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M&Aコンサルティング会社の選び方と費用をわかりやすく解説

M&Aコンサルティングとは何でしょうか?その答えは、M&Aの戦略策定から交渉、PMIまで一貫して支援し、専門知識と経験でクライアントの利益を最大化するサービスです。本記事ではFA契約と仲介契約の違い、費用、選び方を分かりやすく解説します。

目次

  1. M&Aコンサルティングとは幅広い専門支援
  2. M&Aコンサルティングと他サービスの違い
  3. ファイナンシャル・アドバイザリー契約と仲介契約の違い
  4. M&Aコンサルティングの主な対応内容
  5. M&Aコンサルティング費用の内訳と相場
  6. 中小企業におすすめのM&Aサポートサービス
  7. M&Aコンサルティング会社の選び方手順
  8. まずは専門家に無料相談してみよう
  9. まとめ

M&Aコンサルティングとは幅広い専門支援

M&Aコンサルティングは、譲渡企業と譲受企業の双方またはいずれかに対して、戦略策定からクロージング、統合プロセス(PMI)までの全工程を一貫してサポートする専門サービスです。財務・税務・法務・労務といった多岐にわたる専門分野の知識を束ね、複雑なM&Aプロジェクトを円滑かつ確実に進める役割を担います。特に中小企業のM&Aでは、経営者が本業に集中しながらも着実に成約へ進むために、第三者の専門的支援が不可欠です。M&Aコンサルティングはその橋渡し役として、初期段階の目的整理から統合後のシナジー創出まで、長期的な視点で企業価値向上を支援します。

M&Aコンサルティングが必要な理由は専門知識とリソース確保

M&Aの過程では、企業価値評価やデューデリジェンス、最終契約書の取りまとめなど、高度で専門的な作業が連続します。経営者が単独でこれらを進めると、見落としや判断ミスが生じ、想定外のリスクを抱える恐れがあります。M&Aコンサルティング会社に依頼することで、豊富な経験と専門知識に裏打ちされた助言が得られ、リソース不足も同時に解消できます。結果として、交渉力が高まり、適正価格での譲渡・譲受やスムースな統合が期待できるのです。

M&AコンサルティングとM&Aアドバイザリーは支援範囲が異なる

M&AコンサルティングとM&Aアドバイザリーは、ともにクライアント企業の利益最大化を目指す点で共通しています。しかしアドバイザリーが主にM&Aそのものに特化した実務支援を行うのに対し、コンサルティングは企業成長戦略全体を俯瞰したうえで、M&A以外の選択肢も含めた総合的な提案を行います。言い換えれば、アドバイザリーは「どう実行するか」を、コンサルティングは「やるべきかどうか、やるならどの手法が最適か」を示す役割が大きいと言えるでしょう。

M&Aコンサルティングと他サービスの違い

M&Aプロセスを支援するサービスには、コンサルティング以外にもファイナンシャル・アドバイザー(FA)、M&A仲介会社があります。ここでは三者の違いを整理し、それぞれの特徴を理解しましょう。

ファイナンシャル・アドバイザーは片側契約で実務を統括

ファイナンシャル・アドバイザーは、買手または売手のいずれか一方と契約し、案件全体の計画立案からスケジューリング、候補企業の選定、交渉、デューデリジェンス、クロージングまで、M&Aの実務を統括する役割を担います。FAはクライアント側の利益最大化を最優先し、必要に応じて弁護士や税理士とも連携しながらプロジェクトを推進します。

M&A仲介会社は双方契約で中立的に調整

M&A仲介会社は、譲渡企業と譲受企業の双方と契約し、交渉を調整して成約を目指す中立的な立場を取ります。報酬は双方から受け取るため、どちらか一方の利益を偏って追求するのではなく、バランスを取りながら条件折衝を進めるのが特徴です。特に中小企業のM&Aでは、当事者間の情報格差を埋め、迅速に交渉をまとめる役割が期待されています。

