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解散清算手続の流れと結了までの期間と費用や専門家活用を解説

会社を円満に畳むには何をすればよい?答えは、解散の決議から清算結了までの手続を順序良く行い、期間や費用を把握し専門家を適切に活用することです。その要点をやさしく詳しく解説します。

目次:

  1. 会社解散と清算の基本
  2. 会社を解散するメリット
  3. 会社を解散する7つの事由
  4. 解散から清算結了までの主な流れ
  5. 解散から清算結了までにかかる期間の目安
  6. 解散と清算に必要な費用概算
  7. 会社解散時に相談したい3つの専門家
  8. 費用を抑えるためのポイント
  9. 解散手続きをスムーズに行うためのポイント
  10. 解散時に注意したい三つのポイント
  11. 各専門家の連携で得られる効果
  12. 専門家選定のポイント
  13. まとめ

会社解散と清算の基本

会社をたたむときに最初に行うのが「解散」の決議です。解散は営業活動を止め、会社をなくす準備段階に入ることを意味します。ただし、決議をしただけで法人格がすぐに消えるわけではありません。債権債務の整理や財産処分など、一連の清算手続を終えて初めて会社は法律上存在しなくなります。

解散とは営業を止め法人消滅へ向かう第一歩

解散は会社法で定められた手続で、株主総会などの決議を経て行われます。解散後も登記上は「清算会社」として存続し、清算結了登記が終わるまでは取引の当事者として責任を負います。

清算手続は通常清算と特別清算の二通り

会社がすべての債務を支払える場合は清算人が中心となる通常清算で十分です。一方、債務超過が見込まれる場合は、裁判所の監督下で進める特別清算を選択します。特別清算は債権者の保護を一層重視するため、期間も手間も増えますが、法的な安全性が高まります。

清算で行う主な業務は5項目

清算人は①取引契約や雇用契約の整理、②売掛金などの債権回収、③土地建物など換金可能な資産の処分、④借入金や買掛金など債務の弁済、⑤残余財産があれば株主へ分配、の順に業務を進めます。これらが完了して初めて会社の帳簿を閉じることができます。

会社を解散するメリット

ネガティブに捉えられがちな解散ですが、事業を続ける予定がない会社にとっては費用面・事務面での利点があります。

法人税の均等割負担がなくなる

休眠会社でも存続している以上、毎年法人住民税の均等割がかかります。解散すればこの税負担はゼロになり、経営者の個人負担を抑えられます。

決算書と申告書の作成義務が消える

存続中は毎期の決算と法人税申告が必須です。解散後は清算中の会計処理を除き、通常期の決算書作成が不要となり、事務コストが大きく削減されます。

役員再任登記の必要がなくなる

株式会社の場合、取締役は原則10年ごとに再任登記が必要です。登記を怠ると過料が科されるリスクがありますが、解散によってこの手続自体が不要になります。

会社を解散する7つの事由

会社法は、会社が解散する、または解散しなければならない7つの場面を定めています。どれか1つに該当すれば、会社は法律上「解散したもの」となるため、速やかに清算に移行します。

定款の存続期間満了で自動的に解散

定款に「存続期間20年」などと定めている場合、期間が過ぎた日をもって会社は解散します。株主総会の特別決議を経ずに解散事由が発生するため、見落とさないよう注意が必要です。

定款に定めた個別事由の発生で解散

特定プロジェクト完了時や経営者の年齢到達など、あらかじめ定款に定めた条件に該当すると解散となります。条件を満たしたかどうかの判断は取締役会で慎重に行いましょう。

株主総会特別決議での解散が最も一般的

出席株主の過半数、かつ議決権の3分の2以上の賛成を得て特別決議を行えば、任意に会社を解散できます。後継者不在や経営環境の変化など、自主的に廃業を選ぶ場合の典型です。

合併により消滅する会社は解散扱い

吸収合併で存続会社に吸収される側、新設合併で持分を移転して消滅する側の会社は、合併効力発生日に解散します。ここでの清算は合併に伴う資産負債の承継により不要です。

破産手続開始決定で解散し管財人が処理

裁判所が破産手続を開始すると会社は解散し、以降の財産処理は破産管財人が担当します。通常清算ではなく破産法に基づく清算が適用されます。

裁判所の解散命令で強制的に清算へ

違法行為や公益侵害が認められると、裁判所は会社に解散命令を出します。命令日に会社は解散し、指定された清算人が債務整理などを進めます。

休眠会社のみなし解散に要注意

最後の登記から12年経過すると法務大臣は官報公告を行い、2か月以内に活動継続の登記がなければ自動的に解散登記されます。意図せず会社を失わないよう、休眠中でも定期的に登記状況を確認しましょう。

