M&Aマッチングサイトは、事業承継や譲受を検討する企業・個人がオンライン上で候補先を探しやすくなる便利なサービスです。M&Aプラットフォームとあわせて活用することで、譲渡企業と譲受企業の交渉がスムーズに進み、専門家を交えたサポートも受けやすくなります。本記事では、それぞれの特徴やメリット・デメリット、費用や選び方、具体的な活用方法などをわかりやすく解説します。
目次
M&Aマッチングサイトとは、オンライン上で企業や個人の譲渡希望と譲受希望をマッチングするサービスのことです。近年では、後継者が見つからない中小企業の事業承継や、新規事業を探している個人や法人が手軽に利用できる仕組みとして注目を集めています。
一方で、「M&Aプラットフォーム」とは、M&Aマッチングサイトとほぼ同じ機能を持ちつつも、サイト運営会社やアドバイザーによる支援体制が比較的充実している場合も多いサービスです。事前に審査を通した企業だけが登録できる形式や、専門家による書類作成・交渉サポートなど、各プラットフォームごとに特徴があり、譲渡企業・譲受企業の両方が利用することで効率的にM&Aを進められるメリットがあります。
ここではまず、M&Aマッチングサイトの概要と種類について、やさしく解説します。
M&Aマッチングサイトは、「買いたい人(譲受企業・個人)」と「売りたい人(譲渡企業)」を、オンラインを通じて結びつけるための場を提供します。会員登録を行い、希望条件を匿名で登録すれば、条件に合った相手と直接連絡を取り合うことが可能です。たとえば、「事業拡大のために売上規模○億円の企業を探したい」「自社を承継してくれる個人を見つけたい」といった要望を出し合い、マッチングを図っていきます。
大がかりな仲介手数料や専門家費用がかかりづらいサイトもあることから、M&Aの候補先探しのハードルが下がり、特に中小企業や個人がM&Aを検討しやすくなりました。また、後継者不足を背景に、比較的小規模のM&A案件が増えているのも特徴の1つです。
M&Aマッチングサイトには、大きく2つのタイプがあります。
プラットフォーム上で譲渡・譲受の希望を登録し、当事者同士が直接やり取りを進めるタイプです。専門家のサポートは必要に応じて別途契約するか、自力で手配します。
サイト運営者がアドバイザーとして、案件掲載から交渉・成約までトータルサポートするタイプです。サイト自体は無料で使えても、仲介手数料などは別途発生する場合があります。
どのタイプを選ぶかは、M&Aに費やすい時間や知識、予算などに左右されます。自分たちで進める自信がない場合は、仲介+マッチング型を選んだほうが安心できるケースがあるでしょう。
ここでは、#原文で取り上げられていた5つのM&Aプラットフォーム(M&Aマッチングサイト)を例として紹介します。それぞれ特徴が異なるため、比較検討の参考にしてください。
M&Aマッチングサイトには、企業や個人でM&Aを検討する方にとって多くのメリットがあります。ここでは代表的な利点をいくつか挙げて、わかりやすく解説します。
一般的にM&Aの仲介会社やコンサル会社の場合、保有している案件数や対象業種には限りがあります。これに対して、M&Aマッチングサイトでは幅広い業種・地域・規模の売却案件や買収希望が登録されており、選択肢が豊富です。
たとえば、売上が1億円未満の小規模企業から中規模企業、さらには個人経営の事業などまで扱っているサイトがあり、さまざまなニーズに応じた案件を探しやすいです。自社の条件や目的に合った候補先を効率よく見つけやすいため、マッチング成立のチャンスが広がります。
M&A全体のプロセスは、通常6~12ヶ月ほどかかる場合が多いとされています。しかし、M&Aマッチングサイトを利用すると、オンライン上で譲受企業や譲渡企業を直接検索し、条件が合えばすぐに交渉に移ることが可能です。仲介会社などを介する場合に比べて、初期段階でのやり取りがスムーズに進みやすく、短期間でマッチングが成立するケースも少なくありません。
多くのM&Aマッチングサイトは、月額費用や成功報酬が比較的低めに設定されていたり、登録だけなら無料でできたりする場合があります。特に、譲渡企業側の料金が無料となるサイトもあり、M&Aに慣れていないオーナー経営者でも導入しやすいです。
