同族会社とは?税務上の定義と経営・事業承継の注意点を解説
同族会社とは、上位3つの株主グループが株式や議決権の50%超を持つ会社です。家族経営との違い、判定方法、経営上の強み、公私混同やワンマン経営のリスク、役員給与・親族間取引の税務、事業承継やM&A前に整えるべき株主構成を解説します。
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▶目次ページ:親族内承継(株式の譲渡)
「親族が役員に多いから、うちは同族会社だ」と考える経営者は少なくありません。一般には家族経営企業やファミリービジネスと近い意味で使われますが、税法上の判定で重視されるのは、誰が経営に参加しているかではなく、株式や議決権を誰がどれだけ持っているかです。
同族会社は、法人税法上の用語です。原則として、上位3つまでの株主グループが、その会社の発行済株式や出資の50%を超えて保有する場合に該当します。議決権の割合や、合同会社などの社員数によって判定される場合もあります。
国税庁の会社標本調査でも、日本の法人の大多数が同族会社に分類されています。非上場の中小企業にとって、同族会社は特別な会社形態ではありません。
1人の株主が20%しか持っていなくても、それだけで判定を終えてはいけません。配偶者や親族などの同族関係者が持つ株式を合算し、1つの株主グループとして扱うためです。
個人の同族関係者には、配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族、内縁関係にある人、株主の使用人、株主からの資金援助で生活している人などが含まれます。また、株主やその関係者が50%超を支配する法人も、一定の場合は同じグループとして判定します。
資産管理会社や持株会社を使っている会社では、間接的に保有している株式を見落としやすい点に注意が必要です。
古い会社では、設立時に親族や知人から名義を借りた株式が残っていることがあります。いわゆる名義株です。
税務上は、株主名簿の記載だけでなく、実際の出資者や所有者を確認して判断するのが基本です。株主名簿、出資時の通帳、配当の受取人、過去の申告資料などを照合し、実態を整理します。
親族経営は、親族が役員や従業員として経営に関わる状態を示す一般的な言葉です。一方、同族会社は持株割合などで決まる税法上の区分です。
親族が経営に参加していなくても、親族グループが株式の過半数を持っていれば、同族会社になり得ます。反対に、親族が役員の大半を占めていても、株式が広く分散していれば同族会社に該当しないことがあります。
非公開会社は、会社法上、すべての株式に譲渡制限が付いている会社を指します。同族会社と重なることは多いものの、判定基準は別です。自社の状況を確認するときは、家族関係、株式の所有、譲渡制限を分けて整理しましょう。
同族会社は閉鎖的だと思われがちですが、株主と経営者の方向性がそろえば、非同族会社にはない機動力を発揮します。強みを生かせるかどうかは、株式が集中していること自体ではなく、経営方針や判断基準が共有されているかで変わります。
大株主と経営トップが同じ、または近い関係にあるため、設備投資、採用、価格改定、新規事業などを短期間で決めやすくなります。社外株主への説明や社内調整に長い時間をかけず、市場の変化に対応できる点は大きな強みです。
ただし、株主総会や取締役会など、会社法上必要な手続まで省略してよいわけではありません。意思決定が速い会社ほど、議事録や決裁記録を残すことが重要です。
短期的な配当や利益だけを求める株主が少ないため、5年後、10年後を見据えた設備、人材、研究開発への投資を続けやすい傾向があります。
地域との関係や技術の承継を重視し、目先の利益を抑えて将来の競争力を高める判断も可能です。短期的には利益が出にくい人材育成や新規事業に、時間をかけて取り組める点も同族会社の強みです。
会社の信用が一族の財産や評判と結び付いているため、経営への責任感が強くなりやすい点も特徴です。創業時の価値観、取引先との約束、従業員への姿勢を、世代を超えて共有しやすい会社もあります。
経営理念が単なる標語ではなく、採用や投資の判断基準として使われている場合、親族内承継でも第三者承継でも会社の価値として評価されます。
意思決定の速さは、経営者をけん制する人がいない状態と紙一重です。家族の信頼関係だけで長年運営できた会社ほど、世代交代や会社売却の場面で問題が表面化することがあります。
社用車や会社所有の不動産を私的に使う、会社から経営者へ理由の不明確な貸付をする、家族の費用を会社経費にするといった公私の混同が起きやすくなります。
本人に税金を減らす意図がなくても、帳簿上の説明ができなければ、税務調査で問題になる可能性があります。会社のお金は、株主や経営者個人のお金とは別です。
社宅、車両、貸付金などを経営者や親族が利用する場合は、利用料、返済条件、社内規程、契約書を整えます。
「家族だから口頭でよい」という処理は避け、第三者にも説明できる形にすることが大切です。会社売却を検討する際も、こうした取引は買い手企業から詳しく確認されます。
株主と経営者が一体であるため、取締役や幹部が反対意見を出しにくくなることがあります。投資の失敗、採算の悪い取引、親族役員への過度な配慮が続いても、修正されないまま損失が広がるケースもあります。
取締役会を設置していない会社でも、重要な投資や親族との取引について、社外の税理士、公認会計士、弁護士、金融機関などから意見を得る仕組みは作れます。速さを失わず、判断の質を高めるための工夫です。
親族内承継を前提にすると、後継者候補が子や親族に限られます。経営能力があっても本人に継ぐ意思がない、株式を取得する資金がない、他の相続人が納得しないといった問題が起こります。
候補が決まらないまま時間が過ぎると、経営者の健康不安や業績悪化によって選択肢が狭まります。親族内に適任者がいないと分かった段階で、従業員承継やM&A(合併・買収)による第三者承継も並行して検討することが現実的です。