ファイナンシャル・アドバイザリー契約と仲介契約の違い

FA契約と仲介契約は、契約当事者の範囲と利益の帰属が大きく異なります。ここでは基本的な相違点と、それぞれが適するケースを確認します。

FA契約は利益相反を避けて片側の価値を最大化

FA契約では、売手か買手の一方のみと契約を締結します。したがってFAはクライアントの立場を徹底的に擁護し、譲渡価格や条件の交渉で利益最大化を図ります。特に上場企業が買手となる場合は、株主への説明責任があるため、利益相反を回避できるFA契約が選択されるケースが一般的です。

仲介契約は手続を迅速に進め費用も抑えやすい

仲介契約は双方と契約するため、交渉が一本化され、スケジュール調整や条件調整がスムースに進む傾向があります。中小企業同士のM&Aでは、交渉のスピード感と費用負担の軽減が重視されるため、仲介契約が選ばれる場面が多い点も特徴です。

契約選択時の注意点は利益相反と案件規模

FA契約か仲介契約かを選ぶ際には、案件規模、情報開示の要否、利益相反リスクを総合的に判断します。たとえば、大型案件や上場企業が絡む取引ではFA契約、小規模でスピードを重視する取引では仲介契約が適するなど、状況によって最適解は変わります。経営者は自社の目的やリスク許容度を明確にし、専門家の説明を受けながら慎重に契約形態を決定することが重要です。

専門家ネットワークを活かした横断的サポートが強み

M&Aでは会計・税務だけでなく、労務やIT、知的財産といった多方面の課題が同時に発生します。M&Aコンサルティング会社は公認会計士、税理士、弁護士、社会保険労務士など多様な専門家と連携し、課題ごとに最適な助言を提供します。たとえば買手企業が海外展開を視野に入れている場合はクロスボーダー案件に精通した専門家をアサインし、為替リスクや現地法規制に配慮したプランを提示するなど、横断的に支援できる点が大きな強みです。

PMI支援でM&A後のシナジーを最大化

統合後のPMIが不十分だと、せっかくの譲受が期待どおりの成果を生み出さない恐れがあります。M&Aコンサルティング会社は、組織文化の擦り合わせや人事制度の統一、ITシステムの統合計画などを事前に設計し、取引完了後も伴走します。これにより、従業員の離職や業務停滞による損失を防ぎ、シナジー効果を早期に実現できます。

中小企業がコンサルティングを利用するメリット

中小企業のオーナー経営者は日々の営業や人材管理で多忙なため、M&Aの検討に割ける時間が限られています。コンサルティングを利用すれば、面倒な書類準備や相手先との日程調整を一任できるほか、譲渡価格の算定根拠や税務上の留意点を分かりやすく教えてもらえるため、意思決定がスピーディーになります。また費用面でも、成功報酬型の報酬体系を選択すれば、成約しなければ大きなコストが発生しない点が安心材料となります。

具体的な支援の例

初期相談
M&Aに踏み切るべきか、他の選択肢はないかを整理


企業価値評価
過去の財務諸表や将来の収益計画を基に適正価格を算定


候補企業リストアップ
ロングリストとショートリストを段階的に提示


交渉支援
秘密保持契約から基本合意書までドラフト作成をサポート


デューデリジェンス
財務・税務・法務・ビジネスの四つの観点でリスクを洗い出し


最終契約書締結
条項の妥当性を確認し、相手方との交渉を代行


PMI
組織・人材・業務フローの統合計画を策定し、実行をフォロー

費用体系の概要

コンサルティングにかかる主な費用項目は相談料、着手金、コンサルティング料、デューデリジェンス費用、中間報酬、成功報酬の六つです。一般的には相談料が無料の会社が多く、着手金は100〜200万円が目安、成功報酬は取引金額に対してレーマン方式で算出されるのが主流です。中小企業の小規模案件では報酬が抑えられるケースがあり、複数社から見積を取って比較することが推奨されます。

