ハッピーリタイアを実現するM&A戦略!中小企業経営者必読ガイド

中小企業経営者のためのハッピーリタイア実現ガイド。M&Aによる事業承継のメリットや成功のポイントを詳しく解説。早期準備と適切な支援で、豊かな老後と企業の持続的発展を両立させる方法を紹介します。

目次

  1. 増加傾向にある廃業の実態
  2. 事業承継の3つの選択肢
  3. M&Aによるハッピーリタイアの5つのメリット
  4. ハッピーリタイアを実現するM&Aの4つのポイント
  5. まとめ

増加傾向にある廃業の実態

近年、日本の中小企業における廃業件数が増加傾向にあります。帝国データバンクの調査によると、2023年の「休廃業・解散」件数は5万9千件に達し、前年比で10%増加しました。

急増の背景

この急増の背景には、以下のような要因があります。

1. コロナ禍における支援策の縮小

2. エネルギー価格をはじめとする物価高

3. 深刻化する人手不足と人件費負担の増加

これらの要因により、多くの中小企業が経営の岐路に立たされています。特に、収益面や財務面で打撃を受けた企業は、「事業継続か否か」の決断を迫られることとなりました。

こうした状況下で、さらなる経営悪化を回避するため、やむを得ず事業を畳む中小企業が増加しています。このトレンドは、日本の経済構造や雇用環境に大きな影響を与える可能性があり、適切な対策が求められています。

事業承継の3つの選択肢

事業承継には主に3つの選択肢があります。それぞれの特徴を理解し、自社の状況に最適な方法を選ぶことが重要です。

親族内承継のプラス面とマイナス面

親族内承継は、現経営者の子息など親族に事業を引き継ぐ方法です。

プラス面:

1. 企業内外の関係者から受け入れられやすい

2. 長期的な教育期間の確保が可能

3. 経営と相続を一体化できる

マイナス面:

1. 適任の後継者が親族内にいるとは限らない

2. 相続に関する家族間のトラブルリスク

3. 後継者の決定や経営権の集中が難しい場合がある

また、後継者の意思だけでなく、その配偶者や周囲の人々の理解も重要です。事業承継によってライフスタイルが変化し、家族関係に悪影響を及ぼす可能性もあります。

社内承継(役員・従業員承継)の長所と短所

社内承継は、親族以外の役員や従業員に事業を引き継ぐ方法です。

長所:

1. 経営者としての適性を見極めて承継できる

2. 経営方針の一貫性を保ちやすい

短所:

1. 適任者が見つかりにくい

2. 後継者候補の経営資源が不足している場合が多い

3. 株式取得など経済的な問題が生じやすい

特に組織体制が整っている会社では、複数の後継者候補が存在する可能性があります。その場合、後継者に選ばれなかった人材の離職など、今後の経営に影響を与える可能性がある点に注意が必要です。

第三者承継(M&A)の利点と課題

第三者承継(M&A)は、株式譲渡などにより外部の企業や個人に事業を承継する方法です。

利点:

1. 親族や社内に適任者がいない場合でも選択可能

2. 幅広く候補者を求められる

課題:

1. 企業文化の異なる従業員の融和が難しい

2. 雇用条件の維持が課題となる場合がある

3. 経営の一貫性を保つことが難しい

M&Aによる第三者承継は、適切に実施すれば双方にとって有益な結果をもたらす可能性があります。しかし、様々な課題も存在するため、慎重な検討と準備が必要です。

M&Aによるハッピーリタイアの5つのメリット

M&Aを通じた第三者承継には、経営者のハッピーリタイアを実現するための様々なメリットがあります。以下に5つの主要なメリットを紹介します。

創業者利益の獲得

M&Aでは、長年の努力で築き上げた事業価値を第三者が評価し、その対価として十分な金額を受け取ることができます。この「創業者利益」は、通常の従業員の退職金とは桁違いの金額になることが多く、豊かな老後生活を送るための重要な財源となります。

従業員の雇用維持

M&Aによる事業承継は、従業員の雇用を維持する有効な手段です。特に、事業承継問題で行き詰まっていた中小企業が、M&Aを通じて事業と雇用を維持できるケースは少なくありません。これは個々の従業員だけでなく、地域経済の維持にも大きく貢献します。

