではありません。

一方、合併や株式交換などの組織再編では、法律で定められた株主総会決議などを経て、反対株主にも取引の効果が及ぶ場合があります。

そのため、会社法では一定の反対株主に対して、株式買取請求などの権利を認めています。

株式買取請求とは、法律上の要件を満たす株主が、会社に対して株式を公正な価格で買い取るよう求める制度です。

ただし、通常の株式譲渡に反対しているという理由だけで、法定の株式買取請求権が当然に認められるわけではありません。

株主の権利行使と法的手続を確認する

株主は、一定の要件を満たす場合、株主総会での議決権行使に加え、株主提案や会社関係書類の閲覧請求などを行うことができます。

また、組織再編などについて法令や定款に違反する事情があり、株主が不利益を受けるおそれがある場合には、差止請求が認められることがあります。

取引成立後には、一定の要件と期間のもとで組織再編無効の訴えが問題になる場合もあります。

これらの権利は、すべてのM&Aで同じように行使できるものではありません。

例えば、株式買取請求では、株主総会前の反対通知や、所定の期間内の請求などが必要になる場合があります。

会社側も、通知日、株主総会日、効力発生日、権利行使期間を整理し、手続の不備が生じないようにすることが重要です。


出典:会社法第116条、第469条、第785条、第796条、第797条など

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https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

