会社売却にかかる期間は?M&Aのスケジュールと短縮策を解説
会社売却にかかる期間は6ヶ月〜1年程度が一つの目安です。M&Aの準備から買い手探し、基本合意、デューデリジェンス、最終契約、クロージングまでの工程別スケジュールを解説。期間が長引く原因と短縮策、引退希望時期から逆算する方法、事前に整えるべき資料や税務上の注意点も紹介します。
目次:

▶目次ページ:M&Aの流れ(最終契約/クロージング)
会社売却にかかる期間は、中小企業のM&A(合併・買収)では6ヶ月〜1年程度が一つの目安です。ただし、これはすべての会社に当てはまる平均値ではありません。買い手候補が決まっている場合は3〜6ヶ月程度で進むこともあれば、相手探しや条件交渉が難航して1年以上かかることもあります。
会社売却を考える経営者にとって重要なのは、単に早く成約することではなく、希望する引退時期までに必要な手続を終えられるかどうかです。
この記事では、M&Aの工程別スケジュール、期間が長引く原因と短縮策、引退時期から逆算した準備の進め方を解説します。
中小企業の会社売却では、検討開始から買い手探し、条件交渉、最終契約、クロージングまでに6ヶ月〜1年程度を想定しておくと、余裕を持って準備しやすくなります。
クロージングとは、売買代金の決済や株式の移転などを行い、会社売却を実行する手続です。
ただし、6ヶ月〜1年という期間は、個別案件を計画するための実務上の目安であり、公的統計によってすべての中小企業の平均期間として確認された数値ではありません。
実際に必要な期間は、買い手候補の有無、会社の財務状況、株主構成、業種、許認可、売却条件などによって変わります。
例えば、買い手候補がすでに決まっており、決算書や契約書などの資料も整っていれば、候補先探索の時間を短縮できます。一方、株式が親族間に分散している会社や、税務・労務上の問題が残っている会社では、事前調整に時間が必要です。
また、最終契約の締結日とクロージング日は必ずしも同じではありません。契約後に金融機関との調整や必要な承諾手続が残る場合もあります。
そのため、売却スケジュールは契約締結日ではなく、実際に会社を引き継ぐクロージング日を基準に考えることが大切です。
会社売却は、準備、専門家の選定、買い手探し、条件交渉、買収監査、最終契約、クロージングという流れで進みます。
各工程には一定の時間が必要ですが、資料整理と専門家選定など、並行して進められる作業もあります。
以下は、中小企業の株式譲渡を想定した計画用の目安です。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」で示される一般的な手続の流れを参考に、現行記事の期間設定を整理したものであり、各工程の平均所要期間を示す公的統計ではありません。
| 工程 | 計画上の期間の目安 | 主な作業 |
| 売却準備 | 1〜2ヶ月程度 | 売却目的・希望条件の整理、資料収集 |
| 仲介会社・FAの選定 | 数週間〜1ヶ月程度 | 支援内容、費用、契約条件の確認 |
| 買い手候補の探索 | 2〜4ヶ月程度 | 候補先への打診、秘密保持契約、資料開示 |
| トップ面談 | 数週間〜1ヶ月程度 | 経営方針、買収目的、引継ぎ条件の確認 |
| 意向表明・基本合意 | 数週間〜1ヶ月程度 | 価格や主要条件、独占交渉期間の調整 |
| デューデリジェンス | 1〜2ヶ月程度 | 財務、税務、法務、労務などの調査 |
| 最終条件交渉・契約 | 数週間〜2ヶ月程度 | 価格調整、契約条項の確定 |
| クロージング | 数週間〜1ヶ月程度 | 決済、株式移転、必要な承諾手続 |
| 成約後の引継ぎ | 数ヶ月〜1年以上 | 経営・業務・人事などの引継ぎと統合 |
この表の期間を単純に合計しても、会社売却全体の期間にはなりません。工程が重なることに加え、買い手が見つかるまでの時間や、調査後の追加対応には大きな差があるためです。
なお、成約後の引継ぎは、通常、クロージングまでの期間には含めません。ただし、経営者が完全に引退できる時期を考える場合には、引継ぎ期間も含めた計画が必要です。
参考:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(2024年8月公表)
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html
最初の準備では、なぜ会社を売却するのか、どの条件を優先するのかを整理します。
