インカムゲインの求め方を、株式配当、投資信託、不動産家賃、債券利子に分けて解説。利回り、税引後手取り、キャピタルゲインとの違いを確認し、会社売却後の資産運用判断にもつなげます。
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インカムゲインは「資産を持ち続けている間に入ってくる収益」です。株式の配当金、投資信託の分配金、債券の利子、不動産の家賃収入などが代表例です。
求め方そのものは難しくありません。ただし、額面の収入だけを見て「もうかっている」と判断すると、税金や維持費を引いた後の手取りが思ったより少ないことがあります。ここは意外と多い落とし穴です。
インカムゲインの基本的な考え方は、次のどちらかです。
投資資産 × 利回り
または
配当金・分配金・利子・家賃収入などの合計額
例えば、200万円の資産から年3%の収益を得られるなら、年間インカムゲインは6万円です。株式であれば配当金、債券であれば利子、不動産であれば家賃収入が、この6万円にあたります。
投資の判断では、受け取る前の額面と、税金や経費を差し引いた後の手取りを分けて見る必要があります。
例えば、上場株式等の配当や特定公社債等の利子では、一般に受取時に20.315%の税金が差し引かれます。額面で10万円を受け取る予定でも、実際の手取りは約7万9,685円です。計算式にすると、10万円 × 0.79685 となります。
不動産投資では、税金だけでなく、管理費、修繕費、固定資産税、火災保険料、空室期間の影響もあります。家賃収入が大きく見えても、経費を引いた後の利益が小さいことも珍しくありません。
インカムゲインの考え方は、個人投資家だけの話ではありません。会社売却や事業承継を検討する経営者にとっても、売却後の資金をどのように運用するかは重要なテーマです。
まとまった資金を一度に受け取る場合、その後の生活資金、相続対策、次の事業投資をどう分けるかで、運用方針は変わります。高い利回りだけを追うのではなく、元本の安全性、税引後の手取り、必要な現金の時期を合わせて考えることが大切です。
株式のインカムゲインは、主に配当金です。企業が利益の一部を株主に分配するもので、1株あたりの配当金と保有株数から求めます。
計算式は、次のとおりです。
1株あたりの配当金 × 保有株数
例えば、1株あたり50円の配当金を出す株式を100株持っている場合、年間配当金は5,000円です。50円 × 100株 で計算します。
配当利回りが高い株式は魅力的に見えます。ただし、業績悪化で配当が減ることもあります。配当の原資は会社の利益です。無理な配当が続いていないか、利益やキャッシュフローも確認する必要があります。
高配当株では、株価が下がった結果として利回りが高く見えているだけのケースもあります。数字だけで飛びつかないこと。ここが実務上の注意点です。
投資信託では、分配金がインカムゲインになります。分配金は「1万口あたり〇円」と表示されることが多いため、保有口数に合わせて計算します。
計算式は、次のとおりです。
1万口あたりの分配金 × 保有口数 ÷ 10,000
例えば、1万口あたり100円の分配金が出る投資信託を50万口持っている場合、分配金は5,000円です。100円 × 50万口 ÷ 10,000 で求めます。
投資信託の分配金には、運用益から支払われるものと、元本の一部を戻している性質のものがあります。毎月分配型の商品では、分配金を受け取っていても基準価額が下がっている場合があります。
見た目の受取額だけでは判断できません。分配金が出ている理由と、投資元本が減っていないかを確認することが大切です。
不動産投資のインカムゲインは、家賃収入です。計算では、年間家賃から管理費や修繕費などの維持経費を差し引きます。
基本的な計算式は、次のとおりです。
月額家賃 × 12か月 - 年間維持経費
例えば、月10万円の家賃を受け取る物件であれば、経費を差し引く前の年間家賃収入は120万円です。ここから管理費、修繕費、固定資産税、借入金利息などを差し引いて、実質的な収益を見ます。
不動産は、満室が続く前提で計算すると楽観的になりがちです。入居者が退去すれば家賃は止まります。設備の故障や大規模修繕が発生すると、数十万円単位の支出が出ることもあります。
家賃収入は安定しやすい一方、物件管理の手間と突発費用を無視できません。
債券では、利子がインカムゲインになります。国債や社債を保有している間、あらかじめ定められた利率に基づいて利子を受け取ります。
計算式は、次のとおりです。
額面金額 × 表面利率
例えば、額面100万円、表面利率1.5%の債券であれば、年間利子は1万5,000円です。
債券は比較的安定した投資と見られますが、リスクがないわけではありません。途中で売却する場合は市場価格が下がっている可能性があります。社債では、発行会社の財務状態が悪化すれば利払いが滞るおそれもあります。
利率の高さだけでなく、満期まで持てるか、発行体の信用力は十分かを確認しましょう。
インカムゲイン利回りは、年間のインカムゲインを購入価格で割って求めます。
年間インカムゲインの総額 ÷ 購入価格 × 100
例えば、200万円で購入した株式から年間6万円の配当金を得た場合、利回りは3.0%です。6万円 ÷ 200万円 × 100 で計算します。
この利回りを見ると、投資金額に対してどの程度の収益があるかを比較できます。株式、債券、投資信託、不動産を同じ目線で比べるときに便利です。
投資判断では、税引前利回りだけでなく、税引後利回りも見ておきたいところです。上場株式等の配当や特定公社債等の利子に20.315%の税金がかかる場合、額面の収益に0.79685を掛けると、おおよその手取り額を確認できます。
