事業承継アドバイザリーとは?支援内容・費用と選び方を解説

事業承継アドバイザリーは、後継者選び、自社株対策、税務・法務、M&A(合併・買収)による第三者承継までを整理し、計画策定から実行後まで支援するサービスです。主な支援内容、相談先の種類、費用と契約条件、失敗を避ける選び方を経営者向けに分かりやすく解説します。

目次

  1. 事業承継アドバイザリーは承継方法を決める前に使う
  2. 最初に整理する5つの経営課題
  3. 承継先によって変わる支援内容
  4. 相談開始から承継後までの進め方
  5. 事業承継アドバイザーを選ぶ確認事項
  6. 費用と契約条件で見落としやすい点
  7. 相談前に準備しておきたい資料
  8. まとめ

事業承継アドバイザリーの重要性|専門家による円滑な承継支援

事業承継アドバイザリーは承継方法を決める前に使う

「親族に継がせるか、役員に任せるか、会社売却も考えるべきか」。この段階で結論を出せず、検討が止まる経営者は少なくありません。

事業承継アドバイザリーとは、会社の現状と経営者の希望を整理し、親族内承継、役員・従業員承継、M&A(合併・買収)による第三者承継などを比較したうえで、実行可能な承継計画をつくる支援です。

相談だけで終わらず、自社株の移転、後継者育成、関係者との調整、税務・法務の手続、承継後の体制づくりまで支援範囲に含むことがあります。

大切なのは、最初から承継方法を1つに決めつけないことです。親族に候補者がいても、本人に継ぐ意思があるとは限りません。経営能力や株式取得資金が不足している場合もあります。

反対に、後継者がいないと思っていた会社でも、役員・従業員承継や第三者承継を含めて比べることで、事業を残せる道が見つかることがあります。

単発相談との違い

税金だけ、契約だけ、自社株の評価だけを相談する単発支援に対し、事業承継アドバイザリーは複数の課題をつなげて考える点に特徴があります。

たとえば、自社株の評価額を下げる対策だけを進めても、後継者が株式取得資金を用意できなければ承継は進みません。税負担を抑えられても、議決権が親族に分散すれば、承継後の経営が不安定になることもあります。

経営、株主構成、家族関係、資金、税金を一つの計画に落とし込む。ここが重要です。

最初に整理する5つの経営課題

事業承継では、対策を急ぐほど個別の手続に目が向きがちです。しかし、承継先が決まる前に株式移転だけを進めると、後から計画を変更しにくくなります。

最初に、会社と経営者個人の状況を同時に整理します。

会社の現状と企業価値

最初に、決算書、借入金、資産、収益力、取引先構成、許認可などを確認します。あわせて、自社株の税務上の評価と、M&Aで想定される企業価値を分けて把握することが必要です。

税務上の株価は、相続税や贈与税の計算などに使われる評価です。一方、M&Aの譲渡価格は、会社の収益力、保有資産、将来性、買い手との相乗効果などを踏まえて交渉されます。

目的も計算方法も同じではありません。この違いを知らないまま「自社の価値はこの金額」と判断すると、親族内承継の資金計画や会社売却の条件交渉で認識のずれが生じます。

後継者候補と本人の意思

親族、役員、従業員の中に候補者がいても、本人が承継を希望するとは限りません。経営能力だけでなく、株式を取得する資金、借入金や個人保証への向き合い方、家族の理解も確認します。

後継者候補を早く公表し過ぎると、社内に不要な期待や不安が生まれることがあります。候補者との対話、適性の確認、育成、公表の順番まで計画する必要があります。

株主構成と自社株の移転方法

株式が経営者だけでなく、兄弟姉妹、親族、元役員などに分散していると、意思決定や株式の集約が難しくなります。

誰が何株持っているか、株券発行会社か、株式に譲渡制限があるか、実際の出資者と株主名簿が一致しているかを確認します。

後継者へ株式を移す方法には、贈与、相続、売買などがあります。後継者以外の株主を整理する目的で、会社が自己株式を取得する方法を検討することもありますが、これは後継者への直接的な株式移転とは異なります。

自己株式取得には、会社法上の手続や取得できる金額の制約があるため、資金繰りや税務への影響を含めて判断することが必要です。

どの方法を選ぶ場合も、税負担だけで決めてはいけません。後継者が持つ議決権、株式取得の資金負担、他の相続人との公平を合わせて考えます。

相続税・贈与税と資金繰り

自社株を親族へ移す場合、相続税や贈与税が発生する可能性があります。一定の要件を満たせば、事業承継税制による納税猶予などを検討できる場合もあります。

ただし、適用には手続や期限があり、適用後も継続して確認すべき事項があります。制度を使うこと自体を目的にせず、将来の経営方針に合っているかを確認することが大切です。

