事業承継コンサルティングの相談先と費用・選び方を解説
事業承継コンサルティングの支援内容、相談先、費用相場、選び方を解説します。親族内承継・社内承継・M&Aの判断、自社株や税金、後継者育成の注意点まで整理します。
目次

▶目次ページ:事業承継とは(事業承継の相談先・費用)
事業承継コンサルティングとは、会社の経営権、株式、事業用資産、人材、取引関係を次の世代へ引き継ぐための支援です。単に「誰に継がせるか」を決めるだけではありません。
税金も関係します。株主構成も見ます。後継者の育成や、M&A(合併・買収)による第三者承継まで含めて、会社の将来をどう残すかを整理する支援です。
民間調査では、後継者不在率が約50%とされることもあります。経営者の年齢が上がる一方で、親族が会社を継がない、従業員に株式を買い取る資金がない、という相談は珍しくありません。早めに外部の専門家へ相談する意義は、選択肢が残っているうちに比較できる点にあります。
事業承継コンサルティングの主な支援は、大きく4つに分かれます。
会社の現状を確認し、3年から5年先を見据えて、いつ、誰に、何を、どの順番で引き継ぐかを整理します。事業承継計画は、経営者の頭の中にある考えを、後継者、親族、金融機関、幹部社員に説明できる形にする作業です。
計画がないまま進めると、株式移転、役職変更、金融機関対応、取引先への説明が後手に回ります。M&A実務でも、準備不足の会社は買い手企業からの評価が下がりやすいものです。
自社株の評価額を試算し、相続税や贈与税の負担を確認します。自社株とは、経営者や親族が持つ自社の株式のことです。非上場会社では市場価格がないため、税務上の評価やM&Aでの企業価値を分けて考える必要があります。
事業承継税制の利用、生前贈与、遺言、種類株式、株主整理などを検討する場面もあります。ただし、税務申告や具体的な税務判断まで必要な場合は、税理士などの専門家の関与が欠かせません。
後継者が決まっていても、すぐに社長業を任せられるとは限りません。営業、財務、人事、金融機関対応、幹部社員との関係づくりなど、経営者として身に付けるべきことは多くあります。
コンサルタントは、後継者の育成計画や幹部チームの役割分担を整理します。先代経営者がいつまで関与するか、どの権限をいつ渡すかも重要です。ここが曖昧だと、社内に「結局どちらが決めるのか」という迷いが残ります。
親族や従業員に後継者がいない場合、M&Aによる第三者承継が選択肢になります。買い手企業の探索、企業価値の算定、条件交渉、デューデリジェンスへの対応、契約、PMI(M&A後の統合プロセス)まで、幅広い実務が発生します。
M&Aでは、譲渡価格だけでなく、従業員の雇用、取引先との関係、個人保証、金融機関借入、社長の引退時期を同時に確認します。会社売却を急ぐほど、条件交渉で不利になりやすい点には注意が必要です。
事業承継には、親族内承継、社内承継、M&Aによる第三者承継の3つがあります。同じ事業承継でも、選ぶ方法によって、相談すべき専門家や検討すべき論点は変わります。
親族内承継は、経営者の子や親族に会社を引き継ぐ方法です。会社の文化を残しやすく、取引先や従業員にも説明しやすい一方で、自社株の移転と相続税・贈与税の問題が大きくなります。
特に、株価が高い会社では、後継者が株式を引き継ぐだけで多額の税負担が生じることがあります。納税資金をどう確保するか、後継者以外の相続人にどう配慮するかも重要です。兄弟姉妹の間で経営権が分散すると、将来の意思決定に支障が出ることもあります。
社内承継は、役員や従業員に会社を引き継ぐ方法です。事業内容をよく知る人に任せられるため、現場の混乱を抑えやすいメリットがあります。
一方で、従業員が自社株を買い取る資金を持っていないケースが多くあります。金融機関からの借入、役員報酬での分割取得、持株会社の活用などを検討することもありますが、無理な資金計画は後継者の負担になります。
また、従業員が優秀な管理職であっても、経営者として資金繰りや人事判断を担えるとは限りません。社内承継では、教育と権限移譲の計画が欠かせないのです。
M&Aによる第三者承継は、外部の買い手企業に会社や事業を引き継ぐ方法です。後継者がいない会社でも、従業員の雇用や取引先との関係を残せる可能性があります。
ただし、買い手企業は会社の将来性、利益水準、借入金、簿外債務、労務リスク、株主関係を細かく確認します。経営者が「売れる会社かどうか」を自己判断するのは難しいものです。
第三者承継を視野に入れる場合は、譲渡価格の目安、売却後の社長の関与期間、個人保証の解除可能性、従業員への説明時期を早めに整理しておきます。M&Aは相手探しに時間がかかるため、後継者不在が明確になってから動くより、候補がいない段階で相談を始める方が選択肢を確保しやすくなります。
