時価総額の計算方法と企業価値算定の基本と要点を解説

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時価総額の計算方法を例で解説企業価値との違いとM&A活用

時価総額は株価×発行済株式数で求める市場評価です。計算例、調べ方、自己株式や株価変動の注意点、企業価値との違い、会社売却やM&Aでの活用を解説します。

目次

  1. 時価総額は市場が付ける株主価値
  2. 時価総額の計算式と具体例
  3. 時価総額の調べ方と読み方
  4. 企業価値や総資産との違い
  5. M&Aで時価総額を見る実務ポイント
  6. まとめ

時価総額は市場が付ける株主価値

時価総額は、上場会社の価値や規模を知るときに最初に見られる指標です。ニュースで「時価総額が過去最高」と聞いても、何を表す数字なのか分かりにくいことがあります。

時価総額とは、株式市場がその会社の株式全体をいくらと評価しているかを示す金額です。英語ではmarket capitalization、略してmarket capと表記されます。上場企業の場合、株式市場で売買されている株価に、発行済株式数を掛けて計算します。

ここでいう発行済株式数とは、会社がすでに発行している株式の総数です。株価だけを見ると、1株あたりの値段しか分かりません。株価が高い会社でも株式数が少なければ時価総額は小さくなり、株価が低い会社でも株式数が多ければ時価総額は大きくなります。

株価だけでは会社の大きさを比較できない

「A社の株価はB社より高いから、A社の方が大きい」と判断するのは危険です。株価は1株あたりの値段に過ぎません。発行済株式数を掛けた時価総額で見て、初めて会社全体の市場評価を比べやすくなります。

たとえば、株価が10,000円の会社でも発行済株式数が少なければ、株価1,000円の会社より時価総額が小さいことがあります。投資やM&A(合併・買収)で会社の規模をつかむときは、株価ではなく時価総額を見るのが基本です。

市場評価なので日々変動する

時価総額は固定された価格ではありません。株価が動けば、そのたびに時価総額も変わります。決算発表、新商品、金利、為替、海外市場の動きなど、さまざまな情報が株価に反映されるためです。

そのため、時価総額を見るときは「いつ時点の数字か」を確認する必要があります。同じ会社でも、昨日と今日で評価額が変わることも珍しくありません。

時価総額の計算式と具体例

計算式はとてもシンプルです。ただし、シンプルだからこそ、株価と株式数のどちらを使ったのかをあいまいにすると、比較結果がずれます。

 時価総額=現在の株価×発行済株式数

現在の株価は、株式市場で取引されている最新の価格です。発行済株式数は、会社が発行した株式の数を指します。実務では、決算短信、有価証券報告書、金融情報サイト、証券会社の銘柄情報などで確認します。

2,500円と4,000万株なら1,000億円

具体例で確認します。株価が2,500円、発行済株式数が4,000万株の会社があるとします。

 2,500円×40,000,000株=100,000,000,000円

この会社の時価総額は1,000億円です。数字が大きく見えますが、計算の中身は1株あたりの値段に株式数を掛けているだけです。経営者が自社の売却価格を考えるときも、まずは「株主に帰属する価値をどう見るか」という発想に慣れておくと理解しやすくなります。

自己株式の扱いで数字が変わることがある

自己株式とは、会社が自ら保有している自社株のことです。時価総額の表示では、自己株式を含む発行済株式数で計算する場合と、自己株式を除いた株式数を使う場合があります。

通常の情報サイトでは自動計算された時価総額が表示されますが、自己株式が多い会社では、表示元によって数値が少し異なることがあります。厳密な比較をする場合は、計算根拠となる株式数まで確認することが大切です。

非上場企業では同じ式をそのまま使えない

非上場企業には、毎日取引される市場株価がありません。そのため、上場会社のように「株価×発行済株式数」で時価総額を直接計算することは通常できません。

中小企業の会社売却では、株式価値算定やバリュエーションと呼ばれる手続で評価します。純資産をもとに見る方法、将来の利益やキャッシュフローをもとに見る方法、同業他社の取引倍率を参考にする方法などを組み合わせることが多いです。

時価総額の調べ方と読み方

自分で計算しなくても、上場企業の時価総額は多くのサイトで確認できます。調べ方を知っておくと、競合企業や買い手候補の規模感を素早くつかめます。

Yahoo!ファイナンスなどの投資情報サイトや、各ネット証券の銘柄詳細ページでは、企業名または証券コードで検索すると時価総額が表示されます。過去の推移や関連指標を一緒に見られるサービスもあり、投資判断だけでなく、業界研究にも役立ちます。