例えば、後継者不在の解決、従業員の雇用継続、個人保証の整理、引退後の生活資金の確保などが考えられます。
譲渡価格だけでなく、社名の継続、役員退任時期、取引先への説明時期なども確認しておきます。
同時に、M&A仲介会社やFA(フィナンシャル・アドバイザー)の選定を進めます。仲介会社は売り手と買い手の間に立って支援するのに対し、FAは原則として依頼した一方の当事者を支援します。
支援機関を選ぶ際は、手数料だけでなく、提供業務、契約期間、解約条件、秘密保持、利益相反への対応なども確認します。
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも、仲介者・FAの業務内容や手数料、契約上の重要事項を確認することが重視されています。
この段階で資料を整えておけば、買い手候補が現れた後の確認作業を減らせます。
買い手候補の探索では、同業他社、隣接業種、地域企業、投資会社などから、対象会社に関心を持つ相手を探します。
一般的には、最初に社名を伏せたノンネームシートを使って関心を確認します。その後、秘密保持契約を結び、必要な相手に会社名や詳細情報を開示します。
詳細資料として使うIM(企業概要書)には、事業内容、財務状況、強み、課題、希望条件などをまとめます。
買い手候補が関心を示した場合には、経営者同士のトップ面談を行います。
トップ面談では、価格だけでなく、買収目的、従業員の処遇、経営方針、売却後に前社長へ期待する役割などを確認します。
候補先が多ければ必ず早く決まるわけではありません。条件が合わない相手との面談を繰り返すと、かえって時間がかかります。
候補先を選ぶ際は、提示価格とともに、資金調達能力や意思決定の速さ、買収後の運営方針を見極める必要があります。
買い手が具体的な買収意思を示す段階では、意向表明書が提出されることがあります。
意向表明書には、希望する譲渡価格、買収方法、今後のスケジュール、資金調達の見通しなどが示されます。
その後、売り手と買い手が主要条件について基本合意書を締結する場合があります。
基本合意書では、価格の目安、今後の調査内容、独占交渉期間などを定めます。
独占交渉とは、一定期間、特定の買い手を優先して交渉することです。
売り手にとっては、他の買い手との交渉機会が制限されるため、独占交渉の期間や解除条件を確認することが重要です。
また、基本合意は通常、会社売却の完了を意味しません。後の調査結果によって価格や条件が変更される可能性があります。
この段階で、価格以外の重要条件もできるだけ具体化しておくと、最終契約に向けた手戻りを減らせます。
デューデリジェンス(DD)とは、買い手が対象会社の財務、税務、法務、労務、事業などを詳しく調べる手続です。
中小企業では、未回収債権、役員貸付金、未払残業代、許認可、取引契約、親族間取引、経営者の個人保証などが確認対象になります。
調査範囲が限定的で資料が整っていれば、比較的短期間で進む場合があります。
一方、契約書が見つからない、過去の税務処理を説明できない、簿外債務の疑いがあるといった場合は、追加調査が必要です。
資料の提出が遅れること自体も、買い手に不安を与えます。
重要なのは、問題がまったくない会社に見せることではありません。確認できている問題を整理し、必要な資料と説明を用意しておくことです。
デューデリジェンスが終わると、調査結果を踏まえて最終条件を交渉します。
主な論点は、譲渡価格、役員退職金、借入金、運転資金、表明保証、補償条項、競業避止義務などです。
表明保証とは、対象会社の財務状況や契約関係などについて、売り手が一定の事実を買い手に保証する契約条項です。
調査で問題が見つかった場合は、価格調整だけでなく、契約条項やクロージングまでに実施する対応によって解決することもあります。
株式譲渡では、最終契約として株式譲渡契約書(SPA)を締結するのが一般的です。
最終契約後は、契約で定めた条件を満たしたうえで、代金決済や株式の移転などを実施します。
例えば、譲渡制限株式の承認手続、株主名簿の書換え、役員変更、金融機関との調整、個人保証の整理などが必要になる場合があります。
なお、株式譲渡と事業譲渡では必要な手続が異なります。事業譲渡では、資産、契約、従業員などを個別に引き継ぐため、関係者の承諾や契約の切替えに時間がかかることがあります。
最終契約を締結できても、必要な手続が終わらなければ予定日にクロージングできない可能性があります。
そのため、契約締結前から、クロージングに必要な書類、承諾、担当者、実施期限を確認しておくことが大切です。
