バイアウトとイグジットの意味と違い|成功戦略と注意点

バイアウトとイグジットの違いから各手法の特徴、実施時の注意点まで徹底解説します。事業譲渡と株式譲渡の比較や専門機関の活用法など、戦略立案に役立つ情報が満載です。成功への道筋を示します。

目次

  1. バイアウトとイグジットの基本的な違い
  2. バイアウトの全貌:類型と目標
  3. イグジット戦略の全容:種別と狙い
  4. 事業譲渡と株式譲渡の相違点と重要事項
  5. M&A・バイアウト関連の専門機関と活用方法
  6. バイアウト・イグジット戦略実行のためのポイント
  7. まとめ

バイアウトとイグジットの基本的な違い

バイアウトとイグジットは、企業経営において重要な概念ですが、その目的と手法には明確な違いがあります。ここでは、それぞれの基本的な意味と特徴について解説します。

バイアウトとイグジットの定義と目的

バイアウトは、企業内部の人間が株式の一部または全部を取得することで、経営権を掌握することを指します。主な目的は、経営の自主性確保や事業の再構築、成長戦略の推進などです。

一方、イグジットは、投資家が保有している企業の株式や資産を売却することで、利益を得ることを主眼としています。主な目的は、投資回収や事業価値の最大化です。

具体的には、バイアウトの場合、経営陣や従業員が自社株式を取得して経営権を握ることで、意思決定の迅速化や経営方針の転換を図ることができます。イグジットの場合、株式公開(IPO)やM&A(合併・買収)などの手法を通じて、投資家は資金回収を行い、企業は新たな成長機会を得ることができます。

バイアウトとイグジットは、状況に応じて適切な手法を選択することが重要です。企業の成長段階や経営課題、市場環境などを総合的に判断し、最適な戦略を立てる必要があります。

バイアウトの全貌:類型と目標

バイアウトには、主にMBO(マネジメント・バイアウト)、LBO(レバレッジド・バイアウト)、EBO(エンプロイ・バイアウト)などの種類があります。これらの手法は、企業価値の向上、事業再構築、経営者の権益確保など、様々な目的で活用されます。

各バイアウト手法の特性と実例

MBO(マネジメント・バイアウト) 

o 特徴:経営者が自社株式を取得し、経営の自主性を確保する手法

o 活用例:事業承継や企業の成長戦略推進、特に中小企業の後継者問題解決に有効


LBO(レバレッジド・バイアウト) 

o 特徴:買収資金の大部分を借入などで調達し、少ない自己資金で買収を実行

o 活用例:再生案件やPE投資など、ビジネスチャンス創出に活用されるが、借入リスクを伴う


EBO(エンプロイー・バイアウト) 

o 特徴:従業員が自社株式を取得し、経営権を獲得する手法

o 活用例:後継者不在の中小企業で、従業員の意識向上や経営参加による企業価値向上を期待

バイアウト実行時の留意事項と成功のコツ

バイアウトを成功させるためには、以下の点に注意が必要です。

1. 企業価値評価:適切な評価額の設定がバイアウト成功の鍵。専門家のサポートを受けることが推奨されます。

2. 事業の成長性:バイアウト後の事業成長と利益向上が期待できる場合、より高額での売却が可能となります。

3. 適切なタイミングと計画性:市場状況や競合他社の動向を見極め、企業に適した手法を選択し、取引のタイミング
                を慎重に検討します。

4. 事前準備:事業の強みや弱みを整理し、買い手に対して自社の魅力をアピールすることが重要です。

これらの点に留意しつつ、専門家のアドバイスを適切に活用することで、バイアウトの成功確率を高めることができます。

イグジット戦略の全容:種別と狙い

イグジット戦略は、企業経営者や投資家が保有株式を売却し、投資回収や事業価値の最大化を図る手法です。主な種類とそれぞれの目的について解説します。

IPOや事業売却等のイグジット方式

1. IPO(株式公開) 

 o 目的:企業が株式市場に上場し、資金調達と企業価値向上を図る

 o 特徴:株式の流動性確保や企業の信用力向上が期待できる

 o 留意点:上場準備や運営コストが高く、厳しい審査基準がある

2. 事業売却(M&A) 

