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民法改正後の最新相続対策の6つの要点を解説

民法の大改正で相続手続はどう変わったのでしょうか。配偶者の住まいを守る制度や預貯金の払戻しなど、今回の改正ポイントを具体例を交えて分かりやすくご説明します。

目次

  1. 配偶者居住権制度とは高齢配偶者の住まいを守る新制度
  2. 夫婦間居住用不動産贈与の優遇措置で配偶者の取り分増加
  3. 遺産分割前でも預貯金が出せる払戻し制度の創設
  4. 自筆証書遺言の方式緩和で作成がぐっと簡単に
  5. 遺留分制度の金銭請求化で事業承継も円滑に
  6. 特別寄与料制度で介護などの貢献を正当に評価
  7. その他の相続関連改正で手続をより安心に
  8. 中小企業オーナーが押さえるべき実務ポイント
  9. 相続税・贈与税改正を踏まえた生前贈与戦略
  10. 相続登記義務化に備える手続とスケジュール管理
  11. 法務局遺言書保管制度で安心を高めるポイント
  12. 改正法に基づく遺産分割シミュレーション事例
  13. 改正相続法対応チェックリスト
  14. 専門家に相談するメリットと当グループの支援
  15. 改正後に多い質問と具体的な回答集
  16. 経営者が直面しやすい落とし穴と対策
  17. 改正法対応の手順表とタイムライン
  18. 家族信託を併用した資産承継の最新動向
  19. まとめ

民法改正後の最新相続対策の6つの要点を解説

配偶者居住権制度とは高齢配偶者の住まいを守る新制度

相続法の改正により2020年4月1日から「配偶者居住権」が誕生しました。亡くなった方(被相続人)の名義である自宅に、配偶者が終身または一定期間、無償で住み続けられる権利を法律で保障する仕組みです。日本では自宅が遺産の多くを占めるケースが多く、配偶者が老後の住まいと生活資金の両方を得るのは簡単ではありませんでしたが、新制度はそのギャップを埋める狙いがあります。

改正前は自宅を相続せず住み続ける選択肢が乏しかった

改正前は配偶者が自宅に住み続けるには、遺産分割で建物の所有権そのものを取得する必要がありました。例として、自宅4,000万円と預貯金4,000万円を配偶者と子が1人ずつ相続する場合、配偶者は自宅4,000万円を引き取り、預貯金はすべて子に譲る形が一般的でした。

改正後は居住権と所有権を分け配偶者も預貯金を確保

改正後は「所有権」と「居住権」を切り離して評価できます。前述のケースなら、自宅の評価を所有権2,000万円・居住権2,000万円と分けることで、配偶者は居住権2,000万円と預貯金2,000万円を取得し、子は所有権2,000万円と残りの預貯金2,000万円を得る、といった分割が可能になりました。

配偶者居住権のメリットと注意点を押さえる

  • 住まいを確保しつつ生活資金を手元に残せる
  • 老後資金を含む資産配分の自由度が向上する
  • 一方で居住権自体も相続税評価の対象
  • 居住権付き不動産は売却や担保設定が難しくなる
  • 配偶者と所有者(子など)の関係が悪化すると管理でトラブルの可能性

配偶者居住権を設定するかどうかは、相続人間の関係性や不動産の今後の管理方法まで見据えて判断することが大切です。

夫婦間居住用不動産贈与の優遇措置で配偶者の取り分増加

婚姻期間20年以上の夫婦が行った自宅など居住用不動産の生前贈与・遺贈については、改正前は「特別受益」として遺産に持ち戻して計算しなければなりませんでした。改正後は原則として持ち戻し不要となり、贈与分をそのまま配偶者の取得分として扱えます。

改正前は生前贈与を特別受益として持戻し計算

たとえば生前に4,000万円の自宅を配偶者へ贈与し、預貯金4,000万円が残ったケースでは、計8,000万円を遺産として再計算し、配偶者は実質的に現金を受け取れませんでした。