個人保証からの解放

多くの中小企業経営者は、金融機関やリース会社に対して個人保証を行っています。M&Aを実施することで、この個人保証から解放される可能性が高まります。2020年度の調査では、経営者保証の代替措置として、担保の全部または一部に経営者保証を代替している企業が80%に上っています。

経営基盤の強化

M&Aは、譲渡先企業にとっても大きなメリットがあります。一から事業を立ち上げる時間を大幅に短縮し、既に利益を出している企業を獲得することで、迅速な成長を実現できます。また、譲渡される企業にとっても、経営人材の強化など資金面以外でのメリットが期待できます。

自由な時間の確保

M&Aによるハッピーリタイアを実現すると、これまで経営に費やしていた時間を自由に使えるようになります。趣味や旅行、家族との時間など、これまでできなかったことに時間を充てることができ、より充実したセカンドライフを送ることが可能になります。

これらのメリットを最大限に活かすためには、適切なタイミングでM&Aを実施することが重要です。次のセクションでは、ハッピーリタイアを実現するためのM&Aの具体的なポイントについて解説します。

ハッピーリタイアを実現するM&Aの4つのポイント

M&Aによるハッピーリタイアを成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。以下に4つの主要なポイントを詳しく解説します。

早期の決断と準備

M&Aを成功させるためには、早い段階での決断と準備が不可欠です。早期にM&Aに着手することで、以下のメリットがあります。

1. より高い企業価値での譲渡が可能

2. 選択肢の幅が広がる

3. 十分な準備期間を確保できる

経営者の年齢が上がるにつれて企業業績が低迷する傾向があるため、自身が考えているよりも数年早い行動が望ましいと言えます。また、M&Aの相手先を見つけるのに予想以上に時間がかかることもあるため、余裕を持った計画が重要です。

好業績時のM&A実施

M&Aを成功させるためには、企業の業績が好調なタイミングで実施することが重要です。以下がその理由です。

1. 高い企業価値での譲渡が可能

2. 譲渡条件の交渉で有利な立場に立てる

3. より多くの選択肢から最適な譲渡先を選べる

逆に、業績が悪化してからM&Aを検討すると、譲渡条件が不利になったり、最悪の場合M&Aの機会を失うリスクがあります。企業体力に余裕があるうちに、M&Aを検討することが賢明です。

リタイア後のビジョン明確化

ハッピーリタイアを実現するためには、M&A後の人生設計を明確にしておくことが重要です。以下のような点を具体的に考えておきましょう。

1. 事業に関わり続けたいか

2. 新たな事業に挑戦したいか

3. ボランティア活動や趣味に時間を使いたいか

4. 家族との時間を優先したいか

リタイア後の明確なビジョンを持つことで、M&Aの条件交渉やタイミングの決定にも影響を与える可能性があります。また、精神的な準備を整えることで、スムーズな引退生活への移行が期待できます。

信頼できるM&A仲介会社の活用

M&Aプロセスを円滑に進めるためには、信頼できるM&A仲介会社の活用が不可欠です。適切な仲介会社を選ぶことで、以下のメリットが得られます。

1. 豊富な経験と専門知識に基づいたアドバイス

2. 幅広いネットワークを活用した最適な譲渡先の発掘

3. 複雑な交渉プロセスのサポート

4. 法務・税務面での専門的なサポート

特に中小企業のM&Aに特化した実績のある仲介会社を選ぶことで、より円滑なプロセスと満足度の高い結果が期待できます。

これらの4つのポイントを押さえることで、M&Aによるハッピーリタイアの実現可能性が高まります。慎重に計画を立て、専門家のサポートを受けながら、最適なM&Aを実現しましょう。

まとめ

M&Aによるハッピーリタイアは、中小企業経営者にとって有効な選択肢の一つです。早期の判断と準備、好業績時のM&A実施、リタイア後のビジョン明確化、そして信頼できるM&A仲介会社の活用が成功のカギとなります。これらのポイントを押さえることで、経営者自身の豊かな老後と企業の持続的発展の両立が可能となります。

著者|竹川 満 マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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