M&A用語集|会社売却でよく使う専門用語を流れに沿って解説

M&Aや会社売却で使われる専門用語を、準備・相談、相手探し、交渉・基本合意、デューデリジェンス、最終契約・成約、成約後の流れに沿って解説します。表明保証やアーンアウト、ロックアップ、テール条項など、売り手が誤解しやすい用語も分かりやすく説明します。

目次

  1. M&A用語集は取引の流れに沿って理解する  
  2. 準備・相談の段階で使うM&A用語  
  3. 相手探しの段階で使うM&A用語  
  4. 交渉・基本合意の段階で使うM&A用語  
  5. デューデリジェンスで使うM&A用語  
  6. 最終契約・成約で使うM&A用語  
  7. 成約後に使うM&A用語  
  8. 売り手が特に誤解しやすいM&A用語10選  
  9. M&A用語を理解するときは「自社への影響」を確認する  
  10. まとめ

中小企業のM&Aに必要な知識と戦略や実践方法を解説

M&A(合併・買収)を検討し始めると、株式譲渡、ノンネーム、LOI、デューデリジェンス、表明保証、クロージングなど、普段は使わない言葉が次々と出てきます。

すべての専門用語を暗記する必要はありません。会社を売却するオーナーにとって大切なのは、「今はM&Aのどの段階なのか」「その用語が自分の判断にどう関係するのか」を理解することです。

この記事では、M&Aでよく使う用語を、準備・相談、相手探し、交渉・基本合意、デューデリジェンス、最終契約・成約、成約後の順に整理します。特に誤解しやすい用語については、契約や条件を確認するときのポイントも補足します。

M&A用語集は取引の流れに沿って理解する

M&Aの用語は五十音順で覚えるより、実際に出てくる順番で理解した方が使いやすくなります。

会社売却では、まず売却の目的や希望条件を整理し、M&A仲介会社やFAなどに相談します。その後、買い手候補を探し、秘密保持契約を結んで情報を開示し、条件交渉を進めます。

条件が大枠で合えば基本合意へ進み、買い手によるデューデリジェンスを経て、最終契約を締結します。その後、株式や事業の引渡しと代金決済を行い、必要に応じて経営や業務の引継ぎ、PMIへ進みます。

つまり、用語を見たときは意味だけでなく、「いつ出てくる言葉なのか」を確認することが重要です。

準備・相談の段階で使うM&A用語

M&Aを検討し始めた段階では、売却方法や会社の価値、相談先に関する用語が多く出てきます。ここで重要なのは、最初から手法を決めつけず、「何を残したいか」「何を譲りたいか」を整理することです。

M&A

M&Aは「Mergers and Acquisitions」の略で、一般に企業の合併や買収を意味します。中小企業では、後継者不在を解決する事業承継や、買い手の成長戦略として利用されることがあります。

譲り渡し側・売り手

会社や事業を譲渡する側です。中小企業の株式譲渡では、対象会社の株式を持つオーナー経営者が売り手になることがあります。

譲り受け側・買い手

会社や事業を取得する側です。買い手は、顧客、人材、技術、設備、営業地域などを取得し、自社の成長につなげる目的でM&Aを行うことがあります。

株式譲渡

売り手株主が保有する対象会社の株式を買い手へ譲渡し、経営権を移す方法です。会社自体は存続するため、会社が当事者となっている契約や借入金なども原則として会社に残ります。

事業譲渡

会社全体ではなく、特定の事業や資産などを選んで譲渡する方法です。何を譲渡するかを選べる一方、契約や従業員などについて個別の移転手続が必要になる場合があります。

合併

複数の会社を法的に1つの会社へまとめる組織再編です。会社売却では株式譲渡と同じ意味ではないため、説明を受ける際はどの手法を指しているのか確認しましょう。

会社分割

会社が持つ事業に関する権利義務の全部または一部を、別の会社へ承継させる組織再編です。事業を切り出す方法として検討されることがあります。

企業価値評価・バリュエーション

対象会社や事業の価値を評価することです。純資産、収益力、将来のキャッシュフロー、類似企業など、複数の考え方があります。

評価額は「必ずその価格で売れる金額」ではありません。実際の譲渡価格は、買い手との交渉やデューデリジェンスの結果などによって変わります。

時価純資産

会社が保有する資産や負債を時価などに見直して算出する純資産です。中小企業の企業価値を考える際の一つの材料になります。

営業権・のれん

会社が持つブランド、顧客基盤、技術、人材、収益力など、貸借対照表上の純資産だけでは表しにくい価値を考えるときに使われる言葉です。実際の会計上の「のれん」は、適用される会計基準や取引内容によって扱いを確認する必要があります。

