M&Aの基礎知識から効果的な学習方法まで、経営者のためのM&A学習ガイドをご紹介します。ウェブサイト、動画、セミナー、専門家相談、書籍など、様々な学習アプローチの特徴を解説します。
目次
▶目次ページ:第三者承継(M&Aの意味)
M&A(合併・買収)を成功させるためには、専門家に任せきりにせず、ある程度自ら学習することが重要です。ここでは、M&Aに関する基礎知識として押さえておくべきポイントをご紹介します。
M&Aは、譲渡側と譲受側の双方に明確な目的があり、メリットがあるからこそ成立する取引です。M&Aによって企業の成長曲線がどのように変化するかを考えることが、M&Aの醍醐味といえます。
M&Aは単なる買収・売却で終わるものではありません。その先にどのような企業成長を実現できるかまで考えることが重要なポイントです。M&Aがもたらす価値を理解することは、M&A学習の基本となります。
M&Aの概要を把握し、さまざまな手法を知ることも、学習に必要な要素です。M&Aが企業にどのような効果をもたらすのかを理解することで、M&Aの全体像が見えてきます。
実務上よく使われるM&Aの手法には、主に以下の3つがあります:
1. 株式譲渡
2. 事業譲渡
3. 会社分割
これらの手法にはそれぞれ特徴、メリット、デメリットがあります。各手法を学び、自社に最適なものを選択することが重要です。なお、最も多く用いられるM&A手法は株式譲渡です。
M&Aを進める上で、譲渡側も譲受側も、詳細は専門家に委ねるとしても、ある程度の専門知識は自ら持っておくことが望ましいです。特に重要となるのが、税務と法務の知識です。
法務面では、M&Aに際して会社法を中心とする各種法規を遵守する必要があります。業種によっては許認可等の固有の法規制もクリアしなければなりません。これらは、M&Aそのものの実行可能性を左右する基本的な論点となります。
税務面では、譲渡側にとっては手取額に大きく影響するため極めて重要です。譲受側にとっても、税効果を考慮した実質的な買収価格に影響し得るため、やはり重要な要素となります。
税制改正が毎年行われることも税務の特徴です。専門家の力を借りながら、最新の知識を取り入れ、自らのM&Aに影響がないかを確認しておくことが大切です。
なお、普段お世話になっている顧問税理士がM&Aやその税務に詳しいとは限りません。そのため、M&Aを進める上では、必要に応じて顧問税理士の協力を得ながらも、M&Aに詳しい会計事務所やM&A会社に相談することをお勧めします。
M&Aについて学ぶ際、ウェブサイトも有用なツールとなります。ここでは、ウェブサイトを使ったM&A学習の特徴について解説します。
ウェブサイトを活用したM&A学習には、以下のような利点があります:
1. 時間の有効活用:仕事の移動時間や隙間時間を利用して、スマートフォンで手軽に情報収集ができます。
2. 幅広い情報:ウェブサイトごとに規模や記載内容が異なるため、初心者から知識のある人まで、効率よく学習でき
ます。
3. 最新情報の入手:ウェブサイトは頻繁に更新されるため、最新のM&A情報を得やすいです。
一方で、ウェブサイトでM&Aを学ぶ際には以下の点に注意が必要です:
1. 情報の絞り込み:調べたい内容を事前に絞らないと、目的とする結果が得られない可能性があります。
2. 信頼性の確認:ウェブサイトの情報の真偽が不確かな場合もあるため、全てを鵜呑みにはできません。
3. 情報の確認作業:参照元などが正しく記載されているか確認した上で、知識として吸収する手間がかかります。
M&Aに関する動画コンテンツも多数存在し、映像を通じて学習することも可能です。ここでは、動画を活用したM&A学習の特徴について解説します。
動画でM&Aを学ぶ際のメリットには以下のようなものがあります:
1. 無料で有益な情報入手:多くの動画コンテンツが無料で視聴できます。
2. 時間の有効活用:移動中や隙間時間でも視聴可能です。
3. 視聴覚学習:音声と映像で学習できるため、活字より内容が頭に入りやすい場合があります。
4. 柔軟な学習:本を読む時間が取れない場合の代替手段となります。
一方で、動画でM&Aを学ぶ際には以下のような課題があります:
1. 情報の深さ:表面的な情報にとどまり、得られる情報が少ない場合があります。
2. 時間効率:必要な情報を得るまでに時間がかかる可能性があります。
3. 情報の信頼性:動画の作成者や内容の信頼性を確認する必要があります。
4. 補完の必要性:動画だけでM&Aの学習を完結させることは難しく、他の学習方法で補完する必要があります。
動画は勉強の補助ツールとして捉え、他の学習方法と組み合わせて活用することが重要です。
M&A関連のセミナーに参加して直接学ぶ方法も考えられます。ここでは、M&Aセミナーを通じた学習の特徴について解説します。
M&Aセミナーに参加して学ぶ利点には以下のようなものがあります:
1. 質の高い知識:M&Aの専門家から直接、質の高い知識を得られます。
2. 充実した資料:講師が作成したレジュメなどの資料が充実していることが多いです。
