資産管理会社とは?利用するメリット・デメリット、設立方法

資産管理会社の設立は、節税や相続対策に効果的です。本記事では、資産管理会社の概要、メリット、デメリット、適した人物像、設立手順を解説します。

目次

  1. 資産管理会社はプライベートカンパニー
  2. 資産管理会社を利用するメリット
  3. 資産管理会社を利用するデメリット
  4. 資産管理会社の利用に適するケース
  5. 資産管理会社の設立方法
  6. まとめ

資産管理会社はプライベートカンパニー

資産管理会社は、個人が保有する株式や不動産などの資産を管理・運用することを目的として設立される法人です。一般的に「プライベートカンパニー」とも呼ばれ、主に以下の目的で設立されます。

相続時の遺産分割をスムーズに行う

所得分散による節税効果を得る

法人税の課税所得から経費を控除する

資産管理会社は、株式会社や合同会社などの法人形態を取り、主な収入源は不動産の賃料収入や保有株式の配当収入となります。近年では、経営者だけでなく、個人投資家や副業を行うサラリーマンの間でも注目を集めています。

資産管理会社を利用するメリット

資産管理会社を設立することで、以下の6つのメリットが得られます。

法人化による節税

個人事業主や副業収入のある会社員が法人化することで、所得税の節税効果を得ることができます。個人の所得税率は最高45%の累進課税ですが、法人税率は23.2%の比例税率です。年収900万円を超える場合、法人化したほうが節税効果が高くなります。

所得分散による節税

資産管理会社の役員に家族を登用することで、一定の要件のもと、役員報酬として所得を分散することができます。これにより、個人の所得税率を引き下げ、税負担を軽減することが可能となります。

経費の範囲の拡大

法人化することで、個人事業主の場合と比べて、経費として認められる範囲が広がります。事業に直接必要な費用だけでなく、一部の間接経費も経費として計上できるようになります。

社会保険に加入できる

資産管理会社の役員は報酬を受け取ることで給与所得者となるため、社会保険に加入することができます。これにより、個人事業主が加入する国民年金や国民健康保険よりも手厚い保障を受けることが可能となります。

相続(税)対策

資産管理会社を設立し、不動産など個人資産の所有権を法人に移転することで、相続時の納税負担を軽減することができます。さらに、不動産を株式化して承継することで、相続争いのリスクも低減できます。

損益の平準化

資産管理会社を設立することで、長期的に損益を平準化し、税負担を安定させることができます。具体的には、欠損金の繰越控除期間は、個人の場合は最長3年ですが、法人の場合は最長10年となります。

資産管理会社を利用するデメリット

資産管理会社の設立には、以下の2つのデメリットがあります。

設立・維持コスト

資産管理会社を設立・維持するためには、各種費用が発生します。設立時には登録免許税や司法書士報酬などの費用がかかり、会社の維持にも毎年一定のコストが必要となります。

具体的には、以下のようなコストが発生します:

法人の場合、会社が赤字でも住民税の均等割(最低7万円)を納める必要があります。

個人事業主と比べて確定申告の事務的な負担が重いため、税理士に依頼する場合はその報酬も発生します。

資産管理会社の設立を検討する際は、これらのコストと節税効果を比較し、慎重に判断する必要があります。

資金使途の制限

法人と個人の財産は別物であるため、資産管理会社の資金を個人が自由に使用することはできません。会社の資金を個人が使用したい場合は、役員報酬や配当として支払う必要があり、その際には所得税が課されますので注意が必要です。

また、役員報酬の金額は会社法で厳密に定められているため、個人の裁量で自由に決めることはできません。資産管理会社の資金を個人に移転する際は、余計な税金を納めることのないよう、慎重に行う必要があります。

資産管理会社の利用に適するケース

資産管理会社の設立が特に効果的な人物像は以下の通りです:

株式投資で高い収益を上げている個人投資家

不動産や株式、先物取引など、様々な投資を行っており、全ての取引の損益通算を希望する個人投資家

本業以外に不動産投資などの副収入がある会社員や公務員

多額の資産を保有しており、相続税の負担が予想される資産家

事業の承継を検討しているオーナー経営者

個人で高い所得税率が適用される収入がある場合、法人化することで大幅な節税効果が期待できます。また、資産管理会社を設立することで、社会保険の手厚い保障を受けられるメリットもあります。

相続対策としても、資産管理会社の活用は有効です。生前に資産を法人に移転することで、相続税の負担を軽減できます。

資産管理会社の設立方法

資産管理会社の設立には、以下の手順が必要です。

会社の基本事項を決める

会社設立時には、以下の5つの基本事項を決定する必要があります:

1. 会社の名称(商号)

2. 本店所在地

3. 出資者と出資割合

4. 資本金の額

5. 事業年度(決算月)

会社の名称は、「株式会社」や「合同会社」の前後に名称を付けます。本店所在地は、法人登記簿に記載される住所です。出資者は資産管理会社の所有者を指します。資本金は1円以上であれば設立可能ですが、1,000万円以上の場合は設立初年度から消費税の課税対象となるので注意が必要です。

登記申請書類の用意と資本金払込

会社設立登記に必要な書類と資本金を準備します。必要な書類は以下の通りです:

定款

登記申請書

出資金を払い込んだことを証する書面

就任承諾書および印鑑証明書(役員全員分)

本店所在地の建物の賃貸借契約書または不動産の登記事項証明書

設立時取締役会の議事録(株式会社の場合)

定款は会社の基本的なルールを定めたもので、公証人の認証が必要です。登記申請書は、法務局に提出する設立登記の申請書類で、通常は司法書士に依頼して作成します。

法務局への提出

準備した書類と資本金を法務局に提出し、登記申請を行います。申請が受理されると、1~2週間程度で会社の設立登記が完了します。登記完了後、税務署への届出や銀行口座の開設など、会社の運営に必要な手続を進めていきます。

まとめ

資産管理会社は、個人資産の管理・運用に有効な手段です。節税効果や相続対策などのメリットがある一方で、設立・維持コストや資金使用の制限といったデメリットも存在します。高所得者や資産家、事業承継を考えている方に特に適していますが、個人の状況に応じて慎重に検討することが重要です。

著者|竹川 満 マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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