M&A仲介

売り手と買い手の間に入り、相手探しや交渉、手続の進行などを支援する形態です。売り手と買い手の双方に関与するため、契約内容や利益相反への対応を確認することが重要です。

FA

FAは「Financial Advisor(ファイナンシャル・アドバイザー)」の略です。一般に売り手または買い手の一方と契約し、その依頼者のM&Aを支援します。

アドバイザリー契約・仲介契約

M&A専門業者へ支援を依頼するときに締結する契約です。業務範囲だけでなく、手数料、契約期間、専任条項、直接交渉の制限、契約終了後のテール条項などを確認する必要があります。

専任契約・専任条項

契約期間中、他の仲介者やFAへ並行して依頼することを制限する条項です。

「専任だから他の専門家にも相談できない」と単純に考えるのではなく、何が禁止されるのかを契約書で確認します。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」では、専任条項の対象範囲は可能な限り限定すべきとされ、契約期間についても、専任条項を設ける場合には最長でも6か月~1年以内を目安としています。


出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」2024年8月

https://www.meti.go.jp/press/2024/08/20240830002/20240830002-b.pdf

テール条項

仲介契約やFA契約が終了した後、一定期間内に特定の買い手とのM&Aが成立した場合、契約が終了していても手数料が発生することを定める条項です。

契約を終了すれば手数料の問題もすべてなくなるとは限りません。中小M&Aガイドライン(第3版)では、テール期間は最長でも2年~3年以内を目安とし、対象となるM&Aについては、基本的にその仲介者・FAが関与・接触して売り手へ紹介した買い手とのM&Aに限定するとしています。契約時に期間と対象範囲を確認しましょう。


出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」2024年8月

https://www.meti.go.jp/press/2024/08/20240830002/20240830002-b.pdf

相手探しの段階で使うM&A用語

相談先を決めて準備が進むと、買い手候補を探す段階に入ります。この時期は情報管理に関する用語を理解しておくことが重要です。

マッチング

売り手と買い手の候補を探し、M&Aの相手として引き合わせることです。価格だけでなく、事業内容、地域、企業規模、従業員の処遇、将来の経営方針なども相手選びの判断材料になります。

ロングリスト

買い手候補となり得る企業を広く整理した候補一覧です。この中から売り手の希望や事業との相性などを考慮して候補を絞り込んでいきます。

ショートリスト

ロングリストから、実際に打診する可能性の高い買い手候補を絞った一覧です。売り手は「高く買ってくれそうか」だけでなく、自社をどのように引き継ぐ相手なのかという観点でも確認します。

ノンネーム・ノンネームシート

会社名を明かさず、業種、地域、売上規模、事業の特徴などをまとめた匿名の資料です。初期段階で売り手を特定されにくくしながら、買い手候補の関心を確認するために使われます。

秘密保持契約・NDA

開示された秘密情報を目的外で使用したり、第三者へ漏らしたりすることを防ぐための契約です。NDAは「Non-Disclosure Agreement」の略です。

M&Aを検討している事実そのものが従業員や取引先へ伝わると、事業に影響することがあります。誰に、何の情報を、どの段階で開示するかを管理する必要があります。

企業概要書・IM

売り手の事業内容、財務、組織、従業員、取引先、設備などを買い手候補へ説明するための資料です。IMは「Information Memorandum」の略称として使われます。

ノンネームより詳しい情報が記載されるため、一般に秘密保持契約を結んだ相手へ開示します。

ネームクリア

匿名で検討していた買い手候補に対して、売り手の会社名を開示することを指す実務上の表現です。会社名を開示すると情報を完全には戻せないため、誰に開示するかを確認してから進めることが重要です。