改正後は婚姻20年以上なら持戻し不要

改正後は贈与された自宅4,000万円を遺産総額に含めず、残る預貯金4,000万円のみを対象に分割できます。その結果、配偶者は贈与済み自宅4,000万円に加え、預貯金2,000万円も取得できるようになりました。

制度適用の要件と留意点を確認

夫婦の婚姻期間が20年以上であること

対象資産は配偶者が居住する不動産に限られる

節税や資金計画で利用する際は贈与税の配偶者控除(いわゆるおしどり贈与)も併せて検討

遺産分割前でも預貯金が出せる払戻し制度の創設

遺産分割が終わる前でも、相続人は一定額の預貯金を単独で引き出せるようになりました。算式は「相続開始時の預金額×1/3×各相続人の法定相続割合」で、かつ同一金融機関につき150万円が上限です。

改正前は口座凍結で葬儀費用等に困った

従来は相続人全員の合意が整うまで口座が凍結され、葬儀費用や医療費の支払いを立て替える負担が大きな問題でした。

改正後は上限150万円まで単独で仮払いが可能に

改正後は上記算式で求めた額まで、金融機関の窓口で相続人が単独払い戻しできます。同時に、家庭裁判所を通じれば必要に応じて更なる仮払いも可能です。

払戻し制度利用時の注意点

  • 払戻しを行うと相続財産を受領したとみなされ、原則「単純承認」となる
  • 相続放棄を検討中のときは慎重に判断
  • 預金額の総額が不明な場合は専門家と確認を

自筆証書遺言の方式緩和で作成がぐっと簡単に

改正により、遺言書本文は手書きのままですが、財産目録はパソコン作成や通帳コピーの添付が認められました。さらに2020年7月から法務局での保管制度もスタートしています。

改正前は全文自筆で負担とミスが多かった

全文手書きは高齢者には負担が大きく、書き間違いによる無効リスクも高い点が課題でした。

改正後はPC目録と法務局保管で安全かつ簡便に

財産目録をPCで作成し、各ページに署名・押印すれば良くなり、保管も法務局に任せることで紛失や改ざんリスクを軽減できます。

自筆証書遺言を活用するポイント

  • 目録の各ページへの署名・押印を忘れない
  • 本文は従来どおり自筆が必要
  • 専門家のチェックを経て法務局保管を活用する

遺留分制度の金銭請求化で事業承継も円滑に

遺留分とは、配偶者や子など一定の相続人に最低限保証される取り分を指します。改正前は不足分を現物で取り戻す「遺留分減殺請求」が原則で、不動産や株式の共有化が生じ、事業承継の妨げになる場面が少なくありませんでした。

改正前は現物返還が原則で共有化が深刻

会社の株式を後継者へ集中させても、他の相続人が減殺請求を行えば株式がばらけ、経営判断が停滞するリスクがありました。

改正後は遺留分侵害額請求で金銭精算が可能

2019年7月施行の改正で、侵害額は金銭で請求・支払いできるように変更。株式や不動産の名義は動かさず、金銭で調整できるため、事業用資産の分散を防げます。また、支払猶予制度を利用すれば、一括支払いが困難な場合でも家庭裁判所の判断で分割払いが認められることがあります。

利用時の期限と注意点を確認

  • 遺留分侵害額請求は「侵害を知った日から1年以内」に行使が必要
  • 時効の成立を防ぐため、早めに専門家へ相談
  • 金額計算は複雑になりがちで、公正な算定には税理士・弁護士のサポートが有効

特別寄与料制度で介護などの貢献を正当に評価

相続人ではない親族が行った無償の介護や家業手伝いなどを金銭で報いる仕組みが「特別寄与料」です。これまで寄与分は相続人にしか認められず、長年介護を担った嫁や婿が報われないという不公平が生じていました。

改正前は相続人以外の献身が評価されにくかった

介護で医療費や施設費を肩代わりしても、相続ではまったく反映されずトラブルの火種になるケースが多く見受けられました。

改正後は寄与した親族が相続人へ金銭請求可能に

新制度では、相続人以外の親族が特別の寄与を行った場合、相続人に協議を求め、応じないときは家庭裁判所に申し立てて金額を決めることができます。

特別寄与料を請求するときのポイント

  • 請求権は相続開始を知った日から1年で時効
  • 介護時間・内容・費用の記録を残し、妥当な金額を算定
  • 相続人間の合意形成が難しい場合は早めに専門家へ相談

