事業承継アドバイザリーは企業の未来を左右する重要なサービスです。本記事では、その役割や選び方、費用相場までを詳しく解説。M&Aを含めた承継プランの策定から実行までをサポートする専門家の重要性を理解できます。
目次
事業承継アドバイザリーは、企業が次世代へ円滑に事業を引き継ぐために必要不可欠な支援サービスです。特に中小企業のオーナー経営者にとって、事業承継は避けて通れない最大の課題といえるでしょう。
このサービスは、以下のような多岐にわたる要素を含んでいます。
• 後継者の選定
• 自社株や財産の分配
• 税務面や法務面の対策検討
• M&Aを活用した第三者への承継の検討
▶目次ページ:事業承継とは(事業承継の相談先・費用)
事業承継アドバイザリーは、経営者が抱える悩みや課題を深く理解し、個別の状況に応じた最適な解決策を提案します。
特に以下のような場合には、慎重なプランニングが求められます。
• 親族内に適切な後継者が見つからない場合
• 承継に伴う複雑な税務対策が必要な場合
• 複数の候補者間での調整が必要な場合
アドバイザーは、これらの課題に対して専門的な知見を活かし、企業の未来を見据えた戦略的なアプローチを提供します。
M&A(企業譲渡)を活用した事業承継は、近年注目を集めている選択肢の一つです。
特に以下のような状況で有効な手段となります。
• 後継者が見つからない場合
• 事業のさらなるスケールアップを目指す場合
• 家族や従業員に適切な後継者がいない場合
M&Aによる承継は、企業の存続と発展を図りつつ、オーナーの引退後の生活も確保できる可能性があります。事業承継アドバイザリーは、このようなM&Aを活用した承継についても、専門的なサポートを提供します。
事業承継アドバイザリーは、単なる後継者選定の支援にとどまらず、企業の将来を見据えた包括的なサポートを提供します。主なサービス内容は以下の通りです。
アドバイザリーの第一歩は、企業の現状を正確に把握することです。具体的には以下の項目を分析します。
• 企業の資産と負債の状況
• 経営状態の詳細な評価
• 潜在的な承継の課題の特定
この分析結果を基に、最適な承継プランの方向性を提案します。後継者が身近にいない場合は、外部の適切な候補者や第三者への承継も検討対象となります。
承継計画の策定は、事業承継を成功させるために不可欠なステップです。アドバイザリーサービスでは、以下の要素を含む包括的な計画を立案します。
• 後継者の選定基準と育成計画
• 株式や財産の分配方法
• 税務対策の詳細な戦略
• 承継のタイムライン
この計画は、企業の現状とオーナーの意向を反映し、事業の将来に対して現実的かつ持続可能な方向性を示すものとなります。
計画策定後は、その実行に向けた具体的な支援が行われます。アドバイザリーサービスでは、以下のような実務的なサポートを提供します。
• 自社株の移動手続の支援
• 財産分配の実施サポート
• 法的手続の遂行
• 計画の進捗管理とフォローアップ
また、企業内部でのコミュニケーションや従業員への説明など、円滑な承継に不可欠な要素についてもサポートします。
事業承継における適切な財産分配は、親族間の紛争を予防し、企業の財務的安定を確保するために極めて重要です。アドバイザリーサービスでは、以下の支援を行います。
• 自社株の適正な評価
• 個人財産の評価(必要に応じて)
• 後継者と親族間の調整サポート
• 相続税や贈与税の最適化戦略の立案
特に、複数の後継者候補や相続人がいる場合、またはオーナー経営者の保有財産が多岐にわたる場合には、綿密なプランニングが必要となります。
税務対策も重要な要素です。多額の相続税や贈与税は企業の財務に悪影響を及ぼす可能性があるため、以下のような対策を講じます。
• 事業承継税制の活用検討
• 相続税対策の立案
• トータルの税負担を最小限に抑える戦略の提案
M&Aを活用した事業承継を選択する場合、アドバイザリーサービスはそのプロセス全体をサポートします。
主要なステップは以下の通りです。
1. 企業価値評価
o 業績や資産状況の分析
o 将来の成長見込みの検討
o 適切な譲渡価格の算出
2. 買い手候補の選定
o 独自のネットワークを活用した候補者のリサーチ
o 譲渡目的に合ったパートナーの選定
o 双方の希望条件のすり合わせと交渉支援
3. M&A後のフォローアップ
o 企業間の統合プロセスのサポート
o 従業員のマネジメント支援
o 新体制下での円滑な運営開始のバックアップ
これらの支援により、中小企業は新しい経営体制の下でスムーズに事業を継続し、さらなる成長を目指すことができます。
事業承継は企業の将来を左右する重要なプロジェクトであり、適切なアドバイザーの選択が成功の鍵を握ります。信頼できるアドバイザーを選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。
