時価総額の計算で企業価値算定の基本と要点を解説
時価総額やその計算方法を知りたいですか。株価と発行済株式数から導くシンプルな式と活用のコツをわかりやすく説明します。
目次
▶目次ページ:企業価値評価(価値評価の概要)
時価総額は株価に発行済株式数を掛け合わせて求める単純な数値です。投資家はこの数値を手がかりに企業の市場評価を把握します。新聞やニュースで頻繁に扱われるため、まずは仕組みを押さえましょう。
時価総額=株価×発行済株式数
例えば株価100円の会社が1,000株を発行していれば、時価総額は10万円になります。この式は上場企業ならどこでも同じです。
海外記事では“market capitalization”または“market cap”と表記されます。外国企業を調べる際に必ず目にするため、併せて覚えておくと便利です。
省略形はビジネスレポートだけでなくSNSにも頻出します。日本語の資料でも括弧書きで補足するケースが増えています。
図そのものは割愛しますが、企業Aと企業Bの時価総額を比較した場合、数値が大きい企業Aの方が一般に価値が高いと判断されます。ここでは時価総額が単なる株価合計であっても、市場からの期待を表す点を理解してください。
トヨタ自動車とキーエンスの例を思い出してください。キーエンスの株価はトヨタより高いものの、発行済株式数が少ないため時価総額ではトヨタが上回ります。株価だけで企業規模を比較する危険性がここにあります。
株価比較は発行済株式数の差で誤認しやすい
株価は需要と供給で上下し、株数の多寡で絶対値が変動します。時価総額なら株数を掛け合わせることでこのばらつきを均すことができます。
市場では時価総額1,000億円以上を安定企業、数百億円を中堅、数十億円を成長途上と大まかに区分することがあります。このピラミッドを活用すると企業の位置付けが視覚的に把握できます。
絶対的な良し悪しではなく、比較のための物差しとして利用する姿勢が重要です。
原文では2024年6月24日時点のランキングが示されています。詳細な数値は割愛しますが、自動車メーカーや通信大手、電子部品メーカーなどが上位を占めており、世界でも存在感の大きい企業が並びます。たとえばトヨタ自動車やソニーグループ、NTT、キーエンスといった社名が挙げられていました。時価総額は日々の株価変動で順位が入れ替わるため、最新データをこまめに確認する習慣が大切です。
上位リストを見ると、売上規模に加えて海外売上比率やブランド力が時価総額に影響していることがわかります。
投資家はランキング変動から市場の潮流を読み取る
順位が急上昇した企業は新規事業や成長戦略が評価されたと推測される一方、大きく下落した企業は業績悪化だけでなく外部要因で売りが先行している可能性があります。
企業価値、株価、総資産の三つはしばしば時価総額と混同されます。ここで相違点を簡潔に整理します。
企業価値=株主価値(時価総額)+有利子負債。この式どおり、企業価値は買収価格などを検討する際の実質的な取引額に近い概念です。
株価は需要と供給で動くため、必ずしも企業本体の大きさを示すものではありません。
総資産は流動資産と固定資産の合計です。帳簿に基づく静的な数値で、市場からの期待値は含まれません。
時価総額を実務で活用する際は「市場全体との比較」と「業界内での比較」の二軸を意識します。
ピラミッドの上部に位置する企業は成熟企業と呼ばれ、安定的なキャッシュフローが期待できます。
同業他社ならビジネスモデルや指標が似通うため、時価総額差は戦略や技術力、ブランド力の差として浮かび上がります。
両軸比較で投資判断のブレを小さくする
市場全体での位置と業界内での位置を合わせて確認すると、極端な評価を避けられます。
時価総額は便利な指標ですが、万能ではありません。原文では次の二点に留意するよう説明されています。
原文ではYahoo!ファイナンスとバフェット・コードを使った調査手順が紹介されています。ここでは手順の概要を説明します。
サイトごとの更新頻度と使い分けがポイント