その他の相続関連改正で手続をより安心に

相続に関係する周辺制度でも実務に影響する改正が行われています。

法務局による自筆証書遺言保管で検認不要に

法務局が形式をチェックして保管するため、遺言書の紛失・改ざんリスクが減り、相続開始後の家庭裁判所による検認手続も不要になります。

相続登記の義務化と過料制度で所有者不明土地を防止

2024年4月から、相続や遺産分割から3年以内の登記が義務化され、怠ると10万円以下の過料の対象になるため、早期の名義変更が必須となりました。

相続税・贈与税の改正で生前贈与対策の選択肢が拡大

相続時精算課税制度に110万円の基礎控除が新設されたほか、生前贈与加算期間が3年から7年に延長されるなど、贈与活用のルールが見直されています。教育資金や結婚・子育て資金の非課税特例も延長されました。

法務局の保管制度は、遺言者本人が事前に作成した遺言書を持参し、手数料3,900円(2023年9月時点)を納付して申請します。相続人は全国の遺言書保管所で検索・閲覧・写しの交付を受けられるため、遠方の親族でも内容を確認しやすく、手続の透明性が高まります。

中小企業オーナーが押さえるべき実務ポイント

遺留分の金銭請求化と配偶者居住権の導入により、後継者に自社株を集中させつつ他の家族へ金銭で公平を図る設計がしやすくなりました。株式の分散リスクを避けながら、家族の生活も守る選択肢が広がった点が大きな特徴です。改正内容を踏まえ、専門家とともに早期に資産配分の方針を検討しましょう。

相続税・贈与税改正を踏まえた生前贈与戦略

改正相続法と併せて2022年度税制改正も行われ、生前贈与を組み込んだ資産承継計画の幅が広がりました。相続税・贈与税は制度の選択とタイミングで負担が大きく変動します。ここでは代表的な3つのポイントを整理します。

相続時精算課税制度は110万円基礎控除付きへ拡充

相続時精算課税は2,500万円まで贈与税が非課税になり、相続時に合算して清算する仕組みですが、改正で110万円の年次基礎控除が加わりました。これにより、少額贈与を用いて評価額の高い財産を早期に移転し、相続時の税負担を抑える設計が可能です。ただし制度選択後は暦年課税へ戻れないため、財産構成と将来の納税資金を総合的に検討する必要があります。

生前贈与加算期間7年化で計画的な時系列設計が必須

生前贈与のうち死亡前7年以内の贈与は相続財産に加算されるよう延長されました。たとえば毎年110万円ずつ子へ贈与する暦年贈与プランは長期計画でこそ効果が高まります。贈与契約書、振込履歴、贈与税申告の三点セットを毎年残し、実質的な贈与であることを形式・実態の両面で証明しましょう。

教育資金と結婚子育て資金の一括贈与特例の延長活用

塾や留学費、住宅取得に関連する挙式費用等を非課税で贈与できる特例期間も延長されました。祖父母から孫世代へ資金を早期移転しつつ、相続税評価額を下げる効果があります。ただし金融機関を通じた管理口座が必須で、一定年齢を超える残額は課税対象になるため、使途とスケジュールを家族で共有することが大切です。

相続登記義務化に備える手続とスケジュール管理

2024年4月施行の改正不動産登記法により、相続または遺産分割の確定から3年以内に登記を完了しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。所有者不明土地問題の解消が目的ですが、忙しいオーナー経営者にとっては実務負担増となり得ます。

過料リスクを避けるための早期着手が鍵

共有名義の場合、代表相続人が書類を取りまとめても他の相続人が印鑑証明書を迅速に提出しないと期限が迫ります。協議書作成後は速やかに法務局へ申請する体制と日程表を作成しましょう。

