アーリーリタイア後に後悔しない必要資金とは?失敗と成功の要因

定年が目前に迫る55歳、56歳、57歳といった年齢で、早期退職やアーリーリタイアメントを考える方は多くいらっしゃいます。本稿では、早期リタイアメントにおける資金調達や貯蓄法について解説し、さらに各年齢においてアーリーリタイアメントの費用や具体例についてもご紹介します。

目次

  1. アーリーリタイア(早期退職)とは
  2. アーリーリタイア(早期退職)後の必要資金
  3. セミリタイアとは、完全リタイアの違い
  4. アーリーリタイアを目指す人とは
  5. アーリーリタイアする流れ
  6. 55歳でアーリーリタイア
  7. 56歳でアーリーリタイア
  8. 57歳でアーリーリタイア
  9. アーリーリタイアの失敗要因
  10. アーリーリタイアを成功させるには
  11. 年齢によりアーリーリタイアに必要な資金は変わる
  12. 世代別アーリーリタイアに必要な資金
  13. アーリーリタイア(早期退職)に必要な資金まとめ

アーリーリタイア(早期退職)とは

アーリーリタイアメント、または早期退職とは、通常の定年を迎える前に退職することを指します。定年は一般的には60歳や65歳とされていますが、アーリーリタイアメントではこれよりも早い年齢で、例えば50歳や55歳で退職を行い、その後自由な時間を過ごすことを目指します。

日本の労働市場は多様化が進み、様々な収入源が提供されるようになっています。そのため、定年前に十分な生活費を稼ぐことが可能となり、アーリーリタイアメントを実現しやすくなっています。特に、経営者や投資家はこの傾向が顕著です。

アーリーリタイアメント後の生活は多種多様であり、趣味に没頭したり、世界旅行に出かけたり、田舎で農業を始めたりと、かつての仕事にとらわれない夢を追い求めることができます。経営者など仕事が生活の大部分を占めていた人々は、リタイア後の自由な時間を楽しむことを望んでいます。ただし、アーリーリタイアメントを実現するためには、退職前に多くの資金を蓄えることが必要であり、若い年代でこれを達成することができる人は限られています。

アーリーリタイア(早期退職)後の必要資金

アーリーリタイアメントに必要な資金には以下の要素が考えられます。

リタイア後の生活費

日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳です(2020年)。退職する年齢を50歳とし、寿命が90歳だと想定すると、その間に必要となる生活費は40年分です。

単身世帯での平均支出額は月14万4687円、夫婦二人世帯では25万5550円です。これをもとに、55歳から年金が受け取れる65歳までの10年間に必要な資金は以下のようになります。

単身者:14万4687円×12ヶ月×10年=1,736万2,440円

夫婦二人世帯:25万5550円×12ヶ月×10年=3,066万6,000円

65歳を超えると、年金が支給されますが、高齢単身無職世帯では月平均12万1000円、夫婦二人世帯では21万9,000円が支給される程度です。これでは毎月の支出を賄うには不足しており、預金を取り崩すことになります。

また、これらの家計収支は生活費に焦点を当てているものの、緊急に必要な費用は含まれていません。持ち家の修繕費や賃貸の更新料、高齢者向け住宅への移転費用などは、別途まとまった資金を用意する必要があります。

要するに、アーリーリタイアメントを成功させるためには、退職前に十分な資金を貯め込むことが必要不可欠となります。これを目指す方は、自身の生活スタイルや必要資金を計算し、資産形成に計画的に取り組むことが求められます。一般的な労働者にとっては、これを実現することが現実的でなく、経営者や投資家といった資本家であることが、資金調達において有利であると言えます。アーリーリタイア(早期退職)のメリットとデメリットを詳細に解説

アーリーリタイア(早期退職、早期リタイア)の成功には、充分な貯蓄と丁寧な準備が非常に重要です。早期にリタイアすることは困難ですが、その代わりにさまざまなメリットが享受できます。しかし、デメリットも存在するため、慎重に検討する必要があります。