ランキングは規模感をつかむ入口

時価総額ランキングを見ると、市場がどの業界や企業を高く評価しているかが分かります。自動車、半導体、通信、金融、ソフトウェアなど、時期によって上位に並ぶ業種は変わります。

ただし、ランキングはあくまで相対比較です。時価総額1,000億円を超える会社は一般に大きな会社として見られやすい一方、業界によって規模の目安は異なります。地方のニッチ製造業と全国展開の小売業では、必要な設備、人員、利益率が違うため、同じ物差しだけで良し悪しを決めることはできません。

数値の裏にある期待とリスクを見る

時価総額が大きい会社は、安定性や成長性を市場から評価されている可能性があります。一方で、すでに期待が株価に織り込まれている場合、短期間で大きく値上がりする余地は限られることもあります。

時価総額が小さい会社は、成長すれば評価が大きく上がる可能性があります。しかし、業績悪化、資金繰り、人材不足などで株価が大きく下がるリスクもあります。数字だけで判断しないこと。ここが意外と多い落とし穴です。

企業価値や総資産との違い

時価総額、企業価値、株価、総資産は似た場面で使われますが、意味は違います。ここを混同すると、会社売却や買収価格の話で判断を誤りやすくなります。

株価は1株あたりの値段です。総資産は、貸借対照表に載っている現金、売掛金、在庫、建物、土地、設備などの資産合計です。どちらも重要な数字ですが、株主全体に帰属する市場評価を直接示すものではありません。

企業価値は借入や現預金も含めて考える

企業価値は、会社全体の経済的な価値を表す考え方です。簡便には、時価総額に純有利子負債を加えて考えます。純有利子負債とは、銀行借入などの有利子負債から、余剰現預金などを差し引いたものです。

時価総額は株主に帰属する価値を見ます。企業価値は、株主だけでなく金融機関などの債権者も含めて、会社全体をどう評価するかを見る指標です。M&A実務では、買い手が実質的に引き受ける借入や現預金の状況も交渉に影響します。

事業価値は本業が生む価値に注目する

事業価値は、本業が将来生み出す価値に注目する考え方です。遊休不動産、多すぎる現預金、事業に使っていない投資資産などは、事業価値とは分けて考えることがあります。

中小企業では、本業の利益と個人色の強い資産が混ざっていることも少なくありません。会社売却を検討する場合は、時価総額の考え方だけでなく、事業価値、株式価値、手取り額を分けて整理する必要があります。

M&Aで時価総額を見る実務ポイント

時価総額は、M&Aの価格交渉でも参考になります。ただし、そのまま譲渡価格になるわけではありません。ここを誤解すると、買い手にも売り手にも納得しにくい金額になってしまいます。

上場企業を買収する場合、時価総額は理論上、現在の株価で全株式を買うなら必要になる金額の目安です。もっとも実際には、支配権を得るためのプレミアム、株価変動リスク、有利子負債、余剰現預金、統合後の効果などを調整します。

中小企業の会社売却では出発点に過ぎない

非上場の中小企業では、市場株価がないため、時価総額という言葉を使う場合でも、実態としては株式価値を算定していることが多いです。決算書の利益、役員報酬、借入金、個人保証、主要取引先への依存、後継者の有無など、価格に影響する要素は多岐にわたります。

たとえば、同じ利益水準の会社でも、特定の社長だけが営業を担っている会社と、幹部が自走できる会社では、買い手の評価が変わります。M&A実務では、ここで判断が止まることがあります。数字は同じでも、引き継ぎやすさが違うからです。

譲渡価格を考えるときの確認事項

会社売却を検討する経営者は、時価総額の考え方を知ったうえで、自社の価値を次のように整理すると実務に近づきます。


・株主に帰属する価値と、会社全体の企業価値を分けて考える

・借入金、現預金、役員貸付金、役員借入金の扱いを確認する

・税金を差し引いた後に、手元にいくら残るかを試算する

・買い手が評価する強みと、価格を下げるリスクを把握する

・株式譲渡か事業譲渡かによって、譲渡価格と税負担が変わる点を確認する


時価総額は便利な入口です。しかし、M&Aの現場で大切なのは、入口の数字を実際の譲渡価格、税負担、手取り額、引継ぎ条件に落とし込むことです。

まとめ

時価総額は、株価に発行済株式数を掛けて求める市場評価です。企業規模や買収価格の目安を素早く把握できますが、自己株式、株価変動、借入金、現預金を見落とすと判断がずれます。会社売却では、時価総額の考え方を出発点に、企業価値、株式価値、税引後の手取り額、買い手が重視するリスクまで整理しておくことが大切です。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人