インカムゲインは、株式や債券などの資産を保有して得られる継続的な収益で、投資初心者にも取り組みやすい手法です。本記事では具体例やキャピタルゲインとの違い、税金対策などをわかりやすく解説し、安定的な資産形成のポイントをご紹介します。さらに、長期運用におけるリスク管理や、キャピタルゲインと組み合わせた効果的な投資戦略も幅広くカバーしています。
目次:
▶目次ページ:第三者承継とは(M&Aのメリット・デメリット)
投資の世界では、利益を得る方法として「キャピタルゲイン(資産の売却益)」と「インカムゲイン(資産を保有している間に得られる収益)」の2つが大切なキーワードになります。これらを理解することで、自分に合った投資戦略を組み立てやすくなります。
キャピタルゲインは、株式や不動産などの「購入価格」と「売却価格」の差額によって得られる利益です。例えば、1株1,000円で買った株式を1株1,500円で売れば、その差額である500円×購入株数がキャピタルゲインになります。
大きな特徴
インカムゲインは、資産を持っている期間に継続的に発生する収益です。代表的な例としては、以下のようなものがあります。
株式の配当金
企業が利益の一部を株主へ分配するお金。
債券の利子
国債や社債などを保有している間に定期的に受け取れる利息。
不動産の家賃収入
賃貸物件を保有することで得られる家賃。
預金の利息
銀行などの金融機関にお金を預けることで得られる利息。
投資信託の分配金
投資家から集めた資金をプロが運用し、その利益を分配する際に受け取れるお金。
大きな特徴
両者は「どうやって利益を得るか」「リスクやリターンの大きさはどれくらいか」という点で性質が異なるため、投資を行う際には、どちらをより重視するかを考えていくことが大切です。
インカムゲインを得る投資手法には、メリットとデメリットの両方があります。自分がどのような投資スタイルを望んでいるのかをイメージしながら、以下のポイントを押さえてください。
安定した収入が得られる
資産を保有している間に、株式の配当や債券の利子などを定期的に受け取ることができます。そのため、予想外の出費があっても、ある程度の収益を見込みやすいです。
手間がかからない
売却のタイミングを細かく検討する必要がなく、配当や利子が振り込まれるのを待つだけなので、時間的制約の大きい人でも気軽に始められます。
リスクが比較的低い
インカムゲインは、価格の上げ下げを追いかける手法ではないため、短期的な相場変動に左右されにくいといえます。ただし、後述するように元本割れリスクがゼロになるわけではありません。
短期的な大きな利益は難しい
インカムゲインは長期的にじっくり資産を増やす手法であり、数日や数週間で大幅なリターンを得ることはほぼ期待できません。
投資資金が少ないと利益も少ない
例えば、配当金は保有株数に応じて支払われます。投資資金が少ないと、配当金の金額も小さくなりがちです。
状況によっては元本割れリスクがある
インカムゲインが狙える資産といっても、株式であれば企業業績の悪化、不動産であれば需要の減少など、資産価値が下がる可能性があります。あまりにリスクが大きい資産を選ぶと、期待していた収益が得られないどころか、投下資金を大きく減らす恐れもあるのです。
インカムゲインを狙った投資では、「どのように利益が発生するのか」「実際にどんな運用先があるのか」を理解することが大切です。ここでは、代表的な商品を挙げながらインカムゲインの仕組みを解説します。
インカムゲインは、保有資産から得られる配当や利子などを合計したものです。例えば株式投資の場合、年間配当金が1株あたり○円という形で発表されます。それを保有株数で掛け算すると、1年間に受け取れる配当金の合計が求められます。
株式投資の例
また、債券であれば、券面に示された利子率(クーポンレート)をもとに、定期的な利子収入が発生します。不動産の家賃収入は、賃貸契約で定められた月々の家賃がインカムゲインになります。
株式の配当金
株主に対し、企業の利益の一部が現金で支払われる形です。年に1回か2回受け取るのが一般的ですが、企業によっては回数や金額が異なります。
債券の利子
国債や社債を一定額保有していれば、設定された利子を定期的に受け取れます。ただし、債券の価格が下落すると、途中で売却した際には損をする可能性もあります。
不動産の家賃収入
マンションやアパート、オフィスビルなどを所有し、入居者から毎月の家賃を受け取ることでインカムゲインを得られます。立地や管理状態が良好なら安定しやすいですが、空室率が高くなると収益も落ち込む点に注意が必要です。
銀行の預金利息