この記事では、アーリーリタイアのメリットとデメリットをそれぞれ4つずつ紹介し、詳細に解説していきます。

アーリーリタイアのメリット

以下のメリットがあり、それぞれ詳しく説明します。

  • 時間を自由に使える
  • 居住地を自由に選択できる
  • 仕事のストレスから解放される
  • 趣味や人生の可能性が広がる

まず時間を自由に使える点が、アーリーリタイアの大きな魅力です。会社員であれば、1日の大部分は仕事に費やすことになりますが、早期にリタイアすれば、1日を自分の好きなように使えます。朝寝坊を楽しんだり、趣味に打ち込んだり、自分のペースで生活できるのが魅力です。経営者であっても、取引先や従業員との調整が必要で、リタイア前は自由とは言い難い状況が多いでしょう。

次に、アーリーリタイアにより居住地を自由に選択できることもメリットです。仕事の都合を考慮せずに移住先を選ぶことができます。例えば、物価が安い地域に引越しして生活費を削減したり、田舎で農業に挑戦したり、海外で暮らす夢も実現可能です。リモートワークが浸透してきていますが、一定の対面でのコミュニケーションが必要な場合も多く、リタイアしていない限り居住地を自由に選ぶことは難しいです。

また、アーリーリタイアをすることで仕事のストレスから解放されることも大きなメリットです。特に会社勤務では、人間関係や仕事のプレッシャーがストレスの原因となりますが、早期退職でそれらのストレスから逃れることができます。自分の意志で仕事や人間関係を選ぶことができるため、ストレスを感じる環境に置かれることはほとんどないでしょう。

最後に、アーリーリタイアが実現すると、趣味へのチャレンジや人生の可能性が広がることも大きなメリットです。仕事に追われる日々から解放されることで、自分の時間や精神的余裕が大幅に増えるため、新たな趣味や資格取得など、人生の選択肢が広がります。

アーリーリタイアのデメリット

早期退職することで新たな生活が始まりますが、その中には孤独感や時間の持て余し、年金額の減少、福利厚生の喪失、社会的信用度の低下などのデメリットが潜んでいます。これらの懸念点に対して詳細に解説し、対処法を提案します。

まず、早期退職後に孤独感や時間の持て余しが増えることがあります。退職直後は自由な時間に満ちた生活を楽しめる一方で、人間関係が希薄になり、社会から隔絶されたような感覚に陥ることもあります。

元同僚や友人が働いている姿を見ると、孤独感が増し、以前の忙しい日常を懐かしむことがあるでしょう。また、暇を持て余すことで虚無感が生まれ、働いていた頃のやりがいや達成感が得られなくなり、承認欲求を満たせないことに悩むこともあります。

これらの問題に対処するためには、リタイア後の目標設定や新たな趣味・関心事の探求、退職前から準備をすることが重要です。

次に、定年前の早期退職により、将来の厚生年金受給額が減少する可能性があります。退職後は国民年金のみの支払いになりますので、早期退職しなかった場合と比較して受給額が減額されることに注意が必要です。

退職金や貯金、年金だけで生活費を捻出するのは困難であり、事故や病気、予期せぬトラブルによる支出が発生した場合、資金繰りに苦労することがあります。資金不足に陥らないためには、資金計画を立てることや、リタイア前の不動産投資などを検討することが大切です。

また、早期退職後は福利厚生が受けられなくなります。企業が提供する福利厚生には、健康保険、介護保険、家賃補助、住宅手当、健康診断費用の補助、病気やケガの際の手当金、旅行やレジャー施設の割引などが含まれています。

特に、住宅費や医療費については自己負担が増えるため、資金計画にこれらの要素を加味することが重要です。

さらに、早期退職により社会的信用度が低下し、再就職が困難になることがあります。資金不足や元の生活への回帰を望む場合、職歴や経歴のブランクが障害となり、再就職が難しくなることがあるでしょう。特に年齢が高いほど、再就職が厳しくなる傾向があります。