トップ面談

売り手と買い手の経営者などが直接会って話す面談です。財務数値だけでは分からない経営方針、会社の将来像、従業員への考え方などを確認します。

売り手にとっては「この相手に会社を任せられるか」を確認する重要な機会です。

交渉・基本合意の段階で使うM&A用語

買い手候補が絞られると、価格や譲渡条件の交渉へ進みます。この段階では、提示された金額だけを見るのではなく、その金額にどのような条件が付いているかを確認します。

意向表明書・LOI

買い手が売り手に対し、買収の意向や希望条件などを示す書面です。LOIは「Letter of Intent」の略です。

提示価格だけでなく、取引手法、従業員の処遇、経営者の引継ぎ、今後の調査やスケジュールなどを確認します。

基本合意書・MOU

売り手と買い手が、それまでの交渉で大枠合意した内容を確認する書面です。MOUは「Memorandum of Understanding」の略です。

基本合意書を締結しても、通常はM&Aが最終的に成立したことを意味しません。デューデリジェンスの結果などによって価格や条件が変わる可能性があります。

独占交渉権

一定期間、売り手が他の買い手候補との交渉を制限し、特定の買い手と優先的または独占的に交渉するための条件です。

独占交渉に入ると他の候補との交渉が制約されるため、期間や対象となる行為を確認しておく必要があります。

譲渡価格

株式や事業を譲渡する対価です。企業価値評価によって算出された評価額と、実際に合意する譲渡価格は同じとは限りません。

また、オーナーが最終的に受け取って使える金額を考える際は、税金、借入金、役員借入金、退職金、M&Aに伴う費用なども確認する必要があります。

アーンアウト

M&A成立後の対象会社や事業の業績など、あらかじめ決めた条件の達成状況に応じて、買い手が売り手へ追加の対価を支払う仕組みです。

「将来追加で必ず受け取れる金額」ではありません。何を達成すれば、いつ、いくら支払われるのかという条件が重要です。

売り手が成約後の経営を自由にコントロールできない場合、買い手の経営判断によって達成状況が変わる可能性もあります。指標の定義や計算方法まで契約で確認する必要があります。

ロックアップ

M&A実務では文脈によって意味が異なりますが、売り手経営者などに対し、成約後も一定期間会社へ残ることを求める条件を指して使われる場合があります。

「会社を売ったらすぐ引退できる」とは限りません。引継ぎの期間、役職、報酬、権限、勤務条件などを具体的に確認しましょう。

キーマン条項

会社の事業価値を支える重要人物が一定期間残ることなどを条件とする条項を指して使われることがあります。

特定の経営者、技術者、営業責任者などへの依存度が高い会社では、その人物が退職すると買い手が期待した事業価値を維持できない可能性があります。そのため、誰が対象なのか、どの程度の期間や義務が求められるのかを確認します。

デューデリジェンスで使うM&A用語

基本条件がまとまると、買い手は対象会社について詳しい調査を行います。ここでは、資料を「きれいに見せる」ことより、問題を把握して適切に説明できる状態にすることが重要です。

デューデリジェンス・DD

買い手が対象会社の財務、税務、法務、労務、事業などを詳しく調査する手続です。DDと略されます。

調査結果によって、譲渡価格の変更、契約条件の追加、問題の解消を成約の条件とすることなどがあります。

財務DD

決算書だけでは把握しにくい財務状況や収益力などを調べるデューデリジェンスです。売掛金、在庫、借入金、正常な収益力などが確認されることがあります。

税務DD

過去の税務処理や申告内容などを調査し、M&A後に税務上の問題が生じる可能性を確認する調査です。

法務DD

契約、株式、許認可、訴訟、知的財産などの法的な問題を調べるデューデリジェンスです。契約書が存在しない、契約名義が実態と異なるといった問題が確認されることもあります。

労務DD

雇用契約、賃金、労働時間、社会保険など、従業員に関する事項を確認する調査です。未払残業代などの潜在的な負担がないかも重要な確認事項になります。

ビジネスDD

対象会社の市場、競争環境、顧客、商品・サービス、事業計画などを調べ、買収後も事業価値を維持・向上できるかを検討する調査です。

簿外債務

貸借対照表などに十分に表れていない債務や負担を指します。未払残業代や債務保証などが問題になる場合があります。

株式譲渡では対象会社自体が存続するため、買い手は過去に発生した問題についても慎重に確認します。

偶発債務

現時点では債務として確定していないものの、将来の出来事によって支払義務などが生じる可能性があるものです。訴訟などが典型的な確認対象になります。

正常収益力

一時的な収益や費用、オーナー企業特有の取引などを調整し、その会社が通常の事業活動によってどの程度の利益を出せるのかを見る考え方です。

買い手が企業価値を判断する際、決算書上の利益だけでなく、買収後も継続すると考えられる収益力が重視されることがあります。

役員借入金

会社が役員から借りているお金です。中小企業では、オーナー経営者が会社へ資金を入れている場合などに計上されています。

M&Aでは、株式譲渡代金とは別にどのように精算するのかを整理する必要があります。

役員貸付金

会社が役員へ貸しているお金です。買い手から見ると、会社資金が社外へ出ている状態になるため、M&A前の精算を求められることがあります。

最終契約・成約で使うM&A用語

デューデリジェンスを終えると、その結果を踏まえて最終条件を交渉します。ここからは契約書の一つひとつの条項が売り手の責任や受取額に直接関係します。

最終契約・DA

M&Aの最終的な条件を定める契約です。株式譲渡であれば株式譲渡契約書、事業譲渡であれば事業譲渡契約書などを締結します。

DAは「Definitive Agreement」の略称として使われます。

SPA

「Share Purchase Agreement」の略で、株式譲渡契約書を指します。譲渡する株式、価格、決済方法、表明保証、誓約事項、補償など、取引の具体的な条件を定めます。

