キャピタルゲインの税金の計算方法と確定申告を解説
キャピタルゲインの税金はどのように計算し、いつ申告するのでしょうか。本記事ではインカムゲインとの違い、株式・投資信託・不動産・FX・仮想通貨といった資産別の税率、節税のコツまで初心者でも理解できるよう優しく解説します。
目次
▶目次ページ:第三者承継とは(M&Aのメリット・デメリット)
キャピタルゲインとは、保有している資産を売却したときに得られる価格差益のことです。土地や株式などを高く売ったことで生じる利益が該当します。原文では、土地の場合は土地の売却益、株式の場合は株式の譲渡益であると説明されています。つまり「買った値段より高く売れた部分」がキャピタルゲインです。
株式を1,000円で購入し、2,000円で売却すれば、1,000円のキャピタルゲインが生まれます。不動産であれば、取得費と譲渡費用を差し引いた売却益がキャピタルゲインです。資産の種類にかかわらず、売却という行為を経て初めて利益が確定する点が特徴です。
創業者利益は「発行額と売却額の差額」で、会社を育てて高く売ったときに得られる利益と定義されています。これは株式を高値で譲渡して得るキャピタルゲインの一形態であり、「育てて売る」点が強調されています。
インカムゲインは、資産を保有しているだけで定期的に得られる利益を指します。原文では株式の配当金や預貯金の利息が代表例として挙げられています。売却を伴わず持っているだけで入ってくる点がキャピタルゲインとの大きな違いです。
たとえば上場株を長期保有して配当を受け取る、定期預金の利息を受け取るといったケースがインカムゲインに該当します。原文によれば、インカムゲインは平均リターンが低いもののリスクも小さく、価格変動に一喜一憂せずに済むメリットがあります。
インカムゲインは長期運用が前提となるため、含み損を抱える期間が長くなる可能性があります。保有資産の流動性が下がり、環境変化への柔軟性が失われる点には注意が必要です。
キャピタルゲインはハイリスク・ハイリターンの投資手法です。短期間でも大きな利益が期待でき、確定申告を通じて損益通算ができるため、損失と相殺して税負担を抑える選択肢もあります。
投資対象によって、課税区分や税率が異なります。以下では主要な資産ごとの税金を整理します。
キャピタルゲイン
譲渡所得として申告分離課税。税率20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税含む)。
インカムゲイン
配当所得として総合課税が原則。ただし上場株式等は申告分離課税を選択可能。確定申告不要制度の選択も可。
キャピタルゲイン
株式と同様に申告分離課税で20.315%。
インカムゲイン
配当所得として株式と同様に取り扱う。
キャピタルゲイン
譲渡所得。長期保有(5年超)15.315%、短期保有(5年以下)30.630%に住民税5%が加算。
インカムゲイン
不動産所得として総合課税。総収入金額から必要経費を控除して計算。
キャピタルゲイン
為替差益を申告分離課税15.315%+住民税5%。
インカムゲイン
金利差益も同一税率で申告分離課税。
キャピタルゲイン
雑所得として総合課税。累進税率が適用され、他の所得と合算。
インカムゲイン
通常は発生しない。
インカムゲインのみ
利息は源泉分離課税15.315%+住民税5%で完結し、確定申告不可。キャピタルゲインは円建て預金では生じない。
上場・非上場にかかわらず、株式の譲渡所得は申告分離課税を選択できます。税率が一定なため、本業所得が高い個人にとっては税負担を抑える効果があります。
保有5年以下の短期譲渡は39.63%(所得税30%+復興税0.63%+住民税9%)と高税率です。5年超の長期譲渡なら20.315%で済むため、売却時期の判断が節税のカギになります。
上場株を特定口座(源泉徴収あり)で取引すると、売却時に証券会社が税金を計算し自動徴収します。これにより確定申告が不要になるケースも多いですが、早期に資金が差し引かれる点に注意しましょう。
株式を複数回に分けて購入した場合、原価は総平均法で計算します。1,000株を1,000円と2,000円で買った場合、平均単価は1,500円となり、2,000円で1,000株売却すれば譲渡益は100万円です。
個人でも法人でも、含み益の実現時期を調整することで他の所得や赤字と相殺し、税負担を軽減できます。法人の場合は広告宣伝費などの経費支出と組み合わせてPLを調整する方法もあります。
キャピタルゲインには原則として確定申告が必要ですが、次の4つのケースで申告が不要になると示されています。
証券会社が年間取引報告書を作成し、税額を自動計算・徴収してくれるため、投資初心者にとって安心です。ただし損益通算や繰越控除を行いたい場合は、あえて確定申告することで税金を取り戻せる可能性があります。
NISA口座で得た利益は非課税となり、確定申告も不要です。「NISA口座はキャピタルゲインとインカムゲイン共に非課税」という制度上のメリットがあります。
申告分離課税を選択した上場株式の配当と、同年に生じた売却損は相互に通算できます。これにより、税額の発生を抑制できるだけでなく、過払いとなっている源泉徴収税額の還付も受けられます。
それでも損失が残る場合、翌年度以降3年間繰越控除が可能です。繰越控除を受けるためには毎年確定申告が必要になる点を忘れないようにしましょう。
土地や建物の譲渡損は、同じ区分の譲渡益としか通算できません。ただし居住用財産を売却した損失は一定要件を満たせば他の所得と通算し、控除し切れない損失を3年間繰り越すことが認められています。
