会社が解散する7つのケース|清算結了までの流れ・所要期間・相談先

会社解散の定義や手続、メリット、かかる期間や費用について詳しく解説します。また、解散時に相談すべき専門家についても紹介します。

目次:

  1. 会社解散の概要
  2. 会社を解散するメリット
  3. 7つの会社解散事由
  4. 会社解散と清算結了までの流れ
  5. 解散から清算結了までに要する期間
  6. 会社解散と清算結了にかかる費用
  7. 会社解散時の専門家への相談
  8. まとめ

会社解散の概要

会社解散とは、企業のすべての営業活動を停止し、会社を消滅させる準備段階に入ることを指します。これは、企業が事業活動を完全に終了し、法人格を消滅させるための第一歩となります。

会社解散の理由には、業績不振による倒産や自主的な廃業などがあります。しかし、解散を決定しただけでは会社が即座に消滅するわけではありません。解散後には、債権債務の整理や財産の処分など、さまざまな清算手続が必要となります。

清算手続の概要

清算手続は、会社解散後に行われる重要なプロセスです。この手続には主に以下のような項目が含まれます:

 1. 契約の履行および解除:取引先との取引契約や従業員との雇用契約などを整理します。

 2. 債権の回収:貸付金や売掛金などの債権を回収します。

 3. 財産の換価処分:換金可能な財産を処分します。

 4. 債務の弁済:借入金、買掛金、未納地代家賃などの債務を返済します。

 5. 残余財産の分配:債務を返済した後の残余財産を株主に分配します。

清算手続には、会社の財務状況に応じて2つの方法があります:

 1. 通常清算:会社が全ての債務を支払える場合に、会社自身が行う清算方法です。

 2. 特別清算:会社が実質的に債務超過の場合に、裁判所の監督下で行われる清算方法です。

これらの手続を経て、最終的に会社の法人格が消滅することになります。

会社を解散するメリット

会社解散には、一般的に否定的なイメージがありますが、実際にはいくつかのメリットも存在します。以下に主なメリットをご紹介します。

 1. 法人税負担の軽減 

   会社を解散することで、法人税の負担がなくなります。特に休眠状態の会社でも、法人として存続している限り法
   人住民税の均等割が課せられますが、解散後はこの納税義務も消滅します。

 2. 決算報告書作成の省略 

   法人格が存続する限り、毎年の決算報告書作成と決算申告が必要です。会社を解散することで、これらの手続が不
   要となり、事務作業の負担が大幅に軽減されます。

 3. 役員登記手続の省略 

   休眠状態の会社であっても、少なくとも10年に1回の役員再任登記が必要です。この手続を怠ると制裁金が科され
   る可能性もあります。会社解散により、これらの登記手続も不要となります。

これらのメリットは、特に事業活動を停止している休眠会社や、将来的な事業再開の見込みがない会社にとって、大きな意味を持ちます。会社解散を検討する際は、これらのメリットも考慮に入れて判断することが重要です。

7つの会社解散事由

会社法では、会社が解散する、または解散しなければならない場合として、7つの解散事由が定められています。これらの事由に該当する場合、会社は法的に解散状態となります。

 1. 定款で定めた存続期間の満了 

   定款に「当社の存続期間は20年間とする」などと記載されている場合、その期間が満了すると自動的に会社は解散
   となります。

 2. 定款で定めた解散事由の発生 

   特定のプロジェクトの完了時に会社を解散すると定款に記載されている場合、そのプロジェクトが完了した時点で
   解散事由が発生します。

 3. 株主総会の決議 

   議決権を行使できる過半数の株主が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成による特別決議で会社の解散が決議さ
   れた場合、その日をもって会社は解散となります。

 4. 合併による会社の消滅 

   他社との合併により会社が消滅する場合、吸収合併される会社や新設合併で消滅する会社は解散となります。

 5. 破産手続開始の決定 

   裁判所への申立てにより破産手続が開始された場合、会社は解散となります。この場合、清算手続ではなく破産手
   続が行われます。

 6. 裁判所による解散命令 

   会社が公益に反する違法行為を行っている場合など、裁判所の解散命令により会社が解散となることがあります。

 7. 休眠会社のみなし解散 

   最後の商業登記から12年間経過している株式会社は休眠会社とみなされ、法務大臣による官報公告後2か月以内に
   登記申請がなければ解散登記されます。

これらの解散事由は、会社の存続や解散を決定する重要な要素となります。経営者や株主は、これらの事由を理解し、適切な対応を取ることが求められます。

会社解散と清算結了までの流れ

 会社の解散から清算結了までには、一連の手続が必要です。以下に、一般的な流れをご紹介します。

 

 1. 解散の意思決定:会社の解散を決定します。通常は株主総会の特別決議によって行われます。

 2. 解散登記:解散が決定した後、2週間以内に管轄の法務局で解散の登記を行います。

 3. 清算人の選任:清算人が選任されます。通常は取締役が清算人となりますが、株主総会で別途選任することも可能
        です。

 4. 債権者への通知と官報公告:知れている債権者には個別に通知を行い、同時に官報に解散公告を掲載します。

 5. 債権申出期間の設定:債権者からの債権申出期間を設定します。通常は2か月以上の期間を設けます。

 6. 財産目録・貸借対照表の作成:清算人は会社の財産目録と貸借対照表を作成し、株主総会の承認を得ます。

 7. 債権の取り立てと債務の弁済:会社の債権を回収し、債務を弁済します。

 8. 残余財産の分配:債務弁済後に残った財産がある場合、株主に分配します。

 9. 清算結了の登記:すべての清算手続が完了したら、清算結了の登記を行います。

 10. 帳簿書類の保存:清算結了後、帳簿書類を10年間保存します。

この流れは一般的なものであり、会社の状況によって多少の違いが生じる場合があります。また、特別清算や破産手続の場合は、異なる手順となることにご注意ください。

解散から清算結了までに要する期間

 会社の解散から清算結了までの期間は、会社の規模や状況によって大きく異なりますが、一般的には最低でも2か月以上かかります。これは、法律で定められた最低限の期間です。