このような状況を考慮すると、早期退職よりもセミリタイアを検討し、何らかの形で働き続けることで職歴や経歴に空白を作らないように努めることがお勧めです。

セミリタイアとは、完全リタイアの違い

アーリーリタイアと似ているが、異なるのが「セミリタイア」という選択肢です。違いは、セミリタイアでは早期退職後も一定の収入があることに特徴付けられます。アルバイトやフリーランスなどで働くことで収入を確保し、生活を送ることができます。経営者の場合は、経営顧問や業務委託による専門性の高い業務をリタイア前により負荷を軽くし、収入源を確保するケースも多いです。

このため、資産形成の準備がアーリーリタイアよりも少し楽になることが期待できます。

アーリーリタイアを目指す人とは

アーリーリタイアに適した人は、以下のような特徴を持っていることが多いです。

  • M&Aや投資で資産を築いた人
  • 早い段階からライフプランを明確に描いている人

アーリーリタイアに成功するためには、十分な貯蓄や資産が必要不可欠です。その上で、早い段階でライフプランを立て、実行に移せる行動力や問題解決能力も欠かせません。

アーリーリタイアする流れ

早期退職を実現するためには、以下の手順が必要です。

  • 資産形成計画を立てる
  • 資産運用方法を選択する
  • 引退後の生活費を計算し、そのための資産を確保する

資産運用方法や生活費の計算を行い、それぞれの段階で計画を調整していくことで、アーリーリタイアを実現することが可能になります。

90歳までの必要資金を詳細にシミュレーション

年金受給前と受給後では、必要な資金が大幅に違います。まずは90歳までの生活費を緻密にシミュレーションし、実際にどれくらいの資金が必要か把握しましょう。ファイナンシャルプランナー等のプロの手を借りることもお勧めです。

資金調達方法を検討・実行する方法

資産が必要資金のシミュレーション結果に満たない場合、資金調達方法を検討しましょう。NISAやiDeCoなどの節税投資制度、リバースモーゲージやリースバックなどの不動産活用方法があります。

  • NISAで節税しつつ資産を増やす
  • iDeCoで老後資金を確保
  • リバースモーゲージで住み慣れた家に住み続ける
  • リースバックでまとまった資金を得る

55歳でアーリーリタイア

この記事では、現実的な事例を根拠に、55歳でアーリーリタイアを決断する際の利点や問題点について詳しく述べていきます。


【事例紹介】

早期リタイアを決めた55歳の男性、Aさんのケースを取り上げます。その理由として、持病のケアと家族とのひとときを大事にしたいとの思いがありました。

Aさんはアーリーリタイア後も旅行を楽しむことを望んでおり、セミリタイアという選択肢も検討していました。早期退職金の増額や投資信託を利用した収入により、55歳での早期リタイアを実現しました。


■生活費の再検討

Aさんは、リタイア前に55歳から60歳までの月々の生活費を27万円と見積もっていました。しかし、実際の生活費は想定以上だったことが判明しました。これは、活動範囲が広がったことや、お酒の費用を考慮に入れていなかったことが原因でした。

余暇が増えたリタイア生活で無駄な出費が増加するため、継続的に生活費を抑えることが重要だとAさんは述べています。


■リタイア後の満足度

財政面での計画が予想通りに進まなかったにもかかわらず、Aさんは家族との関係が深まり、生活満足度が非常に高いと感じています。


■資金面での注意点

早期リタイアを検討する際の資金面で留意すべき点として、まだ若い年齢であることから、余暇活動にかかる費用などを事前に検討しておくことが大切です。

また、お酒を楽しむ場合、リタイア後は飲酒の機会が増えることを考慮し、資金面での余裕を持つことが重要です。


■必要な資金額

日本人の平均寿命(女性87.32歳・男性81.25歳)を基に、55歳での早期リタイアに必要な資金額を計算してみましょう。

最低限の生活: 月々の生活費が22万円。必要な金額は約7,700万円。

  • ゆとりのある生活: 月々の生活費が30万円。必要な金額は約1億500万円。
  • 余裕を持つ生活: 月々の生活費が35万円。必要な金額は約1億2,200万円。

