キャピタルゲインの税金の計算方法と確定申告を解説

キャピタルゲインの税金はどのように計算し、いつ申告するのでしょうか。本記事ではインカムゲインとの違い、株式・投資信託・不動産・FX・仮想通貨といった資産別の税率、節税のコツまで初心者でも理解できるよう優しく解説します。

目次

  1. キャピタルゲインは価格差益で得る売却利益
  2. インカムゲインは資産保有で得られる継続収入
  3. キャピタルゲインのメリットは短期高リターン損益通算も可能
  4. キャピタルゲインの注意点は価格変動リスクと高税率可能性
  5. 投資別に見るキャピタルゲインとインカムゲインの税金比較
  6. キャピタルゲイン課税の時期と取得原価計算を押さえる
  7. キャピタルゲインの確定申告が不要となる具体例を確認する
  8. 売却損が出たときの損益通算と繰越控除の活用法
  9. 法人のキャピタルゲインは所得区分がなく全て合算計算
  10. キャピタルゲイン確定申告の流れと必要書類を把握する
  11. 売却損失が出たときの具体的な対応策を学ぶ
  12. キャピタルゲイン節税の具体策を活用する
  13. M&Aで得るキャピタルゲインの税金計算フローを理解する
  14. 創業者利益を最大化するための戦略を参考にする
  15. キャピタルゲイン計算でよくある疑問をQ&A形式で解決する
  16. まとめ

キャピタルゲインは価格差益で得る売却利益

キャピタルゲインとは、保有している資産を売却したときに得られる価格差益のことです。土地や株式などを高く売ったことで生じる利益が該当します。原文では、土地の場合は土地の売却益、株式の場合は株式の譲渡益であると説明されています。つまり「買った値段より高く売れた部分」がキャピタルゲインです。

株式の譲渡益や土地売却益が代表例

株式を1,000円で購入し、2,000円で売却すれば、1,000円のキャピタルゲインが生まれます。不動産であれば、取得費と譲渡費用を差し引いた売却益がキャピタルゲインです。資産の種類にかかわらず、売却という行為を経て初めて利益が確定する点が特徴です。

創業者利益はキャピタルゲインの一種

創業者利益は「発行額と売却額の差額」で、会社を育てて高く売ったときに得られる利益と定義されています。これは株式を高値で譲渡して得るキャピタルゲインの一形態であり、「育てて売る」点が強調されています。

インカムゲインは資産保有で得られる継続収入

インカムゲインは、資産を保有しているだけで定期的に得られる利益を指します。原文では株式の配当金や預貯金の利息が代表例として挙げられています。売却を伴わず持っているだけで入ってくる点がキャピタルゲインとの大きな違いです。

配当金や利息がインカムゲイン

たとえば上場株を長期保有して配当を受け取る、定期預金の利息を受け取るといったケースがインカムゲインに該当します。原文によれば、インカムゲインは平均リターンが低いもののリスクも小さく、価格変動に一喜一憂せずに済むメリットがあります。

長期保有で安定収入だが利回りは低い

インカムゲインは長期運用が前提となるため、含み損を抱える期間が長くなる可能性があります。保有資産の流動性が下がり、環境変化への柔軟性が失われる点には注意が必要です。

キャピタルゲインのメリットは短期高リターン損益通算も可能

キャピタルゲインはハイリスク・ハイリターンの投資手法です。短期間でも大きな利益が期待でき、確定申告を通じて損益通算ができるため、損失と相殺して税負担を抑える選択肢もあります。

短期間で大きな利益を狙える

価格変動が大きい資産では、短期売買で高いリターンを得られる可能性があります。原文では、このスピード感がキャピタルゲインの魅力として紹介されています。

損失と相殺でき節税に有効

同じ年にキャピタルロスがある場合、損益通算により譲渡益と相殺できます。また上場株式等で控除しきれない損失は3年間繰越控除が可能で、翌年以降の節税にも役立ちます。

キャピタルゲインの注意点は価格変動リスクと高税率可能性

資産価格が想定と逆方向に動いた場合、大きなキャピタルロスが発生します。含み損を抱えたまま投資を継続すると資金回転率が下がる点も指摘されています。

巨額損失や投資回転率低下に要注意

価格下落局面で売却すれば損失が確定し、心理的負担も大きくなります。また高リターンがあっても税率が高い資産では手取りが目減りすることも忘れてはいけません。

投資別に見るキャピタルゲインとインカムゲインの税金比較

投資対象によって、課税区分や税率が異なります。以下では主要な資産ごとの税金を整理します。


  • 株式

キャピタルゲイン
譲渡所得として申告分離課税。税率20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税含む)。


