なぜM&Aをするのか?経営者が決断する7つの理由と実例

M&Aによる企業譲渡を決断する理由は様々です。後継者不在や健康問題への対応から、事業拡大や新規事業展開まで、実例を交えながら企業オーナーがM&Aを選択する背景を詳しく解説します。

目次

  1. M&Aの増加傾向と背景
  2. 企業譲渡を決断する主な理由
  3. 実例から学ぶM&A決断の背景
  4. まとめ

M&Aの増加傾向と背景

出展:中小企業庁2021年版「中小企業白書」第2節M&Aを通じた経営資源の有効活用より

過去20年間のM&A動向を見ると、年による変動はあるものの、着実に増加傾向を示しています。中小企業庁が発表した2021年版「中小企業白書」によると、企業の事業承継や経営戦略の選択肢として、M&Aが定着してきていることがわかります。

この傾向の背景には、以下のような社会的な要因があります。

・少子高齢化による後継者不足

・経営環境の急速な変化への対応

・事業承継の選択肢の多様化

・M&Aに対する社会的認知の向上

企業譲渡を決断する主な理由

企業のオーナー経営者がM&Aによる企業譲渡を決断する背景には、様々な要因が存在します。以下、主要な理由について説明します。

事業承継における後継者問題の解決

第三者承継としてM&Aを選択する最も一般的な理由が、後継者不在です。以下のような状況が多く見られます。

・親族内に適切な後継者候補がいない

・子女が他業界で活躍しており、承継の意思がない

・社内人材の中から後継者を育成できていない 

・後継者育成の時間的余裕がない

経営者の健康上の課題への対応

経営者自身の年齢や健康状態を理由とするM&Aも増加しています。具体的には、

・体力面での不安が増してきた

・健康管理に時間を割く必要性が出てきた

・経営維持が身体的に困難になってきた

家族の介護への対応

近年、介護の問題を理由とするM&Aも増えています。

・親の介護が必要になった

・家族の看病に時間を割く必要が出てきた

・介護と経営の両立が難しい

アーリーリタイアの実現

40代・50代の比較的若い経営者が以下のような理由でM&Aを選択するケースも出てきています。

・新しいライフプランの実現

・経営者としての区切りをつける決断

・海外移住などの新生活の開始

事業の発展的な展開

企業の更なる成長を目指すために、M&Aを選択するケースもあります。

・大手企業の資金力や経営資源の活用

・販路拡大や新規事業展開の実現

・技術力の相乗効果(シナジー)の創出

不採算部門の整理

経営資源の選択と集中のため、以下のような場合にM&Aを活用します。

・不採算事業の切り離しによる経営効率化

・コア事業への経営資源の集中

・赤字部門の収益改善

実例から学ぶM&A決断の背景

実際のM&A案件から、企業譲渡を決断した具体的な事例を見ていきましょう。以下の事例は、個人情報保護の観点から一部内容を変更していますが、M&A決断の本質的な理由を理解する参考になります。

後継者不在の事例

【事例1:承継計画の急な変更】

企業概要:創業50年の老舗企業、62歳の2代目経営者

状況:

東京の企業に勤務していた35歳の長男を後継者として迎え入れる

5年間かけて承継準備を進めていた

突然、長男が前職への復帰を希望

長女は育児との両立が困難で承継を辞退

結果:社内にも後継候補がおらず、M&Aを決断

【事例2:人材確保の困難】

企業概要:産業廃棄物処理業、70代の経営者

状況:

業界特性から人材確保が慢性的な課題

後継者育成が後回しになっていた

地域に必要な事業のため廃業は選択肢にない

結果:人員が充実した同業他社とのM&Aで解決

業界動向を見据えた判断

【事例:イベント運営会社の決断】

40代の経営者

背景:コロナ禍でイベント開催が困難になり、業界回復の見通しが不透明

結果:

大手企業の傘下入りを決断し、子会社として経営継続

親会社の資金力を活用

収益は従来の1.5倍に回復

成長戦略としての活用

【事例:自転車レンタル事業の展開】

状況:

観光地での事業が好調

不動産会社からM&Aの提案を受ける

決断の理由:

賃貸物件×自転車レンタルの新事業モデル

競合増加への対応

事業拡大の好機と判断

まとめ

M&Aによる企業譲渡の決断理由は、後継者不在や健康上の理由から、事業拡大や新たな成長機会の獲得まで、実に多様です。多くの場合、予期せぬ出来事がきっかけとなってM&Aを検討し始めます。そのため、事業承継の選択肢として、親族内承継や社内承継と共に、M&Aも視野に入れた準備を進めることが賢明です。

著者|土屋 賢治 マネージャー

大手住宅メーカーにて用地の取得・開発業務、法人営業に従事。その後、総合商社の鉄鋼部門にて国内外の流通に携わる傍ら、鉄鋼メーカーの事業再生に携わる。外資系大手金融機関を経て、みつきグループに参画

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