もっとも身近なインカムゲインの代表例です。利率は非常に低い傾向にありますが、ローリスクであることが魅力です。
投資信託の分配金
投資家から集めた資金をまとめて運用し、利益が出た際に一部を投資家に分配します。運用方針によっては、配当金や債券の利子で得た利益を定期的に支払うタイプもあれば、ほぼ再投資に回すタイプもあるため、事前の確認が大切です。
インカムゲインとよく比較されるのがキャピタルゲインです。両者は投資期間やリスク、利益の得方などが異なるため、それぞれどんな場面で活用できるのかを理解しましょう。
インカムゲイン
資産を長期間保有する前提なので、配当や利息が安定的に入ってくるのがメリット。
短期売買を行わないため、日々の価格変動に神経質になる必要は少ない。
キャピタルゲイン
購入後に価格が上昇したタイミングで売却し、差額を利益にする。
もし価格が上がらなければ利益を得られないどころか、下落すれば損失を被る。
ハイリスク・ハイリターンになりやすい。
インカムゲイン
資産を売却せずに収益を得られる。
使える時間が限られている人や投資初心者でも始めやすい。
利回りが大きくない場合は、ある程度の投資額が必要になりやすい。
キャピタルゲイン
資産を売却することで初めて利益が確定。
株価や不動産価格の急上昇で大きなリターンを得られることがある。
市場動向や企業分析など、積極的な情報収集が欠かせない。
投資を進めるうえでは、キャピタルゲインとインカムゲインのどちらを重視するにしても、リスクと上手に向き合うことが重要です。特に長期的な視点でインカムゲインを得ようと考えている場合でも、価格変動や経済環境の変化によって想定外の損失が生じる可能性はあります。以下では、リスク管理の主なポイントを整理してみましょう。
複数の資産クラスに投資する
株式だけでなく、債券、不動産、現金など、特性の異なる資産に分散投資することで、一部の資産クラスが不調でも、他の資産がカバーしてくれる可能性があります。
地理的・業種の分散
株式投資であれば、国内外や複数の業種にわたって投資先を広げることで、リスクを分散できます。不動産投資なら複数エリアに物件を持つことで、地域リスクを抑えられます。
時間的分散
毎月一定額を投資するドルコスト平均法を活用すると、価格が高いときも安いときも一定額ずつ資産を買い増しするので、買うタイミングを一度に絞らずに済みます。
投資において、リスクとリターンは密接な関係にあります。大きなリターンを狙うほど、相応にリスクも高まります。インカムゲインを重視する投資では、安定性を求める分リターンがやや小さくなる傾向がありますが、日頃の値動きに振り回されにくいという長所があります。
リスク許容度の確認
個人ごとに「どのくらいの損失なら許容できるか」は異なるため、自分自身の性格や資金状況に合わせて投資金額や商品選びを行う必要があります。
目標リターンの設定
「毎年○%の利回りを目指す」「老後までに○万円の配当所得を確保する」など、具体的な目標を立てると、リスクの取り方も決めやすくなります。
リバランスの実施
時間が経つにつれて、投資商品ごとの値動きや市況の変化で、当初の資産配分が偏ってくることがあります。年に1回、あるいは半年に1回程度、資産配分をチェックし、当初の目標に合わせてリバランスすると、過度なリスク集中を防ぎやすいです。
経済指標や社会情勢の把握
世界的な金融緩和やインフレーション、各国の金利政策など、大きな経済ニュースを適度にチェックすることは大切です。特にインカムゲインを狙う投資では、金利の変動が債券や預金に与える影響が大きいため、経済状況の変化にはアンテナを張っておくと安心です。
専門家の意見も参考に
もし税務や法務など専門的な分野で悩みがあるなら、税理士やファイナンシャルプランナー、弁護士といった専門家に相談するのも手段の一つです。自身の判断だけでは気づかないポイントを指摘してもらえるケースがあります。
投資で利益を得た場合、その利益に対しては所定の税金がかかります。キャピタルゲインとインカムゲインで課税方法は異なることもあり、効率的な税金対策を行うことで、実質的な手取りを増やすことが期待できます。ここでは、代表的な制度や注意点を整理します。
株式や投資信託の売却益
一般的には20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかります。
不動産譲渡所得
不動産を5年超保有した場合の売却益は20.315%、5年以下であれば39.63%といった高い税率が適用されるため、保有期間に注意が必要です。
配当金・債券の利子
通常は20.315%の税率で課税されます。
不動産の賃貸収入
不動産所得として総合課税の対象です。