同族会社だから税率が一律に高くなるわけではありません。ただし、株主と会社の間で利益を動かしやすいことから、役員給与や親族間取引などに特別な規定が設けられています。意外と多い落とし穴です。
役員給与は、定期同額給与や事前確定届出給与など、一定の要件を満たさなければ会社の損金にできません。損金とは、法人税を計算するときに収益から差し引ける費用のことです。
また、業務内容や会社規模に比べて不相当に高額な部分も、損金不算入となる可能性があります。
親族を形式上は従業員としていても、実際に経営に従事し、持株要件などを満たせば、税務上の「みなし役員」と判断されることがあります。この場合、一般の従業員と同じ感覚で賞与を支給すると、損金にできない可能性があります。肩書だけで決めず、職務権限と株式保有を確認しましょう。
会社の資産を無償または著しく安く譲る、親族から資産を高く買う、債務を免除するといった取引では、差額が役員給与などの経済的利益として扱われることがあります。
経済的利益とは、現金を渡していなくても、実質的に同じ利益を与えたとみなす考え方です。
親族との取引では、契約書だけでなく、価格をどう決めたかが重要になります。不動産鑑定、査定書、類似取引、返済予定表など、第三者間の取引と比べても合理的だと説明できる資料を残します。
同族会社の行為や計算によって税負担が不当に減少すると認められる場合、税務署長がその取引を否認し、課税額を計算し直す制度があります。
関連会社への不自然な低価格販売、経営者個人との合理性に乏しい資産売買、返済条件が曖昧な貸付などが問題になりやすい場面です。
制度の適用は、単に親族間取引であることだけで決まるものではありません。取引の目的、価格、条件、会社側の利益を説明できるかが重要です。節税だけを目的にしているように見える形は避ける必要があります。
留保金課税は、一定の特定同族会社が利益を過度に社内へ留保した場合に、追加の法人税を課す制度です。すべての同族会社に適用されるわけではありません。
資本金1億円以下の会社は、原則として対象外です。ただし、資本金5億円以上の大法人の完全子会社などには例外があります。
自社が現在は対象外でも、増資、組織再編、株主変更によって扱いが変わる場合があります。「同族会社だから必ず留保金課税がある」「中小企業なら永久に関係ない」と決め付けず、資本政策を変更するときに確認します。
同族会社の経営が順調でも、株主構成が整っているとは限りません。相続が2回、3回と続き、経営に関わらない親族へ株式が広がると、重要な決議や会社売却で同意を集める負担が増えます。
少数株主にも、株主総会への参加、議決権、配当、一定の情報を得る権利があります。経営者が大株主であっても、少数株主を無視してよいわけではありません。
配当方針や株価への不満が長く続くと、親族間の感情問題と重なり、承継の話が止まることがあります。こういうケースは珍しくありません。
株主名簿を定期的に確認し、相続や贈与が起きる前に株式の集約方針を決めておきます。買い取り、贈与、売買、自己株式取得など、方法ごとに会社法と税務の検討が必要です。
非上場株式には市場価格がありません。相続税・贈与税を計算するための評価額と、実際の売買やM&Aで用いる企業価値は、目的や当事者によって考え方が異なります。
そのため、「税務上の評価額がそのまま会社の売却価格になる」とは限りません。
低すぎる価格や高すぎる価格で親族間売買を行うと、贈与税、所得税、法人税の問題が生じる可能性があります。価格だけを先に決めず、誰から誰へ、何の目的で、どの株式を移すのかを整理してから評価します。
後継者候補がいても、本人の意思、能力、株式取得資金、他の親族との関係を確認しなければ承継は進みません。経営者が「いずれ子が継ぐ」と思っていても、本人は別の仕事を続けたいというケースは珍しくありません。
親族内承継が難しい場合は、従業員承継や第三者承継を比較します。M&Aでは、一般に株式譲渡によって経営権を買い手企業へ移し、従業員、取引先、技術を残せる可能性があります。
ただし、株式の分散、名義株、会社と経営者の貸借、親族との不透明な取引があると、買い手企業による調査や価格交渉に時間がかかります。承継方法を決める前でも、株主と取引の整理は進めておくべきです。
承継方法を決める前でも、実施できる準備があります。むしろ選択肢が決まっていない段階ほど、どの方法にも共通する基礎整備を進めやすい時期です。
株主名簿、法人税申告書の別表、定款、過去の株式譲渡契約書を照合し、株主ごとの株式数、議決権、取得経緯、親族関係を整理します。
名義株や所在不明株主が疑われる場合は、早期に事実確認を始めます。会社売却や事業承継を始めてから問題が見つかると、手続が長期化しやすいためです。
役員報酬、貸付金、不動産賃貸、車両利用、関連会社取引を一覧にし、契約と実態が一致しているかを確認します。
会社売却の直前にまとめて直そうとすると、過去の資料が見つからず、処理の根拠を示せないことがあります。日頃から契約書、議事録、価格の根拠をそろえておきましょう。
親族内承継では、株式の相続・贈与・売買と納税資金を検討します。第三者承継では、譲渡価格だけでなく、経営者保証、役員退職金、従業員の雇用、取引先との関係、譲渡後の経営者の関与期間まで確認します。
税務だけを先に最適化すると、経営権が分散したり、後継者の負担が重くなったりすることがあります。株式、税金、経営の3つを同時に見て、実行可能な方法を選ぶことが重要です。
同族会社は、上位3つまでの株主グループが株式や議決権の50%超を持つかなどで判定され、家族経営とは別の概念です。意思決定の速さや長期経営を強みにできる一方、公私混同、ワンマン経営、後継者不在、親族間取引の税務に注意が必要です。株主構成と会社・個人間の取引を早めに整理し、親族内承継だけでなく第三者承継も含めて、自社に合う出口を比較しましょう。
著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事
編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人