表明保証

売り手や買い手が、契約締結時やクロージング時などに、一定の事実が真実・正確であることなどを表明し保証する契約条項です。

売り手にとって特に注意したい用語です。「会社について知っていることを説明すればよい」というだけではありません。財務、税務、契約、労務、訴訟など、契約書に書かれた事項について責任が生じる可能性があります。

どこまで保証するのか、売り手が知っている範囲に限定されるのか、違反した場合の責任がどうなるのかを確認する必要があります。

補償条項

契約違反や表明保証違反などによって相手方に損害が生じた場合の負担について定める条項です。

売り手は「売却代金を受け取った後は一切責任がなくなる」とは限りません。補償の対象、上限額、請求できる期間などを確認することが重要です。

誓約事項・コベナンツ

契約当事者が、一定の行為を行う、または行わないことを約束する条項です。

たとえば契約締結からクロージングまで通常どおり事業を運営することや、一定の重要な行為について買い手の承諾を得ることなどが定められる場合があります。

前提条件

クロージングを実行するために満たす必要がある条件です。必要な承認や手続が完了していることなど、案件ごとに条件が設定されます。

最終契約を締結しても、前提条件が満たされなければ予定どおりクロージングできない場合があります。

クロージング

最終契約に基づいて、株式や事業の引渡しと代金決済などを行い、M&A取引を実行することです。

最終契約の締結日とクロージング日が同じ場合もあれば、必要な手続のために期間を空ける場合もあります。

個人保証

経営者個人が会社の借入金などを保証することです。

会社を売却すれば個人保証が当然に解除されるわけではありません。金融機関との協議や手続が必要になるため、売り手はM&Aの条件交渉と並行して、保証の扱いを確認することが重要です。

チェンジ・オブ・コントロール条項

会社の支配権が変わった場合に、契約解除や事前承諾などを求める契約条項です。「COC条項」と呼ばれることもあります。

株式譲渡では契約主体となる会社自体が変わらなくても、株主が変わることでこの条項に該当する可能性があります。重要な取引先、賃貸借、ライセンスなどの契約内容を事前に確認します。

競業避止義務

売り手などがM&A後に一定の範囲で競合する事業を行うことを制限する取り決めです。

経営者が売却後に別の事業を始めたい場合は特に重要です。対象となる事業、地域、期間などを契約前に確認する必要があります。

成約後に使うM&A用語

クロージングを終えても、会社経営は続きます。特に買い手にとっては、M&Aで期待した価値を実現できるかどうかが成約後に問われます。売り手も引継ぎ期間が設けられている場合は関係します。

PMI

PMIは「Post Merger Integration」の略で、M&A後の統合プロセスを意味します。

経営方針、人事制度、会計、システム、営業、組織、企業文化などを必要に応じて統合していきます。M&Aは契約成立だけで成功が決まるものではありません。

シナジー

2つの会社や事業を組み合わせることで、それぞれが単独で経営する以上の効果を得ることを指します。

販売網の共有、仕入れの効率化、技術の組み合わせ、人材交流などが考えられます。ただし、買収しただけで自然にシナジーが生まれるわけではありません。

引継ぎ期間

売り手経営者などがM&A成立後も一定期間会社に残り、顧客、取引先、従業員、業務などを買い手へ引き継ぐ期間です。

売り手が早期の引退を希望している場合は、最終契約の前に期間、役割、勤務方法、報酬などを確認しておきます。

100日プラン

M&A成立後の初期段階で実行する施策を整理した計画を指して使われる言葉です。必ず100日で統合を完了させるという意味ではなく、初期の重要課題を明確にして実行するための考え方です。

のれんの減損

買収によって計上されたのれんについて、期待していた収益が得られないなど、価値の低下が認められた場合に会計上の処理が必要になることがあります。

これは主に買い手側の論点ですが、買い手が過大な成長を前提として高値を提示している場合、売り手にとっても無関係ではありません。買収後の計画が現実的かという視点も相手選びでは重要です。