事業承継コンサルティングの相談先は多くあります。大切なのは、有名な会社を選ぶことではなく、自社の悩みに合う相談先を選ぶことです。
税金が不安なのか。後継者がいないのか。従業員に継がせたいのか。会社売却も視野に入れているのか。ここを間違えると、相談しても解決が進みません。
親族内承継や自社株対策では、税理士法人や会計事務所が有力な相談先です。自社株評価、相続税・贈与税、事業承継税制、役員退職金、持株会社など、税務・会計を踏まえた検討が必要になるためです。
ただし、すべての会計事務所がM&Aや後継者育成に詳しいわけではありません。顧問税理士に相談する場合でも、M&Aや事業承継税制の実務経験がどの程度あるかを確認するとよいでしょう。
総合経営コンサルティング会社は、承継後の事業戦略、組織改革、後継者育成、幹部育成などに強みを持つことがあります。後継者は決まっているものの、次世代の経営体制に不安がある会社に向いています。
一方で、税務申告や法的手続まで一社で完結できるとは限りません。相続や株式移転を伴う場合は、税理士、弁護士、司法書士などとの連携体制を確認しておく必要があります。
事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業庁が全国47都道府県に設置する公的相談窓口です。初期段階で「何から考えればよいか分からない」という経営者にとって、利用しやすい相談先といえます。
公的機関のため、中立的な立場で相談しやすい点が特徴です。ただし、個別の税務対策、会社売却の条件交渉、買い手候補との具体的な交渉まで深く支援してもらう場合は、別途専門家の関与が必要になることがあります。
取引銀行、信用金庫、商工会議所も、事業承継の相談先になります。地域企業の状況を知っており、資金調達や地域内の専門家紹介につながることがあります。
ただし、金融機関は融資先としての立場もあります。借入金、個人保証、担保の扱いについては、金融機関の意向と経営者の希望が必ず一致するとは限りません。会社売却を含めて検討する場合は、複数の相談先から意見を聞くことが大切です。
事業承継コンサルティングの費用は、依頼内容によって大きく変わります。同じ「事業承継支援」でも、自社株評価だけを依頼する場合と、後継者育成やM&Aまで依頼する場合では、金額がまったく違います。
費用を見るときは、金額だけでなく、何が含まれていて、何が別料金なのかを確認しましょう。
自社株評価、相続税の概算、事業承継計画の作成など、個別業務ごとに費用が発生する形です。一般的な目安として、自社株評価は10万円から30万円程度、事業承継計画の策定は20万円から300万円程度とされることがあります。
ただし、会社規模、株主数、不動産の有無、グループ会社の有無、過去の株式移動の複雑さによって変わります。安い見積りでも、株主整理や税務シミュレーションが含まれていない場合があります。
後継者育成、経営会議への参加、幹部面談、組織改革など、中長期で伴走する支援では月額報酬制が使われることがあります。月額数万円から数十万円の契約もあれば、全社的な経営改善や後継者教育を含む場合は、月額30万円から100万円規模になることもあります。
この形は、短期間で結論を出す相談より、数年かけて会社を引き継ぐケースに向いています。毎月の面談だけでなく、資料作成、社内調整、金融機関対応、後継者への助言が含まれるかを見ておきましょう。
M&A支援では、成約時に報酬が発生する成功報酬制が多く使われます。報酬計算では、取引金額に応じて料率が変わるレーマン方式が一般的です。レーマン方式とは、譲渡価格などの基準額が大きくなるほど、段階的に手数料率が下がる計算方法です。
ここで注意したいのは、計算基準です。株式価値を基準にするのか、負債を含めた総資産や企業価値を基準にするのかで、報酬額が変わることがあります。最低報酬、着手金、中間金、月額報酬、成約しなかった場合の費用も契約前に確認します。
事業承継やM&Aに関連して、補助金を検討する会社もあります。ただし、補助金は公募時期、対象経費、申請要件、採択後の報告義務があり、希望すれば必ず使える制度ではありません。
補助金を前提に専門家を選ぶより、まずは承継方針、支援範囲、費用対効果を確認することが先です。補助金が使える場合は、申請作業と実際の事業承継スケジュールが合うかも確認しましょう。
事業承継コンサルティング会社を選ぶときは、知名度や資料の見栄えだけで決めない方がよいです。事業承継は、会社の将来、家族関係、従業員の生活、取引先との信用に関わります。
失敗しないためには、専門性、実行支援、報酬の透明性を見ます。
