コングロマリット多角経営の特徴とコンツェルンとの比較を解説

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コングロマリットとは?多角化経営の特徴とM&Aの判断軸

コングロマリットとは、関連性の低い複数事業を持つ複合企業です。多角化によるリスク分散や資金配分の利点、企業価値が下がる原因、持株会社・コンツェルンとの違いを解説し、M&Aや事業再編を判断するポイントを分かりやすく紹介します。

目次

  1. コングロマリットの意味と経営の仕組み
  2. 水平統合・垂直統合・持株会社との違い
  3. 多角化が企業価値を高める条件
  4. 経営の複雑化で企業価値が下がる理由
  5. 代表企業に見るコングロマリットの運営
  6. M&Aで多角化を進める判断ポイント
  7. 事業再編と会社売却で考える出口戦略
  8. まとめ

コングロマリット多角経営の特徴とコンツェルンとの比較を解説

コングロマリットの意味と経営の仕組み

コングロマリットとは、直接の関連性が薄い複数の業種・事業を、同じ企業グループ内で経営する複合企業です。

例えば、電機、金融、食品、ITなど、異なる市場に収益源を持つ企業が該当します。一つの業界だけに依存せず、特定市場の景気悪化による影響を抑えることが主な目的です。

多角化とM&Aが成長を支える

コングロマリットは、新しい事業を自社で一から立ち上げるよりも、M&A(合併・買収)で既存会社をグループに加えて拡大することが少なくありません。

M&Aを利用すれば、顧客、技術、人材、許認可、店舗や工場などの拠点をまとめて引き継げます。新規事業を自社だけで育てる場合と比べ、参入までの時間を短縮しやすい点が利点です。

ただし、買収した会社を増やすだけでは、多角化は成功しません。各事業をどのように組み合わせ、グループ全体の成長へつなげるかが問われます。

本社は資金配分の司令塔になる

コングロマリットの本社は、各事業の利益、成長性、リスクを比べ、資金や人材を配分します。成熟事業が生み出した資金を、新しい成長分野へ投資することも可能です。

すべての意思決定を本社へ集める企業もあれば、資金配分や経営方針だけを本社が決め、日々の事業運営は子会社へ任せる企業もあります。

大切なのは、本社と子会社の責任範囲を明確にすることです。

水平統合・垂直統合・持株会社との違い

コングロマリットと似た言葉は多くあります。しかし、事業を広げる方向を示す言葉と、企業を管理する仕組みを示す言葉は分けて考える必要があります。

水平統合と垂直統合は関連事業を広げる

水平統合とは、同じ業界や同じ市場で事業を行う会社同士が統合し、規模や市場シェアを拡大する方法です。同業他社の買収が代表例になります。

垂直統合とは、原材料の調達、製造、物流、販売など、事業の前後にある工程を取り込む方法です。仕入先や販売会社を買収するケースが該当します。

これに対し、コングロマリットは、既存事業との関連性が低い分野まで事業を広げます。リスク分散の幅は大きくなる一方で、管理は複雑になりやすい点が特徴です。

持株会社は企業を管理する仕組み

持株会社とは、子会社の株式を保有し、グループ全体を管理する会社です。

持株会社の傘下には、同業の会社だけが並ぶこともあれば、異業種の会社が並ぶこともあります。したがって、持株会社とコングロマリットは同じ意味ではありません。

コングロマリットは「どのような事業を持っているか」を表し、持株会社は「どのような組織で会社を管理しているか」を表します。

日本では1997年の独占禁止法改正により、持株会社に関する規制が見直されました。その後、グループ経営と各事業の運営を分ける目的で、持株会社を採用する企業が増えています。

コンツェルンや財閥とは視点が異なる

コンツェルンは、資本関係などを通じて、複数の企業が統一的な支配の下に置かれる企業集団を表す言葉です。同業の会社だけで構成されるとは限りません。

財閥は、歴史的には特定の一族や持株会社を中心に形成された企業集団を指します。

つまり、コングロマリットは事業構成に重点があり、コンツェルンや持株会社は支配関係や組織構造に重点があります。一つの企業グループが、両方の性格を持つこともあります。