さらに、オンライン上でやり取りを進められるため、必要書類の送付や資料確認などの手間を削減できる場合があります。のちほど専門家や仲介会社と連携するにしても、ある程度自分で準備を進めることで、最終的なM&Aコストを抑えやすくなるのが特徴です。
メリットの多いM&Aマッチングサイトですが、利用にあたってはいくつかのデメリットやリスクを把握しておく必要があります。慎重に検討することで、トラブルを避けやすくなります。
売り手(譲渡企業)の経営者がM&A初心者の場合、価格交渉や契約条件の折衝で不利になるケースがあります。買い手(譲受企業)のほうが情報や交渉ノウハウを多く持っていると、金額を安く抑えられたり、不利な条件を受け入れざるを得なくなるかもしれません。
また、M&Aの交渉はスピード勝負の面があるため、焦って意思決定をしてしまい、後悔する結果にならないよう注意が必要です。可能であれば、税理士や会計士、M&A仲介会社といった第三者の専門家にサポートを依頼して事前準備を行うとよいでしょう。
すべてのM&Aマッチングサイトが、充実したサポートサービスを提供しているわけではありません。中には、譲渡企業と譲受企業の登録を受け付けるだけで、細かいフォローはほとんど行わないサービスもあります。
「M&Aの書類作成支援が欲しい」「専門家を紹介してもらいたい」などの要望がある場合には、アドバイザーやFA(ファイナンシャルアドバイザー)サービスを用意しているサイトを選ぶことが大事です。必要なサポートを得られないまま交渉を進めると、時間も労力も余計にかかってしまう可能性があります。
M&Aは極力秘密裏に進めたいと考える経営者が多いですが、m&aマッチングサイトに企業の概要を掲載すると、大勢の会員の目に留まります。ノンネームであっても、所在地や事業内容から企業が特定されるリスクがゼロとはいえません。
もし社名や詳細情報が漏れてしまうと、取引先や従業員が不安を感じたり、社外に動揺が広がってしまうケースも考えられます。情報がどの程度開示されるのか、どんなセキュリティ対策があるのかを事前に確認し、むやみに詳細を公開しすぎないよう注意する必要があります。
メリットのところで「スピーディなM&Aが可能」と解説しましたが、反対に希望条件に合う相手がなかなか見つからず、長期間サイトを利用するケースもあります。特に、業種や地域、規模を絞りすぎると、該当案件が少なくマッチングに時間を要することがあります。
また、詳細な情報公開を避けるあまり、譲渡先や譲受先に魅力が十分に伝わらず、交渉相手が現れないケースもあるでしょう。M&Aのスケジュールには余裕をもち、焦らず相手を探す姿勢が重要です。
M&AマッチングサイトやM&Aプラットフォームは数多く存在します。ここでは選び方のポイントを3つ紹介します。
まずは、そのプラットフォームの登録企業数や実際の成約数をチェックしましょう。利用者が多いほど相性の良い相手と巡り合うチャンスが増えます。実績が豊富なサイトはマッチングシステムがしっかりしていることが多く、安心感も高まります。
M&Aには、それぞれのサイトが得意とする業種や事業規模があります。飲食・美容・不動産など、特定の業種に強いプラットフォームもあれば、中小企業から個人経営まで幅広く扱うところもあります。自社の事業内容と合致するサイトを選ぶことで、効率的にマッチングを進めやすくなります。
契約書や法務・財務の知識が必要になるM&Aでは、専門家にサポートしてもらえるかどうかが重要です。サイト独自のアドバイザーが付くか、税理士や会計士、弁護士を紹介してもらえるか、またその費用はどのくらいかなど、利用前に必ずチェックしておきましょう。
M&Aマッチングサイトを最大限に活用するには、事前準備やサイト選びが欠かせません。ここでは基本的なステップを整理しながら、上手な活用ポイントを解説します。
M&Aは企業の将来を大きく左右するため、まずは内部的な準備が大切です。売り手側の場合は、会社の財務情報・契約内容・組織体制などを整理して、開示できる資料をまとめておきましょう。買い手側なら、買収の目的や予算、欲しいリソース(人材・ノウハウ・拠点など)を明確にしておくと交渉がスムーズです。
m&aマッチングサイトは1つに絞らず、複数サイトを比較検討することをおすすめします。サイトごとに掲載案件数や利用者層、得意業界が異なるため、平行して登録すると相性の良い相手と出会う確率が上がるでしょう。実際に使ってみて、操作性やサポートの手厚さを体感しながらメインで使うサイトを選ぶのも一つの方法です。
