キャピタルゲインとは?計算方法・税金と会社売却の要点

キャピタルゲインとは、株式や不動産などを売却して得る値上がり益です。計算方法、インカムゲインとの違い、株式・FX・不動産・暗号資産ごとの税金、NISAによる非課税、確定申告、会社売却で自社株を譲渡する際の手取りと注意点まで分かりやすく解説します。

目次

  1. キャピタルゲインを理解する最初のポイント
  2. 資産ごとに異なるキャピタルゲインの出方
  3. 収益性・損失・税金という3つの特徴
  4. 計算式と税金は分けて考える
  5. 税負担を抑える制度と確定申告の注意点
  6. 会社売却では自社株の譲渡益として現れる
  7. キャピタルゲイン狙いの商品を選ぶ視点
  8. まとめ

キャピタルゲインとは?株FX不動産暗号資産や税金まで解説

キャピタルゲインを理解する最初のポイント

キャピタルゲインとは、株式や不動産などの資産を売却し、購入時より高い価格で売れたときに得る値上がり益です。資産を持っているだけで価格が上がっていても、それは「含み益」にすぎません。原則として、売却して利益が確定した段階でキャピタルゲインになります。

反対に、購入時より安い価格で売って損失が出た場合は、キャピタルロスと呼ばれます。値上がり益だけを見ると魅力的ですが、利益と損失は表裏一体です。

基本の計算は売却価格から購入価格を引く

最も単純な計算式は、次のとおりです。

  キャピタルゲイン=売却価格-購入価格


たとえば、100万円で買った株式を150万円で売却した場合、税引き前のキャピタルゲインは50万円です。ただし、実際の税金を計算するときは、売買手数料なども差し引くため、単純な差額と課税対象額が一致しないことがあります。

利益が確定する時点を見落とさない

「値上がりしたから利益が出た」と考えがちですが、売却前の価格は変動します。相場が下がれば、含み益が消えることもあります。売却時期は、資金が必要になる時期や税金も踏まえて決めることが大切です。

資産ごとに異なるキャピタルゲインの出方

キャピタルゲインは株式だけの言葉ではありません。不動産、FX、暗号資産、さらにM&A(合併・買収)による自社株の売却でも生じます。ただし、税法上の所得区分や税率は同じではありません。

株式は株価の上昇分が利益になる

上場株式は、購入した株価より高く売れれば差益が生じます。企業業績や金利、市場の需給などで価格が動くため、大きな利益を得られる可能性がある一方、元本割れもあります。

非上場会社の株式も基本的な考え方は同じです。会社の利益、純資産、将来性などが評価され、取得費を上回る価格で譲渡できれば、株主にキャピタルゲインが生じます。

不動産は売却価格だけで判断しない

土地や建物は、購入価格より高く売れたとしても、仲介手数料や取得費、建物の減価償却などを反映して譲渡所得を計算します。また、個人の不動産売却は、売却した年の1月1日時点の所有期間が5年を超えるかどうかで税率が変わります。

賃貸中は家賃というインカムゲインを得られますが、売却すると賃料収入は止まります。売却益と将来の家賃収入を比べる視点も必要です。

FXは為替差益、暗号資産は売却や使用時の利益

FXでは、為替レートの変動による差益が生じます。国内の一般的なFX取引の利益は、税務上「先物取引に係る雑所得等」として扱われ、株式の譲渡所得とは別に計算します。

暗号資産は、売却したときだけでなく、商品購入に使ったときや、他の暗号資産と交換したときにも利益が確定する場合があります。原則として雑所得になるため、株式と同じ20.315%で済むとは限りません。値動きが大きく、税金を見落としやすい資産です。

会社や事業の売却にも関係する

M&Aでは、経営者が自社株を売る株式譲渡や、会社が事業を売る事業譲渡によって譲渡損益が生じます。株式譲渡では株主、事業譲渡では会社に損益が生じるため、税金を負担する人や法人も異なります。

収益性・損失・税金という3つの特徴

キャピタルゲインには、短期間で大きな利益を得られる可能性があります。ただし、「高い収益性」「損失リスク」「税金」の3点を一緒に確認しなければ、実際の手取りや資産形成を見誤ります。

短期間で大きな利益を得る可能性がある

価格が大きく上昇すれば、配当や家賃を積み上げるより短期間で多額の利益を得られることがあります。会社売却では、長年育てた事業価値が株式の譲渡価格に反映され、まとまった資金を一度に受け取ることも。

