M&Aにおけるタイミングは非常に重要な要素となります。成功するためには、最適なタイミングを的確に把握することが求められます。この記事では、将来的に自社を売却したい経営者に向け、M&Aが成功するためのタイミングの見極め方、コツや注意点を詳しく解説いたします。参考になさってください。
目次
タイミングはM&A成功のための重要な要素です。適切なタイミングを見極めることができれば、売却価格が高くなる可能性がある一方、タイミングが悪い場合は売却価格が低くなるリスクがあります。また、適切なタイミングで売り手と買い手を見つけることができない場合、M&Aが成功しないというリスクもあります。そのため、タイミングの見極めが重要となります。
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次に、M&Aのベストタイミングを見極めるためのポイントを紹介します。
まず、会社の業績が良いときがM&Aの好機です。業績が良いうちは、譲渡価格が高くなる可能性がありますし、買い手側としても、良い業績を維持している企業は引き受けやすいです。そのため、業績が良いうちからM&Aを検討し始めることがおすすめです。
経営者の体力が衰え始めたことを感じ取ったときも、M&Aを検討するタイミングです。体力が落ちてしまうと、自社の経営やM&Aのプロセスがスムーズに進められなくなるため、早めに準備を始めることが望ましいです。
事業の成長が鈍化し始めたときも、M&Aを検討するべきタイミングです。成長が鈍化してしまうと、企業価値が下がる可能性があるため、成長が止まる前にM&Aを検討することで、より良い条件での譲渡が期待できます。
競合他社がM&Aを行っていたり、業界に変化が見られたりするときも、M&Aを検討するタイミングです。競合他社の動向によっては、自社の事業機会が減るおそれがあるため、早めにM&Aを検討して対策を講じることが大切です。
市場環境が変化し、自社の事業が厳しくなる兆しを感じたときも、M&Aを検討するタイミングです。市場環境の変化によっては、自社の業績が悪化する可能性があります。そのため、事前にM&Aを検討し、リスクを回避することが重要です。
企業のM&Aにおいて、景気が一つの重要な判断基準となります。景気が良好な状況下では、多くの企業がM&Aを通じて他社を譲り受けたいと考えるでしょう。これにより、かつて買収を検討していなかった企業も、積極的に買収を検討する可能性が高まります。その結果、M&Aが円滑に進行しやすくなる可能性があります。
このような状況では、譲渡先候補が複数存在することから、金額面でも有利になることが期待されます。競合が増えることで譲渡価格が高騰する可能性がありますので、好況期はM&Aを検討するにあたって最適なタイミングといえるでしょう。ただし、好景気がいつまで続くかは予測できないため、景気動向を常に注視することが重要です。
業界再編の進行に伴い、M&Aが活発化することがあります。例えば、業界内で競争が激化したり、市場が縮小したりすることが原因で、経営効率化を目指す企業が増加し、その結果業界全体の環境が大きく変わることがあります。
このようなとき、M&Aが盛んに行われるため、好条件で取引が可能になることや、より高い価格での譲渡が期待できるでしょう。業界再編の引き金となる要因は多岐にわたりますが、法改正や感染症の流行、人口減少などの社会的要因が挙げられます。
企業が保有する「強み」によって、M&Aの最適なタイミングが変わることがあります。ここでいう強みとは、立地や取引先、ノウハウや技術、コンテンツやブランド力などの要素を指します。
まずは自社が持つ強みを正確に把握し、整理しておくことが大切です。その上で、自社の強みが最も高く評価されるタイミングを見極めましょう。例えば、立地が強みであれば、地域開発や好景気による地価上昇が起こるタイミングが狙い目です。
好条件でM&Aを成立させるためには、いくつかのコツがあります。以下の4つのポイントを参考にしてください。
企業の譲渡を目的としたM&Aでは、準備から成立までに1年から数年かかることが一般的です。M&Aは時間を要するプロセスであり、精神的な負担も大きいため、できるだけ早めに準備を開始することが望ましいです。譲受側とのマッチング、条件交渉、手続きがスムーズに進んでいたとしても、M&A成立後の統合プロセス(PMI)にも時間が必要です。
そのため、早期に情報収集を行いながら、準備を進めていくことが重要です。スタートが遅れると、最適なタイミングを逃すことがある一方で、早く始めることでタイミングを逃すリスクは低くなるでしょう。また、M&A交渉時に相手が自社を理解しやすいような資料を用意しておくことも効果的です。