インカムゲイン
配当所得として総合課税が原則。ただし上場株式等は申告分離課税を選択可能。確定申告不要制度の選択も可。


  • 投資信託


キャピタルゲイン
株式と同様に申告分離課税で20.315%。


インカムゲイン
配当所得として株式と同様に取り扱う。


  • 不動産


キャピタルゲイン
譲渡所得。長期保有(5年超)15.315%、短期保有(5年以下)30.630%に住民税5%が加算。


インカムゲイン
不動産所得として総合課税。総収入金額から必要経費を控除して計算。


  • FX


キャピタルゲイン
為替差益を申告分離課税15.315%+住民税5%。


インカムゲイン
金利差益も同一税率で申告分離課税。


  • 仮想通貨


キャピタルゲイン
雑所得として総合課税。累進税率が適用され、他の所得と合算。


インカムゲイン
通常は発生しない。


  • 預貯金


インカムゲインのみ
利息は源泉分離課税15.315%+住民税5%で完結し、確定申告不可。キャピタルゲインは円建て預金では生じない。

株式売却益は申告分離課税で一律20.315%

上場・非上場にかかわらず、株式の譲渡所得は申告分離課税を選択できます。税率が一定なため、本業所得が高い個人にとっては税負担を抑える効果があります。

不動産は保有期間で税率が倍近く変わる

保有5年以下の短期譲渡は39.63%(所得税30%+復興税0.63%+住民税9%)と高税率です。5年超の長期譲渡なら20.315%で済むため、売却時期の判断が節税のカギになります。

キャピタルゲイン課税の時期と取得原価計算を押さえる

キャピタルゲインは個人なら1月1日から12月31日までの売却益を翌年2月16日~3月15日に申告・納税します。法人は決算期末から2か月以内(延長の場合3か月以内)が原則です。

特定口座源泉徴収なら取引時点で納税が完了

上場株を特定口座(源泉徴収あり)で取引すると、売却時に証券会社が税金を計算し自動徴収します。これにより確定申告が不要になるケースも多いですが、早期に資金が差し引かれる点に注意しましょう。

総平均法で複数取得株の原価を算出

株式を複数回に分けて購入した場合、原価は総平均法で計算します。1,000株を1,000円と2,000円で買った場合、平均単価は1,500円となり、2,000円で1,000株売却すれば譲渡益は100万円です。

売却タイミングで税負担を最適化する

個人でも法人でも、含み益の実現時期を調整することで他の所得や赤字と相殺し、税負担を軽減できます。法人の場合は広告宣伝費などの経費支出と組み合わせてPLを調整する方法もあります。

キャピタルゲインの確定申告が不要となる具体例を確認する

キャピタルゲインには原則として確定申告が必要ですが、次の4つのケースで申告が不要になると示されています。


  • 源泉徴収あり特定口座で株式や投資信託を取引している場合
  • NISA口座で生じたキャピタルゲイン・インカムゲイン
  • サラリーマンで年収2,000万円以下かつ給与所得以外の所得が20万円以下などの条件を満たす場合
  • 専業主婦や無職で合計所得金額48万円(住民税は43万円)以下の場合

源泉徴収あり特定口座は最も手間がかからない

証券会社が年間取引報告書を作成し、税額を自動計算・徴収してくれるため、投資初心者にとって安心です。ただし損益通算や繰越控除を行いたい場合は、あえて確定申告することで税金を取り戻せる可能性があります。