3. 印象に残りやすい:一度の参加でも内容が印象に残りやすいです。
4. 質問・ディスカッションの機会:参加型のセミナーでは、講師に質問したり、他の参加者とディスカッションしたりして知識を深められます。
一方で、セミナーでM&Aを学ぶ際には以下のような点に留意が必要です:
1. コストと時間:交通費やセミナー参加費、移動時間などがかかります。
2. 参加の難しさ:地方在住者や外出が難しい仕事をしている場合、参加自体のハードルが高くなります。
3. テーマの限定:セミナーはテーマが決められていることが多いため、自分が学びたい情報を得られない可能性があ
ります。
4. 補完の必要性:セミナーだけでM&Aの全てを学ぶことは難しいため、他の学習方法で知識を補完する必要がありま
す。
M&Aの専門家に直接相談し、アドバイスを受けながら学ぶ方法もあります。ここでは、専門家へのコンサルテーションを通じたM&A学習の特徴について解説します。
M&Aの専門家に相談して学ぶメリットには以下のようなものがあります:
1. 個別対応:各企業の状況に合わせたM&Aの方法や分析結果を教えてもらえます。
2. 効率的な情報収集:自社が必要とする内容や分からない部分をピンポイントで相談できます。
3. 新たな視点:M&Aの専門家の視点を取り入れることで、気づかなかった課題を発見できる可能性があります。
4. 実践的な知識:実際のM&A案件に即した、実践的な知識を得られます。
一方で、専門家に相談してM&Aを学ぶ際には以下のような点を考慮する必要があります:
1. コスト:相談内容によっては高額な相談料が発生する可能性があります。
2. 一般知識の習得には不向き:一般的な知識を学びたい場合には、専門家への相談は効率的ではありません。
3. 事前準備の必要性:疑問点が明確でない状態では、効果的な助言を得られない可能性があります。
4. 専門家の選択:M&Aに精通した適切な専門家を選ぶ必要があります。
M&Aを学ぶ際に、書籍を活用する方法も有効です。ここでは、M&A関連書籍を通じた学習の特徴について解説します。
M&A関連の書籍を活用して学ぶ利点には以下のようなものがあります:
1. 幅広い学習:初心者から実務担当者向けまで、多様な書籍が出版されています。
2. 信頼性の高さ:記載されている情報の信頼性や権威性が高いことが多いです。
3. 段階的な学習:自分の知識レベルに合った本から始め、段階的にM&Aについて学べます
4. じっくりした学習:自分のペースで繰り返し読むことができ、深い理解が得られます。
5. 体系的な知識:1冊の本で体系的にM&Aの知識を得られることが多いです。
一方で、書籍でM&Aを学ぶ際には以下のような課題があります:
1. コスト:M&Aの専門書は1冊の価格が高く、複数の本を購入するとコストがかさむ場合があります。
2. 携帯性:専門書は分厚いことが多く、持ち運びに不便な場合があります。
3. 心理的抵抗:分厚さや専門的な内容に心理的な抵抗を感じる人もいます。
4. 情報の更新:出版後の法改正や市場の変化に対応していない場合があります。
M&Aの学習に役立つおすすめの書籍をいくつか紹介します:
1. 「世界でいちばんやさしいM&A入門ゼミナール」
o M&Aの初心者向けに構成された本です。
o イラスト入りかつ会話形式で、漫画を読む感覚で気軽に読み進められます。
2. 「まんがでわかる オーナー社長のM&A」
o 中小企業の後継者不在や相続、事業承継の問題を実際に取り上げる形で構成されています。
o 漫画形式で説明されているため、隙間時間を活用して読みやすいです。
3. 「図解でわかるM&A入門 買収・出資・提携のしくみと流れの知識が身につく」
o M&A初心者のために基礎知識を分かりやすく図解で解説しています。
o M&Aの成功事例を流れに沿って紹介しているため、M&A全体の流れを具体的に学べます。
M&Aに関する書籍を選ぶ際のポイントは以下の通りです:
1. M&Aの用語を理解する
o まずは基本用語やM&Aの大枠から理解することが重要です。
o 自分のレベルに合った書籍を選び、用語を理解できるものから読み進めます。
2. M&Aの流れを把握する
o M&Aにおける基本的な流れを理解できる本を選びましょう。
o 流れを知ることで、M&Aのメリット・デメリットも把握しやすくなります。
3. 今の自分に適した本を選択する
o 自分の目的やレベルに合った書籍を選ぶことが重要です。
o 初めは難解な書籍を避け、基礎的な入門書から始めることをおすすめします。
M&Aの学習方法には、ウェブサイト、動画、セミナー、専門家への相談、書籍など様々な選択肢があります。自分に合った方法を選び、段階的に知識を深めていくことが効果的です。M&Aへの理解を深めてから行動に移すことで、より効率的かつ成果の出るM&Aの実現につながります。
著者|土屋 賢治 マネージャー
大手住宅メーカーにて用地の取得・開発業務、法人営業に従事。その後、総合商社の鉄鋼部門にて国内外の流通に携わる傍ら、鉄鋼メーカーの事業再生に携わる。外資系大手金融機関を経て、みつきグループに参画