キャピタルゲインとは?株FX不動産暗号資産や税金まで解説
キャピタルゲインとは何でしょうか。資産を売却して得る利益の計算方法から税金、M&Aでの活用までをまとめて理解すれば、短期間で資金を増やす道筋が見えてきます。本記事ではメリットとリスクを整理しながら、専門家視点でわかりやすく解説します。
目次
▶目次ページ:第三者承継とは(M&Aのメリット・デメリット)
キャピタルゲインは保有する株式や不動産などの資産を売却したときに発生する売買差益を指します。購入価格より高く売却できた差額が利益となり、逆に値下がりして安く手放した場合はキャピタルロスと呼ばれる損失になります。値動きのある資産を扱うため、短期的に大きなリターンを狙える反面、損失リスクも同時に抱えます。
資産の評価益は保有中の含み益であり、実際に売却してはじめてキャピタルゲインとして確定します。売却前の評価差額には課税されず、売却時点で税金計算が行われる点が特徴です。
価格下落で発生するキャピタルロスは、他の譲渡益と相殺して課税対象額を減らすことができます。損益通算や繰越控除を活用すれば、翌年以降の節税にもつながります。
キャピタルゲインは売却時点で発生する一時収益であるのに対し、インカムゲインは資産を保有している期間に継続的に得られる配当金や賃料収入などの利益です。この違いを理解すると、短期で大きなリターンを狙うのか、長期で安定収益を得るのか、経営戦略や投資方針を立てやすくなります。
株価や為替、不動産価格など市場環境に大きく左右されるため、リターンも損失も大きく振れる可能性があります。短期〜中期で資金回収を狙う場面で有効です。
株式配当や不動産賃料のように、保有期間中に定期的なキャッシュフローを得られるため、長期的な資産形成に向いています。ただし一度に大きな収益は見込みにくい点が特徴です。
ここでは株式、FX、不動産、暗号資産という四つの投資手法に絞り、キャピタルゲインが生まれる流れと注意点を見ていきます。
株主が保有株式を譲受企業に売却すると、その差額がキャピタルゲインとなります。個人か法人かで税率や課税方式が変わるため、スキーム選択が税負担を左右します。
会社が特定事業を切り出して譲渡する手法では、譲渡企業が資産と負債を整理して売却するため、譲渡価格から簿価を差し引いた金額がキャピタルゲインになります。手続が複雑で時間もかかる反面、不要資産を除外できるメリットがあります。
買収後に経営改善や新規顧客獲得で企業価値が向上すれば、将来売却時に大きなキャピタルゲインを実現できます。ただし売却するまで利益は確定しないため、出口戦略の設計が欠かせません。
株価や暗号資産の値動きは日々変動するため、上昇局面を捉えればわずか数ヶ月で投資額以上のリターンを得られることがあります。M&Aでも技術や知名度を高めてから株式譲渡すれば、黒字化前でも譲渡益を得られるケースがあります。
AIや半導体関連など成長分野の株式は短期間で数倍に跳ね上がることもあります。適切な投資判断とリスク管理を行えば、同じ元手でもインカムゲインより多額の収益を期待できます。
高いリターンの裏には高いリスクが存在します。価格下落によるキャピタルロスだけでなく、資産を失うことで継続収益を得る機会が減少する点もデメリットです。
市場急変で価格が下落すると、元本を大きく減らす可能性があります。M&Aで買収した企業が業績不振になれば投資額を回収できない恐れもあるため、事前のデューデリジェンスと継続的なモニタリングが重要です。
株式や不動産を売却して利益を確定すると、配当金や賃料といったインカムゲインの源泉も手放すことになります。長期的なキャッシュフロー計画と合わせて売却タイミングを検討する必要があります。
キャピタルゲイン=【売却価格−(購入価格+手数料等)】−(売買差益×税率)
手数料等には仲介手数料や登記費用などが含まれます。税額は売買差益に税率を乗じて求めますが、次節で解説するように資産の種類や保有期間、売り手が個人か法人かで大きく変わります。
売却価額が購入価額を下回り損失が出た場合、税金は0円です。この損失は一定条件のもとで翌年以降に繰り越して控除できるため、損失が出ても確定申告を行う価値があります。
個人の場合、株式やFX、不動産の売却益は原則として申告分離課税となり、一律約20.315%の税率が適用されます。不動産を5年以上保有していると長期譲渡所得として税率が軽減される一方、暗号資産の売却益は雑所得として総合課税となり、所得が高いほど税率も上がります。
法人の場合は資産区分を問わず譲渡所得も本業収益と合算して課税されます。資本金規模や所在地によって税率が変わるため、試算の際は顧問税理士への確認が不可欠です。
個人が不動産を5年以上保有して売却すると、税率は約20%に抑えられます。短期譲渡の場合は約39%と大幅に上昇するため、売却タイミングが税負担を左右します。
