タグアロングとドラッグアロングの違いとM&A契約での重要性


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タグアロングとは?売却参加権とM&A契約実務の注意点

タグアロングの意味、売却参加権としての仕組み、ドラッグアロングとの違いを解説します。少数株主の保護、投資契約での使い方、会社売却時に経営者が確認すべき株主整理と条項設計の注意点が分かります。

目次

  1. タグアロングの基本を先に押さえる
  2. 少数株主を守るために使われる理由
  3. ドラッグアロングとの違いを実務で理解する
  4. 投資契約で確認したい条項設計
  5. 会社売却を考える経営者の注意点
  6. まとめ

タグアロングとドラッグアロングの違いとM&A契約での重要性

タグアロングの基本を先に押さえる

タグアロングは、英語の専門用語ですが、意味はそれほど複雑ではありません。大株主が株式を売るときに、少数株主も同じ条件で一緒に売れるようにする権利です。

タグアロング(Tag-along right)は、M&A(合併・買収)やスタートアップ投資で使われる株主間契約の条項です。英語のtag alongには「ついて行く」「同行する」という意味があり、日本語では「売却参加権」または「共同売却請求権」と呼ばれます。

大株主の売却に少数株主が参加する権利

たとえば、創業者や親会社などの大株主が、第三者に自分の株式を売ろうとする場面を考えます。このとき、少数株主が「自分の株式も同じ価格、同じ条件で買い取ってほしい」と求められるのがタグアロングです。

ポイントは、少数株主が単に売却を希望できるだけではなく、大株主と同じ条件での売却機会を持てる点にあります。非上場株式は買い手を見つけにくいため、大株主だけがよい条件で売り抜け、少数株主だけが会社に残ると、投資資金の回収が難しくなることがあります。

株主間契約や投資契約で定める

タグアロングは、会社法で当然に発生する権利ではありません。通常は、株主間契約や投資契約で定めます。株主間契約とは、株主同士が株式の売却方法や経営への関わり方について約束する契約です。

条項がなければ、少数株主は大株主の売却に当然には参加できません。そのため、出資を受ける時点や、株主が増えるタイミングで、誰がどのような場合に売却参加を請求できるのかを決めておくことが重要です。

少数株主を守るために使われる理由

タグアロングの中心にあるのは、少数株主を取り残さないという考え方です。特に非上場会社では、少数株式の売却先が限られるため、出口をどう確保するかが大きな論点になります。

大株主だけが有利に売る不公平を防ぐ

大株主が第三者に株式を売ると、会社の支配関係や経営方針が変わることがあります。少数株主から見ると、これまで信頼していた創業者や親会社がいなくなり、見知らぬ新株主とともに会社に残る状態になるかもしれません。

このような場面で、少数株主だけが流動性の低い株式を持ち続けるのは不公平になりやすいです。タグアロングがあれば、少数株主も大株主と同じタイミングで売却できるため、経営環境が変わる前に投資資金を回収する道が開かれます。

投資家が出資しやすくなる

ベンチャーキャピタルや投資ファンドは、少数株主として出資することが多くあります。投資家は、会社の成長だけでなく、将来どのように資金を回収するかも見ています。これをエグジットといいます。

タグアロングがあると、創業者や大株主が株式を売るときに投資家も同条件で売却できるため、出資判断をしやすくなります。会社側から見ても、投資家に安心材料を示せるため、資金調達を進めやすくなる場合があります。

少数株主にとっては防御策になる

タグアロングは、少数株主にとっての防御策です。大株主の判断で会社の株主構成が変わるとき、自分だけが不利な立場に残されるのを防ぎます。

ただし、全ての売却に使えるとは限りません。契約で「一定割合以上の株式を売る場合」「支配権が移る場合」など、発動条件を細かく決めておくのが通常です。ここが曖昧だと、いざ売却の場面で争いになります。

ドラッグアロングとの違いを実務で理解する

タグアロングとよく並べて説明されるのが、ドラッグアロングです。名前は似ていますが、誰のための権利か、何を目的にするかは正反対です。

ドラッグアロングは強制売却権

ドラッグアロング(Drag-along right)は、日本語で「強制売却権」と呼ばれます。大株主が会社を売ると決めたとき、少数株主にも同じ条件で株式を売るよう求める権利です。

タグアロングが「自分も一緒に売らせてほしい」という少数株主側の権利であるのに対し、ドラッグアロングは「あなたも一緒に売ってください」と求める大株主側の権利です。少数株主にとっては、権利というより義務に近い性質があります。

目的は保護と全株売却で分かれる

タグアロングの目的は、少数株主の保護です。大株主だけが有利な条件で抜けることを防ぎ、少数株主に同じ出口を与えます。

一方、ドラッグアロングの目的は、会社全体の売却を円滑に進めることです。買い手企業は、一般に株式を100%取得したいと考えます。少数株主が一人でも反対すると、買収後の意思決定や組織再編に支障が出ることがあります。