M&Aが長引く原因は、買い手が見つからないことだけではありません。
実際には、資料不足、株主間の意見の違い、税務・法務上の問題、価格交渉などによって、途中でスケジュールが止まることがあります。
主な原因と対応策を整理すると、次のとおりです。
| 長引く原因 | 起こりやすい問題 | 事前にできる短縮策 |
| 資料不足 | 買い手からの追加質問や調査が増える | 決算書、契約書、株主名簿などを整理する |
| 株主の分散 | 売却への同意形成に時間がかかる | 株主構成と必要な承認手続を早めに確認する |
| 税務・法務上の問題 | 追加調査や契約条件の変更が必要になる | 専門家と問題点を洗い出し、対応方針を決める |
| 価格交渉の難航 | 売り手と買い手の希望価格が折り合わない | 価格の根拠と譲れない条件を整理する |
| 買い手の資金調達・社内決裁 | 基本合意後に手続が進まなくなる | 資金調達の見通しと決裁予定を確認する |
| 個人保証や担保の整理 | 金融機関との調整が長引く | 保証・担保の状況を把握し、解除や変更の方法を検討する |
資料不足は、準備によって対応しやすい遅延要因の一つです。
決算書や税務申告書だけでなく、取引先との契約書、株主名簿、議事録、就業規則、許認可資料なども確認対象になります。
買い手から質問が来るたびに資料を探していると、調査の時間が長くなります。
まずは資料の一覧を作り、保管場所、更新日、担当者を整理しておきましょう。
不足する書類がある場合は、代替資料で説明できるか、再作成や確認が必要かを専門家と相談します。
また、買い手からの質問と回答を一覧で管理すれば、同じ質問への重複対応を減らせます。
オーナー経営者がすべての株式を保有している会社と、親族や役員などに株式が分散している会社では、売却に必要な調整が異なります。
株主間で売却価格や売却時期について意見が分かれると、基本合意後に交渉が止まることもあります。
そのため、株主名簿を確認し、誰がどの株式を保有しているのか、必要な同意や承認をどのように得るのかを早めに整理します。
また、中小企業の会社売却では、経営者が会社の借入金を個人保証している場合があります。
株式を譲渡しても、個人保証が当然に解除されるわけではありません。
買い手や金融機関との調整が必要になるため、保証契約の内容、解除・変更の条件、対応期限を確認することが重要です。
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも、経営者保証が想定どおりに移行・解除されないトラブルへの注意が示されています。
参考:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(2024年8月公表)
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html
会社売却では、売り手と買い手の希望価格が一致しないことがあります。
売り手は長年育ててきた事業の価値を重視しますが、買い手は収益力、借入金、将来の投資負担、買収後のリスクなどを踏まえて価格を判断します。
希望価格だけを伝えても、その根拠が説明できなければ交渉は進みにくくなります。
事前に会社の財務状況や収益力を整理し、希望価格の根拠を確認しておくことが大切です。
また、譲渡価格、従業員の雇用維持、社名の継続、経営者の退任時期などについて、譲れない条件と交渉できる条件を分けておきます。
すべての条件を優先すると合意が難しくなるため、売却目的に照らして判断することが重要です。
M&Aの交渉中も、対象会社の事業は続きます。
経営者が資料対応や面談に追われ、営業活動、資金繰り、人材管理などがおろそかになると、業績が悪化する可能性があります。
業績が悪化すれば、買い手から価格の見直しや追加調査を求められることもあります。
そのため、経営者は重要な意思決定に集中し、資料整理や日程管理などは社内担当者や専門家と分担することが望ましいです。
また、会社売却の情報が成約前に従業員や取引先へ不適切に伝わると、退職や取引関係への影響が生じるおそれがあります。
資料の共有先、面談参加者、メールの送信先などを管理し、情報を開示する時期と方法を決めておく必要があります。
短縮できるのは、主に資料整理、日程調整、質問回答の管理といった作業です。重要契約の確認や税務リスクの調査、個人保証の整理まで省略することは避けましょう。
会社売却を考える際は、「いつ売却活動を始めるか」よりも「いつまでに経営を引き継ぎたいか」を先に決めると、必要な準備が見えやすくなります。