親族内承継で税金が不安なら、自社株評価や相続税・贈与税に強い専門家が向いています。従業員承継なら、株式買取資金、役員体制、金融機関対応を整理できる支援が必要です。後継者がいないなら、M&Aに強い専門家へ早めに相談する方が現実的です。
「事業承継に対応できます」という言葉だけで判断せず、自社と同じような規模、業種、株主構成、後継者不在のケースを扱った経験があるかを確認しましょう。
事業承継は、助言だけでは進まないことがあります。経営者が忙しく、資料収集が止まる。後継者との面談が進まない。株主への説明を後回しにする。M&A実務では、ここで判断が止まることがあります。
良い支援者は、論点を整理するだけでなく、次に誰が何をするかを明確にします。社内資料の整理、金融機関への説明準備、後継者との面談設計、買い手候補への説明資料作成まで、どこまで対応するかを確認しておきましょう。
報酬体系が不明確なまま契約すると、後から追加費用で揉めることがあります。初期相談は無料でも、株価算定、計画書作成、税務シミュレーション、M&A候補先探索、契約書レビューが別料金になる場合があります。
見積書では、業務範囲、成果物、支援期間、追加料金の条件、途中解約の扱いを確認します。M&A支援では、成功報酬の基準額、最低報酬、成約しなかった場合の費用を必ず見てください。
契約前には、少なくとも次の点を確認します。
・自社と近い業種や規模の支援経験があるか
・税務、法務、M&Aのどこまで自社で対応できるか
・税理士、弁護士、司法書士などとの連携体制があるか
・後継者育成や社内調整まで支援するか
・報酬の対象業務と追加費用の条件は明確か
・M&Aの場合、買い手候補の探索方法と情報管理はどうするか
回答が曖昧な場合は、すぐに契約せず、他の相談先と比較した方が安全です。
事業承継コンサルティングは、相談前の準備で質が変わります。完璧な資料を用意する必要はありませんが、経営者の希望と会社の現状がある程度整理されていると、初回相談の精度が上がります。
親族、役員、従業員の中に後継者候補がいるかを整理します。候補者がいる場合は、本人の意思、年齢、経験、株式取得資金、家族の理解も確認します。
候補者がいない場合は、M&Aを含めて検討する時期です。廃業と比べて、従業員や取引先を残せる可能性があるためです。ただし、赤字、借入過多、株主不一致などがある場合は、早めの対策が必要になります。
誰が何株持っているか、過去に親族へ株式を渡したことがあるか、名義株がないかを確認します。名義株とは、実質的な所有者と名義上の株主が異なる可能性がある株式のことです。
株主構成が複雑なままでは、親族内承継でもM&Aでも手続が止まることがあります。特に、少数株主が複数いる会社や、相続で株式が分散している会社は注意が必要です。
直近3期分の決算書、試算表、借入金の一覧、担保や個人保証の有無を確認します。M&Aを検討する場合、買い手企業は利益だけでなく、借入金、役員貸付金、未払残業代、簿外債務の可能性も見ます。
親族内承継や社内承継でも、会社の資金繰りが弱いと後継者が引き継ぎに不安を感じます。承継前に財務を整えることは、後継者への負担を減らす意味でも重要です。
事業承継では、経営者自身の希望が曖昧なまま相談が始まることがあります。会社を残したいのか、株式を売却したいのか、社長として何年残るつもりか、従業員の雇用をどこまで重視するかを言葉にしておきましょう。
「家族には継がせたくないが、従業員には迷惑をかけたくない」。こういう本音は珍しくありません。専門家に相談する前に、優先順位を整理しておくと、親族内承継、社内承継、M&Aのどれが現実的か判断しやすくなります。
初回相談では、次の項目を伝えられると話が進みやすくなります。
・経営者の年齢と引退希望時期
・後継者候補の有無
・株主構成
・直近の売上、利益、借入金
・従業員数と主要取引先
・親族内承継、社内承継、M&Aの希望度合い
・税金、後継者育成、会社売却など最も解決したい課題
すべてそろっていなくても構いません。大切なのは、相談を先送りしないことです。事業承継は、時間があるほど選択肢を比較できます。
事業承継コンサルティングは、後継者選び、自社株、税金、M&Aの判断を同時に整理するための支援です。重要なのは、有名さではなく自社の課題に合う専門性と実行支援の範囲を見極めること。候補者の有無、株主構成、希望する承継時期を整理し、早い段階で複数の相談先を比較すると、親族内承継にも第三者承継にも備えやすくなります。
著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事
編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人