利益、配当、資産構成などを見直す自社株対策も、事業への影響と税務上の合理性を確かめながら進めます。形式だけ整えた対策は、税務上の問題を招くおそれがあります。

納税資金、株式取得資金、経営者の引退後の生活資金も同時に試算します。会社の資金を使う方法を検討するときは、会社法、税務、金融機関との関係にも注意が必要です。

経営者個人の希望と家族調整

経営者がいつまで経営に関わりたいか、退任後に役員として残るか、会社からどの程度の資金を受け取りたいかを整理します。

株式以外の不動産や金融資産を誰に渡すかも、家族間の公平に影響します。会社の承継と個人財産の相続を別々に考えると、後継者に株式が集中する一方、他の相続人へ渡す財産が不足することがあります。

感情が絡む場面ほど、数字と選択肢を見える形にする意味があります。

承継先によって変わる支援内容

事業承継アドバイザリーの支援内容は、どこへ承継するかで変わります。すべての相談先が、親族内承継からM&Aまで同じ深さで対応できるわけではありません。

親族内承継では株式と家族の調整を重視する

親族内承継では、後継者育成、自社株の移転、相続税・贈与税、他の相続人への配慮が主な論点です。

経営者の子どもが複数いる場合、後継者に経営権を集中させながら、後継者以外の子どもとの公平をどう保つかが難しくなります。

アドバイザーは、承継時期、株式移転の方法、役員交代、金融機関への説明を一つの工程にまとめます。税務対策だけでなく、後継者が実際に経営できる状態をつくることが目的です。

役員・従業員承継では買収資金を検討する

役員が株式を買い取るMBOは、経営陣による会社の買収を意味します。従業員が株式を取得して承継する方法もあります。

候補者が会社をよく知っている点は強みですが、株式取得資金を個人で用意しにくいことが課題です。

金融機関からの借入、持株会社の利用、段階的な株式移転などを検討することがあります。ただし、将来の返済を会社の利益に大きく頼る計画では、業績が下がった場合の負担が重くなります。

経営権の移転と資金計画を同時に検証することが欠かせません。

第三者承継では譲渡価格以外の条件も決める

後継者がいない場合や、外部企業との連携で成長を目指す場合は、M&Aによる第三者承継が選択肢になります。

支援内容は、企業価値算定、買い手候補の探索、秘密保持、条件交渉、買収監査への対応、契約締結、株式や事業の引渡しまで広がります。

経営者が確認すべき条件は譲渡価格だけではありません。従業員の雇用、取引先との関係、会社名、経営者の退任時期、役員借入金、個人保証、会社所有不動産の扱いなども重要です。

価格が高くても、その他の条件が希望と合わなければ、納得できる承継とは限りません。

買い手候補は相性と実行力で見る

買い手候補を選ぶ際は、提示価格に加え、買収資金を用意できるか、経営方針が合うか、従業員をどのように扱うかを確認します。

許認可や重要な取引関係を維持できるかも見落とせません。同業種での支援経験があるアドバイザーは、業界特有の商慣習や許認可の論点を把握しやすい傾向があります。

ただし、支援件数の多さだけで判断するのではなく、自社と似た規模や課題の案件を担当した経験を確認することが大切です。

承継後のPMIも検討する

契約が成立しても、承継は終わりではありません。PMIとは、M&A後の統合プロセスのことです。

経営方針、組織、給与制度、会計、システム、取引先対応などを調整します。中小企業では、経営者の退任後に取引先や従業員が不安を感じ、引継ぎが滞ることがあります。

誰が、いつ、何を説明するかを成約前から決めておくと、新体制への移行が進めやすくなります。

相談開始から承継後までの進め方

事業承継は、計画書を作れば進むものではありません。実務では、後継者候補との話し合いや金融機関への説明で前提が変わり、計画を修正する場面があります。

現状分析と経営者への聞き取り

最初に、会社の財務、株主、組織、後継者候補、契約、許認可などを確認します。

経営者には、残したい事業、守りたい従業員、希望する退任時期、引退後に必要な資金などを聞き取ります。

この段階では結論を急ぎません。親族内承継を第一候補としながら、役員・従業員承継や第三者承継も比較できる状態にしておきます。

承継方法の比較と計画策定

複数の承継方法について、実現可能性、必要期間、税負担、資金、経営権、関係者への影響を比較します。

その結果を基に、「誰に、何を、いつ、どの方法で引き継ぐか」を工程表にします。

計画には、後継者育成、株式移転、役員変更、金融機関への説明、従業員への告知などを含めます。事業環境や家族の意向が変わった場合に備え、定期的に計画を見直すことも必要です。