 o 目的:事業の一部または全部を他企業や投資家に譲渡し、経営者利益獲得や事業再編を行う

 o 特徴:中小企業で最も多く採用されているイグジット手法

 o 留意点:適切な譲渡価格の設定や買い手の確保、交渉が課題

3. MBO(マネジメント・バイアウト) 

 o 目的:経営陣が自社株式を取得し、事業の効率化や価値向上を目指す

 o 特徴:経営の自主性確保や迅速な意思決定が可能

 o 留意点:資金調達や経営リスクの負担が必要

イグジット戦略の最適なタイミングと実施方法

イグジット戦略を成功させるためには、以下の点に注意して適切なタイミングで実施することが重要です。

1. 市場状況の把握:業界動向や競合他社の状況を分析し、最適なタイミングを見極める

2. 企業価値の最大化:財務状況の改善や事業の成長性アピールにより、企業価値を高める

3. 買い手のニーズ理解:潜在的な買い手企業のニーズを把握し、自社の魅力を効果的にアピール

4. 専門家の活用:M&Aアドバイザーや法務・税務の専門家と連携し、適切なサポートを受ける

5. 従業員への配慮:イグジット後の雇用問題や労働条件の変更について、十分な説明と調整を行う

イグジット戦略の進め方は手法によって異なります。IPOの場合は上場準備や財務諸表の整備、株式公開審査が必要です。事業売却(M&A)では、提案資料作成、買い手募集、譲渡価格算定が重要です。いずれの場合も、自社事業の強みや将来性をアピールすることが成功の鍵となります。

事業譲渡と株式譲渡の相違点と重要事項

事業譲渡と株式譲渡は、企業の資金調達や戦略的目的のために用いられる手法ですが、その特徴や法的な取り扱いに大きな違いがあります。ここでは、両者の相違点と重要な事項について解説します。

各手法における財務・法務面の注意点

1. 事業譲渡 

 o 財務面:譲渡対価の税務処理に注意が必要

 o 法務面:移転後の事業継続性の確保、従業員や取引先との契約再締結が必要

 o その他:営業許可や基本契約の締結し直しが必要

2. 株式譲渡 

 o 財務面:企業価値評価の妥当性確認が重要

 o 法務面:株式売買契約内容の適切な取り決めが必要

 o その他:定款に則った社内手続き、監査機関への報告、株主総会決議など一連の手続きが必要

事業譲渡の利点

事業譲渡には以下のような利点があります。

1. 一部事業のみの売却が可能(譲渡側) 

 o 非採算事業のみを手放し、経営資源を採算事業に集中できる

 o 売却益を残された事業に投資し、収益性向上が期待できる

2. 企業存続が可能(譲渡側) 

 o 経営権を維持しつつ、一部事業のみを譲渡できる

 o 譲渡益を活用した財務健全化や新規事業展開が可能

3. 簿外債務などのリスク回避(譲受側) 

 o 必要な経営資源のみを取得でき、潜在的なリスクを回避できる

4. 節税効果(譲受側) 

 o のれんや償却資産の償却により、資金流出のない損失計上が可能

株式譲渡の利点

株式譲渡には以下のような利点があります。

1. 会社のすべてのリソースを引き継ぐことが可能 

 o 従業員、取引先との契約、許認可をそのまま継承できる

2. 取引手続きが簡易 

 o 債権者保護手続きや公告が原則不要

 o 他の手法と比較して手続きが容易

3. 株主変更のみで会社は存続 

 o 法人格の同一性が維持されるため、事業の連続性が確保しやすい

4. 譲渡損益の計上が可能(個人株主の場合) 