具体的には、以下の要因が期間に影響を与えます:

 1. 債権者への通知と債権申出期間:官報公告を行ってから、債権者が債権を申し出る期間として最低2か月間を設ける
    必要があります。

 2. 会社の規模と複雑さ:大規模な会社や、複雑な事業構造を持つ会社の場合、清算手続に時間がかかる傾向がありま
    す。

 3. 債権回収と債務弁済の状況:債権の回収や債務の弁済に時間がかかる場合、全体の期間が延びることがあります。

 4. 残余財産の処理:残余財産の処分や分配に時間がかかる場合もあります。

 5. 法的手続の複雑さ:特別清算や破産手続が必要な場合、通常の清算よりも長期間を要することがあります。

実際の期間は、これらの要因によって数か月から1年以上かかることもあります。特に、事業規模が大きく、取引先や財産が多い会社の場合は、手続により多くの時間を要する可能性があります。

会社解散と清算結了にかかる費用

会社の解散と清算結了には、いくつかの費用が発生します。

主な費用項目と概算は以下の通りです:

 1. 登録免許税 

   • 解散と清算人選任の登記費用:39,000円

   • 清算結了の登記費用:2,000円

 2. 官報公告費用 

   • 約32,000円

 3. 専門家への依頼費用(概算) 

   • 司法書士への登記手続の依頼費用:10万円~20万円程度

   • 税理士への税務申告手続の依頼費用:10万円~数十万円

   • 弁護士への債権者交渉などの依頼費用:数十万円~

 4. その他の費用 

   • 登記事項証明書の取得費用など:数千円

これらの費用は、会社の規模や状況によって大きく変動する可能性があります。特に、専門家への依頼費用は、会社の複雑さや必要となる業務の範囲によって大きく異なります。


費用を抑えるためのポイントとしては以下のようなものがあります:

 1. 可能な限り自社で手続を行う:簡単な手続は自社で行い、専門的な部分のみ専門家に依頼することで、費用を抑え
        られる場合があります。

 2. 複数の専門家から見積もりを取る:同じ業務でも専門家によって費用が異なる場合があるため、複数の専門家から
        見積もりを取ることをおすすめします。

 3. 事前に十分な準備を行う:必要書類をあらかじめ準備しておくなど、専門家に依頼する際の作業を最小限に抑える
        ことで、費用を削減できる可能性があります。

 4. パッケージサービスの利用を検討する:一部の専門家事務所では、会社解散に関する一連の手続をパッケージ化し
        たサービスを提供している場合があります。これらを利用することで、総費用を抑えられる可能性があります。

会社解散を検討する際は、これらの費用を事前に把握し、予算を立てておくことが重要です。また、予期せぬ費用が発生する可能性もあるため、ある程度の余裕を持った予算設定をすることをおすすめします。

会社解散時の専門家への相談

会社解散には様々な手続が必要となり、専門的な知識が求められます。そのため、以下の専門家に相談することで、スムーズかつ確実に手続を進めることができます。

税理士への相談

税理士は、会社解散に伴う税務面のサポートを提供します。主な役割は以下の通りです:

 1. 解散確定申告書の作成

 2. 清算確定申告書の作成

 3. 財務諸表の作成支援

 4. 税務上の問題点の洗い出しと対策提案

特に顧問税理士がいる場合、会社の財務状況を熟知しているため、スムーズな対応が期待できます。ただし、登記申請業務は税理士の業務範囲外であるため、別途司法書士への依頼が必要となります。

司法書士への相談

司法書士は、会社解散に関連する登記申請業務を担当します。主な役割は以下の通りです:

 1. 解散登記の申請

 2. 清算人選任登記の申請

 3. 清算結了登記の申請

 4. 登記に必要な書類の作成支援

司法書士に依頼することで、法務局での手続をスムーズに進めることができます。また、登記申請に必要な書類の準備や作成についてもアドバイスを受けられます。

費用を抑えたい場合は、可能な限り書類の準備を自社で行い、登記申請業務のみを司法書士に依頼することも考えられます。ただし、書類に不備がないよう注意が必要です。

弁護士への相談

弁護士は、特に以下のような複雑なケースで重要な役割を果たします:

 1. 多額の負債がある場合

 2. 特別清算や破産手続が必要な場合

 3. 債権者との交渉が困難な場合

 4. 法的トラブルが発生している場合

弁護士の主な役割は以下の通りです:

 1. 裁判所への申立書類の作成

 2. 債権者との交渉

 3. 法的問題に関するアドバイス

 4. 特別清算や破産手続の管理

弁護士に相談することで、法的リスクを最小限に抑えつつ、円滑に解散手続を進めることができます。特に、債権者との交渉が難航する可能性がある場合や、法的な問題が絡む場合には、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

会社解散は重要な決断であり、法的・財務的に複雑な側面があります。したがって、これらの専門家のサポートを受けることで、リスクを最小限に抑えつつ、効率的に手続を進めることができます。

まとめ

会社解散は、企業活動の終了を意味する重要な手続です。解散から清算結了までには様々なステップがあり、法律で定められた7つの解散事由や、清算手続の流れを理解することが重要です。解散には税務負担の軽減などのメリットもありますが、手続には時間とコストがかかります。専門家への相談は、円滑な解散プロセスに不可欠です。慎重に計画を立て、適切な対応を取ることが成功への鍵となります。

著者|竹川 満  マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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