吸収合併の要!存続会社の役割と手続を徹底解説


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存続会社とは?吸収合併で残る会社の役割・手続・注意点

存続会社は、吸収合併後も法人格を残し、消滅会社の資産・負債・契約・雇用を引き継ぐ会社です。消滅会社との違い、手続、資本金・会計処理、簿外債務やPMIの注意点を解説します。

目次

  1. 存続会社の基本を会社売却の前に整理する
  2. 存続会社が引き継ぐものと得られる効果
  3. 存続会社が進める吸収合併の手続
  4. 資本金・会計処理で見落としやすい論点
  5. 合併後のリスクとM&A手法の選び方
  6. まとめ

吸収合併の要!存続会社の役割と手続を徹底解説

▶目次ページ:M&Aの種類・方法(合併)

存続会社の基本を会社売却の前に整理する

合併では、どちらの会社が残り、どちらの会社が消えるのか。この点を曖昧にしたまま話を進めると、従業員、取引先、借入、許認可の扱いで誤解が生じます。

存続会社とは、吸収合併において、合併後も法人格を残す会社です。法人格とは、会社が法律上の権利や義務を持つ主体であることをいいます。存続会社は、消滅会社の権利義務を効力発生日にまとめて引き継ぎます。

M&A(合併・買収)を検討する経営者にとって大事なのは、存続会社という言葉を単なる法律用語として覚えることではありません。自社が残る側なのか、消える側なのか。あるいは、売却後に買い手企業の中へ統合される可能性があるのか。この見通しを持つことです。



消滅会社との違いは法人格が残るかどうか

存続会社と消滅会社の一番の違いは、法人格が残るかどうかです。

存続会社は、合併後も同じ会社として残ります。会社名、登記、契約上の地位などは、変更が必要なものを除き、存続会社を中心に続いていきます。これに対して消滅会社は、合併により解散し、登記上も姿を消します。

ただし、消滅会社の事業が消えるという意味ではありません。資産、負債、契約、人材、顧客基盤などは、原則として存続会社へ移ります。会社という器はなくなりますが、事業そのものは存続会社の中で続くのが吸収合併の基本です。

吸収合併では1社が複数社を吸収できる

吸収合併では、存続会社は1社です。一方で、消滅会社は1社に限られません。1つの存続会社が、複数の消滅会社を同時に吸収合併することもあります。

たとえば、グループ内に同じような事業を行う子会社が複数ある場合、親会社や中核会社を存続会社として、複数の会社を一度に統合することがあります。経理、人事、営業管理を一本化しやすくなるためです。

とはいえ、会社の数が増えるほど手続も複雑になります。株主、債権者、金融機関、従業員、取引先への説明も増えます。効率化だけを見て進めると、現場が混乱することがあります。

新設合併より手続が軽くなる場面もある

合併には、吸収合併と新設合併があります。吸収合併は、既にある会社が残り、他の会社を取り込む方法です。新設合併は、既存の会社をいったん消滅させ、新しい会社を設立する方法です。

中小企業の実務では、吸収合併の方が使われやすい傾向があります。存続会社の法人格を残せるため、新会社を設立する負担を避けられるからです。会社の登記や一部の許認可、取引先との関係を維持しやすいケースもあります。

ただし、許認可は業種によって扱いが異なります。建設業、運送業、介護、医療、産廃などでは、合併で当然に引き継げるか、事前の届出や再取得が必要かを確認しなければなりません。ここは意外と多い落とし穴です。

▶関連:吸収合併とは

存続会社が引き継ぐものと得られる効果

存続会社になると、消滅会社の事業を取り込めます。しかし、取り込めるのは良いものだけではありません。

吸収合併の特徴は、包括承継にあります。包括承継とは、個別の資産や契約を一つずつ移すのではなく、会社の権利義務をまとめて引き継ぐことです。資産を選んで移す事業譲渡とは、性格が大きく異なります。