例えば、2028年3月末までに会社売却を完了し、経営者としての役割を引き継ぎたい場合を考えます。
以下は、買い手候補がまだ決まっていない中小企業を想定した設例です。実際の案件の平均期間や成約実績を示すものではありません。
| 時期 | 主な工程 | 経営者が確認すること |
| 2027年4〜5月 | 売却準備・専門家選定 | 希望条件、株主構成、資料の整備 |
| 2027年6〜9月 | 買い手候補の探索・面談 | 候補先の経営方針、資金力、雇用方針 |
| 2027年10〜11月 | 意向表明・基本合意 | 価格、独占交渉期間、調査方針 |
| 2027年12月〜2028年1月 | デューデリジェンス | 追加資料への対応、問題点の整理 |
| 2028年1〜2月 | 最終条件交渉・契約 | 譲渡価格、保証、退任条件 |
| 2028年3月 | クロージング | 代金決済、株式移転、必要な手続 |
| 2028年4月以降 | 成約後の引継ぎ | 取引先対応、業務移管、経営体制の安定化 |
この例では、売却完了の約1年前から本格的な準備を始めています。
ただし、2028年3月に必ず成約できるという意味ではありません。買い手候補が見つからない場合や、デューデリジェンスで重要な問題が判明した場合は、予定を見直す必要があります。
会社売却が完了しても、前社長がすぐに経営から離れられるとは限りません。
買い手から、取引先の紹介、従業員への説明、営業ノウハウの引継ぎなどを一定期間求められる場合があります。
そのため、完全引退を希望する日と、株式譲渡を実行する日を分けて考えることが重要です。
例えば、2028年3月末に完全引退したいのであれば、それ以前にクロージングを行い、必要な引継ぎを終える計画も検討します。
引継ぎ期間は、会社の規模や経営者への依存度、買い手の運営体制によって異なります。
売却後にどの程度関与するのか、報酬や役割はどうするのか、いつ退任するのかを交渉段階で明確にしておくと、引退後の予定を立てやすくなります。
会社売却では、譲渡価格だけでなく、税金を差し引いた手取り額を確認する必要があります。
個人株主が株式を売却する場合、株式の譲渡益に対する課税が問題になります。一方、事業譲渡では、会社側に生じる税負担などを含めて検討する必要があり、同じ売却価格でも手取り額が異なることがあります。
また、所得が極めて高い場合は、売却する年によって税負担が変わる可能性があります。
財務省の「令和8年度税制改正」の説明資料では、2027年分の所得から、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置について、特別控除額を3億3,000万円から1億6,500万円へ引き下げ、追加負担の判定に用いる割合を22.5%から30%へ引き上げる見直しが示されています。
この措置は、株式の譲渡益だけでなく、対象となる他の所得も含めて判定するものです。売却価格が一定額を超えれば必ず追加課税されるという仕組みではありません。
高額な株式譲渡を予定している場合は、売却する年、取得費、他の所得、適用される税制を踏まえて、税理士などの専門家に手取り額を試算してもらうことが大切です。
税負担だけを理由に売却を急ぐと、買い手選びや契約条件の確認が不十分になるおそれがあります。希望する売却時期と税務上の影響をあわせて検討しましょう。
参考:財務省「令和8年度税制改正」(2026年公表)「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置の見直し」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei2026_pdf/zeisei26_01.pdf
M&Aのスケジュールを安定させるには、買い手候補が見つかる前から必要資料を整えておくことが重要です。
資料が整理されていれば、買い手への説明がしやすくなり、デューデリジェンスでの追加確認にも対応しやすくなります。
まず、会社の収益力や財務状況を説明できる資料を準備します。
主な資料は、決算書、税務申告書、月次試算表、借入金明細、売掛金・買掛金の明細、固定資産台帳などです。
直近の決算だけでなく、過去からの業績推移や、足元の売上・利益の状況を説明できることが望ましいです。
役員貸付金、役員借入金、親族との取引などがある場合は、内容と処理方針を整理しておきます。
また、事業計画書があれば、今後の収益見通しを買い手に説明する材料になります。