確認基準日:2026年10月8日

所在不明株主や相続未了の株式はどう整理するか

株主の分散を調べると、連絡が取れない株主や、相続手続が終わっていない株式が見つかることがあります。

これらは名義株とは異なる問題です。

名義株は実際の所有者と名義人の不一致が問題になりますが、所在不明株主は株主の連絡先や所在が分からない状態を指します。

相続未了の株式では、相続人の確認や株式に関する権利行使の方法が問題になります。

所在不明株主は法定要件を確認する

株主と連絡が取れない場合、会社は株主名簿に記載された住所、過去の通知記録、関係者からの情報などを確認します。

会社法には、一定の条件を満たす所在不明株主の株式について、競売や売却などの手続を認める制度があります。

ただし、単に電話や郵便で連絡が取れないだけでは利用できません。

会社法第197条では、株主に対する通知などが継続して到達していないことや、一定期間にわたり配当を受領していないことなど、法律上の要件が定められています。

また、事業承継を円滑に進めるため、一定の中小企業については特例制度が設けられている場合がありますが、利用には所定の要件や認定などの確認が必要です。

所在不明株主がいる場合は、通常の買取交渉とは別に、利用できる制度と必要な期間を確認することが重要です。


出典:会社法第196条、第197条、第198条

e-Gov法令検索

https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

確認基準日:2026年10月8日

相続未了の株式は相続人と権利関係を確認する

株主が亡くなっている場合、まず相続人を確認します。

遺産分割が終わっていない株式については、複数の相続人が権利を共有している場合があります。

会社法第106条では、株式が複数人の共有に属するときは、原則として権利を行使する人を1人定め、会社に通知する必要があるとされています。

そのため、亡くなった株主の家族のうち、1人と話がまとまれば必ず株式を売却できるとは限りません。

相続人の範囲、遺産分割の状況、株式の所有関係を確認する必要があります。

また、相続人等に対する売渡請求制度を検討する場合は、定款の定めや法定期限を確認します。


出典:会社法第106条、第174条~第177条

e-Gov法令検索

https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

確認基準日:2026年10月8日

株式集約にかかる費用と税金の注意点

株式を集約する際は、株式の買取代金だけでなく、専門家費用や税金も考慮する必要があります。

また、誰が株式を買い取るかによって、必要な資金や税務上の取扱いが変わります。

株式の買取代金と専門家費用を分けて考える

株式集約の費用には、主に次のようなものがあります。


・株式の買取代金

・株式価値の算定費用

・契約書や合意書の作成費用

・株主総会などの手続費用

・弁護士や税理士などの専門家費用

・必要に応じた裁判手続や登記の費用


例えば、株主が3人いる会社でも、全員が売却に同意していれば、比較的単純な手続で進む場合があります。

一方、株主が1人だけでも、所有権を争っていたり、所在が分からなかったりすれば、整理に時間と費用がかかる可能性があります。

費用を検討する際は、株主数だけでなく、権利関係と合意状況を確認することが重要です。

株式譲渡と自己株式取得では税務上の取扱いが異なる

個人株主が株式を売却した場合、原則として取得価額などを差し引いた譲渡益が課税対象になります。

ただし、会社自身が株式を買い取る場合には、受け取る対価の一部がみなし配当として扱われることがあります。

みなし配当とは、税法上、実際の配当とは異なる取引であっても、一定の金額を配当とみなして課税する仕組みです。

そのため、経営者個人が株式を買い取る場合と、会社が自己株式を取得する場合では、売主の税負担が異なることがあります。

また、相続した非上場株式を会社へ譲渡する場合などには、一定の条件で特例が適用されることもあります。

株式集約の方法を決める際は、買取価格だけでなく、売主の手取り額と買主側の資金負担を比較することが重要です。

低額譲渡や無償移転では贈与税などを確認する

親族間で株式を集約する場合、価格を自由に決めてよいと考えるのは危険です。

例えば、実際の株式価値と比べて著しく低い価格で株式を譲渡すると、取引当事者の関係などによって贈与税が問題になる場合があります。

無償で株式を移転する場合も、贈与に該当するかどうかの確認が必要です。

一方、名義株の整理では、実際の所有者に名義を戻すだけなのか、新たな財産移転が行われるのかによって判断が異なります。

税務上の問題を避けるためには、株式価値の算定根拠と、取引の実態を説明できる資料を残しておくことが大切です。

会社売却前に確認しておきたい書類

株主が分散している会社では、買い手探しを始める前に、株式の所有関係を確認できる書類を整理します。

書類が不足している場合は、過去の関係者への確認や追加調査が必要になることがあります。

株主名簿・定款・株券の発行状況を確認する

まず、次の書類を確認します。


□ 株主名簿

□ 最新の定款

□ 法人税申告書の別表二

□ 株券の発行の有無を確認できる資料

□ 株券を発行している場合は株券の保管状況

□ 過去の株主総会議事録

□ 取締役会議事録


株主名簿には、株主の氏名や住所、保有株式数などが記載されています。

法人税申告書の別表二も株主構成を確認する参考資料になりますが、これだけで法律上の株主を確定できるわけではありません。

また、譲渡制限株式については、定款で譲渡承認機関を確認します。

取締役会設置会社かどうか、定款に特別な定めがあるかなどによって、必要な承認手続が変わります。

過去の増資・株式譲渡・相続の記録を確認する

次に、株式がどのように移動してきたのかを確認します。


□ 会社設立時の出資記録

□ 過去の増資に関する資料

□ 株式譲渡契約書

□ 株式譲渡の承認記録

□ 株主名簿の名義書換記録

□ 配当金の支払記録

□ 相続に関する資料

□ 名義株に関する合意書など


株主名簿と過去の資料を照合し、株式数や所有者に不一致がないかを確認します。

特に、創業から長い年月が経過している会社では、設立時の出資者や過去の役員が株主として残っている場合があります。

不一致が見つかった場合は、名簿だけを修正するのではなく、実際の権利関係を確認してから対応することが重要です。

買い手が求める取得割合と整理期限を確認する

株式の所有関係を確認したら、M&Aでどの程度の株式を売却する必要があるのかを整理します。

買い手が100%の株式取得を希望する場合と、経営権を取得できればよい場合では、必要な対応が異なります。

例えば、少数株主が残ることを買い手が認めるのであれば、すべての株式を事前に集約する必要がない場合もあります。

一方、全株式の取得が契約条件になっている場合は、不同意株主への対応を決済日までに完了できるかが重要になります。

名義株、相続未了の株式、所在不明株主などの問題は、短期間では解決できないことがあります。

そのため、売却希望日から逆算し、必要な調査や手続を早めに進めることが大切です。

株主が分散している会社のM&Aを円滑に進めるポイント

株主が分散している会社を売却する場合、最初からすべての株式を買い集めることが最善とは限りません。

重要なのは、株主構成と買い手の希望を踏まえ、必要な対応を選ぶことです。

まず、株主名簿と実際の所有者を確認します。

次に、株主ごとの売却意思を把握し、必要に応じて株式の買取りや名義株の整理を検討します。

そのうえで、買い手が希望する取得割合、株式集約の費用、税金、必要な期間を比較します。

また、株主がM&Aに反対している場合でも、反対理由が価格なのか、情報不足なのか、経営方針への不安なのかによって対応は異なります。

株主の権利を無視して取引を進めると、手続のやり直しや紛争につながる可能性があります。

法的な手段を検討する場合は、株主の権利行使期間や必要な決議を含め、弁護士や税理士などの専門家と確認することが重要です。

まとめ

M&Aで株主が分散していても、株主の権利関係を確認し、買い手が求める取得割合に応じた対応を行えば、会社売却を進められる場合があります。名義株は実際の所有者を確認し、少数株主には売却意思や反対理由を確認することが重要です。株式の買取り、自己株式の取得、相続人等に対する売渡請求、スクイーズアウトは、それぞれ利用条件や税務上の取扱いが異なります。まずは株主名簿、定款、過去の株式移動の記録を整理し、必要な手続と費用、期間を確認したうえで、会社売却の進め方を判断しましょう。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人