事業承継コンサルティングの概要、主なサービス内容、依頼するメリット、費用など、重要なポイントを詳しく解説します。円滑な事業承継を実現するための情報が満載です。
目次
事業承継コンサルティングとは、企業の事業承継を円滑に進めるための専門的なアドバイスやサポートを提供するサービスです。近年、経営者の高齢化に伴い、特に中小企業における事業承継の需要が増加しています。この複雑なプロセスを戦略的に進めるには、専門家のサポートが不可欠となっています。
事業承継とは、先代経営者から次世代の経営者へ、会社の経営権を引き継ぐプロセスを指します。このプロセスには、主に以下の3つの形態があります。
1. 親族内承継:経営者の子や孫などの親族が後継者となる形態
2. 社内承継:自社の役員や従業員から後継者を選出する形態
3. M&Aを活用した外部承継:他社や外部の個人に事業を譲渡する形態
それぞれの形態には特徴があり、企業の状況や目的に応じて最適な方法を選択する必要があります。
事業承継コンサルティングには、法律で定められた独占資格はありません。しかし、税務、法務、会計など、幅広い専門知識が要求されるため、多くの場合、以下のような専門家が事業承継コンサルタントとして活動しています。
• 税理士
• 弁護士
• 司法書士
• 公認会計士
また、近年では以下のような民間資格の保有者も増加しています。
• 事業承継アドバイザー
• 事業承継士
企業は自社のニーズに合わせて、適切な専門家を選ぶことが重要です。例えば、具体的な手続や税務対策が必要な場合は税理士や弁護士が適しており、全般的なアドバイスを求める場合は民間資格を持つコンサルタントが適しているかもしれません。専門家の選定は、事業承継の成功に大きく影響する重要な決定の一つです。
▶目次ページ:事業承継とは(事業承継の相談先・費用)
事業承継コンサルティングでは、企業の円滑な事業承継を支援するためのさまざまなサービスを提供しています。主要なサービスには以下のようなものがあります。
事業承継を成功させるためには、綿密な計画と戦略が不可欠です。事業承継コンサルタントは、以下のような課題に対して長期的な計画を策定し、効率的に進めるためのサポートを行います。
• 最適な事業承継方法の選定
• 後継者の育成プランの作成
• 事業承継後の経営戦略の立案
これらの計画策定により、スムーズな事業承継の実現を目指します。
事業承継では、企業のノウハウや従業員だけでなく、自社株や事業用資産も引き継ぐ必要があります。この過程では、相続税や贈与税といった税金問題が発生する可能性があるため、適切な節税対策が重要です。
事業承継コンサルタントは、以下のような対策を提案します。
• 自社株の評価方法の検討
• 事業用資産の移転方法の提案
• 事業承継税制の活用による納税猶予の検討
これらの対策により、円滑な資産承継と税負担の軽減を図ります。
後継者不足に悩む中小企業が増加する中、M&Aを活用した事業承継も増加傾向にあります。M&Aによる事業承継は、以下のような複雑なプロセスを含むため、専門家のサポートが不可欠です。
• 適切な譲渡先の選定
• 企業価値の算定
• 交渉と契約の支援
事業承継コンサルタントは、これらのプロセスをサポートし、円滑なM&Aの実現を支援します。
事業承継コンサルティングを利用することで、企業は以下のような利点を得ることができます。
事業承継は複雑なプロセスであり、専門的な知識が必要です。事業承継コンサルタントは、税務、法務、財務など多岐にわたる専門知識を持ち、以下のようなサポートを提供します。
• 法律や税制に関する最新情報の提供
• 企業の状況に応じた最適な承継方法の提案
• 潜在的なリスクの指摘と対策の提案
これらの専門的なアドバイスにより、事業承継に伴うトラブルを未然に防ぐことができます。
事業承継の経験が少ない経営者にとって、承継プロセスは時間と労力を要する作業です。事業承継コンサルタントは、以下のようなサポートを通じて、このプロセスを効率化します。
• 必要な手続の明確化と優先順位付け
• タイムラインの作成と進捗管理
• 関係者間の調整と合意形成の支援
これらのサポートにより、経営者は本業に集中しながら、計画的に事業承継を進めることができます。
事業承継コンサルティングを依頼する際は、以下の点に注意が必要です。
コンサルティング会社によっては、以下のような費用が発生する場合があります。
• 着手金:サービス開始時に支払う初期費用
• 月額費用:定期的に支払う継続的な費用
これらの費用体系は会社によって異なるため、事前に確認し、自社の予算と照らし合わせて検討することが重要です。
事業承継コンサルティングの具体的な業務内容は、会社によって異なる場合があります。例えば、以下のような違いが考えられます。
• 提供するサービスの範囲(例:税務のみ、法務も含むなど)
• 対応可能な事業規模や業種
• 使用するツールやメソッド
そのため、費用面だけでなく、自社のニーズに合ったサービス内容を提供しているかを確認することが重要です。
事業承継コンサルティングの費用は、業務内容によって異なります。主な業務とそれにかかる一般的な費用の目安は以下の通りです
自社株評価は、事業承継において後継者に引き継ぐ株式の価額を決定する重要な業務です。この評価は相続税や贈与税の計算基礎となるため、正確さが求められます。
• 一般的な費用:10万円~30万円
• 主な依頼先:税理士、公認会計士
自社株評価をもとに、相続税を算出し申告する手続です。
• 一般的な費用:相続財産の0.5%~1.5%
• 主な依頼先:税理士
事業承継税制を適用するために必要な計画書の作成などを行います。
• 一般的な費用:
• 計画書作成のみ:10万円~30万円
• 全体的なコンサルティングを含む場合:100万円以上
不動産を相続する際に必要となる、所有者名義の変更手続です。
• 一般的な費用:5万円~10万円
• 主な依頼先:司法書士
これらの費用は目安であり、実際の費用は案件の複雑さや規模によって変動する可能性があります。また、コンサルティング会社によって料金体系が異なる場合もあるため、複数の会社に見積もりを依頼することをお勧めします。
適切な事業承継コンサルタントを選ぶことは、円滑な事業承継を実現するための重要なステップです。以下のポイントを考慮して選定することをお勧めします。
• 税務、法務、財務など、幅広い分野の知識を持っているか
• 最新の法改正や制度変更に精通しているか
• 自社と同等規模・業種の事業承継実績があるか
• 成功事例や顧客の声を確認できるか
• 複雑な内容をわかりやすく説明できるか
• 経営者や関係者との円滑なコミュニケーションが取れるか
• 自社のニーズに合ったサービス内容を提供しているか
• 必要に応じて他の専門家と連携できるネットワークがあるか
• 提示される費用が妥当であるか
• 期待される成果と照らし合わせて適切な費用設定か
• 特定の金融機関や企業グループに属していないか
• 中立的な立場で最適な提案ができるか
これらの基準を参考に、複数のコンサルタントを比較検討し、自社に最適な事業承継コンサルタントを選定することが重要です。また、初回の相談時の印象や相性も、長期的な関係を築く上で重要な要素となります。
事業承継コンサルティングは、専門知識を活用して円滑な事業承継をサポートするサービスです。事業承継の方法によって必要な手続や税金が異なるため、専門家のアドバイスが重要です。
著者|竹川 満 マネージャー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事