会社の業績を維持することは非常に重要です。良好な業績が続くことによって、将来の見通しも明るくなり、M&Aに関しても有利な条件で進めることができる可能性が高まります。業績が良いと、譲受企業からも魅力的に映り、譲渡先の候補が見つかりやすくなるでしょう。
そのため、企業の譲渡や売却を検討する際も、経営管理体制を維持しながらしっかりと経営を続けることが重要です。営業体制の強化や借入金の返済なども積極的に行い、企業の将来性を高めていくことを意識しましょう。
また、欲張りすぎないことも大切です。複数の譲渡先が望める場合、さらに良い条件の企業が現れるかもしれないと考えて、譲渡先の決定を先延ばしにしてしまうケースがあります。しかし、それが原因で最適なマッチングができず、最初のオファーよりも条件の悪い譲渡先しか選択肢に残らないという状況に陥ることも考えられます。
したがって、M&Aに適したタイミングが訪れた際には、欲張りすぎないようにして、自社にとって最適な譲渡先を見極めることが大切です。業界の動向をチェックすることも必要です。
M&Aの交渉において、譲受側との条件調整は欠かせません。そのため、M&Aの目的を明確にしておくことが重要です。M&Aがなぜ必要なのかという目的をはっきりさせることで、譲れない条件や譲歩しても良い条件が明確になり、交渉をスムーズに進めることができます。
例えば、後継者がいないために事業承継を第三者に依頼したい、経営効率を向上させるためにM&Aを行いたいなど、目的を明確に保ちます。ただし、目的がM&Aの成立そのものを意味する場合は、売却後にトラブルが発生する可能性もあるため注意が必要です。
すでに業績が悪化している場合でも、以下のタイミングでM&Aを検討することが良いでしょう。
業績の回復が見込めず、経営者自身の経営意欲が低下している場合、できるだけ早めに譲渡できる可能性を探求しましょう。時間が経つほど、状況が悪化してM&Aが成立しにくくなるリスクも高まります。専門家に相談し、M&Aを進めることが適切です。
業績が悪化していても、技術やノウハウ、立地条件、商圏など、譲受側にとって魅力的な要素やメリットが存在することもあります。そのため、M&Aがうまくいく可能性も十分に考えられます。
業績が低迷していても、経営意欲に衰えが認められない場合は、自力での事業継続が可能かどうか、事業資本提携の選択肢があるかどうかなど、あらゆる可能性を模索することが効果的です。M&Aによって譲渡する際にも、経営陣として会社に留まることも選択できます。経営意欲がある場合は、諦めずに多様な道を検討しましょう。
M&Aの成功にはタイミングが大切ですが、それ以外にも注意すべきポイントが存在します。
M&Aの過程で情報が漏れないように、十分な注意を払わなければなりません。M&Aの手続きが進行中であることが他者に知られてしまうと、交渉が破談になるリスクがあるため、注意が必要です。会社内でM&Aに関する話題が出たり、仲介会社の担当者が度々自社に出入りすることが情報漏れの原因となることがあります。
従業員や取引先、金融機関などの関係者に対しては、M&Aが成立した後に情報を伝えるのが適切です。譲渡側と譲受側両方から情報が漏れないように、双方およびM&A仲介会社との間で秘密保持契約を結んで対策を講じることが一般的です。
M&Aが選択肢の一つとして考えられた段階で、専門家に相談することがお勧めです。多くのM&A仲介会社では無料で相談が可能ですので、気軽にM&Aについてのアドバイスを求めることができます。
M&Aを成功させるためには、早期に準備を始めることが重要です。できるだけ早く専門家に相談し、適切な準備を進めていきましょう。みつきコンサルティングでは、M&Aが最適な選択肢であるかどうかなど、基本的な相談から受け付けています。自社に適した方法を検討するために、まずは相談してみることをおすすめします。
M&Aを有利な条件で実現させるには、タイミングが非常に重要です。この記事で説明したようなベストなタイミングを把握し、準備を速やかに進めましょう。M&Aを検討する際には、豊富なノウハウや経験を持つM&A仲介会社への相談がお勧めです。
著者|土屋 賢治 マネージャー
大手住宅メーカーにて用地の取得・開発業務、法人営業に従事。その後、総合商社の鉄鋼部門にて国内外の流通に携わる傍ら、鉄鋼メーカーの事業再生に携わる。外資系大手金融機関を経て、みつきグループに参画