EPS(1株当たり利益)とは?計算式と投資活用法を解説

EPSは企業の1株当たり当期純利益を表す重要な指標です。本記事では、EPSの定義、計算方法、PERとの関係、成長企業発掘への活用方法、確認手段について詳しく解説します。

目次

  1. EPSの定義と意義
  2. PERとEPSの相互関係:株価評価の指標として
  3. EPSを活用した成長企業の見つけ方
  4. EPSの確認方法:各種情報源の活用
  5. まとめ

EPSの定義と意義

EPS(Earnings Per Share)は、1株当たりの当期純利益を表す重要な財務指標です。この指標は、企業の収益力を簡潔に示すものとして、投資家にとって非常に有用な情報となります。EPSを理解することで、投資対象となる企業の収益性を効率的に比較することができます。

EPSの主な特徴と意義は以下の通りです。

企業の収益力を1株単位で表現

異なる規模の企業間でも比較が可能

投資判断の基準として広く活用される

企業の成長性評価に役立つ

業績の変動を読み取るための指標となる

株主還元における EPSの重要性

EPSは株主にとって特に重要な指標です。その理由は、EPSが株主に還元される可能性のある利益を示すからです。企業は通常、純利益を基準として株主への配当金を決定します。したがって、EPSが高い企業は、より多くの利益を株主に還元する可能性が高いと考えられます。

EPSの高さは以下のような意味を持ちます。

潜在的な高配当の可能性を示唆

投資家の関心を引き、株価上昇の要因となる可能性

企業の収益性と成長性を反映

企業の成長率や業績の推移

EPSの経年変化を観察することで、企業の成長率や業績の推移を把握することができます。例えば:

EPSの上昇傾向:収益力の成長を示唆

EPSの下降傾向:収益力の悪化の可能性を示唆

このようなトレンドを分析することで、過去の設備投資が実を結んでいるか、あるいは競合他社の台頭により競争力が低下しているかなど、事業の詳細な分析の手がかりとなります。

EPSの算出方法:当期純利益から導く指標

EPSの計算方法は比較的シンプルです。企業の当期純利益(税引後利益)を発行済株式数で割ることで算出されます。具体的な計算式は以下の通りです。

EPS = 当期純利益 ÷ 発行済株式数

この計算により、「1株当たりの純利益」が明らかになり、企業間の比較が容易になります。ただし、EPSのみで投資判断を行うのは適切ではありません。他の指標(PERやPBRなど)やファンダメンタルズと併せて総合的に評価することが望ましいです。

PERとEPSの相互関係:株価評価の指標として

PER(Price Earnings Ratio)は株価収益率を表し、EPSと密接に関連する重要な指標です。PERは株価がEPSの何倍になっているかを示すもので、企業の株価が収益に対してどの程度の評価を受けているかを表します。

PERの計算式は以下の通りです。

PER = 株価 ÷ EPS

この式からわかるように、PERとEPSは表裏一体の関係にあります。一般的に、PERが低いほど株価が割安であると判断され、投資家にとっての魅力が高まります。ただし、PERの解釈は業界によって異なる場合があるため、単純にPERの数値だけで投資判断を行うのは避けるべきです。

PERとEPSが表す株価と収益のバランス

PERとEPSは、株価と企業収益のバランスを示す重要な指標です。特に成長が期待される企業の株式は、比較的高いPERを示す傾向があります。実際に、EPSの成長率が高い企業は、たとえ現在のPERが高くても、将来の改善が見込まれるため、投資家から注目されることが多いです。

これらの指標を活用する際のポイントは以下の通りです。

PERとEPSを組み合わせて企業の収益性を評価する

株価の適正性を判断する際の基準として利用する

業界全体の動向や市場の状況も考慮に入れる

長期的な視点で企業の成長性を分析する

投資判断への活用:PERによる割高・割安の評価

PERは株式の割高・割安を示す指標として広く活用されています。PERを確認することで、その企業の株式が市場でどのように評価されているかを把握することができます。一般的に、PERが低い企業は株価が割安であると考えられ、投資対象として注目されやすい傾向にあります。

しかし、単純にPERの低さだけを追求するのは危険です。PERが低い理由には、以下のような可能性があります:

企業の競争力低下

成長可能性への懸念

業界全体の低迷

また、平均的なPERは業界によって大きく異なり、絶対的な基準は存在しません。そのため、基本的には同業他社と比較して相対的な割高感や割安感を判断することが重要です。

投資判断を行う際は、以下の点に注意しましょう。

業界平均のPERと比較する

過去のPERの推移を確認する

企業の成長戦略や市場環境を考慮する

他の財務指標と併せて総合的に判断する

EPSを活用した成長企業の見つけ方

EPSは成長企業を発掘する上で非常に有用な指標です。EPSが高い企業は1株当たりの純利益が大きく、将来的な株価上昇も期待できます。EPSを活用して成長企業を見つける方法として、以下のポイントが挙げられます。