事業承継は、自社株の移転、財産分配、税務対策など、多くの要素が絡む複雑なプロセスです。そのため、アドバイザーには幅広い専門知識が求められます。特に以下の分野での expertise が重要です。
• 税務知識(相続税、贈与税等)
• 法務知識(会社法、民法等)
• 財務分析スキル
承継先が未定の場合は、以下のような専門家が最適な相談先となります。
• 税務・法律に強い会計系コンサルティング会社
• 第三者承継に強い会計事務所
なお、M&A仲介会社は第三者承継の相談には適していますが、親族内承継や社内承継を含めた総合的な事業承継対策は不得手な場合が多いので注意が必要です。
アドバイザーの過去の実績も、選択の重要な基準となります。事業承継に成功した事例が多いアドバイザーほど、信頼性が高く、適切なアドバイスを提供できる可能性が高まります。特に以下のような実績を持つアドバイザーを選ぶことをおすすめします。
• 同じ業界での支援経験
• 同規模の企業での支援実績
• 複雑な案件の解決事例
これらの実績を持つアドバイザーは、企業の具体的なニーズに合った提案を行える可能性が高く、事業承継の成功率も向上します。
後継者不在の場合や、十分な創業利潤の確保を目指す場合、M&Aが有効な選択肢となります。M&Aプロセスは以下のような複雑な手順を含むため、経験豊富なアドバイザーのサポートが不可欠です。
• 企業価値の適正評価
• 最適な買い手の選定
• 交渉プロセスの管理
• 契約締結のサポート
M&A経験が豊富で、充実したサポート体制を持つアドバイザーを選ぶことで、これらのプロセスをスムーズに進めることができます。
事業承継アドバイザリーの費用は、提供されるサービスの内容や企業の規模によって大きく異なります。
通常、以下のような包括的なサポートが提供されるため、費用は長期的に発生します。
• 初期相談
• 計画策定
• M&Aの実施支援
• 承継後のフォローアップ
アドバイザーを選ぶ際は、費用だけでなく、提供されるサービスの質やサポート内容も十分に考慮することが重要です。安価なサービスでも、事業承継が円滑に進まなければ、結果的に大きな損失につながる可能性があります。
事業承継アドバイザリーの費用は、提供されるサービスの種類や範囲に応じて変動します。一般的に発生する費用は以下の通りです。
1. 初期相談料
o 内容:事業承継に関する初期相談、企業の現状分析
o 金額目安:無料~100万円程度
2. 計画策定費用
o 内容:後継者選定、財産分け、税務対策など具体的な承継計画の作成
o 金額目安:50万円~500万円程度
3. 実行支援費用
o 内容:自社株の移動、財産分配、法務手続など実務的なサポート
o 金額目安:イベントごとに数十万円~数百万円程度
4. M&A関連費用(M&Aを活用する場合)
o 内容:企業価値の評価、買い手との交渉、契約締結のサポート
o 金額目安:別途説明(後述)
なお、事業承継の方向として最初から第三者承継を選択する場合は、上記の一連のアドバイザリー費用は発生せず、後述するM&A費用のみがかかることが一般的です。
M&Aを活用した事業承継の場合、一般的に追加の費用が発生します。これは、M&Aのプロセスが複雑で多くのステップを必要とするためです。主な費用項目は以下の通りです。
1. 月額顧問料
o 金額目安:数万円~数十万円
o 注意点:M&A仲介会社の多くは月額報酬を無料としています
2. 中間金
o 発生タイミング:基本合意の締結時または意向表明の受理時
o 金額目安:100万円程度の固定報酬、または成功報酬の10%~50%程度
o 特徴:成約時には成功報酬に充当可能ですが、M&Aの成否にかかわらず返金されません
o 注意点:M&A仲介会社の多くは中間金が生じない完全成功報酬制を採用しています
3. 成功報酬
o 発生タイミング:最終契約締結後
o 計算方法:譲渡代金等を基準に算出(多くの会社が「レーマン方式」を採用)
o 最低報酬額:500万円~2,500万円程度が一般的
o 注意点:具体的な計算方法は各社で異なります
これらの費用は、M&Aのプロセスをサポートするための専門的な知識と経験に対する対価となります。企業の規模や案件の複雑さによって変動するため、事前に詳細な見積もりを取ることをおすすめします。
事業承継アドバイザリーは、企業の未来を左右する重要なサービスです。後継者問題や資産分配、税務対策など、複雑な課題に対して包括的なサポートを提供します。適切なアドバイザーを選ぶことで、M&Aを含めた最適な承継プランを策定し、企業の持続的な発展を実現できます。費用面では初期から承継後まで様々な段階で発生しますが、長期的な視点で企業価値の維持・向上を図ることが重要です。
著者|竹川 満 マネージャー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事