解散から清算結了までの主な流れ

ここからは、株主総会で解散を決議してから清算結了登記が終わるまでに行う10のステップを時系列で説明します。会社の規模や負債額によって多少前後しますが、基本的には次の順序で進みます。

株主総会で解散を決議しスタートラインに立つ

最初に開く株主総会では、解散と同時に清算人を選任する議案も審議します。議決権の3分の2以上の賛成を得る特別決議が成立すると、会社は法的に解散状態となり、商業登記簿にも「解散」の文字が残ります。

2週間以内に解散登記と清算人就任登記を行う

決議後14日以内に法務局へ登記申請を行わなければなりません。登録免許税は解散+清算人就任で39,000円、後述の清算結了登記で2,000円を納めます。期限を過ぎると過料の対象となるため注意が必要です。

財産目録と貸借対照表を作成し株主承認を得る

清算人は、解散時点の資産と負債を明らかにするため、棚卸資産や売掛金、不動産などを洗い出して評価し、財産目録と貸借対照表を作ります。これらは株主総会で承認を受けることで、清算に必要な権限を正式に得られます。

官報公告と債権者への個別通知で保護手続を開始

清算人は会社の解散を広く知らせるため、官報に公告を掲載し、取引先など既知の債権者には書面で個別通知を行います。公告費用は約32,000円です。債権者は最低2か月間与えられる申出期間内に債権を届け出ることができます。

債権申出期間中に回収と弁済を進める

2か月の公告期間は単なる待ち時間ではありません。清算人はこの間に売掛金や貸付金を回収し、借入金や買掛金を弁済して資産をできるだけ現金化します。公告期間で仕事を進めておくことが、後の手続きを円滑にするコツです。

残余財産確定後に株主へ分配する

すべての債務を返済し、未払費用も清算したうえで資金が余れば、それは株主に帰属します。株主構成比率に応じて分配案を作成し、再度株主総会で承認を得て支払います。現物資産を分配する際は評価額の算定に留意します。

清算確定申告書を残余財産確定後1か月以内に提出

解散した会社は通常の決算とは別に「解散確定申告」と「清算確定申告」が必要です。清算確定申告は残余財産確定日の翌日から1か月以内と期限が短いため、税理士に早めに書類作成を依頼するのが安全です。

決算報告書を作成し株主総会の承認を得る

清算の結果をまとめた決算報告書を作成したら、株主総会を再度開催し承認を受けます。ここで清算人の任務がほぼ完了し、最後の登記へ進みます。

清算結了登記で法人格が消滅する

決算報告書承認後2週間以内に法務局で清算結了登記を行うと、商業登記簿に「清算結了」の記載が入り、会社は完全に消滅します。これで債務整理や財産処分などの業務はすべて終わります。

帳簿書類は清算結了後も10年間保存

会社は消滅しますが、帳簿書類は清算人または保管人が10年間保存しなければなりません。税務調査などが入る可能性を踏まえ、容易に閲覧できる状態で保管します。


 


解散から清算結了までにかかる期間の目安

最短でも2か月ですが、実務では3〜6か月、負債や資産が多い場合は1年以上かかることもあります。期間に影響する主な要素は次の4点です。

債権者申出期間が最低2か月必要

官報公告で告知したうえで債権者が債権を申し出る期間を2か月以上設けるのは法定ルールです。この期間は短縮できないため、最短でも2か月かかる理由となります。

会社規模が大きいほど資産・負債整理に時間がかかる

支店が多い、取引先が多岐にわたる会社では回収と弁済の対象件数が多く、作業は長期化しがちです。

債権回収や資産売却の進捗が期間を左右

不動産など換価に時間がかかる資産があると、その売却完了まで清算結了に進めません。買い手探しに時間がかかると全体工程が伸びます。

特別清算や破産の場合は裁判所手続が加わる

債務超過の場合は特別清算や破産で進めるため、追加の届出や債権者集会などが必要となり、期間はさらに延びます。

解散と清算に必要な費用概算

解散を検討する際は費用面も把握しておくことが欠かせません。ここでは主な費用項目と目安を示します。 

登録免許税は合計41,000円

解散・清算人就任で39,000円、清算結了で2,000円、合計41,000円を法務局に納めます。資本金額に左右されない定額です。

官報公告費用は約32,000円

解散公告を1回掲載する費用です。紙面のスペースに制限があるため、文字数が多いと追加費用が生じることもあります。

専門家費用は業務範囲で大きく変動

司法書士への登記依頼は10万〜20万円、税理士への税務申告依頼は10万〜数十万円、弁護士への債務整理依頼は数十万円以上が目安です。事務所によって報酬体系が異なるため、複数見積を取ると安心です。