預金利息
わずかながら、20.315%の課税があります。
NISA(少額投資非課税制度)を活用
・一般NISA
年間120万円までの投資に対し、投資開始から5年間は売却益や配当金が非課税になります。
・つみたてNISA
年間40万円までの投資が対象で、非課税期間は20年間です。長期投資に向いており、インカムゲインとも相性が良い
です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)への加入
・毎月拠出する掛け金がすべて所得控除になるため、課税所得が減り、その分節税につながります。
・運用期間中の利益は非課税で運用できるので、長期での資産形成に大きく寄与します。
配当控除の検討
・ 国内株式の配当金は、総合課税を選択したうえで配当控除を使うと、一定の金額が控除される可能性があります。
・ただし、所得額や税率によっては申告分離課税を選択したほうが有利な場合もあるため、シミュレーションが必要で
す。
損益通算と繰越控除
・株式等の譲渡損失は、配当所得や譲渡益と損益通算が可能です。
・通算しきれなかった損失は3年間繰り越せるため、将来の利益と相殺できます。
不動産投資における減価償却の活用
・建物部分は法定耐用年数に応じて減価償却費が計上できるため、不動産所得を圧縮し、納税額を抑えられます。
税金に関するルールは、毎年のように改正が行われることも少なくありません。特にNISA制度が見直されるタイミングなどは、投資家にとって大きな影響があります。常に最新の情報を把握しながら、自分の投資スタイルに合った最適な制度を選びましょう。
インカムゲインを重視するのか、キャピタルゲインを重視するのかは投資家ごとに異なりますが、どちらにしても「分散投資」や「長期保有」の考え方は非常に大切です。ここでは、代表的な投資手法をいくつか紹介し、それぞれの特徴をまとめます。
資産クラスの分散
株式や債券、現金、不動産など、異なる値動きをする資産を組み合わせることで、リスクを低減します。
地理的分散
海外株式や海外債券など、投資対象を国内に限定しないこともリスク分散につながります。
時間分散(ドルコスト平均法)
定期的に一定金額を投資することで、価格の高いときだけ、あるいは安いときだけに偏らないようにします。
特徴
市場平均を表す指数(例:TOPIX、S&P500など)に連動するファンドやETFに投資する方法。運用コストが低く、長期保有を前提とした資産形成に向いています。
メリット
個別銘柄分析の手間が少なく、幅広い銘柄に分散投資できる。
デメリット
市場平均以上のリターンを目指すのは難しい。
高配当株投資
安定的に配当金を出している企業を狙う方法です。業績に左右される部分があるため、配当の持続性を事前に調べることが大切です。
REIT(不動産投資信託)
不動産からの賃貸収入を配当原資とするので、家賃収入のように安定的なインカムゲインが見込めます。物件を直接持たないため、不動産管理の手間が省ける点が魅力です。
成長投資
これから伸びると期待される企業の株式を買い、株価上昇によってキャピタルゲインを得る手法です。大きなリターンを狙えますが、見込みが外れた場合のリスクも大きいです。
バリュー投資
割安な株式を発掘し、適正価格に戻るまで長期保有することで利益を得るやり方です。企業分析や財務指標の確認が重要になります。
特徴
AIのアルゴリズムに基づき、利用者のリスク許容度や目標に合わせて自動的にポートフォリオを組んでくれます。
メリット
投資経験の浅い人でも始めやすく、感情的な取引を抑えられる。
デメリット
細かい銘柄選択や絶対リターンを追求する投資には向いていない場合がある。
いずれの手法も、相場環境や個人の状況が変わると、合う・合わないが出てきます。投資を始める前に目標をはっきりさせ、実行に移した後も定期的にポートフォリオを見直すのが効果的です。
インカムゲインは、資産を保有している間に得られる安定的な収益が魅力で、初心者を含め多くの投資家にとって重要な選択肢といえます。一方、キャピタルゲインは大きな利益が狙える分、値動きやタイミングに細心の注意が必要です。実際の投資では、両者を上手く組み合わせることでリスクを分散しながら収益を得ることが可能です。税金対策や定期的なリバランスなどの手法も活用し、長期的に資産を増やす計画を立てることが大切です。また、市場や経済情勢は日々変化するため、常に最新の情報をチェックしながら柔軟に戦略を見直すことが成功への近道といえます。
著者|竹川 満 マネージャー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事