ただし、高い収益性は保証ではありません。評判や過去の値上がりだけを見て買うと、価格下落時に判断が止まりやすくなります。

値下がりすればキャピタルロスになる

購入価格を下回って売却すれば損失です。損失を避けようとして売却を先送りした結果、さらに価格が下がるケースも珍しくありません。投資前に、許容できる損失額と資金を使う時期を決めておくことが大切です。

利益には資産ごとに異なる税金がかかる

「キャピタルゲインの税率は20.315%」と説明されることがありますが、すべての資産に共通する税率ではありません。個人の株式譲渡や国内の一般的なFXには原則20.315%が関係しますが、不動産は所有期間で税率が変わり、暗号資産は原則として総合課税の雑所得です。

税率だけでなく、損失をどの所得と相殺できるかも異なります。資産の種類を確認せずに節税方法を当てはめるのは、意外と多い落とし穴です。

インカムゲインは保有中に得る利益

インカムゲインとは、株式の配当金、不動産の家賃、預金の利息など、資産を保有している間に継続して得る利益です。キャピタルゲインが売却時の一時的な利益であるのに対し、インカムゲインは保有を続けることで得られます。

どちらか一方が優れているわけではありません。必要な収入の時期や資産計画に応じて使い分けます。

計算式と税金は分けて考える

売却価格から購入価格を引いただけでは、税引き後の手取りは分かりません。利益の計算、課税対象額の計算、納税後の手取りを順番に分けると理解しやすくなります。

課税対象額では取得費と譲渡費用も差し引く

株式の譲渡益は、一般に次の式で計算します。

  譲渡益=譲渡価格-取得費-譲渡費用


取得費は株式を買った代金や出資額、譲渡費用は売却のために直接かかった手数料などです。100万円で購入し、売却手数料が2万円、150万円で売却した場合、譲渡益は48万円となります。

取得時の契約書や払込資料が見つからないと、税額計算で不利になることがあります。売却を決めてから探すのでは遅いことも。購入資料、取引報告書、手数料明細は早めに整理します。

個人の株式譲渡は原則20.315%

個人が上場株式や非上場株式を譲渡した利益は、給与などと分ける申告分離課税の対象です。税率は、所得税、復興特別所得税、住民税を合わせて原則20.315%となります。

ただし、上場株式等と非上場株式などの一般株式等は、損益通算の区分が分かれています。上場株式の損失を、自社株など一般株式等の譲渡益から自由に差し引けるわけではありません。

不動産・FX・暗号資産は別の計算になる

個人の土地・建物は、長期譲渡所得と短期譲渡所得で税率が異なります。国内の一般的なFXは申告分離課税ですが、株式とは別区分です。暗号資産は原則として雑所得で、他の所得と合算して税率を計算します。

名称が同じ「値上がり益」でも税務は別物です。複数の資産を同じ年に売る場合は、利益と損失を単純に合計せず、所得区分ごとに整理してください。

税負担を抑える制度と確定申告の注意点

節税は、利益が出てから慌てて考えるより、購入時と売却前に準備したほうが選択肢が広がります。一方、資産ごとに使える制度が違うため、「損があるから相殺できる」と早合点しないことが重要です。

NISAでは対象商品の売却益が非課税になる

NISAは、対象となる上場株式や投資信託などの売却益や配当・分配金を非課税にする制度です。年間投資枠は、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて360万円、非課税保有限度額は総額1,800万円です。

ただし、上場株式の配当金を非課税にするには、原則として証券会社の口座で受け取る「株式数比例配分方式」を選ぶ必要があります。発行会社から直接受け取る方法などでは、NISA口座で保有していても課税されることがあります。

また、NISAは非上場の自社株、FX、暗号資産、不動産そのものの売却益には使えません。NISA口座で生じた損失は、課税口座の利益との損益通算や繰越控除ができない点にも注意が必要です。

損益通算と繰越控除には条件がある

上場株式等の譲渡損失は、証券会社等を通じて売却するなど一定の要件を満たせば、一定の配当所得等と損益通算できます。控除しきれない損失は、確定申告を続けることで翌年以後3年間繰り越せる場合があります。

FXにも、同じ「先物取引に係る雑所得等」の範囲で損益通算や3年間の繰越控除があります。ただし、損失が生じた年から継続して確定申告することが必要です。

一方、暗号資産の損失を給与所得や株式譲渡益から差し引くことは、原則としてできません。不動産の譲渡損失にも制限があり、マイホームに関する特例などを除けば、他の所得と通算できない場合があります。