資産・負債・契約・雇用をまとめて承継する

存続会社は、消滅会社が持つ土地、建物、機械、売掛金、在庫などの資産を引き継ぎます。同時に、借入金、買掛金、未払金などの負債も引き継ぎます。

取引先との契約、賃貸借契約、仕入契約、販売契約も、原則として存続会社へ移ります。従業員との雇用契約も同じです。合併後は、従業員の雇用主が存続会社になります。

「取引先との契約を全部結び直すのか」と心配される経営者は少なくありません。吸収合併では、原則として契約関係もまとめて移るため、事業譲渡よりスムーズに進むことがあります。ただし、契約書の中に合併時の通知義務や解除条項がある場合は、事前確認が必要です。

人材・販路・技術を一括で取り込める

存続会社のメリットは、時間を買えることです。

自社で新しい技術を育てるには、採用、教育、設備投資、営業開拓が必要です。数年かかることもあります。吸収合併であれば、消滅会社が長年かけて築いた人材、製造ノウハウ、販売先、仕入先を一括で取り込めます。

たとえば、地域に根差した同業会社を吸収合併する場合、既存の顧客関係を維持したまま営業エリアを広げられる可能性があります。後継者不在の会社を取り込む場合には、従業員の雇用を守りながら、買い手企業の管理体制へ移すこともできます。

ただし、数字だけでは判断できません。顧客が本当に残るか。従業員が納得して働き続けるか。現場のキーマンが退職しないか。M&A実務では、ここで判断が止まることがあります。

事業規模や対外信用力の向上につながる

吸収合併により、存続会社の売上、資産、人員、事業エリアが大きくなることがあります。規模が大きくなれば、金融機関や取引先からの見え方が変わる場合もあります。

上場会社であれば、事業規模や収益力の拡大が時価総額の評価に影響することもあります。非上場の中小企業でも、売上規模、資本力、取引基盤が強くなることで、金融機関からの信用力が高まる可能性があります。

もっとも、規模が大きくなれば必ず評価が上がるわけではありません。合併後に利益が出るか、借入を返せるか、従業員が定着するかが重要です。大きくすること自体が目的になると、合併後に負担が重くなることがあります。

存続会社が進める吸収合併の手続

吸収合併は、当事会社が合意しただけでは完了しません。会社法に沿って、契約、開示、株主承認、債権者保護、対価交付、登記を進める必要があります。

小規模なグループ内再編であっても、手続を軽く見てはいけません。1つの手続が遅れると、効力発生日を変更せざるを得ないことがあります。金融機関、主要取引先、従業員への説明も並行して進めるため、実務では余裕を持ったスケジュールが必要です。

合併契約で条件と効力発生日を決める

最初に行うのは、存続会社と消滅会社の間で合併契約を結ぶことです。

合併契約では、当事会社の商号、本店、効力発生日、消滅会社の株主へ交付する対価、存続会社の資本金や準備金に関する事項などを定めます。対価は、存続会社の株式、金銭、社債、新株予約権などが考えられます。

中小企業では、合併比率や対価の内容が税務や資本政策に影響します。形式だけ整えた契約書では足りません。役員体制、従業員処遇、保証、許認可、効力発生日までの禁止事項などを、実態に合わせて作り込む必要があります。

事前開示書類を備え置く

合併契約を結んだ後は、株主や債権者が内容を確認できるように、合併契約書などの事前開示書類を本店に備え置きます。これは、関係者が合併の条件を確認し、必要に応じて権利を行使できるようにするためです。

反対株主がいる場合には、株式買取請求の論点も出ます。株式買取請求とは、合併に反対する株主が、自分の株式を公正な価格で買い取るよう会社に求める制度です。株主構成がシンプルな中小企業では見落とされがちですが、少数株主がいる会社では特に注意が必要です。

株主総会で特別決議を得る

吸収合併では、原則として株主総会で合併契約の承認を得ます。通常は特別決議が必要です。特別決議とは、重要事項を決めるための重い決議で、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成などが求められます。

もっとも、一定の要件を満たす場合には、簡易合併や略式合併により株主総会の承認を省けることがあります。たとえば、100%親子会社間の合併では、手続が簡略化されるケースがあります。

ただし、省略できるかどうかは会社ごとの状況で変わります。株主構成、対価の内容、純資産への影響、反対株主の有無を確認しながら判断します。

債権者保護手続を行う

吸収合併では、債権者保護手続も重要です。合併によって債務者が変わったり、財務内容が変化したりするため、債権者に異議を述べる機会を与えます。

実務では、官報で公告し、知れている債権者には個別に催告します。異議を述べる期間は、最低1か月以上を確保します。借入がある会社では、金融機関への事前説明が欠かせません。