法人の場合、土地・株式など資産の種類に関係なくキャピタルゲインは法人所得に含まれます。本業の損益と売却益・売却損を合算して法人税が計算されるため、全社ベースで含み益と含み損の資産を把握し、決算期に合わせたタックスプランニングが重要です。
本業が赤字の年度に含み益のある資産を売却すると、売却益と赤字が相殺され課税所得が圧縮できます。広告宣伝費などの経費計上と組み合わせることで、キャッシュを残したまま法人税をコントロールする選択肢もあります。
決算直前にわざと損失を出すクロス取引を行う場合、形式的な取引とみなされると否認リスクがあります。実質的な売買であることを示すため、一定期間保有ルールを守るなど慎重な対応が求められます。
キャピタルゲインが課税対象となる個人は、毎年2月16日から3月15日までに確定申告を行います。ここでは株式・投資信託・不動産など共通する基本手順を整理します。
まず1月1日から12月31日までの売却取引ごとに、譲渡価額・取得費・手数料をまとめ、譲渡所得を算出します。株式の総平均法や不動産の特別控除額の控除漏れがないよう、証券会社の年間取引報告書や仲介会社の精算書を照合しましょう。
株式なら年間取引報告書、不動産なら売買契約書・領収書、FXなら取引報告書を添付します。e-Taxを利用すれば添付書類の省略や24時間提出が可能です。源泉徴収あり特定口座を使っている場合でも、損益通算や繰越控除を受けるためにあえて申告する選択肢があります。
株式の売却損は同年の配当や翌年以降3年間の売却益と相殺して節税できます。通算金額を確定申告書第三表に記入し、「上場株式等に係る譲渡損失の金額の計算明細書」を添付すると控除が適用されます。
投資は必ずしも利益ばかりではありません。損失を税務上有利に処理することが将来の負担軽減につながります。
申告分離課税を選択した上場株式の売却損は、同じく申告分離を選んだ上場株式等の配当とだけ通算できます。総合課税を選んだ配当や給与所得とは通算できないため、課税区分をそろえることが前提です。
土地・建物の売却損は別の不動産の譲渡益とは通算できますが、事業所得や給与所得とは相殺できません。ただし自宅売却など一定要件を満たす長期譲渡損失は例外的に他の所得と通算・繰り越しが可能です。
FXの損失は申告分離課税に分類され、同じ区分の利益のみと通算できます。暗号資産は雑所得扱いで総合課税となり、給与所得などと合算されるため、損失通算は認められません。
「含み損資産を売却して利益と相殺する」方法を紹介します。ここでは同趣旨の節税策を整理します。
年末時点で含み損のある株式を売却し損失を確定させ、同年内の売却益にぶつければ税率20.315%相当の税金を圧縮できます。翌年に再取得することでポジションを組み直す方法もありますが、30日以内に同一銘柄を買い戻すと損失が否認される恐れがあるため注意が必要です。
NISA口座内の譲渡益・配当益は非課税です。キャピタルゲイン課税をゼロにできる唯一の制度であり、年間投資枠をフル活用することで長期的な節税インパクトが大きくなります。
3年間の繰越控除期間内に将来の売却益を見込める場合は、利益確定を控除有効期限内に実行し、繰越損失と相殺して税金をゼロにできます。法人でも決算期の赤字年度に資産を売却し、所得相殺を狙うタックスプランニングが有効です。
M&Aにより株式を譲渡する場合、原文は「株主が個人か法人かを確認する」→「譲渡所得を計算」→「売却益をもとに税金を算出」という3手順を示しています。
株主が個人なら譲渡所得として申告分離課税20.315%が基本です。法人株主であれば法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税の合計実効税率(約30%前後)が適用され、個人より高くなるケースもあります。
株式取得時の資本金やM&A仲介手数料が取得費・譲渡費用に含まれます。譲渡費用を漏れなく計上すれば課税標準が下がり、結果として納税額が軽減されます。
個人の場合
売却益×20.315%
法人の場合
売却益×実効税率(地方税含む)
税負担を事前に試算し、受取額と手取り額の差を把握しておくと資金計画が立てやすくなります。
「会社価値を高め、適切なタイミングで売却する」ことが高額創業者利益につながると強調しています。
ベンチャーキャピタルから資金調達し事業拡大を図る、優秀な人材を育て企業価値を高めるなど、買い手が「この会社を買いたい」と思う要素を増やすことが株価上昇に直結します。
株式上場を実現すれば知名度と信用が高まり、株価が跳ね上がる可能性があります。ただし大量売却は株価下落や経営権喪失を招くため、売却比率を5~10%に抑えるのが一般的です。
景気や市場ニーズが高まる局面でM&Aを実行すれば、同じ事業でも高値が期待できます。競合他社の買収事例や業界の案件倍率を常時モニタリングし、売却機会を逃さない体制を整えましょう。
投資家や経営者が抱きやすい典型的な質問をいくつか取り上げ回答します。
キャピタルゲインは資産の売却益、インカムゲインは保有収益という違いがあります。投資対象ごとに課税区分と税率が異なり、損益通算・繰越控除・NISAなどを活用すれば大幅な節税も可能です。確定申告の手順やM&A時の売却益計算を理解し、適切なタイミングで含み益を実現することが税負担を抑え手取りを最大化する近道となります。
著者|竹川 満 マネージャー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事