株式譲渡では譲渡資産が土地や有価証券に該当するため消費税が非課税となりますが、事業譲渡では無形固定資産や棚卸資産など課税資産が含まれると消費税が発生します。この違いが譲渡価格に対する手取り額を大きく変えるため、スキーム選定時に税負担を試算することが重要です。
創業者など個人株主が株式を売却する場合は約20%の申告分離課税ですが、法人株主が売却する場合は総合課税となり、他の事業利益と通算して課税されます。
事業譲渡の場合、株主ではなく譲渡企業自体に法人税が課されます。さらに課税資産が含まれていれば消費税負担も生じるため、複数年にわたる納税シミュレーションが欠かせません。
キャピタルゲインで得た利益を最大限手元に残すには、税金との付き合い方を理解し、実際に使える制度を組み合わせることが大切です。ここでは個人と法人の両方に共通する実践的な節税手法を整理します。税金は制度を正しく用いれば合法的に軽減できるため、早い段階で方針を立てておくと資金計画に余裕が生まれます。
個人が株式や不動産でキャピタルゲインを得ても、同じ年にキャピタルロスがあれば相殺できます。たとえば株式Aで100万円の利益、株式Bで40万円の損失があれば課税対象は差引60万円です。損失が利益を上回る場合は翌年以降3年間繰り越せるため、将来の譲渡益から控除して税額を減らせます。法人も総合課税方式を利用して本業の赤字と通算することでキャッシュアウトを抑制できます。
不動産は5年以上保有すると長期譲渡所得として税率が約20%に軽減されます。5年以下で売却すると約39%が適用されるため、保有期間の差は大きいです。株式でも年末の含み益を翌年に持ち越すかどうかで損益通算の機会が変わります。決算期をまたいで譲渡すると法人税の納付時期がずれ、キャッシュフローにも好影響を与えます。
法人がキャピタルゲインを計上すると課税所得が増加します。ただし研究開発費や減価償却費が先行していれば損金と相殺し税負担を抑えられます。さらに設備投資に伴う特別償却や税額控除を活用すれば、譲渡益があっても実効税率を下げることが可能です。
一定条件を満たすベンチャー企業に出資した個人投資家は、売却時のキャピタルゲインに対して税制優遇を受けられます。出資額100%を所得控除するA優遇や、株式売却益から出資額を控除するB優遇などがあり、適用には発行会社の要件や届け出が必要です。
暗号資産の課税タイミングに注意
暗号資産の売買益は雑所得の総合課税のため、高所得者は最大55%の税率がかかります。年度末に利益確定すると課税所得が跳ね上がる可能性があるため、他資産の損失と併せて確定時期を調整すると税負担を管理しやすくなります。
NISA制度で小口投資の利益非課税枠を活用
一般NISAや新NISAを利用すると、年間一定額までの株式や投資信託の譲渡益が非課税になります。新NISAは最大1,800万円の投資上限を活用でき、長期で値上がり益を狙う場合に有効です。
海外投資で二重課税を回避する手続
外国株や海外不動産を売却して得た利益は現地国と日本で二重課税される恐れがあります。租税条約に基づく外国税額控除を利用し、確定申告で還付を受けることで不要な税負担を防ぎます。
大きなキャピタルゲインがあると税務署の調査対象になりやすいため、購入時の契約書や手数料明細は電子帳簿保存法に沿って7年間保管しましょう。
キャピタルゲインを狙う取引は金額が大きく複雑です。税理士やM&Aアドバイザーなど専門家を活用する際の留意点を解説します。
譲受企業が対象会社を買収する前に行う財務・法務・税務デューデリジェンスは、買収後のキャピタルゲインシナリオの現実性を検証します。潜在債務や未払税金が見つかれば想定キャッシュフローが変わるため、必ず第三者へ依頼しましょう。
株式譲渡と事業譲渡では税負担が大きく変わります。税理士は譲渡企業側の法人税や消費税を、譲受企業側ののれん償却を踏まえてシミュレーションし、双方にメリットが高い手法を提案します。
財務データや契約書を整理し、正確かつ迅速に開示することで交渉をスムーズに進められます。情報の遅延や不足は価値評価の低下につながり、キャピタルゲイン減少を招くため注意が必要です。
アーンアウト条項が設定される場合、目標達成が追加キャピタルゲインに直結します。譲渡後の経営支援やアドバイスを行い、企業価値を高める取り組みが不可欠です。
業界や規模が異なる三つの事例を紹介し、キャピタルゲインを伸ばしたプロセスを学びます。
ケーススタディから得られる教訓
キャピタルゲインは短期間で大きな利益を狙える一方、高いリスクと税負担が伴います。損益通算や長期保有などの節税策を活用し、専門家と連携して最適なM&Aスキームを選択することで、譲渡企業の手取りを最大化できます。早期の情報整理と売却計画立案が成功への鍵です。
著者|土屋 賢治 マネージャー
大手住宅メーカーにて用地の取得・開発業務、法人営業に従事。その後、総合商社の鉄鋼部門にて国内外の流通に携わる傍ら、鉄鋼メーカーの事業再生に携わる。外資系大手金融機関を経て、みつきグループに参画