債権者から異議が出た場合には、弁済、担保提供、信託などの対応が必要になることがあります。メインバンクへの説明が後回しになると、融資条件や個人保証の協議がこじれることがあります。ここはスケジュール上の山場です。

合併対価を交付し登記を申請する

吸収合併では、消滅会社の株主に対して合併対価を交付します。対価が存続会社株式であれば、消滅会社の株主は存続会社の株主になります。対価が現金であれば、株主は現金を受け取る形になります。

その後、存続会社は変更登記を行い、消滅会社は解散登記を行います。会社の登記は、原則として効力発生日から本店所在地で2週間以内に行います。資本金や発行済株式数が変わる場合は、その内容も登記に反映します。

ここで間違えやすいのは、効力発生日と登記日の関係です。合併の効力は、契約で定めた効力発生日に生じます。登記が終わってから効力が出るわけではありません。ただし、第三者との関係では登記が重要になるため、司法書士と早めに必要書類を確認しておくと安全です。

資本金・会計処理で見落としやすい論点

存続会社は、消滅会社の事業を取り込むだけでなく、資本金、資本剰余金、のれん、税務上の取扱いも整理しなければなりません。

会計や税務は、経営者から見ると後回しになりがちです。しかし、ここを誤ると、合併後の納税、金融機関評価、決算書の見え方に影響します。特に資本金の額は、税制上の扱いに関わるため慎重に決める必要があります。

資本金は税務と信用の両面で考える

吸収合併で資本金をいくら増やすかは、合併の条件や会計処理によって変わります。資本関係のない会社を取り込む場合と、親子会社間やグループ内で合併する場合では、会計上の考え方が異なります。

税務面では、資本金1億円が一つの目安になります。資本金1億円以下の普通法人では、一定の要件のもとで年800万円以下の所得部分に軽減税率が適用されることがあります。一方で、資本金が1億円を超えると、中小法人向けの一部の優遇を受けにくくなります。

また、外形標準課税にも注意します。外形標準課税とは、所得だけでなく、資本金等や付加価値などを基準に課される法人事業税の仕組みです。2025年4月1日以後に開始する事業年度からは、資本金だけでなく、資本金と資本剰余金を合わせた金額にも注意が必要になっています。

資本金を大きくすれば信用力が上がるように見えるかもしれません。一方で、税負担や手続負担が増えることもあります。資本金に積むのか、資本剰余金に振り分けるのか。これは税理士、会計士と確認しながら設計すべき論点です。

のれんは合併後の利益計画に影響する

資本関係のない会社を吸収合併し、存続会社が実質的に支配を得る場合、会計上は取得として処理することがあります。この場合、消滅会社の資産や負債を時価で評価し、取得原価との差額がのれんとして計上されます。

のれんとは、決算書に載っていないブランド力、顧客基盤、技術力、人材力などに対して支払った価値です。たとえば、時価純資産が3億円の会社を5億円の価値で取り込む場合、差額の2億円がのれんになるイメージです。

のれんは、合併後の利益に影響します。会計上は一定期間で償却され、税務上も別のルールで処理されることがあります。会計上の利益と税務上の所得が同じ動きをするとは限りません。合併後の利益計画や借入返済計画を作るときは、のれんの償却を見込んでおく必要があります。

債務超過会社との合併は説明と設計が必要になる

消滅会社が債務超過でも、吸収合併そのものが直ちに禁止されるわけではありません。債務超過とは、資産より負債が多い状態です。

ただし、債務超過会社を取り込む合併では、存続会社の株主や債権者に与える影響が大きくなります。なぜ合併するのか。合併後に損失をどう改善するのか。債務を引き継いでも存続会社の資金繰りに問題がないのか。説明できる状態にしておくことが大切です。

特に、後継者不在の会社を救済的に引き受ける場面では、感情面だけで進めないことです。従業員や取引先を守りたいという判断は尊重されますが、存続会社まで資金繰りに苦しむ形では本末転倒です。