年金・貯蓄・退職金・不労所得などを利用してどのくらいの額を賄えるかが、リタイア後の生活の肝心要となります。

56歳でアーリーリタイア

今回は、実際の例を基に56歳でセミリタイアに踏み切るケースについて解説いたします。IT企業でお勤めだったBさんが56歳で早期退職を決断し、その後タクシードライバーとして新たな道を歩んでいくケースに焦点を当てます。


【事例紹介】

IT企業から早期退職を選んだBさんは、完全なリタイア生活に入ることをせず、介護タクシー業界でタクシードライバーとして新たな挑戦を始めました。このため、56歳での早期退職後に、第二種運転免許および介護ヘルパーの資格を取得されました。

しかし、介護タクシーの需要が予想を上回るほど高まり、Bさんは想定しなかったほどの肉体的負担が生じることとなりました。結果として、多忙な日々が続くこととなり、余裕のある生活には程遠いものとなってしまいました。

とはいえ、Bさんは、お客様からの「ありがとう」という言葉に仕事の充実感を感じられ、現在の仕事に達成感を得ています。IT企業で働いていた頃とは異なり、今では人との触れ合いを通じて喜びを感じています。

生活費に関しては、介護タクシードライバーとしての収入が予測を上回ったことから、困窮することはありませんでした。しかし、石油価格の高騰などにより経費も予想以上に増え、早期リタイアに伴うリスクを見極める必要があることを痛感されました。

56歳での早期リタイアに必要な資金を次のように算出しています。ここで使用されている数字は、厚生労働省が発表した「平成30年簡易生命表の概況」に基づく2018年時点の日本人の平均寿命(女性87.32歳・男性81.25歳)の平均値(84.285歳)を考慮しています。

  • 最低限の生活費:56歳で早期リタイアし、毎月22万円の生活費が必要とされる場合、約7,400万円が要求されます。
  • 少し余裕のある生活:56歳で早期リタイアし、毎月30万円の生活費が必要とされる場合、約1億100万円が必要となります。
  • 豊かな生活:56歳で早期リタイアし、毎月35万円の生活費が必要とされる場合、約1億1,800万円が必要となります。

これらの金額のうち、どの程度を年金や貯蓄、退職金、不労所得で賄えるかが重要視されます。

以上の情報から、56歳でセミリタイアを考える際には、今後の生活費や予期せぬ経費、再就職後の仕事内容など、様々な要素を総合的に検討することが重要であることが分かります。

57歳でアーリーリタイア

最後に、57歳でアーリーリタイアを成功させた男性Cさんのケースを紹介いたします。


【事例紹介】

Cさんは47歳から貯金を積み立て始め、57歳で商社を退職してタイに移住しました。退職時には1,700万円の貯金があり、退職金として2,800万円を受け取りました。しかし、アーリーリタイアに必要な資金としては十分ではないと言えるでしょう。

それでも現在タイで無職のCさんは、貯金を切り崩しても十分に暮らせています。物価の安さや東南アジア地域の生活環境を活かし、月10万円の生活費で足りているため、自由な時間を持て余すほどの余裕がある生活を送っています。

早期リタイアの成功要因として、独身であることが挙げられます。もし家族がいた場合、選択肢は変わってくるでしょう。

以下のポイントに注意して資金計画を立てることが、早期リタイア成功への鍵となります。

  • 資金の確保
  • 生活費における必要額

まず、資金の確保についてです。早期退職制度を利用することで、多額の退職金を受け取ることが可能です。計画性を持って早期リタイアに向けて行動することが重要です。

次に、生活費における必要額を算出しましょう。57歳でアーリーリタイアし、60歳の定年までの生活費を想定して計算します。厚生労働省が発表した平均寿命をもとに、57歳から84歳までの生活費を計算します。ここでは、Cさんがタイで暮らしていることを踏まえ、日本での生活費を想定して計算します。