NISAはキャピタルゲインも配当も非課税

NISA口座で得た利益は非課税となり、確定申告も不要です。「NISA口座はキャピタルゲインとインカムゲイン共に非課税」という制度上のメリットがあります。

売却損が出たときの損益通算と繰越控除の活用法

原文は、上場株式等の売却損については確定申告をすれば他の株式配当や将来の譲渡益と相殺できることを強調しています。

当年の配当所得と損益通算が可能

申告分離課税を選択した上場株式の配当と、同年に生じた売却損は相互に通算できます。これにより、税額の発生を抑制できるだけでなく、過払いとなっている源泉徴収税額の還付も受けられます。

控除し切れない損失は3年間繰り越せる

それでも損失が残る場合、翌年度以降3年間繰越控除が可能です。繰越控除を受けるためには毎年確定申告が必要になる点を忘れないようにしましょう。

不動産の譲渡損失は原則通算できないが例外あり

土地や建物の譲渡損は、同じ区分の譲渡益としか通算できません。ただし居住用財産を売却した損失は一定要件を満たせば他の所得と通算し、控除し切れない損失を3年間繰り越すことが認められています。

法人のキャピタルゲインは所得区分がなく全て合算計算

法人の場合、土地・株式など資産の種類に関係なくキャピタルゲインは法人所得に含まれます。本業の損益と売却益・売却損を合算して法人税が計算されるため、全社ベースで含み益と含み損の資産を把握し、決算期に合わせたタックスプランニングが重要です。

赤字決算時にキャピタルゲインを実現すれば税負担が軽い

本業が赤字の年度に含み益のある資産を売却すると、売却益と赤字が相殺され課税所得が圧縮できます。広告宣伝費などの経費計上と組み合わせることで、キャッシュを残したまま法人税をコントロールする選択肢もあります。

クロス取引による含み損の実現にも注意

決算直前にわざと損失を出すクロス取引を行う場合、形式的な取引とみなされると否認リスクがあります。実質的な売買であることを示すため、一定期間保有ルールを守るなど慎重な対応が求められます。

キャピタルゲイン確定申告の流れと必要書類を把握する

キャピタルゲインが課税対象となる個人は、毎年2月16日から3月15日までに確定申告を行います。ここでは株式・投資信託・不動産など共通する基本手順を整理します。

年間取引を整理して譲渡所得を確定する

まず1月1日から12月31日までの売却取引ごとに、譲渡価額・取得費・手数料をまとめ、譲渡所得を算出します。株式の総平均法や不動産の特別控除額の控除漏れがないよう、証券会社の年間取引報告書や仲介会社の精算書を照合しましょう。

必要書類を揃え電子申告か書面提出を選択

株式なら年間取引報告書、不動産なら売買契約書・領収書、FXなら取引報告書を添付します。e-Taxを利用すれば添付書類の省略や24時間提出が可能です。源泉徴収あり特定口座を使っている場合でも、損益通算や繰越控除を受けるためにあえて申告する選択肢があります。

損益通算・繰越控除の欄を忘れずに記載

株式の売却損は同年の配当や翌年以降3年間の売却益と相殺して節税できます。通算金額を確定申告書第三表に記入し、「上場株式等に係る譲渡損失の金額の計算明細書」を添付すると控除が適用されます。

売却損失が出たときの具体的な対応策を学ぶ

投資は必ずしも利益ばかりではありません。損失を税務上有利に処理することが将来の負担軽減につながります。

株式の損失は同一課税区分内で通算する

申告分離課税を選択した上場株式の売却損は、同じく申告分離を選んだ上場株式等の配当とだけ通算できます。総合課税を選んだ配当や給与所得とは通算できないため、課税区分をそろえることが前提です。

不動産譲渡損は原則他の所得と通算できない

土地・建物の売却損は別の不動産の譲渡益とは通算できますが、事業所得や給与所得とは相殺できません。ただし自宅売却など一定要件を満たす長期譲渡損失は例外的に他の所得と通算・繰り越しが可能です。

FXや仮想通貨の損失も扱いが異なる

FXの損失は申告分離課税に分類され、同じ区分の利益のみと通算できます。暗号資産は雑所得扱いで総合課税となり、給与所得などと合算されるため、損失通算は認められません。