多角化が企業価値を高める条件

「事業を増やせば経営が安定する」と考えがちですが、数を増やすだけでは企業価値は高まりません。複数の事業を持つ意味を、利益や成長へ結び付ける仕組みが必要です。

景気変動への耐性を高める

異なる景気サイクルの事業を持てば、ある事業の不振を別の事業が補える可能性があります。

例えば、消費者向け事業の売上が景気後退で落ち込んでも、継続契約が多いITサービスや金融事業が利益を確保できれば、グループ全体の業績は安定しやすくなります。

特定の市場だけに依存しないことは、コングロマリットの大きなメリットです。

グループ内で資金を効率的に使える

成熟事業が生み出した資金を、新しい成長事業へ振り向けられる点も強みです。

単独では十分な資金を調達しにくい事業でも、グループ内の資金を利用して、研究開発や設備投資を進められる場合があります。

ただし、本社が将来性を正しく見極められなければ、成長の見込めない事業へ資金を投入し続けることになります。資金を融通できることと、資金配分が正しいことは別の問題です。

ブランド・顧客・技術を横展開する

親会社の信用力、ブランド、販売網、顧客情報、人材、研究開発の成果を複数の事業で共有できれば、単独会社よりも低いコストで成長できます。

知名度のあるグループに加わることで、新規事業でも取引先や金融機関から信用を得やすくなることもあります。

また、異なる事業の技術や顧客接点を組み合わせ、新しい商品やサービスを生み出せる可能性もあります。

コングロマリット・プレミアムが生まれる場面

各事業を別々に評価した合計より、グループ全体の企業価値が高く評価される状態を、コングロマリット・プレミアムと呼びます。

明確なシナジー、合理的な資金配分、強いブランド、迅速な意思決定などがそろった場合に期待できます。

シナジーとは、複数の事業を組み合わせることで、単独で経営する場合よりも大きな効果を生むことです。単に異なる事業を持っているだけでは、プレミアムは生まれません。

M&Aでは買収後の実行力まで確認する

買収前に魅力的な計画を作っても、顧客紹介、共同開発、システム統合などが進まなければ、期待した効果は出ません。

誰が責任者となり、いつまでに、どの効果を実現するのか。ここまで具体的に決める必要があります。

M&A実務では、買収後の計画が曖昧なまま契約を進め、統合段階で判断が止まることも珍しくありません。

経営の複雑化で企業価値が下がる理由

多角化には、経営陣が各事業の実態を理解しきれず、資金や人材の配分を誤るリスクがあります。

好調な事業の利益で不振事業を支え続けると、本来は見直すべき問題の発見も遅れます。

コングロマリット・ディスカウントが起きる

各事業を単独で評価した合計より、グループ全体の企業価値が低く評価される現象を、コングロマリット・ディスカウントと呼びます。

主な原因は、次のとおりです。


・各事業に必要な専門性を十分に持てない

・管理部門やシステムのコストが増える

・事業数が増えて意思決定に時間がかかる

・事業同士のシナジーが生まれない

・事業別の収益や投資効果が見えにくい

・成長性の低い事業へ資金を配分してしまう


経営実態が分かりにくい場合、株主や買い手企業は将来のリスクを高く見積もります。その結果、企業価値が低く評価されることがあります。

専門性が薄れ競争力を失うことがある

関連性の低い事業を増やすと、本社がすべての業界に精通することは難しくなります。
現場への投資判断が遅れたり、各市場の変化へ十分に対応できなかったりすると、専門分野へ集中している競合企業に負ける可能性があります。
経営資源が多方面へ分散し、中核事業への投資が不足することも注意点です。