一緒に売る権利か、一緒に売らせる権利か

整理すると、タグアロングは「一緒に売る権利」、ドラッグアロングは「一緒に売らせる権利」です。タグアロングは少数株主の盾、ドラッグアロングは大株主がM&Aを前に進めるための力と考えると理解しやすいでしょう。

ただし、どちらか一方だけを強くすると、株主間のバランスが崩れます。投資契約では、少数株主を守るタグアロングと、会社全体の売却を可能にするドラッグアロングを組み合わせて設計することがあります。

投資契約で確認したい条項設計

契約書では、タグアロングという言葉が入っているだけでは十分ではありません。実務では、いつ、誰が、どの株式について、どの条件で行使できるかが問題になります。

発動する場面を明確にする

最初に確認すべきなのは、発動条件です。大株主が1株でも売ればタグアロングを使えるのか、それとも支配権が移るような大きな売却に限るのかで、実務上の意味は大きく変わります。

発動条件が広すぎると、大株主の株式移動が難しくなります。反対に狭すぎると、少数株主の保護になりません。M&A実務では、売却株式数、売却相手、支配権の移転、グループ内移転を除外するかどうかなどを具体的に決めます。

価格と条件をそろえる

タグアロングの重要な点は、同じ価格だけでなく、同じ条件で売れるかどうかです。価格が同じでも、表明保証の負担、補償義務、支払時期、代金の一部留保などが違えば、少数株主に不利になることがあります。

表明保証とは、契約時点で会社や株式に関する一定の事実が正しいと約束することです。要するに、後から問題が出た場合に誰が責任を負うかに関わります。少数株主が会社の詳細を知らないのに、経営株主と同じ重い責任を負う設計は慎重に考えるべきです。

通知と回答期限を決める

大株主が売却を進めるとき、少数株主にいつ通知するのか、少数株主は何日以内に参加の意思を伝えるのかも重要です。期限が曖昧だと、買い手との交渉が止まります。

実務では、売却予定の株式数、価格、買い手候補、支払条件、回答期限を通知事項として定めることがあります。こうした事務的な項目ほど、後の紛争を防ぐ力があります。意外と多い落とし穴です。

ドラッグアロングは時期制限も検討する

タグアロングとあわせてドラッグアロングを定める場合は、発動時期にも注意が必要です。時期の制限がないと、大株主やファンドが任意のタイミングで売却を進められる設計になり、創業者や経営者の事業計画と合わなくなることがあります。

たとえば、IPOを目指す会社であれば、一定時期まではドラッグアロングを発動できないようにする考え方もあります。投資家側にはファンドの満期などの事情があるため、双方の事情を踏まえた調整が欠かせません。

会社売却を考える経営者の注意点

タグアロングは投資家保護の条項に見えますが、中小企業の会社売却でも無関係ではありません。株主が複数いる会社では、売却前に株主間の権利関係を点検する必要があります。

既存株主の権利を事前に確認する

会社売却を検討するときは、株主名簿、定款、過去の投資契約、株主間契約を確認します。昔の出資者、親族、元役員が少数株式を持っている場合、売却交渉の途中で論点になることがあります。

タグアロングがある場合、大株主だけで売却条件を決めても、少数株主が参加を請求する可能性があります。逆にドラッグアロングがあれば、一定の条件で全株売却を進められる可能性があります。どちらも、売却価格やスケジュールに影響します。

条項がない場合も早めに整理する

既存の中小企業では、株主間契約がないことも珍しくありません。その場合でも、少数株主との合意形成、株式の買い取り、会社法上の手続などを検討する余地があります。

会社法では、一定の要件を満たす特別支配株主による株式等売渡請求など、少数株主整理に関係する制度も定められています。ただし、法律上の手続は時間も費用もかかり、価格をめぐる争いが生じることもあります。M&Aの買い手候補が現れてから慌てて整理しようとすると、条件交渉に悪影響が出ます。

買い手は株主関係の乱れを見ている

買い手企業は、決算書だけでなく、株主構成や契約関係も確認します。株式の権利関係が整理されていない会社は、買収後のリスクが高いと見られやすいです。

株主名簿と実態が合っていない、譲渡承認の記録が残っていない、少数株主との口約束がある。こういうケースは珍しくありません。会社売却を考え始めた段階で、株式まわりを整えておくと、交渉の安心材料になります。

まとめ

タグアロングは、大株主の株式売却に少数株主が同条件で参加できる売却参加権です。少数株主を守り、投資家の出資を促す一方、条項設計が曖昧だとM&Aの進行を妨げることもあります。会社売却を考える経営者は、ドラッグアロングとの違い、既存株主の権利、定款や契約との整合を早めに確認しておくことが重要です。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人

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