サイトに登録したら、希望条件に合う相手を検索して交渉を進めます。譲渡希望側は、できるだけ自社のセールスポイントや条件をはっきり提示することが大切です。ただし、何でもかんでも公開しすぎて企業が特定されるリスクには注意が必要です。
また、相手からオファーがあった場合は、すぐに飛びつかず、譲受企業の経営状況や事業方針をしっかりと確認しましょう。譲渡・譲受ともに、「まずは秘密保持契約を結ぶ」などの基本的な手順を踏み、情報漏えいや不公平な交渉が起きないよう慎重に進めるのがおすすめです。
M&Aマッチングサイトの利用でスムーズに交渉を進めるためには、以下の点に留意しておくと良いでしょう。
トラブルが起きたときに運営会社やアドバイザーがどのように対応してくれるか、あらかじめ把握しておくことが重要です。サポートが無いもしくは薄いサイトを使う場合、何か問題があっても自力で解決しなければならず、結果的に時間と費用が余計にかかるケースがあります。
サイト上でのマッチングに時間がかかる場合も考慮し、余裕のある計画を立てましょう。登録から交渉開始までは早く進むこともありますが、そこから成約までには企業評価・デューデリジェンス・契約書作成など多くの工程があります。特に中小企業のM&Aでは、オーナーの意思決定や社内調整に時間が必要です。
M&AマッチングサイトやM&Aプラットフォームを活用する際の費用は、サービスや契約形態によって大きく異なります。ここでは、一般的によくある費用のパターンを挙げてみます。
初期費用や月額費用
会員登録料や月額利用料として数千円〜数万円が設定されているケースがあります。
成功報酬
成約時に譲受企業側から成約額の数%を受け取る形になっているところが多いです。譲渡企業は無料の場合も少なくありません。
オプション費用
専門家の紹介や資料作成サポート、広告掲載などをオプションで利用すると、別途費用が発生します。
着手金
成約の有無にかかわらず、契約時に支払う費用。
中間金・成功報酬
M&Aが進行し、基本合意書締結や最終契約締結時に支払う場合があります。
アドバイザリー料
M&Aに必要な書類作成や交渉支援、法務・税務などの専門サービスを受ける費用。
仲介+マッチング型のサイトは、ワンストップで手厚いサービスを受けられる一方で、純粋なマッチング型と比べると全体的なコストが高めになる傾向があります。M&Aの専門知識に自信がない場合や、時間があまり取れない経営者にはありがたい仕組みですが、事前に手数料の算定方法や支払いタイミングをしっかり確認しておきましょう。
M&Aマッチングサイト以外にも、M&Aを相談できる相手があります。自社に合ったサポートを受けるために、それぞれの特徴を押さえておきましょう。
M&A仲介会社は、売り手と買い手の間に立って交渉を取り持つ専門家集団です。企業評価やデューデリジェンス、条件交渉など、多岐にわたる手続きをサポートしてくれます。仲介会社は中立的な立場で、譲渡企業・譲受企業が納得できる合意に向けて動くのが特徴です。
銀行や証券会社、コンサルティングファームなどが運営するM&A専門組織です。大手の金融機関グループやコンサル会社が運営するケースが多いため、大規模なM&A案件にも対応しやすい傾向があります。また、FA(ファイナンシャルアドバイザー)を中心とした専門チームを持ち、戦略的なM&A提案が可能です。
M&Aには法務・財務・税務などの専門知識が必要になります。譲受側・譲渡側ともに、契約書の作成やデューデリジェンスで弁護士や公認会計士、税理士らの力を借りるのが一般的です。特に税理士は事業承継やM&Aに強い場合、株価算定や節税対策などで大きく貢献することができます。
M&Aマッチングサイト単独では補えない専門領域のサポートを得たいときは、こうした士業事務所との連携も視野に入れるとよいでしょう。
M&Aは企業の将来を左右する大切な選択なので、M&AマッチングサイトやM&Aプラットフォームを上手に使うことが重要です。メリットとデメリット、サイトの特徴やサポート体制などを総合的に比較して、自社に合った相手を探し、着実に交渉を進める準備が成功のカギです。
著者|竹川 満 マネージャー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事