キャピタルゲイン節税の具体策を活用する

「含み損資産を売却して利益と相殺する」方法を紹介します。ここでは同趣旨の節税策を整理します。

評価損の確定売りで当年課税を抑える

年末時点で含み損のある株式を売却し損失を確定させ、同年内の売却益にぶつければ税率20.315%相当の税金を圧縮できます。翌年に再取得することでポジションを組み直す方法もありますが、30日以内に同一銘柄を買い戻すと損失が否認される恐れがあるため注意が必要です。

NISA・新NISAの非課税枠を最大限に使う

NISA口座内の譲渡益・配当益は非課税です。キャピタルゲイン課税をゼロにできる唯一の制度であり、年間投資枠をフル活用することで長期的な節税インパクトが大きくなります。

損失繰越と利益確定のタイミングを合わせる

3年間の繰越控除期間内に将来の売却益を見込める場合は、利益確定を控除有効期限内に実行し、繰越損失と相殺して税金をゼロにできます。法人でも決算期の赤字年度に資産を売却し、所得相殺を狙うタックスプランニングが有効です。

M&Aで得るキャピタルゲインの税金計算フローを理解する

M&Aにより株式を譲渡する場合、原文は「株主が個人か法人かを確認する」→「譲渡所得を計算」→「売却益をもとに税金を算出」という3手順を示しています。

手順①株主区分の確認で課税体系が変わる

株主が個人なら譲渡所得として申告分離課税20.315%が基本です。法人株主であれば法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税の合計実効税率(約30%前後)が適用され、個人より高くなるケースもあります。

手順②譲渡所得=譲渡収入-(取得費+譲渡費用)

株式取得時の資本金やM&A仲介手数料が取得費・譲渡費用に含まれます。譲渡費用を漏れなく計上すれば課税標準が下がり、結果として納税額が軽減されます。

手順③売却益に税率を乗じて納税額を算定

個人の場合
売却益×20.315%

法人の場合
売却益×実効税率(地方税含む)

税負担を事前に試算し、受取額と手取り額の差を把握しておくと資金計画が立てやすくなります。

創業者利益を最大化するための戦略を参考にする

「会社価値を高め、適切なタイミングで売却する」ことが高額創業者利益につながると強調しています。

好業績と人材育成で株価を押し上げる

ベンチャーキャピタルから資金調達し事業拡大を図る、優秀な人材を育て企業価値を高めるなど、買い手が「この会社を買いたい」と思う要素を増やすことが株価上昇に直結します。

IPOによる信用向上と市場評価の上昇を狙う

株式上場を実現すれば知名度と信用が高まり、株価が跳ね上がる可能性があります。ただし大量売却は株価下落や経営権喪失を招くため、売却比率を5~10%に抑えるのが一般的です。

業界動向を読みM&Aの最適タイミングを見極める

景気や市場ニーズが高まる局面でM&Aを実行すれば、同じ事業でも高値が期待できます。競合他社の買収事例や業界の案件倍率を常時モニタリングし、売却機会を逃さない体制を整えましょう。

キャピタルゲイン計算でよくある疑問をQ&A形式で解決する

投資家や経営者が抱きやすい典型的な質問をいくつか取り上げ回答します。

Q. 特定口座と一般口座の違いは?

A. 特定口座は証券会社が譲渡益を計算し、源泉徴収ありを選べば確定申告が原則不要です。一般口座では自分で計算し確定申告が必要になります。

Q. 含み益を翌年に持ち越すと税金は軽くなる?

A. 所得状況が翌年以降に大きく変動するときは節税余地がありますが、価格下落リスクも伴うため事前にシミュレーションが不可欠です。

Q. 個人と法人どちらで資産保有すべき?

A. 法人は経費計上や資産の組替えが柔軟ですが、実効税率が高い場合があります。個人ではNISAなど非課税制度を活用できるメリットがあります。資産規模とビジネス形態を踏まえて選択してください。

まとめ

キャピタルゲインは資産の売却益、インカムゲインは保有収益という違いがあります。投資対象ごとに課税区分と税率が異なり、損益通算・繰越控除・NISAなどを活用すれば大幅な節税も可能です。確定申告の手順やM&A時の売却益計算を理解し、適切なタイミングで含み益を実現することが税負担を抑え手取りを最大化する近道となります。

著者|竹川 満  マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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