成功報酬のレーマン方式を理解する例

たとえば成約価額が2億円の場合、手数料テーブルが5億円以下の部分5%だったとすると、成功報酬は2億円×5%で1,000万円となります。中間報酬が成功報酬の10%と定められている場合は、基本合意時に100万円を支払い、残り900万円をクロージング時に支払うイメージとなります。こうした費用構成を事前に確認し、資金繰りに無理がないか検討しましょう。

契約形態の選択の事例で理解を深める

ケーススタディとして、地方の製造業A社が後継者不在で譲渡を検討し、同業の上場企業B社が譲受を希望したシナリオを考えてみましょう。A社とB社は規模差が大きく、情報格差を懸念したB社は自社側にFAを置き、A社は仲介会社に相談しました。結果として、FAはB社株主の利益最大化を目指して価格交渉を行い、仲介会社はA社の希望条件を踏まえつつ両社の折衝を調整しました。このように、同じ案件でも立場によって最適な契約形態は異なり、お互いの目的を守りながら合意形成するためには、FAと仲介が併存するケースもあるのです。

専門家選定のポイントは実績と相性

契約形態を決めた後は、具体的に依頼する専門家を選定します。ここで重要になるのが、過去の成約実績や得意業種、担当者の人柄です。実績豊富な会社ほどノウハウが蓄積されていますが、担当コンサルタントとのコミュニケーションが円滑でなければプロジェクトは前に進みません。初回面談で質問への回答が明確か、専門用語をかみ砕いて説明してくれるかをチェックし、信頼できるパートナーかどうか見極めましょう。

M&Aコンサルティングの主な対応内容

M&Aコンサルティングが実際にどのような仕事を行うのかを段階ごとに見ていきます。各工程は独立しているようでいて密接につながっているため、全体像を把握することが成功への近道になります。

M&A戦略の策定で目的とゴールを具体的にする

最初に行うのは自社がM&Aを通じて達成したい目的を明確にする作業です。たとえば「後継者不在の解消」「新規市場への参入」「技術の取り込み」など目的はさまざまです。コンサルティング会社は経営者へのヒアリングを重ね、現状分析と事業計画を照合しながら達成すべきゴールを言語化します。この時点でゴールが曖昧だと後工程で判断に迷いが生じるため、具体的な数値や時期まで落とし込むことが大切です。

対象企業リストアップで候補を可視化する

目的が定まったら、どの企業ならシナジーが高いかを洗い出します。コンサルティング会社は業界データベースや独自ネットワークを活用し、ロングリスト→ショートリストの順で候補を絞り込みます。最終的に経営者が面談すべき企業数を3~5社程度に減らすことで、交渉コストを抑えながらも選択肢を確保できます。

デューデリジェンスで隠れたリスクを洗い出す

条件交渉が進んだ段階で行われるデューデリジェンス(DD)は、財務・税務・法務・ビジネスなど複数の観点で企業を細かく調査する工程です。たとえば未払い残業代の有無や将来の設備投資額など、帳簿だけでは把握できないリスクを発見します。コンサルティング会社は専門家チームを編成し、DD計画の立案から報告書の作成、リスク対策の提案まで一貫して支援します。

クロージングとPMIでシナジーを実現する

最終契約書の締結後、譲渡代金の支払いや株式の移転を行うクロージングを経て、両社は経営統合フェーズへ進みます。統合後のPMIを怠ると、従業員の離職やシステム障害などでシナジーが得られない場合があります。コンサルティング会社は組織文化の統合計画や人事制度の整備、情報システムの一本化スケジュールを策定し、経営者と伴走してシナジー創出を支援します。

PMI支援の具体例

  • 部門別キックオフミーティングを開催し、目標と評価指標を共有
  • 人事制度の違いを比較表で整理し、半年以内に統一するロードマップを作成
  • 基幹システムの重複機能を棚卸しし、3か月以内に一本化方針を決定