最低限の生活費を求め、毎月22万円が必要とされる場合、57歳から84歳までに必要な資金は約7,100万円となります。少し余裕のある生活を送りたい場合、毎月30万円が必要とされると、57歳から84歳までに必要な資金は約9,700万円となります。また、余裕を持つ生活を送るには、毎月35万円が必要となり、57歳から84歳までに必要な資金は約1億1,130万円となります。

それぞれの生活スタイルにおいて、どの程度の年金や貯蓄、退職金、不労所得が必要かを検討することが重要です。Cさんのケースはアーリーリタイアを目指す人に参考になるかもしれませんが、実際には個々の資産運用やライフスタイルによって計画が異なるため、自分に合った計画を立てることが大切です。

アーリーリタイアの失敗要因

アーリーリタイアの失敗に関連する主な要因は以下の3点です。

資金不足

十分な資金確保ができていても、インフレや為替の影響などにより資金不足に陥ることがあります。また、株価が急落して資産が目減りし、再就職が必要になるケースもあります。

収入の確保は、精神的安定にもつながります。アーリーリタイア後も最低限の生活費が賄える収入源を確保しておくことが重要です。

目標の喪失

アーリーリタイアメントを実現した後、目標を持たずにだらだらとした生活を送ってしまう人もいる一方で、明確な目標を持って具体的なライフプランを設計し、充実した毎日を過ごす人もいます。リタイア後の目標を明確にすることで、より活力に満ちた人生を送ることが可能となるでしょう。

人間関係の悩みと対策

アーリーリタイア後に地方や海外へと移住する場合、現地で新しい人間関係を築く際には注意が必要です。現地のコミュニティに馴染めず、結局都市部へ戻ってしまうケースも存在します。事前に友人や知り合いを作っておき、スムーズな移住ができるよう計画を立てましょう。

アーリーリタイアを成功させるには

アーリーリタイアを成功させるための重要な要点は以下の4つです。

  • 十分な貯蓄を行う
  • M&Aを利用する
  • リタイア後の生活水準を検討する
  • 生きがいを見つける

これらのポイントに基づいてアーリーリタイアを達成するための計画を立てることが重要です。

資金の準備

リタイア後も安定した生活を送るためには、十分な貯蓄が欠かせません。特にアーリーリタイアを目指す場合、必要となる貯蓄額は増加します。資金は多ければ多いほど安心できると言えるでしょう。

セミリタイアやミニリタイアを取り入れ、収入の一部を維持することも一つの方法です。資金源を確保しておくことで、貯蓄額の減少速度を抑えることが可能です。

完全リタイアを目指す場合は、十分以上の資金があることが無難です。

事業承継を利用

事業主の方であれば、M&Aを活用し事業承継を検討することが生活資金の確保につながります。M&Aによって事業全体や一部を売却し、創業者利益として多額のキャッシュを得られることから、悠々自適な生活が実現できます。

事業承継によって、廃業コストなどで資産が減るリスクも回避できます。ただし、M&Aの際は信頼できるパートナー選びが重要です。

リタイア後の生活水準の見極め

収入が減った状況で仕事をしていた頃の生活水準を維持するのは難しいため、リタイア後の生活水準を見極めることが大切です。逆に余裕があると感じるからといって、お金を使いすぎることも避けましょう。

リタイア後は資産が目減りする一方なので、生活水準維持を希望する場合はアーリーリタイアの検討を慎重に行いましょう。

生きがいを見つける

リタイア後の幸せな生活を送るためには、仕事以外の生きがいが不可欠です。趣味や習慣など、自分にとって意義があるものを見つけることが重要です。

仕事を生きがいとしている場合、アーリーリタイア後に孤独や孤立を感じる可能性が高まります。趣味やレジャーに熱心に取り組む生活スタイルは一般的ですが、リタイア後の生活で生きがいが見つからない場合、精神的な余裕が失われ、毎日が苦痛になることがあります。