株主名簿、定款、登記事項証明書、株主総会議事録、主要取引先との契約書、賃貸借契約書、許認可関係資料なども確認します。
特に、株式譲渡に必要な承認や、契約上の支配権変更に関する条項がないかを調べておくことが重要です。
許認可が事業継続に欠かせない業種では、買収方法によって必要な手続が変わる場合があります。
契約や許認可の確認を後回しにすると、最終契約の直前になって追加手続が必要になることがあります。
そのため、専門家とともに、事前に確認すべき項目を整理しておきましょう。
組織図、従業員数、就業規則、賃金規程、雇用契約書、退職金規程なども、買い手が確認する重要な資料です。
未払残業代や退職金の問題がある場合は、調査や条件交渉に影響することがあります。
また、中小企業では、経営者個人に営業先との関係や技術ノウハウが集中していることがあります。
その場合、主要取引先の担当者、業務の進め方、重要な技術やノウハウ、社内の意思決定方法などを整理しておくと、買収後の引継ぎを計画しやすくなります。
資料はすべてを最初から買い手へ公開する必要はありません。秘密保持契約や交渉段階に応じて、開示する範囲を管理することが大切です。
M&Aでは、売り手と買い手で準備すべき事項が異なります。
売り手は、希望する価格や引退時期、従業員・取引先への影響を重視します。
一方、買い手は、資金調達、買収後の収益性、リスク、経営体制などを確認します。
両者の準備状況に差があると、基本合意後に交渉が長引くことがあります。
売り手側では、まず誰が売却の最終判断をするのかを明確にします。
株主が複数いる場合は、必要な承認や同意を得るための段取りを考えます。
また、譲渡価格だけでなく、税金を差し引いた手取り額、個人保証、役員退職金、引退後の生活設計なども検討します。
従業員の雇用継続や取引先への説明時期など、価格以外の重要条件についても優先順位を決めておきます。
これらを準備段階で整理しておけば、買い手から条件が提示された際に判断しやすくなります。
買い手側では、買収資金の確保、社内決裁、デューデリジェンスの実施体制を早めに整える必要があります。
意向表明後に資金調達の見通しが立たないと、売り手との信頼関係が損なわれ、交渉が長引く可能性があります。
また、買収後に誰が経営を担うのか、経理や人事をどのように引き継ぐのか、主要取引先へ誰が説明するのかを検討します。
M&A後の統合プロセスをPMIといいます。PMIでは、経営方針、業務、人事、会計、ITシステムなどの統合を進めます。
中小企業では、前社長の信用や経験が事業価値を支えていることもあるため、引継ぎ体制は買収条件の判断にも関係します。
PMIは成約後に初めて考えるのではなく、デューデリジェンスの段階から準備することが望ましいです。
参考:中小企業庁「中小PMIガイドライン」(2022年3月16日公表)
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/index.html
会社売却を検討し始めた段階で専門家に相談すると、売却までの期間に影響する問題を早めに把握できます。
例えば、株主構成、個人保証、税務上の論点、許認可、必要資料などを確認することで、買い手候補が見つかった後の手戻りを減らせる可能性があります。
また、仲介会社やFAだけでなく、税理士、公認会計士、弁護士などの役割分担を決めておくことも重要です。
相談する際には、単に「何ヶ月で売れますか」と尋ねるだけでなく、希望するクロージング日、完全引退したい時期、譲れない条件を伝えましょう。
そのうえで、工程ごとの予定、担当者、必要資料、遅延する可能性がある事項を確認します。
M&Aの期間は、早く始めれば必ず短くなるものではありません。しかし、検討初期から課題を把握し、優先順位をつけて準備することで、予定外の遅延を減らしやすくなります。
中小企業の会社売却にかかる期間は6ヶ月〜1年程度が一つの目安ですが、買い手探し、資料準備、株主間の調整、デューデリジェンス、最終条件交渉などによって大きく変わります。希望する時期までに売却を進めるには、クロージング日と完全引退日を分けて考え、必要な工程を逆算することが重要です。まずは希望条件、株主構成、決算書などの資料を整理し、専門家とともに無理のないスケジュールを検討しましょう。
著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事
編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人