バリュードライバー分析は企業価値向上の効果的な手法です。収益性、効率性、安全性、成長性の観点から企業を分析し、ROICツリーやM&A戦略を活用して具体的な価値向上施策を導き出します。
目次
▶目次ページ:企業価値評価(価値評価の概要)
バリュードライバー分析は、企業価値を向上させるための重要な手法です。この分析方法は、企業価値に大きな影響を与える要素を特定し、それらに焦点を当てて改善を図ることで、効率的に企業価値を高めることを目指します。
バリュードライバーとは、企業価値に影響を与える主要な要因のことを指します。具体的には、以下のような指標が挙げられます。
これらの指標は、企業の財務諸表から導き出されますが、すべての勘定科目が同等の重要性を持つわけではありません。バリュードライバー分析では、特に企業価値に大きな影響を与える要素に注目します。
企業価値の算定は通常、決算書や財務諸表などの財務資料をベースに行われます。しかし、バリュードライバー分析では、これらの中から特に重要な指標を抽出し、それらに焦点を当てて分析を行います。
この手法を用いることで、企業は自社の価値向上に最も効果的な領域を特定し、限られたリソースを効率的に活用することができます。また、バリュードライバー分析は、企業の経営戦略の立案や意思決定にも有用な情報を提供します。
バリュードライバー分析を活用して企業価値を向上させるためには、主に4つの側面に注目する必要があります。それらは「収益性」「効率性」「安全性」「成長性」です。これらの要素を分析し、改善することで、総合的な企業価値の向上を図ることができます。
収益性は企業がどれだけ利益を上げているかを示す重要な指標です。主な収益性指標には、ROA(総資産利益率)、ROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)があります。
1. ROA(総資産利益率)
2. ROE(自己資本利益率)
3. ROIC(投下資本利益率)
これらの指標を改善することで、企業の収益性を高め、結果として企業価値の向上につながります。
効率性は、企業が保有する資産をどれだけ効率的に活用して収益を上げているかを評価する指標です。主な効率性指標には、総資産回転率、棚卸資産回転率・棚卸資産回転日数があります。
1. 総資産回転率
2. 棚卸資産回転率・棚卸資産回転日数
これらの指標を改善することで、資産の効率的な活用が可能となり、企業価値の向上につながります。
安全性は、企業の経営の安定度を示す指標です。高い安全性は、倒産リスクの低減につながります。主な安全性指標には、自己資本比率とインタレスト・カバレッジ・レシオがあります。
1. 自己資本比率
2. インタレスト・カバレッジ・レシオ
これらの指標を改善することで、企業の財務的な安定性が高まり、長期的な企業価値の向上につながります。
成長性は、企業の過去から現在に至るまでの成長度合いを評価する指標です。主な成長性指標には、売上高増加率、営業利益増加率、総資本増加率があります。
また、複数年度の平均成長率を評価する場合は、CAGR(年平均成長率)を用います。
これらの指標を改善することで、企業の持続的な成長が可能となり、長期的な企業価値の向上につながります。
バリュードライバー分析を効果的に活用することで、企業価値を高めることができます。ここでは、具体的な分析手法と戦略選択について解説します。
ROICツリーは、ROIC(投下資本利益率)を細分化して構築されたツリー構造のことです。この手法を用いることで、事業構造を明確化し、企業価値向上のための具体的な施策を見出すことができます。
ROICツリーの基本的な構造は以下の通りです。
この分解を行うことで、ROICを向上させるための具体的なバリュードライバーを特定し、優先順位を決定することができます。
企業価値を向上させる方法として、M&A(合併・買収)戦略の選択も有効な手段の一つです。シナジー効果が期待できる他企業との統合により、事業拡大や新規事業への展開が容易になる可能性があります。
M&A戦略を検討する際は、以下の点に注意が必要です。
M&Aにはさまざまな手法が存在するため、自社の目的に適した方法を選択することが重要です。
バリュードライバー分析は、企業価値向上のための効果的な手法です。収益性、効率性、安全性、成長性の観点から企業を分析し、ROICツリーの活用やM&A戦略の検討を通じて、具体的な価値向上施策を導き出すことができます。この手法を適切に活用することで、企業は持続的な成長と価値創造を実現することが可能となります。
著者|竹川 満 マネージャー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事