例えば、年間配当金が10万円なら、税引後の手取りは約7万9,685円です。投資額が200万円であれば、税引前利回りは5.0%ですが、税引後利回りは約3.98%になります。
同じ商品でも、税金を差し引くと見え方が変わります。特に経営者は、役員報酬、配当、退職金、株式譲渡益など、複数の所得が関係することも多いため、税引後の手取りで比べる姿勢が大切です。
上場株式や投資信託の運用では、NISAを使うと、一定の条件を満たす配当金、分配金、売却益が非課税になります。2024年以降のNISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を併用できます。制度の詳細は改正されることがあるため、利用前に最新情報を確認しましょう。
iDeCoは、老後資金づくりを目的とした制度です。掛金が所得控除になる一方、原則として60歳まで引き出せません。節税効果だけを見るのではなく、資金をいつ使う予定かも含めて判断する必要があります。
不動産の利回りには、表面利回りと実質利回りがあります。表面利回りは、年間家賃収入を物件価格で割ったものです。実質利回りは、家賃収入から維持経費を差し引いた後で計算します。
経営者が投資判断をする場合、見るべきは実質利回りです。修繕費や空室リスクを入れずに計算すると、資金繰りの見込みが甘くなります。
インカムゲインと並んで重要なのが、キャピタルゲインです。キャピタルゲインは、資産を売却したときに得られる値上がり益を指します。
インカムゲインは「持っている間の収益」、キャピタルゲインは「売ったときの利益」です。この違いを理解すると、自分がどのリスクを取っているのかが見えやすくなります。
インカムゲイン重視の投資では、毎年または毎月の収入を安定させることが目的になります。配当金、分配金、利子、家賃収入が入るため、資産をすぐに売却しなくても現金収入を得られます。
一方で、短期間に大きな利益を得るのは難しい傾向があります。利回りが数%であれば、十分な収入を得るには相応の投資元本が必要です。
キャピタルゲインは、買った価格より高く売れたときに発生します。株式、不動産、事業、暗号資産などで見られる利益です。
大きな利益を狙える一方、価格が下がれば損失になります。売却のタイミング、市場環境、対象資産の将来性を見極める必要があります。M&A(合併・買収)における会社売却も、オーナーにとっては保有してきた株式を譲渡し、まとまったキャピタルゲインを得る取引として整理できます。
投資判断では、インカムゲインとキャピタルゲインを分けて見るだけでなく、両方を合わせたトータルリターンで確認します。
例えば、1年間で配当金を5万円受け取り、保有株式の値上がり益が15万円あれば、合計のリターンは20万円です。反対に、配当金を受け取っていても、株価が大きく下がれば、全体では損失になることがあります。
配当があるから安全、値上がり益があるから有利、とは単純に言えません。収入、値動き、税金、投資期間を合わせて見ることが大切です。
会社経営者は、個人投資家よりも大きな資金を扱う場面があります。役員報酬、配当、自社株、退職金、会社売却代金など、収入の種類が複数に分かれやすいためです。
そのため、インカムゲインの計算も、単なる投資商品の利回り比較だけでは終わりません。資金の出どころ、税金、家族への承継、会社との関係を含めて整理する必要があります。
経営者に多いのが、会社の余裕資金と個人の資産を同じ感覚で見てしまうことです。会社の資金は、運転資金、納税資金、設備投資、借入返済に使う可能性があります。個人の資産運用とは目的が異なります。
会社で有価証券や不動産を保有する場合、会計処理や税務処理も個人とは違います。含み損益、評価、配当収入、売却益の扱いが決算書に影響することもあります。
会社売却後にまとまった資金を受け取ると、高い利回りの商品に目が向きやすくなります。しかし、退職後の生活資金や相続対策に使う資金までリスク資産に回すと、相場下落時に判断が難しくなります。
売却代金は、一度失うと取り戻しにくい資金です。生活費に使う資金、数年以内に使う資金、長期運用に回せる資金を分けてから、インカムゲインを狙う商品を選ぶのが現実的です。
会社売却では、単純な株式譲渡だけでなく、アーンアウト、ストックオプション、新株予約権などが関係することがあります。これらは将来の収入や税金に影響するため、インカムゲインやキャピタルゲインと切り離して考えない方が安全です。
アーンアウトは、売却後の業績などに応じて追加対価を受け取る仕組みです。ストックオプションや新株予約権は、権利行使や譲渡のタイミングによって税務上の扱いが変わることがあります。契約前に確認しておかないと、手取りが想定とずれることもあります。
インカムゲインを得る方法には、日本の高配当株、米国株、J-REIT、債券、投資信託、不動産などがあります。どれがよいかは、目的によって変わります。
毎年の現金収入を重視するなら配当金や利子が候補になります。長期の資産形成を重視するなら、分配金を出さずに再投資する投資信託の方が合う場合もあります。相続や事業承継も見据えるなら、資産の分けやすさや評価のされ方も確認が必要です。
税引後の手取りをシミュレーションし、キャピタルゲインを含めたトータルリターンまで確認することが、失敗を減らす近道になります。
インカムゲインは、配当金、分配金、利子、家賃収入などを合計して求めます。ただし、投資判断では額面収入だけでなく、税金や経費を差し引いた手取り、投資額に対する利回り、値下がりリスクまで見ることが重要です。会社売却後の資産運用でも、安定収入と元本保全のバランスを考えて設計しましょう。
著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事
編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人