確定申告が必要かを売却前に確認する

源泉徴収ありの特定口座で上場株式を売却した場合など、申告が不要になるケースがあります。これに対し、非上場株式の譲渡益、FX、不動産、暗号資産の利益は、原則として確定申告が必要になる場面が多くなります。

申告では、売却価格だけでなく取得費と譲渡費用の資料が必要です。会社売却のように金額が大きい取引では、契約書の締結前に税額と必要書類を確認しておくと、納税資金が足りない事態を防げます。

会社売却では自社株の譲渡益として現れる

会社売却を検討する経営者にとって、キャピタルゲインは単なる投資用語ではありません。長年育てた会社の価値を、自社株の譲渡対価として受け取る場面に直結します。

株式譲渡では株主個人に利益が生じる

中小企業のM&Aで株式譲渡を選ぶ場合、経営者が保有する株式を買い手企業へ譲渡します。個人株主の譲渡益は、譲渡価格から株式の取得費と譲渡費用を引いて計算し、原則20.315%で課税されます。

創業時の出資額が小さい会社ほど、譲渡価格との差が大きくなりやすい傾向です。譲渡価格が高くても、取得費、支援手数料、税金を差し引くと手取りは変わります。価格交渉では額面だけでなく、納税後の金額まで試算することが欠かせません。

事業譲渡では会社側に損益が生じる

事業譲渡は、会社が事業に関する資産や契約などを選んで譲渡する方法です。対価を受け取るのは株主個人ではなく会社であり、譲渡益が出た場合は法人税等の対象になります。譲渡価格が帳簿価額などを下回れば、会社側に譲渡損失が生じることもあります。

また、土地や有価証券などを除き、課税対象となる資産の譲渡には消費税がかかる場合があります。株式譲渡と事業譲渡は、売却価格だけでなく、税金、引き継ぐ資産・負債、契約の移転、手続負担を含めて比較します。

追加対価や権利の扱いも確認する

M&Aでは、譲渡時に全額を受け取るとは限りません。一定期間後の業績に応じて追加代金を受け取るアーンアウトを設ける場合、受取時期や条件が手取りに影響します。

役員や従業員がストックオプションや新株予約権を持っている場合は、売却前に権利の行使や買い取り方法を整理する必要があります。

高い譲渡益だけを目標にしない

会社を最も高く買う相手が、必ずしも最適な承継先とは限りません。従業員の雇用、取引先との関係、経営者の引継期間、個人保証の解除なども重要です。条件が曖昧なまま価格だけを優先すると、成約後に負担が残ることがあります。

友好的なM&Aでは、経営者と買い手企業が将来像を共有し、譲渡価格以外の条件も合意して進めます。キャピタルゲインは大切ですが、会社と関係者の承継まで含めて判断することが必要です。

キャピタルゲイン狙いの商品を選ぶ視点

「値上がり益を狙うなら何がおすすめか」という疑問に、誰にでも共通する答えはありません。投資期間、損失への耐性、必要資金、知識によって向く商品が変わるからです。

長期の資産形成なら分散と非課税制度を重視する

長期で資産形成を進める場合は、NISAの対象となる分散型の投資信託や上場株式が候補になります。値上がり益だけでなく、手数料、分散の程度、換金のしやすさも確認します。

個別株は大きな利益を狙える一方、1社の業績悪化が資産全体に響きます。値動きだけで選ばないことが大切です。

FX・暗号資産は余裕資金の範囲を守る

FXは、預けた証拠金を上回る規模の取引ができるため、利益だけでなく損失も大きくなる可能性があります。暗号資産も、価格が短期間で大きく動くことがあります。

生活資金、納税資金、会社の運転資金を使うのは避けるべきです。とくに会社売却後の資金は、引退後の生活や次の事業に必要になるため、利益の大きさだけで再投資先を決めないことが大切です。

不動産は資金拘束と管理負担も確認する

不動産は売却益と賃料収入の両方を期待できますが、購入額が大きく、必要なときにすぐ売れるとは限りません。修繕、空室、借入金利、税金などの負担も続きます。

商品を比べる前に、許容できる損失、現金が必要になる時期、管理負担を決めます。出口を考えてから入口を選ぶ姿勢が重要です。

まとめ

キャピタルゲインは、資産を購入価格より高く売って得る利益で、売却前の含み益とは区別されます。株式、FX、不動産、暗号資産では税率や損失の扱いが異なり、NISAを使える範囲も限定的です。会社売却では自社株の譲渡益が経営者の手取りに直結するため、取得費、譲渡費用、税金、承継条件を売却前に整理し、手取りと会社の将来を合わせて判断することが重要です。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人