ですから、アーリーリタイアを実現するためには、資金面や生活水準、生きがいなどさまざまな要素を見直し、計画的に進めることが大切です。

年齢によりアーリーリタイアに必要な資金は変わる

年齢によって早期リタイアに必要な資金額は、大幅に異なります。以下の要素が資金額に影響を与えるため、まずはそれらを整理しましょう。

  • リタイアする年齢と年金の受給金額が連動すること
  • 退職金額の違い
  • 年金受給開始までの年数の違い

それぞれの要素について説明しましょう。

1つ目の要素は、リタイアする年齢と年金受給額が連動することです。リタイアする年齢が異なると、年金受給額も変わり、早期リタイアに必要な資金額も変動します。

日本経済新聞の試算によると、2歳年下の妻を持つ男性で標準報酬月額平均が44万円の場合、55歳で早期退職した場合、夫婦とも平均寿命まで生きると、年金の減収総額は約640万円になるとされています。早期退職する年齢が若いほど、より大きな差が生じることに注意が必要です。

2つ目の要素は、退職金額の違いです。基本的に、同じ会社で働いた年数が長いほど退職金は増加することが一般的です。ただし、退職金額は会社の規定によって異なり、年齢が若いほど退職金は少なくなる傾向があります。

3つ目の要素は、年金受給開始までの年数の違いです。早期リタイアする年齢が異なると、年金受給額だけでなく、年金受給開始までの期間も変わります。そのため、年齢が若いほど、年金受給までの期間が長くなり、その分必要な資金も増加することになります。

世代別アーリーリタイアに必要な資金

セミリタイアを実現するために必要な貯金額は、それぞれの年代によって異なります。セミリタイアの場合、退職後も年金以外に安定した収入源を持つことが重要なポイントとなります。このため、早期退職(アーリーリタイア)に比べて必要な貯金額は少なくて済むでしょう。

以下では、セミリタイア後の生活費とそれに応じた貯金額の目安を年代別にご紹介します。生活費の計算は、65歳まで年間360万円、65~90歳まで年間300万円を仮定しており、総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)」を参考にしています。また、生活費の計算は90歳までを対象としています。


年金受給額の計算条件は下記の通りです。

  • 35歳で退職:基礎年金80万円×2+厚生年金20万円(平均標準報酬額30万円10年間勤務)
  • 45歳で退職:基礎年金80万円×2+厚生年金40万円(平均標準報酬額30万円20年間勤務)
  • 55歳で退職:基礎年金80万円×2+厚生年金60万円(平均標準報酬額30万円30年間勤務)

さらに、退職後には年金の受給開始までに月間10万円、年間120万円の収入が得られることを想定しています。

まとめ

本記事では、早期退職に関する多岐にわたる解説を行いました。最後に、早期退職を検討する際に心に留めておくべき重要なポイントをまとめてご紹介します。

早期リタイアの際には、その後の生活状況によって必要な資金が変わります。地域や生活スタイル等、自分の生活にどれだけの余裕を持てるかを検討し、必要な資金を把握することが重要です。

早期退職を考える年齢がわずか1歳違うだけでも、必要な資金額に大きな違いが生じます。適切な年齢でリタイアを実現するためには、自分が必要とする資金を確保する計画を立てることが大切です。セミリタイアの可能性も考慮しながら、リタイア後の生活を具体的にイメージしましょう。

著者|土屋 賢治  マネージャー

大手住宅メーカーにて用地の取得・開発業務、法人営業に従事。その後、総合商社の鉄鋼部門にて国内外の流通に携わる傍ら、鉄鋼メーカーの事業再生に携わる。外資系大手金融機関を経て、みつきグループに参画

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