その他の諸費用も忘れず計上

登記事項証明書の取得など数千円単位の費用も積み重なると意外に大きくなります。株主総会開催費や資産売却に伴う仲介手数料も見込んでおきましょう。

会社解散時に相談したい3つの専門家

複雑な手続をスムーズに終わらせるには専門家の力が欠かせません。それぞれの役割をまとめます。

税理士は解散確定申告と清算確定申告をサポート

税務処理は期限が短く内容も特殊です。顧問税理士がいる場合は会社の状況を理解しているため依頼しやすく、いない場合でも早い段階で税理士に相談しましょう。

司法書士は解散から清算結了までの登記を代行

登記書類に不備があると補正が必要となり時間と費用が余計にかかります。専門家に任せることで正確かつ迅速に手続が進みます。

弁護士は債務超過や債権者交渉で頼りになる

負債が大きい場合や債権者との調整が難航する場合には弁護士の支援が不可欠です。裁判所手続や和解交渉を代理してもらうことで法的リスクを抑えられます。

費用を抑えるためのポイント

解散と清算にはどうしてもコストがかかりますが、工夫次第で出費を抑える余地があります。実践しやすい四つの方法を整理します。

可能な範囲で自社対応し専門家依頼を最小限にする

登記申請そのものは司法書士の専門分野ですが、議事録の作成や必要書類の収集など下準備は自社でも行えます。専門家に渡す資料が整っていれば作業時間は短くなり、報酬も抑えられます。

複数の専門家から見積書を取り比較検討する

税理士・司法書士・弁護士ともに報酬基準は事務所ごとに異なります。一社で即決せず、最低二社以上から見積書を取り内容と費用を比較することで、過大な支出を防げます。

必要書類を事前に揃えて業務効率を高める

官報公告の写しや登記事項証明書など、提出先が決まっている書類は清算人が早めに集めると手戻りが減ります。不備による再請求を防ぐだけでもコスト削減につながります。

パッケージサービスを活用し総額を下げる

税理士法人や司法書士事務所が提供する「解散登記+税務申告一括サービス」は個別依頼より安いことがあります。業務範囲と報酬を明確にした上で活用しましょう。

解散手続きをスムーズに行うためのポイント

時間をかけずに清算結了へたどり着くには、準備と段取りが鍵です。参考にしたい三つの視点を紹介します。

解散前に必要書類と社内体制を整える

株主総会の招集通知、議事録、債権者一覧、従業員への説明資料などを解散決議前に用意すると、その後の工程が滞りません。特に従業員対応は退職金や未払給与の支給時期を明示しておくとトラブルを防げます。

債権者保護手続と同時並行で資産処分を進める

官報公告の2か月は申出を待つ期間ですが、同時に売掛金回収や在庫処分を進めることで清算期間を短縮できます。公告期間満了後に残務だけを残すイメージで動くと効率的です。

専門家と定期的に進捗を共有する

税理士や司法書士に丸投げすると情報伝達が遅れがちです。週1回など定期ミーティングを設け、処理状況と次のタスクを確認すると漏れなく進められます。

解散時に注意したい三つのポイント

スケジュールや納税漏れなど気を付けるべき要素を押さえておきましょう。

清算手続は複雑で専門知識が必須

解散登記後も清算人には債権回収・債務弁済・残余財産分配など多岐にわたる責任があります。不明点を放置すると訴訟リスクが高まるため、疑問点は都度専門家に確認します。

解散年度分と清算確定分の二つの申告を忘れない

解散年度分の確定申告は解散日から2か月以内、清算確定申告は残余財産確定日の翌日から1か月以内と期限が短く設定されています。納付漏れや延滞税を防止するには早期の準備が不可欠です。

休眠会社のみなし解散を避けるために定期的な登記確認を

最後の商業登記から12年経過すると、法務大臣告示後に自動解散となります。休眠させているだけの法人でも毎年役員任期や商号変更の有無をチェックし、必要に応じて登記を行いましょう。

各専門家の連携で得られる効果

税理士・司法書士・弁護士が連携すると、手続の流れが一本化され経営者の負担が軽減されます。たとえば、税理士が作成した財務資料を司法書士が登記書類に転用し、弁護士が債権者交渉に同じ数値を用いれば、説明の整合性が保たれ誤解も減少します。

専門家選定のポイント

依頼先を選ぶ際は、①解散清算の実績件数、②料金体系の透明性、③担当者との相性、の三点を確認すると安心です。電話対応の丁寧さや見積書の内訳記載の有無は信頼性を測る指標になります。

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まとめ

会社解散は株主総会の決議後、登記・公告・債権債務整理・税務申告と続く長い手続が待っています。費用や期間を正確に把握し、税理士・司法書士・弁護士と連携して進めることで、トラブルを防ぎ安全に法人格を消滅させることができます。

著者|竹川 満  マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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