リアルタイム性を重視するならYahoo!、財務分析と過去推移を確認するならバフェット・コードというように目的別に使い分けましょう。
ここまでで時価総額の定義、計算式、基本的な目安、ランキングの読み方、他指標との違い、注意点、調べ方までを確認しました。次章では時価総額を用いた具体的な分析手順と、企業価値との詳細な比較を掘り下げ、実際の投資・経営判断にどう活用するかを解説します。
この知識を土台にすると、数字の背後にあるビジネスストーリーが見え、判断の精度が一段高まります。続きは後半で詳しく解説します。ぜひ後半もご覧ください。ご期待ください。
企業価値は会社全体が将来生み出す経済的価値を現在価値に置き換えた金額です。有利子負債を足し合わせるため、株主価値を示す時価総額より広い概念といえます。M&Aや大型融資では、この企業価値が交渉の起点になります。
時価総額が株主価値を示すのに対し、有利子負債を加えることで金融機関や買収企業が負担する総額に近づきます。企業の本当の“買値”を把握するには欠かせません。
企業価値は事業継続を前提にする継続価値と、事業停止を前提にする清算価値に大別されます。目的に合った概念を選ばなければ誤った判断に結びつく恐れがあります。
今後も営業を続ける前提で、利益や配当などから価値を割り出します。上場企業の比較で多用されます。
活動停止を前提にするため、退職金や処分コストを控除した資産純額で評価します。期限の有無で強制処分価値と非強制処分価値に分かれる点が特徴です。
事業価値は事業活動が生む収益性に特化した指標で、現預金や遊休地など事業外資産を含みません。株主価値は企業価値から負債を差し引いた値で、株主に帰属する価値を示します。混同を避けることが重要です。
EV(Enterprise Value)は事業価値と同義語です。企業価値全体とは異なりますので注意しましょう。
日本公認会計士協会のガイドラインは、企業価値算定で次の要因を挙げます。
多角的に検証することで、より現実的な評価が可能になります。
企業価値は目的に応じて三つのアプローチを使い分けます。
帳簿純資産や時価純資産を用いるため客観性が高い一方、成長力を加味できない点が難点です。
DCF法・収益還元法・配当還元法などが代表例です。事業計画の信頼性が結果を左右します。
上場企業なら市場株価、非上場企業なら同業他社を比較対象にして算出します。客観性は高いものの、市場の一時的な変動に影響されるリスクがあります。
高い企業価値は買い手との交渉材料になるだけでなく、取引先や金融機関からの信用向上にも直結します。
ビジネスモデルを見直し、無駄なコストを削減しながら高収益事業を増やすことが基本です。
遊休資産の売却や移転で固定費を軽減し、資金を成長事業に再配分します。
従業員のスキルや独自ノウハウ、特許を棚卸して新規ビジネスや差別化戦略に結び付けます。
企業価値は会社の経済的価値を金額で示したもので、「会社の価格」と表現できます。
EVは事業価値と同義であり、企業価値とは異なります。企業価値は社会的価値も含む総合指標です。
提示先によって帰属が変わります。株主に示す場合は株主価値、買収交渉なら企業価値全体を算定します。
M&Aでの交渉力向上、好条件融資の獲得、倒産リスク低減など多面的なメリットがあります。
時価総額は株価×発行済株式数で求める市場評価のスナップショット、企業価値は将来キャッシュフローも含む包括的な指標です。両者を併用することで、企業の規模・成長力・買収価値を立体的に捉えられます。数値の背後にある事業構造や市場環境を読み解き、投資や経営判断に活用してください。
時価総額は株価と株式数で瞬時に企業規模を測れる便利な指標です。一方、企業価値は将来性や負債を加味する包括評価で、M&Aや資金調達を左右します。両指標を比較し、市場全体・業界内で相対評価することで、企業の真価をより正確につかめます。
著者|土屋 賢治 マネージャー
大手住宅メーカーにて用地の取得・開発業務、法人営業に従事。その後、総合商社の鉄鋼部門にて国内外の流通に携わる傍ら、鉄鋼メーカーの事業再生に携わる。外資系大手金融機関を経て、みつきグループに参画