名義確認と戸籍・評価証明など必要書類の整理

不動産が複数県にまたがる場合、管轄の法務局が異なるため提出先も増えます。登記簿上の地番と現住所の相違がないか、住所変更登記が未了でないか事前に確認し、戸籍謄本・住民票除票・固定資産評価証明書を漏れなく集めます。

共有名義の解消と長期管理コストへの配慮

共有のまま放置すると修繕や売却時の意思決定が難航します。持分集約や換価分割を含む対策を専門家と検討し、不動産管理会社を設立して一元管理する方法も選択肢です。

法務局遺言書保管制度で安心を高めるポイント

法務局保管制度は2020年7月開始の新サービスで、形式面を事前チェックしたうえで保管するため、相続開始後の検認手続が不要です。

申請の流れと費用を把握しスムーズに活用

遺言者本人が予約の上で管轄法務局に出頭し、本人確認書類と遺言書を提出します。保管手数料3,900円のみで、公証役場に比べ低コストです。保管証を受け取ったら家族に所在を伝え、紛失を防ぎましょう。

相続人による閲覧と写し交付の手順

相続開始後、相続人や受遺者が最寄りの遺言書保管所で検索請求を行い、写しの交付を受けた日から4日以内に家庭裁判所へ通知が送付されます。閲覧・写し請求はいずれも手数料が必要ですが、オンライン申請も順次拡大予定です。

改正法に基づく遺産分割シミュレーション事例

改正内容を具体的に理解するため、三つの典型例で比較してみます。

配偶者居住権と現金を両立させたモデルケース

総財産6,000万円(自宅4,000万円、預貯金2,000万円)を配偶者と子2人で分割。自宅を居住権2,400万円+所有権1,600万円と評価し、配偶者は居住権と預貯金全額を取得、子は所有権を2人で分ける設計で、配偶者の生活安定と子の公平を両立できます。

夫婦間贈与優遇を生かしたケース

婚姻30年の夫婦が自宅を生前贈与済み。残財産は現金のみ1,000万円。改正前は自宅を持戻し、配偶者は現金を取得できませんでしたが、改正後は現金を1/2の500万円取得可能。

事業用株式を集中させた遺留分金銭精算モデル

自社株評価5,000万円、その他現金2,000万円。後継者である長男に株式を集中させる遺言を作成し、長女の遺留分侵害額は現金で支払う設計。株式の分散を防ぎつつ長女の取り分も確保します。支払猶予を活用すれば株式を売却せずに対応可能です。

改正相続法対応チェックリスト

  • 配偶者居住権を使うか、所有権取得かを家族で協議した
  • 婚姻20年以上の自宅贈与を特別受益から除外するか検討した
  • 遺産分割前の預貯金仮払いが必要な場面を想定した
  • 遺言書の方式と保管場所を決定し、サンプルを作成した
  • 遺留分金銭請求化に伴う資金手当て計画を立てた相続登記期限3年のスケジュールを共有した
  • 生前贈与の加算期間延長を踏まえた贈与計画を更新した
  • 介護・療養などの寄与を記録し特別寄与料の準備をした

専門家に相談するメリットと当グループの支援

相続法改正により制度は柔軟になりましたが、選択肢が増えた分だけ判断も複雑化しています。当グループは税務・法務・財務の専門家がチームで対応し、

  • 相続財産の評価シミュレーション
  • 遺言書・承継計画の作成支援
  • 事業承継M&Aのストラクチャリング
  • 贈与税・相続税の申告と資金繰り対策

をワンストップでサポートします。初回相談は60分無料ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

改正後に多い質問と具体的な回答集

改正内容を理解しても、実際の手続では細かな疑問が次々と湧いてきます。ここでは相談現場で頻出する三つの質問を取り上げ、ポイントを整理します。

配偶者居住権は登記しなくても有効か

居住権そのものは遺産分割協議や審判で成立しますが、第三者に権利を主張するには登記が必要です。登記を怠ると、新所有者が第三者へ売却した場合に退去を求められる恐れがあります。したがって、居住権設定後は速やかに登記申請を行うことが安全策です。