税務・法務・財務の実行支援

方針が決まった後は、株価算定、税額試算、契約書の作成、株主総会や取締役会の手続、登記、資金調達などを進めます。

アドバイザーがすべての業務を行うとは限りません。一般に、税理士、弁護士、司法書士、金融機関などと連携して進めます。

担当者が誰で、どこまでが契約範囲かを明確にしてください。資格が必要な業務について、適切な専門家が関与する体制になっているかも確認します。

承継後の定着支援

親族内承継や役員・従業員承継では、新経営者への権限移譲、旧経営者との役割分担、幹部との関係づくりを支援します。

第三者承継では、PMIの進捗、従業員への説明、重要取引先の引継ぎなどを確認します。

旧経営者が何でも決め続けると、後継者の権限が定着しません。一方で、急に全面退任すると、取引先との関係や社内判断が途切れることがあります。会社の状況によっては、段階的な引継ぎが適しています。

事業承継アドバイザーを選ぶ確認事項

有名な会社だから安心、資格があるから十分とは限りません。事業承継は支援範囲が広いため、自社の課題と担当者の得意分野が合っているかを確認します。

相談先の種類と得意分野を把握する

事業承継の相談先には、税理士・会計事務所系、弁護士などの法務系、経営コンサルティング会社、金融機関、公的支援機関、M&A支援会社などがあります。

税理士・会計事務所系は、自社株評価や税務に強い傾向があります。法務系は、株主間の調整、契約、紛争予防などが主な専門分野です。

経営コンサルティング会社は、後継者育成や組織づくり、M&A支援会社は、買い手候補の探索や交渉を得意とすることがあります。

ただし、実際の支援範囲は各社で異なります。名称だけで判断してはいけません。

承継方法がまだ決まっていない段階では、親族内承継、役員・従業員承継、第三者承継を比較でき、必要に応じて複数の専門家をまとめられる相談先が使いやすいでしょう。

大手・独立系・業種特化型は支援範囲で比べる

特定の会社を一律におすすめすることはできません。

大手や独立系のコンサルティング会社には、公認会計士や税理士などを配置し、税務、組織再編、M&Aを一体で支援する先があります。

経営コンサルティング系には、経営権や資産だけでなく、事業、組織、人材の引継ぎを重視する先もあります。業種特化型の支援会社は、業界の商慣習、許認可、人材構成を踏まえた実行支援に強みを持つことがあります。

会社の規模や知名度より、自社が必要とする支援を担当者が実行できるかで比べるべきです。

自社の承継方法に合う実績があるか

親族内承継を希望する会社が、M&Aの成約実績だけを見ても十分ではありません。

反対に、第三者承継を検討する会社が、相続税対策だけを得意とする担当者へ依頼しても、買い手候補の探索や交渉まで進められない可能性があります。

同業種、同規模、同じ承継方法の支援経験を確認します。許認可、主要取引先への依存、職人や有資格者の引継ぎなど、業界固有の論点を説明できるかも質問してください。

選択肢を公平に比較しているか

相談先によっては、自社が提供できる手法へ提案が偏る場合があります。税務サービスを中心とする先は税務対策を、M&Aを中心とする先は会社売却を優先して提案することもあります。