 o 譲渡価額と取得価額の差額を譲渡損益として計上できる

事業譲渡と株式譲渡は、それぞれに特徴があり、企業の状況や目的に応じて適切な手法を選択することが重要です。

M&A・バイアウト関連の専門機関と活用方法

M&Aやバイアウトを成功させるためには、専門的な知識やノウハウが不可欠です。

専門機関

ここでは、主な専門機関とその活用方法について解説します。

1. 金融機関 

 o 特徴:幅広いネットワークと資金面のサポートが強み

 o 活用法:普段から取引のある金融機関に相談し、M&A情報や資金調達の助言を得る

 o 注意点:情報漏洩リスクや高額な成功報酬に注意が必要

2. M&A仲介会社 

 o 特徴:中立的立場で譲渡側と譲受側の仲介を行う

 o 活用法:案件のマッチングから交渉、手続きまで一貫したサポートを受ける

 o メリット:中小規模のM&Aに適しており、友好的な取引を円滑に進められる

3. 会計事務所・税理士事務所 

 o 特徴:財務・税務面での専門知識が豊富

 o 活用法:企業価値評価や税務戦略の立案、デューデリジェンスのサポートを受ける

 o メリット:資金面や税務面での最適化を図れる

4. 法律事務所 

 o 特徴:法務面での専門知識と経験が豊富

 o 活用法:契約書作成や法的リスクの分析、各種手続きの適法性確認を依頼する

 o メリット:法的トラブルの予防や円滑な取引の実現に寄与

5. コンサルティング会社 

 o 特徴:戦略立案から実行支援まで幅広いサービスを提供

 o 活用法:事業価値向上策の策定や統合後の組織再編などのアドバイスを受ける

 o メリット:長期的な視点での戦略立案や実行支援が可能

専門機関と協力した事業承継の成功要因

専門機関と連携して事業承継を成功させるための重要なポイントは以下の通りです。

1. 適切なアドバイザー選定 

 o 自社の規模や業界に精通した専門家を選ぶ

 o 複数の専門家の意見を聞き、最適な支援体制を構築する

2. 正確な企業価値評価 

 o 財務データだけでなく、無形資産も含めた適切な評価を行う

 o 将来の成長性や事業リスクも考慮した評価を依頼する

3. 効果的な資金調達計画 

 o 自己資金、借入、ファンド活用など、最適な資金調達方法を検討する

 o 返済計画も含めた長期的な財務戦略を立案する

4. 人材戦略の見直し 

 o 承継後の経営体制や人材育成計画を策定する

 o キーパーソンの維持や新たな人材の登用を検討する

5. 業務効率化や収益向上策の推進 

 o 専門家の知見を活かし、事業の強みを伸ばす戦略を立案する

 o デジタル化やコスト削減など、具体的な改善策を実行する

これらのポイントを押さえつつ、専門機関との連携を深めることで、円滑な事業承継と企業価値の向上を実現できます。

バイアウト・イグジット戦略実行のためのポイント

バイアウトやイグジット戦略を成功させるためには、綿密な準備と適切な実行が不可欠です。ここでは、戦略実行のための重要なポイントを解説します。

事前の準備

1. 事業の目的と経営方針の明確化 

 o 中長期的な事業ビジョンを策定する

 o 具体的な数値目標を設定し、達成への道筋を描く

2. 資金調達や株式売却の必要性の検証 

 o 現在の財務状況と将来の資金需要を分析する

 o 最適な資金調達手段や株式売却の時期を検討する

3. 金融機関や投資家との関係構築 

 o 日頃からコミュニケーションを取り、信頼関係を築く

 o 自社の事業計画や財務状況を適切に開示する

4. 適切な企業価値算定の実施 

 o 専門家の協力を得て、客観的な企業価値評価を行う

 o 将来の成長性や市場動向も考慮した評価を心がける

5. 法務や税務に関する専門知識の習得 

 o セミナーや専門書などで基本的な知識を身につける

 o 必要に応じて専門家のアドバイスを受ける

6. 売却や投資対象企業の選定基準の設定 

 o 自社の強みを活かせる分野や相乗効果が期待できる企業を検討する

 o デューデリジェンスの実施方法や基準を事前に決めておく

7. 自社の強みや競合他社との違いの明確化 

 o SWOT分析などを通じて自社の特徴を整理する

 o 競合他社との差別化ポイントを明確にする

8. 中小企業向け支援サービスや資金調達機関が提供する無料相談の活用 

 o 公的機関や金融機関が提供する無料相談サービスを積極的に利用する

 o 専門家の意見を参考に、自社の状況を客観的に把握する

9. 社内外の人材や専門家との連携強化 

 o 社内の関係部署と情報共有し、協力体制を構築する

 o 外部の専門家とのネットワークを拡大し、多角的な視点を取り入れる

戦略策定のキーポイント

1. 市場動向の把握と分析 

 o 業界全体の成長性や競合他社の動向を調査する

 o 将来的な市場変化を予測し、戦略に反映させる

2. 株主や金融機関の要求や期待を考慮 

 o 主要株主や取引金融機関との対話を通じて、ニーズを把握する

 o 各ステークホルダーの利害を調整し、バランスの取れた戦略を立案する

3. メリット・デメリットの比較検討 

 o 各戦略オプションのメリットとデメリットを洗い出す

 o 短期的な効果だけでなく、中長期的な影響も考慮する

4. バイアウトやM&A、IPOなど各種手法の特徴分析 

 o 各手法の特徴や適用条件を詳細に調査する

 o 自社の状況に最適な手法を選択する

5. 自社の事業目的や資本政策に合った戦略選択 

 o 経営理念や長期ビジョンとの整合性を確認する

 o 将来の成長戦略や資本構成の最適化を考慮した選択を行う

これらのポイントを踏まえた戦略策定により、企業は各種局面において迅速かつ柔軟な対応が可能となります。また、事業の成長と収益性を向上させ、企業価値の最大化を目指すことができます。

まとめ

バイアウトとイグジット戦略は、企業価値の向上と持続的な成長を実現するための重要な手法です。適切な戦略選択と実行のためには、市場動向の分析や専門家との連携、綿密な準備が不可欠です。企業の状況に応じた最適な手法を選び、リスクを管理しながら戦略を推進することで、成功への道が開かれます。

著者|竹川 満 マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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