売り手が特に誤解しやすいM&A用語10選

M&Aでは、言葉の大まかな意味を知っていても、契約上の意味を誤解すると判断を間違えることがあります。売り手が特に注意したい10の用語を整理します。

1.企業価値評価

企業価値評価は売却価格を保証するものではありません。評価は価格交渉の材料であり、最終的な譲渡価格は買い手の評価、競争状況、デューデリジェンスの結果、契約条件などによって変わります。

2.基本合意

基本合意は最終契約と同じではありません。基本条件に合意していても、デューデリジェンスで問題が見つかれば、価格や条件が変更される可能性があります。

売り手は基本合意を「売却確定」と考えず、最終契約とクロージングまで資料対応や条件確認を続けます。

3.専任契約

専任契約を結ぶと、他の仲介者・FAを利用した相手探しなどが制限される場合があります。ただし、制限される範囲は契約内容によって異なります。

契約前に、禁止される行為、契約期間、セカンド・オピニオンの扱い、中途解約の条件を確認しましょう。

4.テール条項

仲介契約やFA契約を終了しても、一定の条件では後から手数料が発生する可能性があります。

特に「誰とのM&Aが対象なのか」「何年間続くのか」を確認します。契約終了後の義務だからこそ、契約を結ぶ前に確認しておく必要があります。

5.表明保証

表明保証は単なる会社説明ではありません。表明した内容に違反があれば、契約上の責任につながる可能性があります。

分からない事項を安易に保証せず、対象、期間、責任範囲などを弁護士などの専門家と確認することが大切です。

6.アーンアウト

アーンアウトは、最初から確定している売却代金とは分けて考える必要があります。将来の業績などの条件を満たした場合に追加の対価が支払われる仕組みだからです。

売り手は追加金額だけでなく、達成条件、判定期間、計算方法、買い手の経営判断が指標へ与える影響などを確認します。

7.ロックアップ

経営者に一定期間の残留を求める意味でロックアップという言葉が使われている場合、売却後の生活設計にも関係します。

「半年程度協力する」といった曖昧な理解ではなく、期間、勤務日数、権限、報酬、退任できる条件などを確認しましょう。

8.キーマン条項

キーマン条項がある場合、特定人物の在籍が取引条件や会社の価値に関係することがあります。

売り手経営者本人だけでなく、営業責任者や技術者などが対象になることも考えられます。対象者本人の意向を無視して条件を決めないことが重要です。

9.個人保証の解除

M&Aが成立しただけで経営者保証が自動的になくなるわけではありません。

会社売却後に経営から退いたのに保証だけが残る状態を避けるため、金融機関との協議状況や解除の手続を確認します。

10.クロージング

最終契約の締結とクロージングは必ずしも同じではありません。

契約を締結していても、必要な承認や書類など、定められた前提条件を満たしてから株式の移転や代金決済を行う場合があります。「契約した日」と「会社を実際に引き渡す日」を分けて確認しましょう。

M&A用語を理解するときは「自社への影響」を確認する

M&A用語は、意味を覚えるだけでは十分ではありません。同じ言葉でも、案件や契約書によって具体的な条件が異なることがあるためです。

たとえば「専任契約」と説明されたら、専任契約の意味を調べるだけでなく、何が禁止されるのか、いつまで続くのか、中途解約できるのかを確認します。

「アーンアウト」であれば、追加対価があることだけでなく、その金額が確定しているのか、どの条件を達成すれば受け取れるのかを確認します。

「ロックアップ」であれば、経営者が残るという説明だけでなく、いつまで、どの立場で、どの程度働く必要があるのかまで確認します。

このように、専門用語を自社の条件に置き換えることが重要です。

また、M&Aでは会計、税務、法務、労務など複数の分野が関係します。M&A仲介会社やFAは相手探しや交渉、進行管理を支援し、弁護士は契約や法的リスク、公認会計士や税理士は財務・税務や企業価値、社会保険労務士は労務など、それぞれ異なる役割を担います。

分からない用語が出てきたときは、「これは何ですか」だけでなく、「この条件を受け入れると、売り手である自分にどのような義務やリスクが生じますか」と確認すると、具体的な判断につながります。

まとめ

M&Aでは、準備・相談から相手探し、基本合意、デューデリジェンス、最終契約、クロージング、PMIまで、それぞれの段階で異なる専門用語が出てきます。すべてを暗記する必要はありませんが、譲渡価格だけでなく、専任条項、テール条項、表明保証、アーンアウト、ロックアップ、個人保証など、自分の権利や義務に関係する言葉は条件まで確認することが大切です。分からない言葉を曖昧なままにせず、「いつ必要になる用語か」「自社の場合は何を意味するか」を一つずつ確認することが、納得できる会社売却につながります。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人