経営者の希望を聞いたうえで、それぞれの方法のメリットだけでなく、実現しにくい理由や不利益も説明する担当者が望ましいでしょう。

提案の前提となる数字や判断基準を開示する姿勢も大切です。

税務・法務・M&Aの連携体制があるか

事業承継では、1人の担当者だけで完結しない案件が多くあります。

税理士、弁護士、司法書士、金融機関、M&A担当者などが、同じ計画を共有できる体制かを確認します。

窓口が分散すると、株価算定の前提、契約条件、税額試算が食い違うことがあります。誰が全体を管理し、専門家間を調整するのかを契約前に確認すると安心です。

説明の分かりやすさと相性を見る

専門用語を並べるだけでなく、経営者が判断できる言葉に直して説明する担当者を選びます。

良い情報だけを伝え、リスクや不確実な点を曖昧にする担当者には注意が必要です。

事業承継は数年かかることもあります。質問への回答、面談記録、家族や後継者への配慮なども含め、長く相談できる相手かを判断します。

費用と契約条件で見落としやすい点

費用は安いほどよい、成功報酬なら安心とは限りません。どの作業が含まれ、どの時点で、何を基準に報酬が発生するかを確認します。

費用の名称より対象業務を確認する

事業承継アドバイザリーでは、相談料、現状分析料、株価算定料、計画策定料、月額顧問料、実行支援料などが発生することがあります。

M&Aを行う場合は、着手金、中間金、成功報酬、最低報酬などが設定される場合もあります。

同じ名称でも、含まれる作業は会社ごとに異なります。たとえば、計画策定料に税額試算が含まれるか、M&Aの成功報酬とは別に企業価値算定費用がかかるかを確認します。

成功報酬の基準と最低報酬を確認する

M&Aの成功報酬には、譲渡代金、企業価値、移動する資産と負債を含む金額など、複数の計算基準があります。

同じ料率に見えても、計算の基準が違えば報酬額は変わります。

基本合意や意向表明の段階で中間金が発生するか、成約しなかった場合に返金されるか、最低報酬はいくらかも書面で確認します。

契約終了後に報酬が発生する場合もある

契約を終了した後でも、契約期間中に紹介された相手と一定期間内に成約すると、報酬が発生する条項が設けられている場合があります。

また、契約期間中に他の支援会社へ依頼できない専任契約もあります。契約期間、自動更新、解約方法、違約金の有無と合わせて確認してください。

口頭説明ではなく契約書で確認する

担当者から「成約しなければ費用はかからない」と説明されても、企業価値算定費用、外部専門家費用、実費などが別に発生する可能性があります。

費用の発生条件は、口頭説明だけでなく契約書と見積書で確認します。

外部専門家費用を分けて確認する

税務申告、契約書作成、登記、買収監査、不動産鑑定などは、基本報酬に含まれず、別料金となる場合があります。

出張費、資料作成費、候補先探索費などの扱いも確認します。

見積書では、支援範囲、成果物、追加料金が生じる条件、外部専門家の費用負担を分けてもらうと比較しやすくなります。

補助制度は申請時期と対象経費を確認する

事業承継やM&Aに関する補助制度が公募されることがあります。ただし、制度名、対象者、対象経費、申請期間は変更されます。

補助制度の利用を考える場合は、必ず最新の公募要領を確認してください。申請や採択の前に契約や支払いを行うと、補助対象にならないことがあります。

相談前に準備しておきたい資料

相談前から完璧な計画を作る必要はありません。ただし、会社と個人の情報が整理されているほど、比較できる選択肢が増え、初期分析も正確になります。

会社に関する資料

直近3期程度の決算書と申告書、直近の試算表、借入金一覧、固定資産台帳、株主名簿、定款、登記事項証明書、組織図、主要な契約書、許認可資料などを準備します。

役員借入金、経営者個人から会社へ貸している不動産、個人保証の一覧も重要です。

資料が見つからない場合は、その事実も伝えてください。株主名簿と実際の出資者が一致しない、昔の株券が見つからないといった問題は、承継直前より早い段階で見つけた方が対応しやすくなります。

経営者と家族に関する情報

経営者の年齢、退任希望時期、引退後の関与、必要な生活資金、保有財産、推定相続人を整理します。

後継者候補がいる場合は、本人の意思、社内での役割、保有株式、資金力も確認します。

家族への説明がまだの場合は、無理に話を進める必要はありません。誰に、どの順番で、どの情報を伝えるかもアドバイザーと相談できます。

初回相談で確認したい項目

初回相談では、次の項目を確認すると支援内容を比較しやすくなります。


・親族内承継、役員・従業員承継、第三者承継を比較できるか

・現状分析と企業価値算定はどこまで行うか

・税理士、弁護士など必要な専門家は誰が手配するか

・担当者に同業種、同規模の支援経験があるか

・報酬が発生する時点と計算基準は何か

・承継後の組織づくりやPMIまで支援するか

・途中で方針を変えた場合の契約と費用はどうなるか


回答が抽象的な場合は、支援工程、成果物の内容、見積書を提示してもらうと判断しやすくなります。

まとめ

事業承継アドバイザリーは、後継者選びだけでなく、自社株、税金、資金、家族、従業員、M&Aまでを一つの計画として整理する支援です。相談先を選ぶ際は、希望する承継方法に合う実績、専門家の連携体制、報酬条件、承継後の支援範囲を確認しましょう。方法を決める前から比較を始めることで、会社と経営者の双方に無理の少ない承継案を検討しやすくなります。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人金融機関を経て、みつきグループに参画