逆取得では形式と実態がずれる

形式上は自社が存続会社でも、会計上は別の見方をすることがあります。代表例が逆取得です。

逆取得とは、法的には存続会社が残っているのに、合併後の議決権や実質的支配関係を見ると、消滅会社側が取得企業とみなされる状態です。たとえば、合併後に消滅会社の旧株主が多数の議決権を持つような場合です。

この場合、会計処理は通常の吸収合併より複雑になります。形式上の存続会社と、会計上の取得企業が一致しないためです。中小企業では頻繁に出る論点ではありませんが、株式対価で合併する場合や、規模の大きい会社を取り込む場合には確認が必要です。

合併後のリスクとM&A手法の選び方

吸収合併は、登記が終われば完了というものではありません。むしろ、合併後の運営が本番です。

存続会社は、消滅会社の人材、制度、取引、業務フローを受け入れます。ここで統合がうまく進まないと、せっかく引き継いだ人材や顧客が離れてしまうことがあります。数字上は合併できても、現場がついてこない。こういうケースは珍しくありません。

簿外債務や偶発債務を事前に調べる

存続会社が最も注意すべきなのは、負債やリスクもまとめて引き継ぐ点です。

借入金や買掛金のように決算書へ載っている債務は、比較的把握しやすいものです。問題は、決算書だけでは見えにくい簿外債務です。簿外債務とは、未払残業代、未計上の賞与、将来発生し得る訴訟、保証債務、退職給付、税務調査で指摘される可能性のある事項などを指します。

吸収合併では、こうしたリスクも存続会社が受ける可能性があります。だからこそ、合併前のデューデリジェンスが重要です。デューデリジェンスとは、買収や合併の前に財務、税務、法務、労務などを調べる手続です。専門用語に聞こえますが、要するに「後から困らないための事前点検」です。

従業員の処遇と退職金を整理する

雇用契約は、原則として存続会社に移ります。ただし、制度上は雇用が引き継がれても、現場の不安はすぐには消えません。

特に注意したいのは、給与体系、評価制度、退職金、役職、勤務地、就業規則です。条件の違いを放置すると、合併後に不公平感が生まれます。合併前は静かだった職場でも、統合後に不満が表面化することがあります。

退職金の通算や支給条件は、事前に整理しておくべき論点です。従業員への説明を後回しにすると、合併そのものへの不信感につながります。

PMIでは制度と人の両方を統合する

PMI(M&A後の統合プロセス)は、合併後の成果を左右します。特に吸収合併では、会社が1つになるため、PMIの重要性が高くなります。

統合すべきものは多くあります。会計システム、人事制度、給与計算、勤怠管理、販売管理、購買ルール、稟議手続、社内規程、ブランド、名刺、メールアドレス。小さな項目に見えても、現場では大きな混乱につながります。

人の統合も大事です。消滅会社の従業員が「吸収された」と感じると、心理的な壁が生まれます。存続会社側の従業員も、急なルール変更や人員配置に戸惑います。合併前から説明の順番、責任者、統合スケジュールを決めておくと、不要な摩擦を減らせます。

会社売却では株式譲渡の方が適することもある

会社売却を考える経営者にとって、吸収合併が常に最適とは限りません。

中小企業の第三者承継では、株式譲渡が使われることが多くあります。株式譲渡であれば、会社の法人格はそのまま残り、株主だけが変わります。取引先との契約、許認可、従業員との雇用契約も、会社自体が変わらないため維持しやすいケースが多いです。

これに対して吸収合併は、会社を1つにまとめる力が強い手法です。買い手企業が買収後にグループ内を整理したい場合、管理コストを下げたい場合、同一事業を一本化したい場合には有効です。

会社売却の入口でいきなり合併を前提にするより、株式譲渡、事業譲渡、吸収合併のどれが目的に合うかを比較することが重要です。手法ありきではなく、目的から逆算する。遠回りに見えても、これが実務では近道です。

まとめ

存続会社は、吸収合併後も法人格を残し、消滅会社の権利義務をまとめて引き継ぐ会社です。人材や販路を一括で取り込める一方、簿外債務、資本金、会計処理、従業員対応、PMIの確認を怠ると、合併後に負担が表面化します。会社売却や事業承継では、合併ありきではなく、株式譲渡など他の手法と比べて判断することが大切です。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人


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