遺留分侵害額を分割で支払うと利息は発生するか

支払猶予は家庭裁判所の許可制で、分割払い期間中は民法所定の利息を付すかどうかを裁判所が判断します。許可決定には支払計画と資金繰りの具体性が求められ、経営状況や担保の有無も考慮されます。準備段階で資金計画書を細部まで作り込むことが審理を円滑に進める鍵です。

預貯金仮払い制度と単純承認の関係は避けられるか

仮払いの額が小さくても、承認とみなされることがあります。相続放棄を検討する場合は、生活費など最低限必要な支出であっても自分の資金で一旦立替え、放棄の手続が完了してから精算するほうが安全です。

経営者が直面しやすい落とし穴と対策

制度が整ったとはいえ、計画と実行が伴わなければ想定外の税負担や家族間トラブルが生じます。実務で見落としがちな観点をチェックしましょう。

自社株評価の変動リスクを踏まえた承継時期の見極め

株価が上昇局面にあると贈与税・相続税の評価額が跳ね上がります。業績や配当方針が変わる前後は専門家に株価算定を依頼し、最適な移転時期を検討することが重要です。

代表交代と議決権構成のズレによる経営空白

株式は長男へ集中させたが代表取締役は父親のままなど、議決権と経営権が分離すると意思決定が滞ります。株式移転と共に取締役改選や定款の確認を行い、承継時の空白期間を最小化しましょう。

贈与税の納税資金を確保しないまま制度選択

相続時精算課税を選ぶと株価急騰時に追徴税が発生することがあります。納税資金を想定せず無計画に移転すると、後継者が自社株を売却して納税する本末転倒の事態も。保険や持株会、退職金準備など複数の資金源を組み合わせる設計が欠かせません。

改正法対応の手順表とタイムライン

制度ごとに期限や手続窓口が異なるため、チェックリストに加えて時系列で把握しておくと漏れを防げます。ここでは代表的な期限を例示し、スケジュール作成のヒントを示します。

相続発生から6カ月以内に行う主な手続

  • 死亡届の提出は7日以内
  • 預貯金仮払いの利用は生活費や葬儀費用発生から速やかに
  • 被相続人の所得税準確定申告は4カ月以内
  • 相続放棄や限定承認の熟慮期間3カ月を起点に判断

相続税申告と登記完了を念頭にした1年目の動き

  • 相続税申告期限は10カ月。納税資金確保のため不動産売却や生命保険貸付の検討
  • 遺留分侵害額請求は権利を知った日から1年以内
  • 特別寄与料の協議・申立ても原則1年以内

3年目の登記義務期限と7年目の贈与加算を見据えた長期計画

  • 3年以内の相続登記義務を逆算し、境界確認・測量も含めて早期に着手
  • 7年加算期間を意識した生前贈与では、評価が低いうちに不動産持分を贈与するなど柔軟に対応
  • 後継経営者の議決権割合を段階的に引き上げ、家族会議を定期開催して進捗を共有

このように各制度の期限を時間軸で整理しておくと、相続開始時の混乱を最小化できます。

家族信託を併用した資産承継の最新動向

改正相続法の枠組みに加え、家族信託を使うと認知症発症後も資産管理を継続でき、遺言代用効果まで期待できます。信託契約で受託者を次世代に指定しておけば、配偶者居住権と組み合わせて自宅の使用を守りつつ、将来の処分権限を第三者承継に活用することも可能です。信託財産は遺留分計算の対象外になる場合があるため、設計によっては事前の対策として有効ですが、過度な遺留分侵害を避けるため公正証書での契約と専門家の検証を推奨します。

初回相談では現在の資産構成を一覧化し、改正後に生じる税負担と手続コストを可視化する診断レポートを無償でご提供しています。

まとめ

民法と関連税制の改正により、配偶者の生活保障、生前贈与の活用幅、遺留分精算方法など相続の現場は大きく進化しました。制度を正しく使う鍵は、家族の意向と資産特性を見極め、早めに専門家の助言を得て手続を進めることです。改正ポイントを押さえて準備を進めれば、円滑で公平な資産承継が実現できます。

著者|竹川 満  マネージャー/M&Aアドバイザー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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