1. 過去数年間のEPS推移を分析し、持続的な成長を示している企業を探す

2. 業界平均EPSと比較し、優れたパフォーマンスを示している企業を特定する

3. 企業の事業戦略や財務状況を踏まえ、将来的なEPS上昇の可能性を予測する

4. EPSの絶対値だけでなく、成長率にも注目する

ただし、EPSが高いからといって単純に投資を決めるのは危険です。他の指標(PER、PBRなど)や企業の事業計画なども併せて総合的に評価することが重要です。

EPS成長率による事業拡大の分析

EPS成長率は企業の事業拡大を分析する上で非常に有効な指標です。EPS成長率が高い企業は、利益が継続的に増加しており、事業の成長が期待できると判断されます。

EPS成長率の計算式は以下の通りです。

EPS成長率(%)=(当期EPS - 前期EPS)÷ 前期EPS × 100

EPS成長率を活用した分析方法には以下のようなものがあります。

過去のEPS成長率の推移を確認し、安定的な成長を示している企業を探す

市場全体や業界のEPS成長率と比較して、優れたパフォーマンスを示している企業を見極める

短期的な成長率だけでなく、中長期的なトレンドにも注目する

業界平均との比較:投資判断の参考に

他企業との比較を行う際、業界平均を参考にすることは非常に重要です。業界ごとにPERやEPSの平均値が異なるため、対象企業の収益性や成長性を正確に評価するには、業界平均との比較が不可欠です。

比較分析の手順は以下の通りです。

1. 対象企業のPERやEPSなどの株価指標を算出する

2. 株式市場全体や業界の平均値を確認する

3. 対象企業の値を平均値と比較し、相対的な位置づけを把握する

4. 比較結果を踏まえて投資判断を行う

なお、投資判断を行う際は、個別銘柄だけでなく業界全体の動向や将来性にも目を向ける必要があります。最新の業界情報を確認するには、証券会社や金融系のサービスサイトなどを活用するとよいでしょう。

また、他社との比較分析を行う際は、適切な比較対象を選ぶことが重要です。以下の点を考慮して比較対象を選定しましょう。

業界内での競争優位性

事業規模の類似性

事業モデルの共通点

一時的な利益増加によるEPS変動への注意点

EPSは一時的な利益の増加でも変動することがあります。このような場合、利益増加の理由を慎重に確認し、将来的な成長性や持続可能性を正確に判断する必要があります。

一時的なEPS上昇の例としては、以下のようなケースが考えられます。

投資収益の一時的な増加

特別利益の計上

為替変動による一時的な利益

これらの要因によるEPS上昇は、必ずしも企業の本質的な事業活動の改善を反映していないため、過度な期待は禁物です。

投資判断を行う際は、以下の点に注意しましょう。

1. EPSの上昇要因を詳細に分析する

2. 一時的な要因と持続的な要因を区別する

3. 業界全体の動向も考慮に入れる

4. 企業の競争環境や市場環境の変化を綿密に分析する

5. 中長期的な視点で企業の真の成長性を見極める

自社株買いがEPS上昇に与える影響を理解する

自社株買いは、企業の発行済株式数を減少させ、結果としてEPSを上昇させる効果があります。しかし、自社株買いによるEPSの上昇だけで企業価値が向上したと判断するのは早計です。

自社株買いがEPSに与える影響を正しく理解するためには、以下の点に注目する必要があります。

1. 自社株買いの目的や戦略を把握する

2. 企業の資本効率向上への取り組みを確認する

3. 株主還元策全体の中での位置づけを理解する

4. 自社株買いの規模と頻度を分析する

5. 自社株買い後の財務状況の変化を確認する

自社株買いを行う企業の意図としては、以下のようなものが考えられます。

資本効率の向上

株主還元の拡大

株価の下支え

経営陣の自社株価に対する自信の表明

これらの意図を踏まえた上で、自社株買いによるEPS上昇の意味を正確に解釈し、投資判断に活かすことが重要です。

EPSの確認方法:各種情報源の活用

EPSを確認する方法として、最も簡単で効率的なのは株式情報サイトの利用です。これらのサイトでは、個別銘柄のEPSをはじめとする各種指標や最新の財務情報を容易に入手することができ、投資判断に活用できます。

EPS確認の主な情報源

EPSを確認するための主な情報源には以下のようなものがあります。

1. 株式情報サイト 

 o Yahoo!ファイナンスやBloombergなどの大手サイト

 o 証券会社が提供する投資情報サイト

2. 企業のIRサイト 

 o 決算短信や有価証券報告書などの公開情報

 o 業績予想や中期経営計画など

3. 金融庁の「EDINET」(電子開示システム) 

 o 上場企業の財務情報や有価証券報告書を閲覧可能

4. 日本取引所グループ(JPX)の適時開示情報 

 o 企業の重要な開示情報をタイムリーに確認可能

これらの情報源を活用する際のポイントは以下の通りです。

複数の情報源を確認し、データの正確性を確保する

最新の情報だけでなく、過去のトレンドも把握する

同業他社や業界平均との比較を行う

企業が発行するプレスリリースも有効活用する

企業のプレスリリースは、四半期や通期の業績推移だけでなく、市場動向や競合他社との比較など、より詳細な情報を得られる場合があります。これにより、企業の競争優位性や将来の成長性についても洞察を得ることができます。

まとめ

EPSは企業の収益力を示す重要な指標であり、投資判断の基準として広く活用されています。EPSをPERと組み合わせることで、株価の割高・割安を評価し、成長企業の発掘に役立てることができます。ただし、一時的な要因によるEPS変動や自社株買いの影響にも注意が必要です。投資家は、複数の情報源を活用してEPSを確認し、他の財務指標や市場動向と併せて総合的に判断することが重要です。

著者|竹川 満 マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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