M&Aコンサルティング費用の内訳と相場

費用は「いつ・何に対して発生するか」を理解することが重要です。以下は代表的な六つの費用項目と一般的な相場感です。

相談料は無料が主流だが有料の場合もある

初回ヒアリングや簡易相談は無料とする会社が多いものの、1回あたり数万円を設定する会社も存在します。相談前に確認しておくと安心です。

着手金は100万~200万円が目安

正式契約と同時に支払う着手金は、案件規模や業種によって変動します。成功の有無にかかわらず返金されないため、契約内容を丁寧に確認しましょう。

コンサルティング料は時間単価方式が一般的

契約期間中に月次や四半期ごとで発生する報酬です。交渉が長引くほど総額が増えるため、スケジュール管理が重要になります。

デューデリジェンス費用は200万~300万円

DDの深度や対象範囲で金額が変わります。着手金やコンサルティング料に含まれる場合もあるため、費用構成を必ず確認してください。

中間報酬は基本合意時に発生する

  • 中間報酬なし
  • 一律100万円を支払う
  • 成功報酬の10~20%を支払う

上記三つのパターンがあり、会社ごとに異なります。

成功報酬はレーマン方式で算定

取引金額の段階別に手数料率を掛け合わせる方式です。中小企業案件ではパーセンテージが固定される簡易レーマンを採用することもあります。

支払時期の整理

契約締結時
着手金


基本合意時
中間報酬


最終契約締結・クロージング時
成功報酬

費用を抑えるコツ

  • 初回相談無料の会社を選ぶ
  • 着手金無料や成果連動型を交渉する
  • 複数社から見積を取り比較する

中小企業におすすめのM&Aサポートサービス

中小規模案件では、M&Aマッチングプラットフォームの活用が選択肢に入ります。登録企業数が多く、費用も比較的安価なため、まずは情報収集の場として利用する経営者も増えています。

マッチングサービスの特徴は低コストと情報量

  • 膨大な案件データベースから検索できる
  • 成約までは匿名で検討を進められる
  • 成果報酬のみの料金形態が多く資金負担が軽い

プラットフォーム活用時の注意点

  • 案件内容の真偽を自社で確認する必要がある
  • 交渉や契約書作成は外部専門家の支援が不可欠
  • 譲渡企業の情報開示タイミングを慎重に決める

M&Aコンサルティング会社の選び方手順

複数社を比較検討する際には、次のステップで選ぶと失敗を防げます。

ステップ1 実績と専門領域を比較する

各社の成約件数や得意業種を資料やウェブサイトで確認します。自社と同規模・同業種の事例が多い会社ほど、実務ノウハウが豊富で安心です。

ステップ2 担当コンサルタントとの相性を確かめる

初回面談では専門用語を平易に説明してくれるか、連絡のレスポンスが早いかをチェックしましょう。案件は長期におよぶため、信頼関係の構築が不可欠です。

ステップ3 費用構成と支払タイミングを確認する

同じ成功報酬率でも着手金や中間報酬の有無で総コストは大きく変わります。見積書を比較し、資金繰りに無理のない会社を選択してください。

チェックリスト例

  • 成約実績〇件以上か
  • 同業種支援の経験があるか
  • 費用項目が明確に提示されているか
  • 担当者の説明が分かりやすいか

まずは専門家に無料相談してみよう

M&Aは一生に一度の大きな決断ですが、初期段階の疑問や不安は無料相談を利用することで解消できます。無料相談では、案件の概要を伝えるだけでも「適切なスキームは何か」「譲渡価格の目安はいくらか」など具体的なアドバイスが受けられます。悩んでいる時間が長いほど譲渡企業の企業価値が低下するリスクもあるため、早めに専門家と対話を始めることが成功の第一歩になります。

著者|土屋 賢治  マネージャー

大手住宅メーカーにて用地の取得・開発業務、法人営業に従事。その後、総合商社の鉄鋼部門にて国内外の流通に携わる傍ら、鉄鋼メーカーの事業再生に携わる。外資系大手金融機関を経て、みつきグループに参画

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