不祥事とブランド毀損が全体へ波及する

一つの子会社で品質問題や法令違反が起きると、親会社のブランドを共有する他事業にも影響する場合があります。

業種が増えるほど、本社が把握すべき法規制や商慣行も増加します。内部統制、子会社管理、通報制度などを整えなければ、現場の問題を本社が把握できません。

事業ポートフォリオを定期的に見直す

コングロマリット・ディスカウントを避けるには、事業ごとの収益性や成長性を確認し、投資、維持、売却、撤退の基準を明確にすることが重要です。

事業ポートフォリオとは、会社やグループが保有する事業の組み合わせを指します。

非中核事業を抱え続けず、事業譲渡や会社分割によって切り出すことも選択肢です。経営資源を成長分野へ移すことで、グループ全体の価値を高めやすくなります。

代表企業に見るコングロマリットの運営

代表企業を見るときは、事業数の多さだけでなく、本社がどのように事業を管理し、組み替えているかに注目すると理解しやすくなります。

ソニーグループ

ソニーグループは、ゲーム、音楽、映画、エレクトロニクス、半導体など、幅広い事業を展開しています。

異なる事業が持つ技術、コンテンツ、ブランドを組み合わせ、グループ内の連携を価値へつなげている例です。

日立製作所

日立製作所は、デジタル、エネルギー、鉄道などのモビリティ、産業分野を展開しています。

事業を増やすだけでなく、事業売却やグループ再編を通じ、経営資源を重点分野へ移してきた点が特徴です。コングロマリット経営では、事業の追加と整理を繰り返す視点が欠かせません。

バークシャー・ハサウェイ

米国のバークシャー・ハサウェイは、保険を中核として、鉄道、エネルギー、製造、サービス、小売など、幅広い事業を傘下に持っています。

本社が資本配分を担う一方、日々の事業運営は各社の経営者へ任せる分権型の運営が特徴です。

タタ・グループ

インドのタタ・グループは、IT、自動車、鉄鋼、消費財、インフラ、金融、ホテルなど、多数の企業を束ねています。

グループブランドを共有しながら、各社がそれぞれの市場で事業を運営する大規模な企業集団です。

M&Aで多角化を進める判断ポイント

M&Aで異業種へ参入するときは、対象市場の将来性だけでなく、自社がその会社を適切に管理できるかを確認します。

意外と多い落とし穴は、買収理由が「成長市場だから」という説明だけで止まっていることです。

買収目的を数値と行動へ落とし込む

新規顧客の獲得、技術の取得、収益源の分散など、買収の目的を明確にします。
そのうえで、売上の増加、原価の削減、人材の確保など、期待する効果を試算し、買収価格の上限を決めます。
買収目的と期待する効果を説明できなければ、買収後に成功したかどうかも評価できません。

異業種特有のデューデリジェンスを行う

自社に知識がない業種ほど、法規制、商慣行、許認可、人材への依存、設備更新、取引先との契約などを慎重に調べる必要があります。

デューデリジェンスとは、買収前に対象会社の財務、税務、法務、事業上のリスクを調べる手続です。

異業種の買収では、決算書だけでは分からないリスクが多くなります。必要に応じて、対象業界に詳しい専門家の確認を受けることも重要です。

PMIで管理と自立のバランスを取る

PMI(M&A後の統合プロセス)では、会計、資金管理、内部統制、人事制度など、グループで共通化する領域を決めます。

一方で、商品開発、営業方法、取引先との関係など、子会社の自主性を残す領域も必要です。

すべてを親会社の方法へ合わせると、買収した会社の強みが失われることがあります。反対に任せ過ぎると、グループとしての管理が働きません。

コングロマリット経営は、会社を買収して終わりではありません。経営環境の変化に合わせ、事業を買う、育てる、売るという循環を作ることが重要です。

非中核事業の売却は経営の失敗ではない

グループ内で十分な投資を受けられない事業でも、別の会社の中核事業になれば成長できることがあります。

事業売却や会社分割による切り出しは、資金を成長分野へ戻し、複雑になった経営を分かりやすくする方法です。

多角化を進める基準だけでなく、事業を売却・撤退する基準も事前に決めておく必要があります。

会社を譲る側は買い手の管理方針を確認する

多角化を目的とする買い手企業へ会社を譲る場合、譲渡価格だけで判断するのは早計です。
経営の自立性、従業員の処遇、会社名やブランドの継続、設備投資、取引先との関係なども確認します。
グループへ加わった後に何を共通化し、何を残すのか。買い手企業の方針は、会社の成長と従業員の働き方を大きく左右します。

まとめ

コングロマリットは、異なる事業を持つことで収益源を分散し、資金、ブランド、技術を横断的に活用できる経営形態です。一方、管理の複雑化や投資判断の誤りにより、企業価値が下がることもあります。M&Aで多角化する際は、買収目的、資金配分、子会社管理、PMI、撤退基準まで設計し、自社が価値を高められる組み合わせかを慎重に見極めることが大切です。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人